保育士不足、待機児童解消の施策として、処遇改善や働き方の見直しが行なわれています。保育士さんの離職率には影響があるでしょうか?今回は、保育士さんの離職率と離職理由について見ていきながら、保育士さんの離職防止のために国が行なっている施策、また保育士1年目の離職率とその対策にも迫ります。
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保育士の離職率からわかること
保育士の離職率は、現状どれくらいなのでしょうか。
厚生労働省の調査報告書「保育士の現状と主な取組」における、令和2年に更新されたデータでは、保育士全体の離職率は「9.3%」 となっています。
前回の同調査報告である、平成27年版での保育士全体の離職率が「10.3%」となっていたことと照らし合わせると、この間に1%の減少があったことが分かります。
約40万7千人の常勤保育士の統計では、年間で約3万7千人が離職しています。
また、離職率の内訳をみると、公立保育所の離職率「8.5%」に対して、私立保育所の離職率は「10.7%」となっており、同じ保育施設でも公立と私立で離職率に差が見られます。
この数字も、前回報告である平成27年度版と比べると、公立・私立ともに約1%ずつの減少がみられるものの、私立園の離職率が高いことに変化はありません。
雇用条件が比較的安定している公立園に比べ、私立園の場合は施設によって待遇に差があることなどが、離職率が高くなる原因の一つと推測されます。
また、全国保育協議会による「新卒保育士」に限定した調査(2009年)によると、卒業後に勤務した施設を1年未満で離職する割合は4人に1人 と高く、さらに3年後には約半数が離職してしまう、といったデータもあります。
離職の原因トップ3!その傾向と対策
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保育士の離職理由では、どのようなものが多いのでしょうか。
結婚や、妊娠・出産といったプライベートな理由を除いた、トップ3をご紹介します。
給料が安い
多くの方が離職理由としてあげるのが「給料の安さ」。
保育士の平均年収は約320万円前後と言われており、全職種の平均年収よりも、約100万円近く低い数字となっています。
社会問題としても大きく扱われたこともあり、保育士の給与を改善するための施策として2013年から補助金制度「処遇改善加算」が適用されたことで、保育士さんの年収の底上げは、ゆるやかながらも実現しています。
とはいえ、現役保育士からの意見としては「それでも賃金が業務量に見合わない」という声が多いのが実情のようです。
仕事量が多い
給与面の問題とも併せて退職理由の上位に入っているのが「業務量の多さ」です。
平成27年度版の厚生労働省の調査報告書「保育士等における現状」によると、特に負担となっている業務として「会議・記録・報告」があげられており、実際に「指導計画」「クラス便り」「保育記録」といった事務作業があげられました。
これらが慢性的な持ち帰り残業になってしまっているという声が聞かれることからも、保育以外の業務の多さと作業時間確保の問題が、保育士さんの離職原因となっていると言えます。
これらを解消すべく、保育施設におけるICT化の推進が、厚生労働省と2023年に発足したこども家庭庁の双方で行なわれています。
保育士の業務負担を軽減するため、保育に関する計画・記録や保護者との連絡、子どもの登降園管理といった業務をICT化するためのシステムの導入費用の支援や、保育士さんの業務を補助する「保育補助者」を雇用するための賃金補助支援などが、対策として打ち出されています。
職場の人間関係
3つ目の退職理由は、「職場の人間関係」です。
保育施設は、小規模な体制で業務を実施することが多い状況や、子どもの安全や健康、発達などを見守るためには、職員間の情報共有や協力体制が不可欠です。
職種の特性上「黙々と自分の業務だけやっていればいい」という仕事ではないため、職員同士の人間関係が、職場環境や仕事の達成に大きく影響するのです。
そのため、人間関係が悪化すると、保育士を続けたくても離職せざるを得ない、といった声もあります。
さらに、職場の人間関係のみならず、「モンスターペアレント」と呼ばれる、保護者からの理不尽なクレームに対応しなければならない場面もあり、保育の現場特有の人間関係に疲弊した結果、離職へと発展してしまうケースが多いようです。
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1年目の新任保育士が退職する理由と対策
新卒保育士への調査によると、保育士1年目の離職率は全体の約25%と言われています。
1年目の保育士さんが退職してしまう理由は、初年度はどこの保育園でも見習い的な業務が多くなってしまうことから、理想と現実のギャップが顕著になることが挙げられるでしょう。
そのような早期退職を防ぐために、全国の保育士養成校では先生や就職課の職員などが、就職した卒業生と密な連絡を取りあいながら、保育士として就職した卒業生の相談に乗ったり、アドバイスをしたりする取り組みが行なわれています。
学校からの紹介で就職した学生が1年目で退職してしまうことで、次年度から同校からの卒業生の採用が難しくなるといった懸念もあることから、保育士さんの早期退職は本人だけの問題ではないと言えるでしょう。
また、卒業生の早期離職への対策として、退職した卒業生への復職サポートなどを行なっている学校もあるようです。
出典:保育士養成施設における保育士の魅力向上に関する調査研究/全国保育士養成協議会
保育士さんの離職率を下げるには、働きやすい環境づくり!
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今回は、保育士の離職率やその原因となる離職理由についてご紹介しました。
厚生労働省が2013年にとりまとめた「保育を支える保育士の確保に向けた総合的取組」の資料(平成25年)では、約1000名を対象に保育士資格保有者の実際の声を取り上げています。
その中で 「保育士への就業を希望しない理由が解消された場合、保育士を希望する」と回答した方は約600名と、3分の2近くに達しました。
慢性的な保育士不足を解消するためにも、保育士を取り巻く職場環境をよりよくしていくために、待遇改善が急務なことが分かりますね。
保育士バンク!では、退職・転職を考えている保育士さんの転職サポートを行なっています。
今の職場と合わなくて退職したけど、保育士は続けたい方、これから転職を検討しようとしている方、それぞれに合った幅広い転職先をご提案します。
とりあえず情報収集だけでも…という保育士さんも大歓迎!今の職場環境にお悩みの方はぜひ保育士バンク!にご相談ください。