保育所保育指針・幼稚園教育要領に示されている「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」。今回は、その10の姿の一つ「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」とは何か、保育の実践事例とともに子どもの育ちにつなげるポイントをまとめました。子どもたちは遊びを通し、どのように数や文字への興味を深めていくのでしょうか。
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10の姿の一つ「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」とは
こども家庭庁・厚生労働省「保育所保育指針解説」では、「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」について以下のように示されています。
遊びや生活の中で、数量や図形、標識や文字などに親しむ体験を重ねたり、標識や文字の役割に気付いたりし、自らの必要感に基づきこれらを活用し、興味や関心、感覚をもつようになる。
出典:保育所保育指針解説/こども家庭庁より抜粋
絵本の中に登場する文字や数字、道路標識、友だちとの遊びの中でであう「二人で」「3つまで」という数の感覚など、子どもたちの生活の中には、さまざまな文字や図形、数、標識などが存在するでしょう。
保育者は子どもたちが遊びの中で文字や図形などに関心を持てるよう工夫して、働きかけることが大切と言えます。
【年齢別】「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」を保育で実践した具体例
10の姿の一つ「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」を育む実践事例をもとに、子どもの育ちや保育士さんの援助のあり方を考えてみましょう。
2歳児
<活動内容:ブロック遊び>
子どもにとっては、身近なおもちゃで遊ぶことも数量や図形への関心の一歩となるかもしれません。
実践事例をもとに、子どもの姿をみていきましょう。
身のまわりにある図形への親しみや興味は、低年齢から始まるということがわかる事例です。
子どもが持つ視点やその子自身の興味に寄り添っていくことが大切といえそうですね。
3歳児
<活動内容:かるた遊び>
3歳児クラスのできごとです。
最近、子どもたちはひらがなに興味を持ち、絵本や掲示物の中に読めるひらがながあると、指をさして「あ、い、う……」などと声に出して楽しんでいます。
子どもたちにとって親しみの深い「名前」という題材を使った実践事例です。
それまで関心が薄かった子どもも、楽しそうな友だちの姿をみて「ひらがなを読めるようになりたい」と感じるかもしれません。
4歳児
<活動内容:給食の配膳>
4歳児クラスに進級し、子どもたちは当番制で給食の配膳を行なうことになりました。
汁物など熱いものは保育士さんが取り分けますが、主菜や果物などは当番の子どもたちが取り分けていきます。
この実践事例のような身近な体験は、実感を持って数量を理解することにつながるでしょう。
また、数字などを生活に役立てることは、適切な感覚や関心を育むのにとても大切といえそうですね。
5歳児
<活動内容:乗り物ごっこ>
5歳児クラスには、乗り物が好きな子どもたちが何人かいます。
最近は乗り物だけでなく、信号機や踏切にも興味があるようで、ごっこ遊びをする時には、交通ルールを教えるおまわりさん役も登場するほどです。
保育士さんはこの様子を見て、乗り物ごっこを提案しました。
遊びながら交通ルールを学べるようにした事例です。
標識に持つ意味にふれるとともに、その役割を大切に感じられるような語りかけをしていけるとよいかもしれません。
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「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」の観点を意識するポイント
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10の姿「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」の観点から、保育をするうえで意識したいポイントをまとめました。
数量の変化や図形を楽しめるような遊びを展開する
積み木や穴落とし、水遊びなどを通して、数量の変化や図形に関心を持てるよう遊びのなかで取り入れていけるとよいでしょう。
そのような活動では、「子どもが今なにを面白がっているのか」をしっかりと観察し、子どもの関心に寄り添った言葉掛けをしていくとよいですね。
子どもの発達に合わせて、関心を持てる工夫をする
数字や文字を覚えるためには、机に向かってプリント問題を繰り返し解くような学習方法を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、幼児期に大切なことは、「遊びや生活の中から数字や文字に関心を持つこと」ではないでしょうか。
子どもがどんなことに興味を持っているのか、どこまでを理解しているのかを保育士さんがしっかりと読み取り、子どもが楽しく関心を持てるような数字や文字との出会いを作っていけるとよいですね。
子どもの気づきや試行錯誤を見守り、言葉にして伝えていく
保育園での生活の中には、数量や図形標識、文字などにふれる機会がたくさんあるでしょう。
たとえば、じょうろを運んでいて、「水を汲んで花壇まで持ってきたときよりも、水を撒いて持って帰ってきたときのほうがじょうろが軽い」というような気づきです。
保育士さんは子ども自身の発見や考えの深まりを見守りながら、適切なタイミングで言葉で代弁していくことが大切になるかもしれません。
遊びの工夫が「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」につながる
今回は、10の姿の一つ「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」とは何か、保育の実践事例とともに子どもの育ちを見つけるポイントをまとめました。
事例で紹介したような、給食の配膳や乗り物ごっこを通し、子どもたちは数の関係性や標識の意味について関心を持つようです。
「関心を持つ」という段階がなければ、小学生になってから算数や国語の問題を解くのも苦痛になってしまうでしょう。
数や文字に対する子どもたちの疑問を引き出し、実際の体験を通して「こういうことか!」という気づきの機会を作っていけるとよいですね。
事例を参考に、10の姿の一つ「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」とは何かについて理解を深め、保育に活かしていきましょう。
保育所保育指針の重要ポイントとも言える「10の姿」について、それぞれの視点とエピソードを解説しています。
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