有給休暇の付与日数やルールを把握し、健全な勤務管理に役立てたいと考える方もいるでしょう。法律上では、年次有給休暇日数が10日以上の従業員に対しては毎年5日間、必ず取得をさせなければならないという義務があります。今回は有給休暇の要件や付与日数、計算方法などを詳しく解説します。違反した場合の罰則規定もまとめました。
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目次
有給休暇とは
有給休暇とは一定の要件を満たす従業員に対して、有給での休暇を与える制度です。正式名称を「年次有給休暇」と呼びます。
一般的に従業員が仕事を休むと休日の給与は発生しません。しかし、有給休暇を取得すれば、働いていなくともその日の給与を受け取ることができます。
有給休暇は労働基準法で認められた労働者の正当な権利のひとつのため、事業側はルールに沿って適切に従業員に有給休暇を付与する必要があります。
例えば、有給休暇に関するルールについては、以下の項目が挙げられます。
- 事業側は労働者の意見を聴取したうえで、労働者の希望に沿って有給休暇を取得できるように努めなければならない
- 休養やレジャーのためなど利用目的と問わずに労働者に有給休暇を付与する
- 事業者側は正常な運営の妨げになる場のみ、有給休暇を変更させることができる
また、労働者の働き方によって有給休暇の付与日数が異なるため、勤務管理の担当者は要件などをおさえたうえで適切に計算し、付与していきましょう。
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有給休暇が付与される要件と日数
まず、有給休暇を付与される要件や日数について詳しく紹介します。
要件
有給休暇が発生する従業員は以下の要件を満たした方です。
- 雇い入れの日から6か月間継続的に勤務している
- 全労働日の8割以上出勤している
出勤に関しては、業務上のケガや病気で休んだ期間、法律で定められた介護・育児休業を取得期間は「出勤日」とみなす必要があります。なお、会社都合の休業時間は「全労働日」から除外します。
日数
有給休暇の付与日数については、継続年数や1年間の所定労働日数によって異なります。
原則、法律上で年次有給休暇日数が10日以上の従業員に対しては毎年5日間、年次有給休暇を必ず取得させることが必要です。
上記で示されている通り、有給休暇の付与日数の上限は20日となります。
正社員やパート、アルバイトなどの雇用形態に関係なく、要件に当てはまる従業員に関しては付与する必要があります。
例えば、週4日勤務のパート社員が6か月以上継続的に雇用され、週4日勤務のうちの8割出勤した場合、6か月後には有給休暇が7日間与えられます。
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有給休暇の付与日数の計算手順
続いて、有給休暇の付与日数の計算手順を紹介します。
正社員・契約社員
基本的に正社員や契約社員などのフルタイムで勤務しているでしょう。
まず、付与日数を計算する場合は出勤率の計算を行ないます。
算出方法は以下の通りです。
出勤日数÷所定労働日数=出勤率
出勤率が8割以上(0.8以上)であれば、有給を付与します。
上記の厚生労働省の資料を見て、継続年数を確認し、付与すべき日数を算出しましょう。
パート・アルバイト
パートやアルバイトの社員に関して、所定労働日数が決まっている/決まっていない場合の計算方法を紹介します。
所定労働日数が決まっている場合
まず、正社員や契約社員同様、出勤率を算出します。
出勤日数÷所定労働日数=出勤率
所定労働日数…要件に該当するパートやアルバイトが出勤すべき勤務日数
出勤率が8割以上(0.8以上)あれば、継続年数に応じて付与日数を算出しましょう。
所定労働日数が決まっていない場合
パートやアルバイトの方の中には週の所定労働日数が2日の日もあれば、4日の日もあるというように一定ではない場合があるでしょう。
その際の計算方法を紹介します。
まず、出勤率を算出します。
出勤日数÷所定労働日数=出勤率
出勤率が8割以上(0.8以上)であれば、有給を付与します。ただ、所定労働日数が決まっていないため、厚生労働省の資料に当てはめて、付与すべき日数を確認するのは難しいでしょう。
その場合は6ヵ月間の労働日数を2倍した日数を、1年間の労働日数とみなして付与しましょう。
