国や自治体などで設定された保育士の配置基準は、保育の質を維持するために必要な大人の人数が規定されています。人手不足から配置基準を満たすのが大変と悩む保育施設も多いようですが、もし違反した場合にはどのような処分が下されるのでしょうか。このコラムでは、保育士の配置基準の概要や違反した場合のペナルティー、基準を満たすための対策について詳しく紹介します。
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目次
保育士の配置基準に違反するとどうなる?
子どもたちの安全な環境を整備するために「保育士の配置基準」。
「〇歳児の子ども3名には保育士1名」といった、子どもの人数に対して必要な保育士の人数を示したものです。
保育の質を担保するためにも、きちんと規定を満たすことは重要でしょう。
規定を満たしていない場合は、保育の質の低下を招く恐れがあり、改善勧告や業務停止命令の処分となる可能性があります。
しかし、ぎりぎりの職員数で運営している場合は、条件を満たすことが難しいと感じる施設もあるかもしれません。
どのようなペナルティーがあるのかしっかり把握したうえで、人材配置の見直しや人員確保の重要性について考えていきましょう。
まずは、国や自治体の保育士の配置基準について詳しく紹介します。
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国と自治体の保育士の配置基準
国の基準
認可保育園と認可外保育園の基準について紹介します。
認可保育園
厚生労働省の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第三十三条」によると、国の基準は以下の通りです。
子どもが低年齢の場合は食事や排泄など援助する保育活動が多いことから、職員の必要人数も多く設定しています。
また、この他に原則として保育士の人数は最低2名以上配置、保育士有資格者のみの従事が義務づけられています。
認可外保育園
認可外保育園については、保育の時間数に応じて保育士の配置基準が設けられています。
保育時間が11時間以内の場合は、認可保育園同様、0歳児3名に対し保育士1名などの規定があります。
保育時間が11時間を超える時間帯については、現在保育されている園児が1人のケースを除き、常時2人以上の職員の配置が必要です。
その際、園全体の保育者の1/3以上が保育士または看護師を配置することが定められています。
自治体の基準
基本的には国の配置基準が適用されていますが、地域の状況により、自治体独自の基準を設けることも可能です。
例えば、横浜市では1歳児の保育活動を行う場合に、子どもの人数4名に対して1名の保育士を配置することを義務づけています。
このように国の規定よりも厳しい基準を設けている地域もあるため、どのような規定が定められているのか自治体に確認するとよいでしょう。
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【施設別】保育士の配置基準に違反した場合
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保育士の配置基準に違反していないか確認を行うためには、国からの立ち入り調査として指導監査が行われています。
違反が発覚した場合にはどのようなペナルティーが課せられるのか詳しく紹介します。
認可保育園
認可保育園は、そもそも国の認可を受けるための配置基準を満たしている必要があります。
違反が発覚した場合は改善勧告や改善命令などの処分となり、基準を満たすための指導が入るでしょう。
改善されない場合は業務停止命令、認可の取り消しが行われる場合もあるため、注意が必要です。
認可外保育園
認可外保育園で保育士の配置基準を満たしていない場合は、認可保育園同様、改善勧告や改善命令などの処分が下されるようです。
改善勧告を受けた場合、おおむね1カ月以内に改善しなければ、業務停止命令や施設閉鎖命令を行う可能性もあるため、法令を厳守する必要があります。
保育士の配置基準を違反しないための対策
保育士の配置基準が違反にならないための対策を紹介します。
ICTシステムの導入
多くの職員を雇用している園では多様なシフトパターンを管理しており、配置基準通りに人材配置がきちんと行われているのか、不安になるケースもあるかもしれません。
法律を厳守するためにも、職員の労務管理や園児情報の管理などができるICTシステムの導入を検討してみるとよいでしょう。
ICTシステムはタブレットやパソコンを使って職員のシフト作成や給与計算、有給申請などさまざまな事務作業を行うことができます。
配置基準に基づいたルールを設定すれば、規定が満たされていない場合も画面上で通知する機能が備わっているものもあるようです。
ICTシステムを導入して、シフト作成の段階で法律違反とならないように注意していきましょう。
多様な雇用形態を取り入れる
保育施設の中には、「正社員しか雇わない」、「原則8時間勤務が可能な保育士だけ雇いたい」など雇用形態の考え方について違いがあるでしょう。
保育士が不足している今、配置基準を満たすためには、今までの考え方では運営が難しいと悩む経営者の方もいるかもしれません。
「早朝や夕方のみのパートの募集」、「土日のみの短時間勤務パート」などさまざまな条件のもとで雇用を促進することも考えてみましょう。
ぎりぎりの人数で運営していると、職員が一人でも欠けた場合に配置基準を満たせない事態に陥る可能性があります。
職員が急に休む場合も、派遣会社などを利用して代わりの保育士さんをすぐに用意できるように、体制を整えることが大切です。
職員の環境整備
保育士は「仕事量と賃金が見合わない」、「過度な業務量で気力・体力が続かない」などの理由から、離職してしまう方も少なくありません。
職場環境に不満を感じ、現場を離れてしまう方が多いと人手不足となり、配置基準を満たしていない状況に陥る可能性もあるでしょう。
職員が働き方に満足できるよう、業務内容の見直しや残業時間の短縮などに取り組むことは大切です。
また、国からの指導監査は配置基準違反を取り締まるだけでなく、職員の労務環境が適切なのか詳しく調査が行われるケースもあります。
労働状況をきちんと把握し、働きやすい環境を整備していきましょう。
採用活動の強化
保育士の配置基準を満たすためにも、人員の補充は必要です。人材の確保に向けて、採用活動を強化することは重要でしょう。
職員を募集する際は、ハローワークや求人サイト、情報誌など多様な媒体を利用して応募の増加を目指すとよいかもしれません。
近年では採用活動の中で、保育士派遣や人材紹介会社を活用する施設も増えています。
急に職員が不足した場合もすぐに条件に見合った人員を紹介してもらえるケースもあり、活用しやすいかもしれません。
地域の保育士さん向けに転職相談会などを実施している企業もあることから、費用面の相談もかねて問い合わせてみるとよいでしょう。
出典:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第(三十三条)/厚生労働省
出典:認可外保育施設に対する指導監督の実施についてp18~19/厚生労働省
保育士の配置基準違反対策を立て採用活動を強化しよう
保育士の配置基準違反が発覚し、改善が見られない場合は、業務停止命令や施設閉鎖命令などの重い処分が下される可能性があります。
国の配置基準はもちろん、自治体による規定の有無などを把握したうえで、違反とならないように雇用形態の見直しやICTシステムの導入などを考え、対策を立てていくことが大切です。
定められた規定を満たすことができるように、人材の確保に向けて採用活動についても強化していきましょう。
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