発達などに障がいを抱える子どもや肢体不自由な子どもが通う福祉・治療のための施設「児童発達支援施設」と「放課後等デイサービス」。どちらも保育士さんが働ける職場ですが、それぞれの特徴や違いがよく分からないという方もいるのではないでしょうか。今回は施設ごとの特徴や比較、保育士さんが働くメリットについて解説します。
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児童発達支援施設と放課後等デイサービスの比較
「児童発達支援施設」と「放課後等デイサービス」はどちらも「児童福祉法」で定められた、障がいのある子どもを対象とした福祉サービスです。
施設に通う障がいを抱えた子どもやその保護者に対して、日常生活の支援などさまざまな福祉サービスを提供する施設という点では、両施設に大きな違いはありません。
どちらも保育士の配置基準が定められているため、健常児の保育経験しかないという保育士さんも問題なく働けるということも、共通している部分と言えるでしょう。
反対に、比較される部分としては「対象年齢」と、それに準じた就学条件が挙げられます。以下の表で見てみましょう。
児童発達支援は0歳から就学までの未就学児が対象であることに対して、放課後等デイサービスは、小学校入学以上の児童・生徒が対象となっているのが最も大きな特徴です。
未就学児に限定した支援を行なう児童発達支援施設に対して、放課後等デイサービスは小学生から18歳までと幅広い年齢層の子どもを対象としている点も大きな違いと言えるでしょう。
このように、児童発達支援施設と放課後等デイサービスは、対象年齢の違いが主な相違点と言えるようです。
支援内容や目的は、年齢や就学状況・個別の障がいによって変わることが多く、両施設に支援内容としての大きな差はないと言えます。
児童発達支援施設の役割と方針
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2012年に約1700カ所だった事業所数が、2017年には約4700カ所に急増した児童発達支援施設。さらに2023年には約10900施設に数を増やしています。
利用ニーズの急激な拡大としても注目すべき点が多い児童発達支援施設ですが、保育士さんが働ける施設としても見逃せないでしょう。実際にはどのような支援が行なわれているのでしょうか。
児童福祉法による役割
児童福祉法が定めている、児童発達支援施設が障がいを抱えた子どもに対する支援内容は以下のようなものがあります。
- 日常生活における基本的な動作の習得
- 日常生活における知識技能の習得
- 集団生活への適応のための支援
- 肢体不自由がある児童への治療
- その他の内閣府令で定める支援
上記の内容には、2024年度の児童福祉法改定にともなう変化が反映されています。
従来の児童発達支援施設は、主に発達面での障がい児支援を担当する「福祉型」と、肢体不自由児の支援や治療を行なう「医療型」に二分化していました。
しかし、2024年度より両支援の一元化が実施されたことで、上記のようにすべての児童発達支援施設に統一された支援として「肢体不自由がある児童への治療」が追加されることになりました。
これにより、利用者が障がいの種別に関わらず地域での療育が受けやすくなること、また施設にとっては支援ごとに円滑な連携が図れることで、よりきめ細やかな支援が実施できることが期待されています。
児童発達支援ガイドラインによる支援方針
厚生労働省が策定した「児童発達支援ガイドライン」では、支援の方針や方向性なども定められています。
特に、乳児から3歳未満の子どもには、健康状態や生活習慣に配慮しながら心身の発達に即した支援を行なうことが大切だとされています。
また、個々の障がいの状態や発達の過程・特性に応じた支援はもちろん、親子関係の形成期にある年齢であることを踏まえ、保護者の障がいに対する理解にも配慮しながら支援を行なう必要性も求められています。
3歳以上の子どもには、これまで通りの個別支援計画に加え、子ども同士の関係や協同による活動が促されるようするといった、共同生活を意識した支援も行なわれます。
全体のねらいとして、地域社会への参加や「インクルージョン」と呼ばれる包括的な活動を推進する観点から、保育所や認定こども園、幼稚園といった保育・幼児教育施設との連携も重要とされています。
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放課後等デイサービスの役割と方針
厚生労働省による調査では、2021年に全国で約2800施設だった放課後等デイサービスは年々ニーズの高まりを見せ、2023年には20300施設を超える事業所数となりました。
小学生以上から高校卒業までの児童・生徒が支援対象の放課後等デイサービスも、保育士さんが資格を活かして働ける施設です。具体的な役割や支援内容について見ていきましょう。
児童福祉法による役割
児童福祉法に明記されている、放課後等デイサービスが担うべき役割は以下のようになっています。
- 学校の時程終了後(放課後)または休業日に受け入れを行なう
- 生活能力の向上のために必要な支援
- 社会との交流の促進
ここでも、児童発達支援施設と同様に、2024年度からの法改正による変化があります。
これまでは、原則として「小・中学校・高校に就学していること」が条件となっていました。
そのため、義務教育修了後に、フリースクールなどの各種学校や専修学校に進学している子は、放課後等デイサービスの利用対象外とみなされてしまうことから、支援の取りこぼしが課題となっていました。
しかし、このたびの法改正により、各種学校や専修学校などに就学している場合でも支援の必要があると市区町村の認定を得ることで、一般の高校生と同様に利用が可能となりました。
放課後等デイサービスガイドラインによる支援方針
厚生労働省が策定した「放課後等デイサービスガイドライン」における支援の方向性や重要視されているポイントを見ていきましょう。
幅広い年齢の子どもを支援する放課後等デイサービスでは、「障がいのある学齢期の子どもの健全な育成」を目的とし、子どもに学校や家庭とは異なる時間・空間・人間関係における体験を提供することを基本的なポリシーとしています。
そのため、支援にあたる保育士などのスタッフは、個々の子どもの状況に応じた計画に基づき、子どもの最善の利益と健全な育成につながることを重視した支援を行なうことが望まれます。
加えて、保護者に対するケアを手厚く行なうこともガイドラインでは重要とされています。具体的には以下のような保護者サポートが明記されています。
- 子育ての悩みに対する相談相手になる
- ペアレントトレーニングなどを活用しながら家庭内での養育を支援する
- 保護者の時間を保障するために、ケアを一時的に代行する
上記のようなサポートを行なうことによって、障がい児の保護者が子どもに向き合う心のゆとりや自信を持てるようになることが、保護者自身だけでなく子どもの発達にも好ましい影響を及ぼすことが期待されているようです。
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出典:児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要/厚生労働省
児童発達支援施設と放課後等デイサービスを知って自分に合う転職を
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保育士さんが資格や経験を活かして働ける職場として、児童発達支援施設と放課後等デイサービスの共通点と相違点、またそれぞれの役割や特徴について紹介してきました。
2024年度からの法改正により、利用者にはより支援が行き届くことが期待され、施設としては資格を持った保育士さんがさらに求められることが予想されます。
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