内田伸子先生インタビュー【後編】保育者の声かけは最小限!「主体的な保育」のためにできること

    「保育者主導の一斉保育」から、「子ども主体の保育」へと転換しつつあるいま、援助者として保育者はどうあるべきなのか。今回は、発達心理学を専門とする内田伸子先生にインタビュー。前編では保育の神様と呼ばれる恩師・堀合先生が体現されていた「5つの援助水準」について、具体的なエピソードを交えて語っていただきました。後編では、「主体的な保育」の実現に向けて求められる保育者の役割やいま伝えたいメッセージをお届けします。


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    保育計画のPDCAの循環がもたらす保育の質向上の手がかり

     

    前回のインタビューでは、保育者は子どもの心の動きをよく見守り、子どもが困っているところに足場をかけることが大切であるとおっしゃられていました。そうしたかかわりを心がけるうえで、大切なことはありますか?

     

    子どもの様子をもとに保育記録を取りながら、PDCAサイクルを回すということがすごく重要だと思いますね。

     

    2017年の保育所保育指針・幼稚園教育要領などの改訂でも、「子どもの発達過程や生活の状況に合わせて、全体的な計画に基づき、環境を構成し、援助や言葉がけを工夫する」という主旨の内容が追加されたように、保育計画を通してPDCAサイクルを循環させていくことが、保育の質の向上には不可欠になると考えているんです。

     

    ーそもそもどうして保育の質向上を図るうえで、PDCAサイクルが重要視されるようになったのでしょうか。

     

    2017年の保育指針などの改訂に伴い、「学びの質の向上」が重要課題として設定されるようになりました。なかでもアクティブラーニング、すなわち主体的・対話的で深い学びが重要視されています。

     

    実はこのアクティブラーニングは、「子ども主体の保育」が遊びのなかですでに実践していることなんですよ。

     

    前編の「数の分解と合成」のエピソードにもあったように、子どもたちは遊びを通じて論理的思考力を育んでいるのです。

     

    ただ、遊びのなかで子どもたちの思考力を育むには、保育者が適切なタイミングで適切な援助をする必要があります。

     

    そこで手がかりとなるのが「発達の最近接領域」へのアプローチなんですね。

     

    ー内田先生が影響を受けたヴィゴツキーの提唱した理論ですね。


    発達の最近接領域にかかわるスライド

    オンライン取材時のスライド「発達の最近接領域(Zone of Proximal Development)/Ⅲ.乳幼児の発達に応じた保育内容」より

     

    子どもが自分一人の能力でできる水準と、適切な援助を与えられてできるようになる水準には一定の間隔があります。

     

    そこに広がっている範囲を「発達の最近接領域」と定義して、この領域に適切にアプローチすることで子どもの力が伸びていくという考え方になります。

     

    では保育者はこの発達の最近接領域をどのように見積もるか?

     

    3つの手がかりがあるとヴィゴツキーは語っています。

     

    ①保育者の保育経験

    これまで接してきた子どもたちの様子や、声かけに対する反応から類推することができます。


    ②子どもが模倣できるか

    年上の子どもなどの様子を見て憧れを持ち、「やってみたい!」と言う姿があるでしょう。

    このような姿を予想して、すぐに遊べるよう環境を準備しておくことが大切になります。


    ③子どもの生活歴

    兄弟構成や家族関係などをもとに、子どもの性格や行動特性を予想できると言えます。

    そのためには、子どもの各家庭の状況を職員で共有しておく必要があるでしょう。

     

    これらの手がかりを踏まえて、子どもの発達水準を見極めることが保育者には求められます。

     

    そしてPDCAの循環は、そうした育ちを汲み取るにはもちろん、形成評価を通して保育者自身が援助を振り返ることも大切になるでしょう。

     

    注)PDCAサイクル…計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)のサイクルを繰り返し、業務などの改善を図る手法。




    PDCAサイクルのイメージ写真

    MonsterZtudio/shutterstock.com

     

    ー子どもの育ちを汲み取ることや、より援助の手立てを最適化させるうえで、PDCAサイクルの循環が大切になるのですね。保育計画のPDCAを循環させるにあたって、どんなことが必要になるのでしょうか。

