保育士の役割が近年高まっている中、「保育士としてスキルアップして、より専門性の高い保育を実践したい」と考える保育士さんも多いのではないでしょうか。このコラムでは保育士が伸ばすべきスキルの中身、専門の資格や研修を紹介しながら保育士のスキルアップとは何なのか考えてみたいと思います。
保育士のスキルアップとは?~保育士の専門性を考える~
保育士のスキルアップを考える際に考えなくてはならないのが、「保育士の専門性とは何か?」「保育士に求められるスキルは何なのか?」ということ。ここでは、保育士に必要な専門分野について考えてみます。
保育の専門知識
まず第一に頭に浮かぶのが保育の専門知識でしょう。子どもの発達や栄養、心理や病気など学校で習った知識や保育士試験の科目で学んだような知識です。もちろん、すでに学んだ知識だけでは十分とは言えません。近年では、認知件数が増えている虐待への対応や、以前よりも需要が高まっている乳児保育の分野で、社会の変化に合わせて保育士に求められる役割が増えています。自身の知識を見直し、時代に合わせて学び続けることで専門性を高めることができます。
保育実技
保育実技も保育士の専門性の一つです。手遊びやお絵かき、読み聞かせにピアノ、保育士が学んで日々の保育に活かせることはさまざま。人より一つ多く身に着けていることで、クラスの全体保育や自由保育の際にできる保育の幅は広がりますよ。
医療・心理学分野の知識・技能
保育士が身に着けたいスキルの一つが医療や心理学系の知識や技能です。病児保育だけでなく、日々の保育の中でも子どもが病気にかかったり、けがをしたりすることはけして少なくありません。看護師ではないため原則的に医療行為はできないものの、こうした際に、園に1人でも医療の知識を持ち、適切な対応ができる保育士がいると安心です。
また、子どもの心のケアという面でも、虐待による心理的なダメージやストレスをケアできる保育士としてのスキルがあるとより幅広い子どもの対応ができるようになりますよ。
保育上での安全・防災
防災や安全管理も保育所で求められる専門性でしょう。大人ではけがをしない場所であっても、身体機能が未発達で人生経験の少ない子どもにとっては危険が潜んでいることも。子どもの命を預かる場所として、保育士に保育中の安全・安心を実現することは必要不可欠です。
また、地震などの災害時にも保育所の役割は大きいです。仕事中の保護者が迎えに来るまで、災害時の子どもの安全を守るのは保育所の役割。また、災害時は子どもたちが過重なストレスを抱えやすいもの。子どもが災害時も安心して過ごせる環境を作ることも保育士の専門性といえるでしょう。
マネジメント
保育士には近年マネジメントの分野も必要な知識となっています。「私は主任や園長にはならないから必要ないかな」と思っていないでしょうか。園長や主任を目指している方以外でも、園の運営の改善方法や現場のトラブルの適切な対処法など、経営に関わらない分野でも学びは多いもの。
マネジメントは、複数の職員がチームで仕事をする上では欠かせない考え方です。円滑な施設運営のために、マネジメント分野の知識を持った保育士がいると新たな視点から改善のための糸口を見いだせるかもしれません。
日常の知識
また、日常生活のさまざまな知識も保育士にとっては立派なスキルです。子どもは、年少さん以上になると会話の中でさまざまな疑問が芽生えてきます。「なんで空は青いの?」「この花のなまえは?」などなど。こうした一つひとつの疑問に耳を傾け、子どもの興味関心を引き出してあげるためにも、さまざまな分野の知識を持っている必要があります。
わらべうたや昔ながらの遊び、自然や四季、伝統行事など、知っていると子どもに教えられることが多くあります。また、子どもの中で今どういうものが流行っているのか、についても頭にいれておくとよいでしょう。
保育士におすすめの資格・研修
以上に見てきたように保育士にはさまざまな専門資格が必要になることがわかります。同時に、具体的なテーマのある研修や資格の取得を目指す中でスキルアップを目指すこともできます。ここでは、保育士に必要なスキルを取得するためにおすすめの資格や研修を紹介します。
運営法人・行政が実施する研修
運営法人が実施する研修の活用
自身の勤務先が実施する研修を利用するのがスキルアップのための一つの手段です。園内研修はもちろん、園外での外部研修を取り入れている法人もあります。こうした機会を利用して、自身のスキルアップを目指すとともに、園内で共有して園全体の保育向上に役立てられるといいですね。
新役職のためのキャリアアップ研修
自治体が実施するキャリアアップ研修も保育の専門知識を身に着けるための研修の一つです。研修の内容も、近年需要が高まっている乳児保育や障害児保育などの8分野から受講する科目を選択することができます。副主任保育士を目指す方向けにはマネジメント分野の研修が必須です。社会の変化に合わせた需要の高い分野の知識を得られるとともに、新役職に就くことで給与アップも目指せますよ。
