母子生活支援施設とは、経済的な理由や家庭内暴力(DV)などにより、生活が困難な母子を保護し、自立に向けてサポートする施設です。今回は、母子生活支援施設の概要や入所方法、料金、入所手続きについてわかりやすくまとめました。生活のスケジュール例や保育士などの職員が働く際のやりがいについても紹介します。
kapinon / stock.adobe.com
母子生活支援施設とは
母子生活支援施設は、さまざまな理由で生活が困難な母子家庭を支援する入所施設です。
妊娠期からのケアを大切にしており、産前や産後、親子関係の構築などを援助しています。
母親と18歳未満の子どもがいっしょに生活ができるという点が特徴で、生活全般や就労支援など多様なサポートを受けられます。(子どもが20歳まで延長可能)
厚生労働省の調査によれば、2023年の時点で全国に2780 世帯が入所しており、児童数は4538 人にのぼります。
また、母子生活支援施設への入所理由については、「配偶者の暴力」が50.3%と最も多く、続いて「住宅の事情」と回答した方が15.8%いました。
出典:児童養護施設入所児童等調査の概要/こども家庭庁を基に作成上記の入所理由を見ると、多くの方が心身ともに辛い状況の中で施設へ入所したことがわかります。
このようにさまざまな事情を抱えた母子に対して、安全で安心できる環境を整える母子生活支援施設は、社会的に大きな役割を果たす施設といえるでしょう。
母子生活支援施設に入所する方法
brizmaker / stock.adobe.com
続いて、母子生活支援施設への入所方法についてみていきましょう。
入所条件
経済的な困難や配偶者からの暴力(DV)など、生活が安定しない状況にある母子家庭が対象です。
母子が共に生活しない場合は、子どもだけ乳児院や児童養護施設へ入所するなど、対応方法が異なります。
利用料金
利用料金は、世帯の収入状況に応じて異なりますが、生活保護世帯の場合は無償で利用できます。
収入のある世帯は、段階的に利用料が設定されています。
住民税非課税世帯は月額約1100円で利用でき、課税世帯については月額2200円から増額される場合がありますが、比較的安価な金額での利用が可能です。
ただし、光熱費や食費などの生活費は別途負担が必要です。
手続きの流れ
まず、お住まいの市区町村の福祉窓口や福祉事務所に相談後、利用者の生活状況や課題を確認し、必要に応じて入所申請の手続きを進められます。
施設によっては事前に見学や面接が行なわれることがあるようです。
読んでおきたいおすすめ記事
【採用担当者向けコラム】保育士の新卒採用やることリスト。テンプレに使えるチェックシートを紹介
新卒採用は計画的に進めることが重要。保育士を目指す学生の動きは年々早期化しているとも言われるため、事前に「やることリスト」をまとめておくとスムーズです。そのうえで、早め早めに動くことが採用成功の近道で...
【採用担当必見】保育施設のお悩み対策診断。今、あなたの園に必要な対策は?
保育施設の運営にまつわる課題は、採用・定着・園児集客など、園によって本当にさまざまです。一体、自園にとって必要な対策は何なのか?「保育施設のお悩み対策診断」を使って調べてみましょう。 &n...
【採用担当者向けコラム】保育士の意向調査実施マニュアル。来年度に向けた準備のポイント
保育士さんに向けて来年度の就業意思を確認する意向調査では、どんなことに配慮して進めるとよいでしょうか。今後の園の運営や保育士さんの育成に関わることなので、慎重に行なうことが大切です。今回は、意向調査の...
【採用担当者向けコラム】意向調査で「退職希望」を示している保育士の引き止めはできる?
意向調査で退職の希望を示している保育士さんの引き止め方を知りたいと感じる採用担当者の方もいるでしょう。保育士不足が続く中、頼りにしていた保育士さんが抜けてしまうと運営が苦しくなりますよね。今回は、意向...
【2024最新】保育士不足が続く原因は?解消に向けた国・自治体・園の対策も解説
なぜ保育士不足が続くのでしょうか。子育て支援の重要性が増す中で、資格を持ちながらも保育士として就業する人が少ない状況を受け、国や自治体ではさまざまな対策を行なっています。今回は、深刻な社会問題でありな...
【2024年最新】学童保育の補助金はいくら?開業や運営に関わる助成金について
全国的に共働き家庭が増えたことで、小学生の居場所となる学童保育の拡充が求められています。実際に学童保育の開業や運営を目指す場合、国や自治体からいくらの補助金を受け取れるのでしょうか。今回は、学童保育の...
【採用担当者向けコラム】保育士の人材紹介手数料は高い?相場や会社による違いを解説!
