保育の研修やコンサートではおなじみ!シンガーソングライターの新沢としひこさん。
「子どもも大人も楽しい音楽」は、どんな思いで作られているのか?たくさんの保育園を訪ねる中で、心に残っている園はどんなところ?を聞いてみました。
―新沢さんの音楽といえば、大人から子どもまで楽しめるのが特徴ですね。どんな思いで曲を作っているのでしょうか?
僕は、子ども向けの歌ではなく、「子どもから楽しめる歌」を心がけています。
ふつう、童謡などの子ども向けの歌って、例えば「かわいいうさぎさん」とか、「おひさまがにこにこ」っていうような感じですけど、子どもは楽しいかもしれないけれど、大人はあまり鑑賞したり歌ったりしませんよね?
だから、年齢関係なく心に響いて、大人も子どもも楽しんで歌えるような、普遍的な歌をつくっていきたい、という思いがあったんです。
「子どもにはまだ早すぎる」とか「大人っぽすぎるんじゃない?」なんて声もあったんですが、保育園に通う年齢の子どもにだって、単純な歌では表現できない複雑な気持ちがあったりしますし、美しいメロディを感じたり、ビートを楽しめる力もあります。そんな思いで作ってきた僕の歌は、保育者の口コミなどで、現場で、子どもや保育者たちが受け入れて、広がってくれたんですね。
―新沢さんは学生時代から長く保育界に携わっておられるとお聞きしました。この数十年で、保育をめぐる状況で変わった点はどのあたりなのでしょうか?
学生時代にアルバイトの歌の伴奏などから入り、保育補助なども経て、30年近く保育の周辺に関わってきました。
この間を見てきて思うのは、今は、親のクレームの対応が大変になったり、保育者にかかるプレッシャーが昔の比ではなくなったということ。例えば、子どもの健康な成長のためには、ちょっとしたケガやケンカ、噛んだり噛まれたり……こうしたことは、むしろ必要なものと思うんですが、いまはほんのかすり傷でも、厳しい説明責任を問われる時代になって、保育園がビクビクしてるところがあるのではないでしょうか。子育てや子どもの環境は、もっとおおらかになってほしいと願います。
―逆に、保育者側の変化というのはあるのでしょうか?
ひとつ言えるとすれば、保育者としての身体感覚は、もしかすると昔の人よりも衰えているかもしれませんね。
例えば、よい保育者というのは、子どもと手をつないだり、抱っこした時に、その子の様子を感じ取ることができると思うのです。この子が拒否しているのか?甘えているのか?誰かを求めているのか?子どもの気持ちは、抱っこや握手一つとっても、さまざまに現れますよね?スキンシップや日常の感覚を通して、子どもを感じ取ることができるんです。
例えば、「ん?いつも『先生なんとかして!』と言ってくる子どもが、今日は言ってこないぞ」というような気付きってあるじゃないですか。こうした日常の中での気づきに、保育者自身が気付けるかどうか、が大切だと思うんです。常にそういうアンテナを立てられる保育者って、素敵だなぁ、と思います。
―研修やコンサートで、数多くの園を見てこられた新沢さんが、行ってみて「いい園だなぁ」と思うポイントはどこでしょうか?
なんといっても、それは働いている人の顔にあらわれますよね。
仕事(保育)の中で自己実現をしている充足感のある顔と、逆にやらされ感のある顔では、まったく保育者の表情が異なりますね。キラキラしているというか。だから、いってみて、あ、いいなと思うところは、玄関からもう雰囲気が違いますね。
―実際に園に行った際、新沢さんはどんなところを見ているのでしょうか?
僕がお邪魔するときは、園にとってはちょっとしたイベントになることが多いので、子どもがピシっと座ってる……なんてことも多いわけです。園長さんがちょっとした「うるさ型」だと、お客さんの前で、特にきちんとさせたがるわけね(笑)
でも僕は、そういうの何だか嫌だなぁ、と思って、子どもたちに「今日は思いっきり、ほぐれて楽しんでいいんだよ~」なんて言ってみるんですけど、そうすると収拾がつかなくなっちゃうんですよ。普段、無理やり押さえつけられてる子どもは、自由にしていいよ、という時にはかえって歯止めがきかなくなっちゃう。そういう園は、保育者がいかにも「先生」という感じで、上下関係みたいな、大人から子どもに命令している感じが強かったりします。
逆に別のある園では、特に保育者がガミガミ指導するわけでもないんだけど、歌い始めると自然と静かにシーンと耳をすましてくれてね。見方・聞き方が分かっているんですよね。だから、「手はおひざ!」「静かになさい!」とか大人がいくら口で言っても、仕方ないのかなーなんて思うんですよね。
―昨今、保育者の待遇や、働き方、社会的な評価についての議論が進んでいます。
素晴らしい保育者なのに、待遇とか、保育以外の問題で職場を離れないといけないというのは、すっごく寂しいことですよね。保育自体がもっと社会に認められるように、僕も啓蒙活動をがんばっていきたいと思います。
大人たちは、「きちんと話がきける」みたいな子どもがいい子だってなるけど、でも本当は子どもはたくさん遊ぶことによって、いろんなことを学ぶわけです。
それを支えているのが、専門職たる保育士さん。世間からは「子どもと遊んでいるだけでしょう」とか「保育って子守でしょう」というイメージが未だにあるかもしれません。
でも、いかに子どもにとって遊びが大切か。だから僕は、保育士さんには、自信をもって、誇りをもって、遊んでちょうだい!って思っています。
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プロフィール
新沢としひこ(しんざわとしひこ)
1963年生まれ、東京都出身。
元保育者でシンガーソングライター。子どもや家庭、保育者で楽しめる歌を発表し続けている。
保育士養成校などで教員も務める。
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