保育士の人材不足の原因のひとつとして、仕事の残業時間が長いことが考えられます。そもそも、保育士の時間外労働は平均何時間なのでしょうか。長時間労働となる理由も把握できれば、職場環境の改善や人材の確保対策にも役立ちそうです。このコラムでは、保育士の残業時間の実態や減らす方法について紹介します。
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保育士の残業は平均何時間?
保育士として働くなかでは「残業時間が多い」、「労働時間が長い」ことに不満をもつ方がいるかもしれません。
働きやすい職場を作り、採用活動を円滑に進めるためにも勤務体制の見直しは必要でしょう。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、2010年~2019年の過去9年間の保育士の時間外労働数が年間平均4時間で推移しており、残業時間が多い状況が続いていることがわかります。
なぜこのように保育士の仕事は長時間の業務が発生してしまうのでしょうか。
まずは、保育士の残業時間が長い理由についてみていきましょう。
出典:賃金構造基本統計調査/厚生労働省
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保育士の残業時間が長い理由
仕事量の多さ
保育園の業務は子どもたちの食事や衣服の援助、遊びの指導、行事の企画運営、園内清掃や壁面製作など多種類の仕事をこなすことが多いでしょう。
さまざまな業務に取り組む中で、保育士さん一人ひとりにどのような負担がかかり、残業時間が多くなってしまうのか詳しく紹介します。
業務の偏り
保育士の仕事は職員間で協力して行う仕事が多いものです。
保育活動や保護者への対応、行事の準備、園内清掃などさまざまな役割がありますが、分担が上手くいかない場合は、業務の偏りが発生してしまうケースもあるでしょう。
職員一人に対して任される仕事が多いと業務負担がかかり、残業時間が長くなってしまうことが考えられます。
手作業による事務作業
保育士は児童の出欠確認や園児記録、連絡帳や保育計画、指導案作成など書き物が多い職種でしょう。
手書きで行う業務もあり、事務作業に時間がかかる場合が考えられます。
事務員を雇用していない園では、職員のシフト作成なども保育士が担当しているケースもあることから、残業時間が長くなってしまうようです。
行事の多さ
保育園では、入園卒園式、運動会や生活発表会、誕生日会、クリスマス会などさまざまな行事を開催するでしょう。
保護者の方と子どもたちの成長をともに喜び、分かち合うためにイベントを行うことは大切ですが、企画や準備などで保育士に過度な業務負担がかかることが考えられます。
生活発表会など大規模なイベントの場合は、子どもたちの衣装や道具作り、スケジュール調整など準備に時間がかかり、長時間労働になる場合もあるようです。
このような行事の多さにより、残業時間が長くなってしまうのかもしれません。
慢性的な人材不足
保育士は業務量が多い職種といわれていますが、人員が不足している園では、さらに職員の業務負担が増える可能性があるでしょう。
国としても、人員不足を解消するために保育士の処遇改善や潜在保育士(資格を保有しながらも現場を離れている方)の復職の後押しとして、さまざまな対策を行っていますが、未だ問題の解消には至っていません。
人材が足りない中で保育士一人に対して過度な業務負担が強いられると、残業時間が増えてしまうことが考えられます。
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保育士の残業を減らすための対策
保育士の残業を減らすためにはどのような対策が必要なのか紹介します。
役割分担の明確化
保育士の時間外労働を短縮するためには、職員間で行う業務を明確にして、役割分担の見直しを行うことが必要かもしれません。
職員間で協力して行う主な業務は以下の通りです。
- 保育活動
- 送迎時の保護者対応
- 清掃業務
- 安全管理
- 衛生管理作業
- 備品発注
- おたより作成
- 壁面製作
- 行事の準備運営
- 連絡事項の共有
- 会議の議事進行
- 新人保育士の教育指導
- 預かり保育(専任の保育士を雇用していない場合)
上記の仕事の他にも、職員のシフト作成や調整を保育士同士で協力して行っている場合もあるかもしれません。
役割を明確化して当番制を導入したり、役割分担表を作成したりして業務に偏りがないように工夫し、残業時間なしを目指していきましょう。
ICTシステムの導入
保育士の残業が長い理由の一つが手作業による書きものが多いことが考えられます。
近年、このような業務負担の軽減や効率化を進めるための方法として、ICTシステムの導入が注目されています。
ICTシステムは園児の出席確認や個人記録、職員の出勤、シフト作成などの労務管理、保護者へのお知らせ機能などをタブレットやパソコンを使って行うことができる電子システムです。
そのため、保育士さんが行う事務作業の簡略化が期待できるでしょう。
経済産業省の「保育現場のICT化自治体手続等標準化検討会報告書」においても、ICTシステムの活用により、保育士の業務負担が軽減されたという声が挙げられています。
職員の残業時間を減らすためにも導入を検討してみるとよいかもしれません。
行事の見直し縮小
保育園では運動会や誕生日会などさまざまなイベント行われていますが、行事が多いことで職員に負担がかかり、残業時間が短縮できないという場合もあるでしょう。
労働環境を改善するためにも、行事の見直しや縮小の検討が必要かもしれません。
「毎月の誕生会を春夏秋冬に分けてまとめて行う」、「行事に向けた壁面製作は過去の作品をできるだけ使う」など保育士さんの業務の軽減に向けて、どのような取り組みが必要なのか考えてみましょう。
採用活動の見直し
保育士さんの残業時間なしに向けて、人員不足を解消するためには人材の確保は重要なことでしょう。
「応募が来ない」、「面接をしても採用までに至らない」などの理由から採用活動が上手く進まない場合は、今までのやり方の見直しが必要かもしれません。
具体的な対策について見ていきましょう。
多様な雇用形態で募集する
保育士さんを募集する際に正社員のみ、8時間パート募集など、長時間勤務を前提に人材の雇用を考えている園もあるかもしれません。
その際は多様な時間帯で募集を募るなどして、雇用形態の見直しを行いましょう。
「一日4時間可能」、「週2日でもOK」など少ない日数や時間帯で募集すると、現場から離れている子育て世代の保育士さんも応募しやすいかもしれません。
短時間勤務パートを増やしたり、シフト調整の見直しを行ったりして人材確保に役立てていきましょう。
多様な募集方法を取り入れる
人員を募集するために、ハローワークや求人サイト、情報誌などさまざまな媒体を活用する園は多いでしょう。
現状を把握するためにも各募集媒体の応募数や、面接まで結びついた人員数などを明確にして、どの媒体が有効な採用活動を行うことができたのかをきちんとデータ化することが大切です。
そのうえで今まで活用していなかった求人サイトやSNS、人材紹介会社などの利用を検討してみるとよいかもしれません。
例えば、人材紹介会社は「コストがかかる」というイメージをもつ方もいるでしょう。
しかし、人材紹介会社が園と保育士さんをつなぐ仲介役を担うことで「園の保育方針に沿った人材の紹介が期待できる」、「求職者との連絡や面接調整を任せることができる」などさまざまなメリットがあります。
このような利点も考えたうえで、採用の成功に向けてさまざまな募集方法を取り入れてみるとよいかもしれません。
保育士の残業の実態を知り、業務負担を減らす対策を考えよう
保育士の残業時間が多いという問題が解消されない今、各園で業務負担の軽減に向けて対策を立てることが重要でしょう。
今までの業務形態を変えたくないと理由から、残業時間の短縮に前向きになれない園もあるかもしれません。
しかし、経済産業省にはICTシステムの活用により、負担が軽減されたことで保育の質の向上につながったという報告も挙げられています。
保育士の労働環境を改善するためにも残業時間なしを目指して、具体的な対策を考えていきましょう。
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