保育士採用でも利用される「人材紹介」。手数料が何十万にも上ったという話を聞き、利用を迷っている採用担当者の方もいるかもしれません。今回は、保育士の人材紹介について、手数料の相場と費用が高いと言われる理...
【採用担当者向けコラム】真面目な人ほど急に辞めるのはなぜ?保育士が突然退職する理由と対策
真面目な人から急に辞めると告げられて、「何がよくなかったのか…」と頭を抱える採用担当者の方もいるのではないでしょうか。おとなしい人や優秀で勤勉な保育士さんほど、職場にストレスを抱えているかもしれません...
【採用担当者向けコラム】人材紹介会社が保育士さんを紹介してくれないのはなぜ?原因と対策
人材紹介会社を利用したにもかかわらず「保育士さんを紹介してくれない」と悩みを抱える方はいませんか?採用活動がスムーズに進まないと人材不足が解消されず、運営に支障をきたすケースも。今回は人材紹介会社から...
転職フェア出展は意味がない?採用できない?保育士を集客するためのポイント
多くの保育士さんと出会い、自園の魅力を直接伝えられる「転職フェア」。人材確保のチャンスになる機会ですが、出展しても意味がないのでは、採用できないのではと不安を抱く方もいるでしょう。今回は、転職フェアで...
放課後等デイサービスの職員採用の方法は?求める人材に出会うコツ
保育・福祉業界では人材不足が深刻化しており、放課後等デイサービスについても採用に苦戦する施設があるでしょう。特に児童発達支援管理責任者(児発管)の不足は、全国的に大きな課題となっています。今回は、放課...
時短勤務とは?保育園が導入するメリット・デメリットや注意点
2009年度の育児・介護休業法によって制度化された「時短勤務」。正式には短時間勤務制度と呼ばれ、3歳に満たない子を療育する労働者を対象に多くの方が利用しています。今回は時短勤務の概要や対象者、導入状況...
学童保育の経営に必要な基礎知識!開業の流れや必要コスト、成功のポイント
学童保育の開業を考えている方は、開業の流れやランニングコストの目安を把握しておくことが大切です。学童保育を経営するうえで必要な基礎知識をチェックしていきましょう。今回は、学童保育の経営に関する内容や成...
【採用担当者向けコラム】保育士採用で合同説明会に出展するメリット。成功の秘訣
保育事業者にとって合同説明会への出展には、どのようなメリットがあるのでしょうか。採用の成功率をアップするために、出展を検討する採用担当者の方もいるかもしれません。今回は保育士さん向けの合同説明会の活用...
学童保育の採用に人材紹介サービスを利用するメリットと注意点。活用するポイント
学童保育の採用に人材紹介サービスを利用するべきかと悩む事業者の方はいませんか。「手数料が高いのでは?」「希望する人材の紹介が受けられるのか」と不安を抱くこともあるでしょう。今回は、学童保育の採用に人材...
【採用担当者向けコラム】退職代行を使われた時はどうする?保育園に連絡が来た時の対処法
職員から退職代行サービスを利用して退職の申し入れがあった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。連絡が来た時点で直接該当の職員とやり取りすることが難しいため、戸惑ってしまいますよね。今回は退職代行...
ジョハリの窓とは?4つの窓の内容や注意点、具体例をわかりやすく解説
「ジョハリの窓」という自己分析ツールはご存じですか。「開放」「秘密」「盲点」「未知」の4つの窓を用いて、自分や他者からの印象を認識していく手法です。今回は、ジョハリの窓の概要や企業内での導入時の注意点...
今、重要視される「学び直し」は保育士に必要?園側が取り組む具体例
社会人の学び直しが注目されている昨今、雇用側の環境整備が求められます。今回は、保育士の学び直しが必要なのか、園側の取り組みや具体例についてわかりやすく解説します。保育士がやりがいをもって働ける職場を作...
人的資本経営とは?保育園経営に活用するメリットや保育士育成のポイント
人的資本経営とは、企業の人材を「資本」と捉え、人材の価値を高めることで企業価値の向上を目指す経営手法です。近年注目されている経営手法のひとつで、さまざまな企業で導入されています。今回は、人的資本経営の...
学童保育を開業するために必要な資格・条件・補助金制度について徹底解説!
全国的に学童保育の拡充が求められている今、学童保育施設を開業するためには何が必要なのでしょうか。今回は学童保育の開業に必要な条件や手続き、補助金制度などを紹介します。学童保育の開業は主に自治体から業務...