     

    まず計画段階では、ミッション(子どもが何をするかという活動項目)とビジョン(5領域や10の姿といった育ちの方向性)を持って環境を準備することが必要になります。

     

    そして実行するうえで、保育計画にとらわれすぎないこと。活動する時期も期間もゆるやかに設定し、一人ひとりの興味や発達水準に合わせて、1年かけて体験していけたらよいですね。

     

    指導案で最も大切なことは、子どもが主体的に活動できるようにすることなのです。

     

    ー計画と実践は柔軟に行うことを念頭に置きたいですね。PDCAのうち、評価(Check)・改善(Act)のうえではどういったことが大切になりますか。

     

    ドキュメンテーションなどを活用して保育記録を取って、その日の保育を振り返り、明日以降の保育の質の向上に活かしてほしいです。

     

    そして、子どもの遊びや学びの過程を記したポートフォリオを残したり、5領域の数値をグラフに表したレーダーチャートを作ったり。
    例としてニュージーランドでは、写真や動画を活用して、子どもの行動・言葉・表情など事実に基づいて考察した保育記録を残し、カンファレンスを行っています。

     

    もしそういったカンファレンス(会議)を行うのであれば、担任だけでなく、他のクラスの保育者、園長、栄養士さんなど、他の職員にも参加してもらうとよいですね。
    そうすれば、園全体で成長を見通しながら子どもを育てていくことにつながっていくでしょう。

     

    このような感じで、保育に対する形成評価を行うことが大切になります。

    子どもの育ちを見極める。”脇役”として見守る保育士の存在意義

    子どもの写真

    beeboys/shutterstock.com

     

    ー保育者が自分の実践を振り返り、子ども主体の保育につなげるためにも保育計画・保育記録は重要になるんですね。

     

    子ども中心(=子どもが主人公)の保育を実現するためには、保育者は脇役でありながら、教育的な役割を果たす必要があります。

     

    それは、保育計画や記録から導き出したエビデンスに基づき、子ども一人ひとりの発達過程や状況を踏まえながら、保育環境を設定し、言葉がけや援助の仕方を工夫する必要があるということです。

     

    ”脇役”という位置づけであるとはいえ、その中で”教育者”としての役割も果たす必要がありますからね。

     

    ー子どもの遊びや興味に寄り添いながら、教育的なアプローチを求められる保育士さんですが、内田先生が考える保育者の存在意義や求められることについて教えていただけますか?

     

    保育者は”脇役”でありつつも、子どもが充実して園生活を送れるように支える役割があります。ただ子どものそばについて脇役に徹するだけでは意味がないんです。

     

    子どもが遊びに熱中できるように材料や環境を整え、子どもを肯定的に励まします。

     

    そして、子どもの状況に合わせて保育者が実際に手を貸したり、行動のモデルを示したり言葉がけをしたりして遊びを立て直さなくてはなりません。

     

    つまり、子どもが熱中して活動に取り組んでいるかどうか、前よりも進歩したかどうかを適宜見極めるのが、保育者の仕事であり、重要な役目だと思いますね。

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    保育士の仕事は「明日の文化や社会を作る人」

    ー最後に、現役保育士さんに伝えたいメッセージをお願いします。


    内田伸子先生オンライン取材時の様子

    オンライン取材の様子

     

    保育というのは、それぞれ違った個性を持つ子どもを育てるクリエイティブな仕事です。決してロボット工場なんかではない。「愛」と「創造」がたくさん詰まっています。だから、子ども一人ひとりは、特別なオンリーワン。みんな違ってみんないいんです。

     

    それに子どもたちは、将来の社会や文化を担ってくれる存在であるわけですから、大人がどれだけ手をかけてもかけすぎることはない。保育というのは、未来を作る大変意義のある仕事です。

     

    だから保育士さん・幼稚園教諭さんたちは、子どもそれぞれ主体性や好奇心、多様性に寄り添える保育を目指してほしいと思います。

     

    【後編・終】

     

    <取材・執筆・撮影>保育士バンク!編集部

     

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