2023年度から全国の保育園で「保育所等における安全計画の策定」を義務づけることを、厚生労働省が制定しました。園ごとに策定する安全計画にはどのような目的や意味があるのでしょう。園児や職員の安全を守るために作成する安全計画の内容と作成後の運用ポイントについて、厚生労働省の資料をもとに解説します。
maroke/stock.adobe.com
目次
「保育所等における安全計画の策定」の義務化
「保育所等における安全計画の策定」は、2022年に児童福祉法等の一部が改正されたことに伴って厚生労働省によって制定されました。
改正のポイントとしては、これまでは、保育園などの児童福祉施設等の運営に関する基準のうち「児童の安全の確保」に関する内容は都道府県等が条例で定めることとされていましたが、改正後は国が定める基準に従うこととなったという点が挙げられます。
それに伴い、保育園などにおけるこどもの安全の確保について、施設ごとに安全確保のための取り組み計画を定めることが2023年4月から新たに義務づけられました。
各施設は、計画的な実施のため、安全確保に関する取り組みの策定が年に1回求められます。
年度始まりの前に行なう安全計画の策定に加え、以下のような内容についても実施します。
- 施設の設備などの全点検
- 園外活動などを含む園での活動・取り組みにおける職員や児童に対する安全確保の指導
- 職員への各種訓練や研修等の児童の安全確保に関する年間スケジュールを定める
これらの実施を包括した安全計画を策定することが、保育園に定められています。
お問合せ&資料ダウンロード
採用課題・経営課題に関する個別ご相談受付やサービスガイドなどの資料DLはこちらからどうぞ。
まずはお気軽にお問合せください!
「保育所等における安全計画の策定」の背景と目的
Paylessimagese/stock.adobe.comこれまで都道府県の条例レベルで定められていた安全計画が義務化された背景には、保育園の送迎バスなどでの園児の置き去り事故などが数回にわたり発生したことが発端のひとつとなったようです。
それを裏付けるように、厚生労働省から各都道府県と市区町村の保育主管部あてに通達された「保育所等における安全計画の策定に関する留意事項等について」によれば、策定については以下のように記載されています。
保育士等の職員や児童に対し、保育施設内での保育時はもちろん、散歩等の園外活動時や、保育所等が独自にバス等による送迎サービスを実施している場合におけるバス等での運行時など施設外での活動、取組等においても、安全確保ができるために行う指導に関すること、安全確保に係る取組等を確実に行うための職員への研修や訓練に関することなどを計画的に行うためのものであることが求められる。
このように、園内活動だけでなく散歩や送迎時の事故防止などにも十分留意した詳細な安全計画を立てること、その上で、職員へ周知して内容を共有することを徹底する必要があるでしょう。
上記の通達書面には、安全計画は策定するだけでなく、保育士さんなど職員への研修や訓練を実行し、安全確保にかかる取り組みを確実に行なうためのものとして認識する必要があることも明記されています。
読んでおきたいおすすめ記事
【採用担当者向けコラム】保育士の新卒採用やることリスト。テンプレに使えるチェックシートを紹介
新卒採用は計画的に進めることが重要。保育士を目指す学生の動きは年々早期化しているとも言われるため、事前に「やることリスト」をまとめておくとスムーズです。そのうえで、早め早めに動くことが採用成功の近道で...
【採用担当必見】保育施設のお悩み対策診断。今、あなたの園に必要な対策は?
保育施設の運営にまつわる課題は、採用・定着・園児集客など、園によって本当にさまざまです。一体、自園にとって必要な対策は何なのか?「保育施設のお悩み対策診断」を使って調べてみましょう。 &n...
【採用担当者向けコラム】保育士の意向調査実施マニュアル。来年度に向けた準備のポイント
保育士さんに向けて来年度の就業意思を確認する意向調査では、どんなことに配慮して進めるとよいでしょうか。今後の園の運営や保育士さんの育成に関わることなので、慎重に行なうことが大切です。今回は、意向調査の...
【採用担当者向けコラム】意向調査で「退職希望」を示している保育士の引き止めはできる?