- 同じカテゴリの記事一覧へ
母子生活支援施設の一日のスケジュール例
続いて、母子生活支援施設に入所した場合のスケジュール例を紹介します。
時間 | 内容 |
---|---|
6:30 | 起床。子どもを起こし、朝食の準備や登園・登校の準備をする。 |
8:00 | 子どもを施設に併設した保育施設または施設内の保育室に預ける。 |
10:00 | 施設職員と生活や就労に関する相談、手続きなどを行なう。 |
12:00 | 昼食をとり、休憩する。 |
14:00 | 就労支援や資格取得プログラムに参加し、自立に向けた準備を進める。 |
16:00 | 子どもを迎えに行き、家族といっしょに過ごす。 |
19:00 | 夕食後、子どもといっしょに入浴や就寝準備をする。 |
21:00 | 子どもを寝かしつけ、自分の時間を過ごす。 |
施設の多くは、施設内に保育室や保育施設が併設されており、子どもを預けることが可能です。母親は職員に仕事や育児について相談しながら、自立に向けてのサポートが受けられるでしょう。
また、母親の妊娠期からのケアを重視し、産前・産後の支援や親子関係の構築を大切にしています。
母子生活支援施設の退所後のフォロー
母子生活支援施設では、退所後も母子家庭が安定した生活を続けられるようにフォローアップを行なっています。
引き続き、母親の就職や子どもの進学に関する相談や生活の安定を支援し、地域の支援機関と連携を図りながら、必要に応じて母子が相談できる体制を整えています。
母子生活支援施設で働く職員
母子生活支援施設の概要について説明しましたが、施設では専門性の高い職員が母子の生活や自立に向けてサポートを行なっています。
続いて、働く職員についてみていきましょう。
職種 | 役割 |
---|---|
施設長 | 施設全体を管理し、職員の指導や運営を統括。支援の質を向上させる役割を担う。 |
母子支援員 | 母子家庭の日常生活や自立支援のための相談に応じ、支援を行なう。 |
少年指導員 | 子どもへの支援を通じて世帯を支援し、事務作業も兼務して行なう。 |
保育士 | 施設内で幼い子どもの保育や育児サポートを行なう。 |
心理療法担当職員 | 母子の心理ケアを行ない、心の健康を支援。母子支援員と連携して行なう。 |
個別対応職員 | 特別なケアが必要な子どもや母親に対して1対1での支援を行なう。 |
調理員 | 栄養バランスの取れた食事を準備し、入所者の健康を支援するために行なう。 |
自立支援担当職員 | 母子家庭の進学や就職をサポートし、退所後もフォローを行なう。 |
特に「母子支援員」は、母親と子どもの生活を支えるために、信頼関係を深めながら日常的にさまざまな場面で援助していきます。
母子支援員になるには、保育士や社会福祉士、精神保健福祉などの資格が必要です。
また、その他の職員の資格についての詳細はこちらの記事をご覧ください。
母子生活支援施設で働くやりがい
浩士-知原 / stock.adobe.com
続いて、職員として母子生活支援施設で働く場合、どのようなやりがいがあるのか詳しく見ていきましょう。
社会的な貢献を実感できる
母子生活支援施設での仕事は、生活に困難を抱える母子家庭を直接サポートすることであり、社会に深く貢献していることが実感できる場面が多いかもしれません。
日々の支援が母子の生活の安定や自立につながる様子を目の当たりにすることで、充実感とやりがいを得られそうです。
子どもの成長を見守ることができる
母親と生活する子どもたちの成長を見守れることに、うれしさを感じることがあるでしょう。
保育士の経験がある方は、今まで培った知識や技術を活かしながら、各家庭の事情に合わせて心に寄り添った対応ができそうですね。
チームでの協力を通じた成長ができる
さまざまな専門分野の職員と協力して働く環境のため、お互いが支え合いながら成長できそうです。
仕事をこなす中で教養の幅が広がり、自身の成長を感じられそうです。
母子生活支援施設の求人を紹介してもらう
出典:児童養護施設入所児童等調査の概要/こども家庭庁
出典:母子生活支援施設運営ハンドブック/厚生労働省
出典:全国母子生活支援施設協議会改正児童福祉法、困難な問題を抱える女性支援新法のもとで、母子生活支援施設が果たす役割と機能、および課題/こども家庭庁
母子生活支援施設は母子家庭を支える重要な施設
母子生活支援施設は、困難な状況にある母子家庭を温かく支え、自立を援助する施設です。
母子が前向きに歩んでいけるよう、大切な役割を果たしています。
このような社会的意義が大きい母子生活支援施設で働いてみたいという方はいませんか?
「母子家庭をサポートする存在になりたい」などという方は保育士バンク!にご相談ください。
母子家庭生活支援施設での働き方や求人などを詳しく紹介いたします。「まずは仕事内容の話だけでも聞いてみたい!」という方もお問い合わせお待ちしています。