家庭的保育という選択肢
小規模保育という新しい保育サービスが登場したことにより、保育園以外の保育の受け皿ができました。しかし、小規模保育は6人以上19人以下の施設のみ。
もっと少数の子どもを預かる施設として「家庭的保育室」があります。こちらで働ける保育者を「保育ママ」と呼びます。
今回は保育ママという選択肢について一緒に考えてみたいと思います。
家庭的保育事業(保育ママ制度)とは?
保育ママ制度とは、待機児童解消のために区市町村により定められた制度です。児童保護法に基づき保育者の居住等において行われる保育のことで、定員は保育者1人につき3名、補助がつけば5人まで。対象の年齢は0~3歳児未満までと定められています。
◯保育ママになる条件
保育ママになるためには各、区市町村の認定を受ける必要があり、その条件もさまざまです。
以下ではいくつかの自治体について具体例を挙げてみます。
例1☆八王子市(3歳までの保育)
●市内在住で25~59歳
●子育ての経験がある(または、保育業務の経験がある)
●保育士の資格を持っている
(保育士の資格をお持ちでない方でも、研修・試験の制度がありますのでお問い合わせください。)
●育児専用の部屋9.9㎡(6畳以上)を確保できる(事前に自宅を確認させて頂きます。)
●就学前のお子さんを養育していない
例2☆江戸川区(0歳の保育)
下記のすべてに当てはまり、愛情深く保育ができる方
●乳児を育てた経験のある方(または、保育士・教員・助産師・保健師・看護師の資格がある方)
●健康な25歳~55歳までの女性
●日曜・祝日を除く、毎日午前7時30分~午後6時までの保育が可能な方
●保育室として6畳相当の部屋を確保できる方
●就学前のお子さんがいない方
このように、地域によって若干の条件の違いはあるものの、保育士資格の保有が必須でないなど、比較的緩やかであるといえます。
保育ママ制度のメリット・デメリット
◯保育ママ制度は不安・・・
家庭的保育室は多くの場合が保育者の自宅ですので、多くの方が最初は不安に思われるのではないでしょうか。
まったく知らない人のところへ自分の子どもを預ける・・・。実態がわからなければ、不安になるのは当たり前ですよね。
加えて保育ママは、自治体に申請をしているとは言っても、あくまでも個人での保育になるので、保育者の体調不良により保育が不可能になることも考えられます。ですが・・・都市部では待機児童問題が深刻となっています。仕事をするうえで、子どもを預ける場所が無いとなると、仕事をセーブする・辞めるなどの選択肢しか残されておらず、苦渋の決断が強いられることも想像に難くありません。
そこで、少しでも不安が和らげばと思い、保育ママ制度のメリット・デメリットをお話しします。
◯ごく少数の保育ということ
上で述べたように、保育ママ制度は保育ママ1人につき3名の保育が原則です。少数に限定することで、一人ひとりへの目が届きやすく、子どもの個性を伸ばしていくことにもつながります。
また、保育ママの多くは子育ての経験があったり、ベテランの保育士なので、子どもを育てるアドバイス・相談など、通常の保育園ではできない行き届いた関係になれるといえます。
その反面、少数の保育であるということは、集団生活を幼いうちから経験できる機会が減ってしまう可能性があります。その場合は、市が指定する認可保育園が「連携保育所」となり、集団行動を体験したり、保育ママ同士が連携し、イベントを行う場合が多いようです。
また、少数の保育ということは、定員がすぐに埋まってしまうということにもなります。
待機児童解消のための制度ではありますが、大人数での保育ができない分、すぐに待機児童解消につながることは難しいかもしれません。
◯不安を解消する!連携保育所
上記のような不安を解消するための制度を定めている自治体もあります。たとえば八王子市の場合はこのような内容です。
【八王子市の場合】(以下、八王子市HP:家庭福祉員(保育ママ)のページより引用)
保護者の方がより安心してお子さんを預けられるように、市が指定する認可保育園が「連携保育所」になって次のような業務を行い、保育ママを支援します。
☆相談・援助・指導・情報提供
保育ママ宅への定期的な訪問や電話などにより相談にのったり、援助や指導を行います。
また、保育園や地域の子育てに関する情報を提供して、保育ママの保育内容の充実を図ります。
☆交流保育・集団保育
保育ママとお子さんを保育園に招き、同年齢のお子さんとの集団保育の体験、園行事への参加、健康診断、身体測定などを行い、交流を深めます。
☆代替保育
保育ママが病気等のやむを得ない理由で保育できない時に、できるだけ連携保育所で代替保育を行います。
このように、保育者である保育ママと、保育ママに子どもを預ける親、保育を受ける子ども三者へ向けてのサポートする制度もありますので、安心ですね。
保育ママ制度の金額設定
◯保育ママ制度の利用金額
家庭的保育室は市区町村が保育料を定めるため、市区町村によって異なります。ですが、保育園と同じように階層区分もあり、高額な保育ではない場合がほとんどです。以下は八王子市の場合ですが、通常の保育園よりも安価であるといえます。
【八王子市の場合】
・保育料 月額29,500円
(給食費が別途10,000円を上限としてかかります。)
・利用者には、保育料負担軽減制度(月額10,000円)があります。
・また、市指定の保育施設を利用するお子さんが二人以上いる世帯は、多子軽減補助金(月額10,000円)の対象となる場合があります。
◯保育ママのお給料は?
保育ママの給料は、保護者からの保育料+行政負担×人数分となります。この行政負担というのは厚生労働省が定めた手当で、ひと月54.300円。ここからおおよその月給を割り出すと・・・相場としては、大体、ひと月にこのくらいのお給料をもらえるようです。
・29,500円(給食費含まず)+54,300×3=251,400円
保育ママになるにはどうしたらいいの?
◯保育ママになるためには?
ここまで保育ママについてお話させて頂いてきましたが、実際のところ、保育ママになるにはどうすればいいのでしょうか?市区町村によって異なる場合もございますが、ざっくりとした流れをご案内します。
(1)お住まいの市区町村で「保育ママ制度」が実施されているかしらべます。
(2)募集を受け付けているか、応募資格に適しているか確認します。
※市区町村のHPに掲載してある場合がほとんどです。募集は不定期の場合が多いようです。
(3)各市区町村の研修を受けます。
(4)保育室の視察を受けます。
(5)各市区町村より認定を受けます。
(6)保育を受けたい方を市区町村より紹介され、面接します。
(7)利用決定の後、入所開始です。
おおまかな流れとしてはこのようになります。保育ママの採用・保育児の紹介はすべて各市区町村で行っています。
一つの選択肢として
保育士の資格を取得した新卒者がいきなり保育ママになるのは現実的ではないかもしれません。
しかし、保育士が出産や結婚を機に仕事を離れ、自らの子育てに一区切りついた時に復職する方法として、保育ママは一つの選択肢となるかもしれません。
既存の保育園で働くことと、保育ママとして働くこととのメリット、デメリットを勘案して、自分に合った復職の道を見つけてもらえればと思います。