意向調査で退職の希望を示している保育士さんの引き止め方を知りたいと感じる採用担当者の方もいるでしょう。保育士不足が続く中、頼りにしていた保育士さんが抜けてしまうと運営が苦しくなりますよね。今回は、意向...
【2024最新】保育士不足が続く原因は?解消に向けた国・自治体・園の対策も解説
なぜ保育士不足が続くのでしょうか。子育て支援の重要性が増す中で、資格を持ちながらも保育士として就業する人が少ない状況を受け、国や自治体ではさまざまな対策を行なっています。今回は、深刻な社会問題でありな...
【2024年最新】学童保育の補助金はいくら?開業や運営に関わる助成金について
全国的に共働き家庭が増えたことで、小学生の居場所となる学童保育の拡充が求められています。実際に学童保育の開業や運営を目指す場合、国や自治体からいくらの補助金を受け取れるのでしょうか。今回は、学童保育の...
【採用担当者向けコラム】保育士の人材紹介手数料は高い?相場や会社による違いを解説!
保育士採用でも利用される「人材紹介」。手数料が何十万にも上ったという話を聞き、利用を迷っている採用担当者の方もいるかもしれません。今回は、保育士の人材紹介について、手数料の相場と費用が高いと言われる理...
【採用担当者向けコラム】真面目な人ほど急に辞めるのはなぜ?保育士が突然退職する理由と対策
真面目な人から急に辞めると告げられて、「何がよくなかったのか…」と頭を抱える採用担当者の方もいるのではないでしょうか。おとなしい人や優秀で勤勉な保育士さんほど、職場にストレスを抱えているかもしれません...
【採用担当者向けコラム】人材紹介会社が保育士さんを紹介してくれないのはなぜ?原因と対策
人材紹介会社を利用したにもかかわらず「保育士さんを紹介してくれない」と悩みを抱える方はいませんか?採用活動がスムーズに進まないと人材不足が解消されず、運営に支障をきたすケースも。今回は人材紹介会社から...
転職フェア出展は意味がない?採用できない?保育士を集客するためのポイント
多くの保育士さんと出会い、自園の魅力を直接伝えられる「転職フェア」。人材確保のチャンスになる機会ですが、出展しても意味がないのでは、採用できないのではと不安を抱く方もいるでしょう。今回は、転職フェアで...
放課後等デイサービスの職員採用の方法は?求める人材に出会うコツ
保育・福祉業界では人材不足が深刻化しており、放課後等デイサービスについても採用に苦戦する施設があるでしょう。特に児童発達支援管理責任者(児発管)の不足は、全国的に大きな課題となっています。今回は、放課...
時短勤務とは?保育園が導入するメリット・デメリットや注意点
2009年度の育児・介護休業法によって制度化された「時短勤務」。正式には短時間勤務制度と呼ばれ、3歳に満たない子を療育する労働者を対象に多くの方が利用しています。今回は時短勤務の概要や対象者、導入状況...
学童保育の経営に必要な基礎知識!開業の流れや必要コスト、成功のポイント
学童保育の開業を考えている方は、開業の流れやランニングコストの目安を把握しておくことが大切です。学童保育を経営するうえで必要な基礎知識をチェックしていきましょう。今回は、学童保育の経営に関する内容や成...
【採用担当者向けコラム】保育士採用で合同説明会に出展するメリット。成功の秘訣
保育事業者にとって合同説明会への出展には、どのようなメリットがあるのでしょうか。採用の成功率をアップするために、出展を検討する採用担当者の方もいるかもしれません。今回は保育士さん向けの合同説明会の活用...
学童保育の採用に人材紹介サービスを利用するメリットと注意点。活用するポイント
学童保育の採用に人材紹介サービスを利用するべきかと悩む事業者の方はいませんか。「手数料が高いのでは?」「希望する人材の紹介が受けられるのか」と不安を抱くこともあるでしょう。今回は、学童保育の採用に人材...
【採用担当者向けコラム】退職代行を使われた時はどうする?保育園に連絡が来た時の対処法
職員から退職代行サービスを利用して退職の申し入れがあった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。連絡が来た時点で直接該当の職員とやり取りすることが難しいため、戸惑ってしまいますよね。今回は退職代行...