例えば、半年間で90日の所定労働日数の片は1年間で180日とみなし、7日間の有給休暇を与えます。
上記の計算手順でもわかるように、有給休暇の付与に関しては出勤率の算出が重要です。
特に医療や介護、保育施設などでは変則的な勤務の従業員などが多く、算出が難しいかもしれません。
勤怠管理システムなどを活用して、正確なデータを用いたうえで付与日数を計算しましょう。※保育士の勤怠管理システムの活用については、こちらをご覧ください。
有給休暇の付与日数を管理する際の注意点
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有給休暇の付与日数を管理する際の注意点を紹介します。
繰り越し日数を確認する
有給休暇の付与日数を管理するうえで大切なのは、従業員それぞれの繰り越し日数と失効日数をチェックすることです。
有給休暇の時効は原則、2年間です。
例えば、週5日以上働く従業員には最大20日の有給が付与されますが、有給を使い切らない中で新しい有給休暇を付与される方も多いかもしれません。
従業員に20日付与したうち、その年に6日の有給を消化した場合は、14日間が翌年に繰り越されます。
企業側は有給日数を正しく把握し、繰り越しをしなければならない有給休暇を無効にしないよう、注意しましょう。
時間単位の有給休暇の付与は労使協定を結ぶ
時間単位の有給休暇の付与については1年間で5日の範囲内であれば、導入することが可能です。
しかし、自由に付与することができず、労使協定を結ぶ必要があるため、注意しましょう。
また、就業規則には対象者や日数、1日の年次有給休暇に相当する時間数などを明記することが必要です。
時間単位の有給休暇は、5日間の有給休暇の取得義務には該当しないため、別途5日間の有給休暇を与えなければならないことをあわせて覚えておくとよいですね。
有給休暇付与と取得義務の規定に違反した場合はどうなる?
有給休暇の付与と取得義務の規定に違反した場合は、罰則が科されることがあります。
「年5日の年次有給休暇を取得させなければならない義務を怠った」場合は30万円の罰金が課せられるため、注意しましょう。
また、例外を除いて労働者が請求する時期に所定の年次有給休暇を与えなかった場合もまた、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金となるため、この点も気をつける必要があります。
適切な有給休暇付与は必要なものの、従業員側は取得にためらいを感じている
有給休暇の取得は労働者の正当な権利となります。
付与する側の企業にとっても、きちんと従業員に有給を与えられると働きやすさを感じてもらえるというメリットがあるでしょう。
しかし、厚生労働省の資料によると、労働者全体の4割が有給休暇の取得にためらいを感じていることが明らかとなりました。
出典:労働者の年次有給休暇の取得へのためらい/厚生労働省から抜粋
有給休暇の取得をためらう理由としては「周囲に迷惑がかかるから」という方が5割ほどいることから、従業員が安心して休暇を取得できるような取り組みが必要でしょう。
特に医療や保育業界などでは人手不足が続いており、有給休暇の取得について後ろめたさを感じる職員もいるかもしれません。
企業側が率先して従業員に有給取得の声かけを実施したり、仕事量の削減や業務の役割分担の見直しを行なったりすることが必要になりそうです。
看護師さんや保育士さんなどを含め、多くの労働者が働きやすさを感じられるように適切な有給付与・取得の推進について考えることが大切です。
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出典:年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説/厚生労働省
有給休暇日数を正しく計算して適切に付与しよう
有給休暇の日数は雇用形態に関係なく、出勤率が重要になります。正確に計算し、適切に有給休暇の付与を行ないましょう。
また、有給休暇取得の推進は、従業員の環境改善に役立つだけでなく、人材採用においても企業の強みとなります。
従業員が働きやすい環境を作り上げるためにも、有給休暇の管理体制についても考えてみるとよさそうです。
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