昔からある保育の専門分野
モンテッソーリ教育
モンテッソーリ教育は、マリア・モンテッソーリが開発した教育方法の一つ。子どもの自主性を重視したり、子どもの感覚に対して敏感な時期の特別な訓練をすることで有名な教育法の一つです。日本では一部の法人でこのモンテッソーリ教育を導入している園があります。養成講座を開講している養成校で資格を取得することができ、資格取得には1年以上という長い期間がかかります。
リトミック
リトミックは音楽に合わせて歌ったり、体を動かすリズム遊びをすることで、子どものリズム感の発達や、5感の発達を促す保育方法の一つです。民間、社会福祉法人、NPOを問わず、さまざまな団体が研修を設けています。こうした研修は一つ受けるだけでも、園での保育に取り入れやすいものが多く、気軽に受けられるものになっています。
保育士としての得意分野を作りたいならこんな資格も
保育士のための英語検定
日本でも英語教育やインターナショナルスクールの需要が高まっていることを受けて、保育士のための英語検定が始まっています。これは、乳幼児の保育に必要な英語、子ども言葉や保護者とのコミュニケーションの中心となる幼児教育や保育に重点を置いた英語が多く出題される傾向にあり、英語を活かして働きたい保育士さん向けの資格となっています。
チャイルドマインダー資格
チャイルドマインダーはイギリスを中心に発展してきた家庭的保育を専門にする保育者のための資格のことです。ベビーシッターや家庭的保育、小規模保育が日本でも増えてきたこともあり注目されている資格の一つです。通学や通信教育で学ぶことができる資格で、少人数の子どもに対する質の高い保育の実践を学ぶことができる資格です。
絵本専門士
絵本に対する高い知識や感性を身に着けたとされる方が取得できる資格です。合計で約50時間の講座の受講と修了課題を通して、絵本に対する知識、技能、感性を深めていきます。読み聞かせのより高い実践や、子どもの健やかな成長のために適切な絵本選びができるような知識を身に着けることができる資格です。
保育関連団体の設置する資格
保育ソーシャルワーカー
保育や子育てにおいて特別な支援が必要な子どもや保護者の対応について専門的な知識を身に着けていると認定された人が取得できるのが保育ソーシャルワーカー資格です。日本保育ソーシャルワーク学会という学会が設置しています。
ソーシャルワーカーという名称からもわかるように、相談支援などを通して子育てに悩みを抱える保護者にも対応できるような専門性の獲得を目指します。保育士資格を持っている方は、研修の修了などの条件を満たすことで資格を取得することができます。
おもちゃコンサルタント
おもちゃコンサルタントは、おもちゃを通した遊びの専門性を学ぶことのできる資格講座です。通信講座と通学を選ぶことができます。おもちゃの歴史やおもちゃ遊びの実践方法など、おもちゃと遊びに関わるさまざまな知識を身に着けることができます。保育の中でも重要な道具となるおもちゃに関する専門的な知識を身に着けることで保育士としての幅を広げることができますよ。
保育カウンセラー
保育カウンセラー資格は、保育に関するカウンセリング技術の知識と技能を習得した方が取得できる資格で、課題図書を通して知識を吸収し、また研修を通して実践的なカウンセリングの技術を学びます。保育にも求められる受容的な関わりやカウンセリングの方法を学ぶことのできる資格となっています。
その他の専門知識・資格
防災士
保育園の防災分野に貢献できる資格が防災士です。この資格は研修、筆記試験、救命救急の実技講習を通して取得する資格で、防災分野の知識を身に着けることで職場や地域での防災への備えの向上を目指しています。地震などの自然災害が多い日本においては、保育園でも防災意識の向上が求められています。保育とは直接関係のない分野ですが、こうした資格取得を通して保育士としてスキルアップを目指すことができるのではないでしょうか。
PCスキル
ワードやエクセルなどの資料作成のために基本ソフトに関する知識は、日々の保育業務の効率化に大変役立つスキルです。保育士の事務作業もパソコンやタブレットなどの情報機器による作成が進んでおり、こうした基本的なPCスキルを身に着けることで日々の事務作業効率を高めることができるでしょう。また、園長や主任へのキャリアアップを考えている保育士さんにとっては、シフト作成や労務管理はパソコン作業が多いため、PCスキルは必須となっています。
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