ジョハリの窓とは?4つの窓の内容や注意点、具体例をわかりやすく解説
「ジョハリの窓」という自己分析ツールはご存じですか。「開放」「秘密」「盲点」「未知」の4つの窓を用いて、自分や他者からの印象を認識していく手法です。今回は、ジョハリの窓の概要や企業内での導入時の注意点...
今、重要視される「学び直し」は保育士に必要?園側が取り組む具体例
社会人の学び直しが注目されている昨今、雇用側の環境整備が求められます。今回は、保育士の学び直しが必要なのか、園側の取り組みや具体例についてわかりやすく解説します。保育士がやりがいをもって働ける職場を作...
人的資本経営とは?保育園経営に活用するメリットや保育士育成のポイント
人的資本経営とは、企業の人材を「資本」と捉え、人材の価値を高めることで企業価値の向上を目指す経営手法です。近年注目されている経営手法のひとつで、さまざまな企業で導入されています。今回は、人的資本経営の...
学童保育を開業するために必要な資格・条件・補助金制度について徹底解説!
全国的に学童保育の拡充が求められている今、学童保育施設を開業するためには何が必要なのでしょうか。今回は学童保育の開業に必要な条件や手続き、補助金制度などを紹介します。学童保育の開業は主に自治体から業務...
- 同じカテゴリの記事一覧へ
「保育所等における安全計画」の作成手順
園ごとの安全計画は、各年度においてその年度がスタートする前に定めることが求められています。
具体的な安全計画のイメージについては、以下の「保育安全計画例」のフォーマットを参考に作成するのがよいでしょう。
出典:保育所等における安全計画の策定に関する留意事項等について/こども家庭庁より一部抜粋
児童の安全確保に関する取組の内容としては、訓練や点検の実施時期を整理し、必要な取り組みを安全計画に盛り込みます。必要な項目は以下のようになるでしょう。
(1)安全点検について
(2)児童・保護者への安全指導
(3)実践的な訓練や研修の実施
(4)再発防止の徹底
具体的な事故防止対策の作成にあたっては、「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン~施設・事業者向け~」 が参考になりそうです。
「保育所等における安全計画」の運用ポイント
ponta1414/stock.adobe.com
児童福祉法の新省令第6条の3第2項では、策定した安全計画について、「施設長など保育所等の運営を管理すべき立場にある者は、実際に児童に保育を提供する保育士等の職員に周知するとともに、研修や訓練を定期的に実施しなければならない」としています。
また、施設長や職員だけでなく、利用する児童の保護者に対し、安全教育の実施など家庭での取り組みを促すことで児童の安全に関する連携を図る必要についても触れています。
そのため保護者に対しては、施設での安全計画に基づく取り組みの内容を入園時などの機会に説明を行なうなどして周知することも、この義務化に含まれています。
施設長は、計画を策定した後の運用についても気を配り、計画を机上のものにしないようPDCAサイクルを回すことを心がける必要があるでしょう。
定期的に安全計画の見直しを行ない、必要に応じて安全計画の変更なども積極的に実施することで、初めてこの安全計画を活かすことにつながると言えます。
出典:保育所等における安全計画の策定に関する留意事項等について/こども家庭庁
「保育所等における安全計画」を策定して子どもの安全を守る
事故を未然に防ぎ子どもたちの安全を確保するためには、先を見越した安全計画が欠かせません。場当たり的な対応で保育士さん個人のスキルに頼っているだけでは、園としての対策がとれているとは言い難いでしょう。
保育士さんは「保育所等における安全計画」策定の義務化を機に、自身の勤務先の安全計画に改めて目を通してみる必要があるかもしれませんね。
保育士バンク!は、保育士さんの転職をサポートする保育士専門の求人サイトです。
保育の仕事は楽しいけど今の職場と合わない、もっと自分の理想の保育ができる職場に転職したい、そう考える保育士さんは、保育士バンク!にお声がけください。
保育士バンク!なら、専任アドバイザーがあなたの希望や条件を聞きながらスムーズな転職をお手伝いします。
今すぐの転職を考えていなくても、まずは話を聞いてみるだけでもOKです♪お気軽にお問い合わせください。
お問合せ&資料ダウンロード
採用課題・経営課題に関する個別ご相談、お問合せはこちらからお願い致します。