こども家庭庁は2023年4月に発足しました。ニュースで耳にしたことがある保育士さんは多いかもしれませんが、具体的に何をしているのか、保育現場とどのような関係があるのかについては詳しく知る人は少ないのではないでしょうか。この記事では、こども家庭庁の取り組みについてわかりやすく解説します。また、いつから始まったかなどの基本的な概要も確認しておきましょう。
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こども家庭庁の取り組みを知らない保育士さんは約9割!?
保育業界に特化した調査・研究を行なう機関「保育士バンク!総研」によると、こども家庭庁の取り組みについて「知っている」と回答した保育士さんはわずか9.5%だったそうです。
そして、「なんとなく知っている」「知らなかった」の回答は合計で89.6%と、約9割の人が知らないという結果となりました。
出典:保育士が、こども家庭庁に最も期待することは「処遇改善」。 「配置基準の改善が、不慮の事故や不適切保育の防止につながる」との声も/株式会社ネクストビート
こども家庭庁が掲げている政策は、保育現場で働く保育士さんにも関係が深い内容ばかりです。この機会に、こども家庭庁に関する疑問を解消しましょう。
こども家庭庁とは?概要をわかりやすく解説
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こども家庭庁とは、子どもの利益を最優先に考えた取り組みや政策の実現に向けて発足した機関のことです。ここでは、こども家庭庁の概要をわかりやすく解説します。
こども家庭庁が設置された背景
こども家庭庁は、子どもを取り巻くあらゆる環境を視野に入れ、子どもの権利を保障し、誰一人取り残さず、健やかな成長を社会全体で後押しするための行政機関として創設されました。
これまで、子どもや家庭に関する施策は厚生労働省や文部科学省、内閣府などといった複数の省庁で分担されていたため、施策が一貫性を欠き、迅速な対応が難しいという課題がありました。
こども家庭庁はこれらの施策を一元化し、子どもや家庭の視点に立った政策を推進する役割を担っています。
こども家庭庁はいつから始まった?
こども家庭庁の設置に向けた議論は、実は2021年6月ごろから始まっていました。
以降、衆議院および参議院それぞれでの審議を経て、2022年6月に「こども家庭庁設置法案」が可決・成立します。
それから発足されるまでの期間では、以下のような取り組みが行なわれていました。
年月 | 主な取り組み |
2022年7月~ | 就学前の子どもの成長を支える基本方針を策定するため、2023年3月までに6回の有識者懇談会を開催。こども家庭庁発足後の政策運営の土台となる報告書を取りまとめました。 |
2022年8月~ | 子どもの意見を政策に積極的に反映する仕組みを構築するため、2023年2月までに5回の有識者委員会を開催。関係各所にヒアリングやアンケートを実施し、発足後に取り組む具体的な施策の基盤を形成しました。 |
2022年9月~ | 「こども大綱」に向けた議論をするために、2023年3月までに3回の有識者会議を実施。フォーラムや関係団体との対話を通じて、幅広い意見を収集しました。 |
2022年11月~ | いじめ問題への対応を強化するため、「いじめ防止対策に関する関係府省連絡会議」を設置。警察や関係機関との連携強化などを進め、2023年2月には成果を教育機関に周知しました。 |
2023年1月~ | こども家庭庁発足後の主要な方針である、こども予算倍増に向けた具体策の検討を開始。同年3月までに関係府省会議を実施し、こども政策を強化するための試案を取りまとめました。 |
2023年4月1日 | 上記のさまざまな準備を経て、2023年4月1日にこども家庭庁が正式に発足。これまでの議論や検討結果を踏まえ、子どもの成長を支えるための政策を本格的に推進しています。 |
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こども家庭庁の主な取り組みをわかりやすく解説!
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こども家庭庁では、大きく分けると以下の4つの取り組みを行なっています。
1.こどもの視点に立った司令塔機能の発揮、こども基本法の着実な施行
2.こどもが健やかで安全・安心に成長できる環境の提供
3.結婚・妊娠・出産・子育てに夢や希望を感じられる社会の実現、少子化の克服
4.成育環境にかかわらず誰一人取り残すことなく健やかな成長を保障
それぞれの取り組みで、具体的に行なわれている取り組み状況をわかりやすく解説します。
1. こどもの視点に立った司令塔機能の発揮、こども基本法の着実な施行
まず、こども家庭庁の基盤である基本方針、方針について紹介します。
こども基本法・こども大綱の推進
「こども基本法」は、こども家庭庁の創設と同じ2023年4月に施行された法律のことです。
この法律は、すべての子どもや若者が幸福に暮らせる社会を目指し、子どもに関する施策を社会全体で総合的かつ強力に推進することを目的としています。
また、子ども基本法では、こども家庭庁の基盤となる「こども大綱」の策定についても定めているのが特徴です。
「こども大綱」とは、こども政策を総合的に進めるために政府が閣議決定した基本方針のことです。
こども大綱の導入により、こども施策をひとつの方針の下で統一的に進められるようになり、子どもの成長や支援に特化した政策をより効果的に実施できるようになったのです。
この法律にもとづき、国だけでなく、都道府県や市区町村もそれぞれの地域で子どもや若者を支える取り組みを進めています。
こどもの意見を聴取!「こども若者★いけんぷらす」
子どものための政策を進めるうえで、最も大切なのは、子どもや若者の意見をしっかり聴き、その声を尊重することです。
そこで、「こども若者★いけんぷらす」という場を提供し、子どもや若者がオンライン・チャット・Webアンケートなどのさまざまな方法で自分の意見を表明し、社会に参加できるようにしています。
「こども若者★いけんぷらす」には、小学1年生から20代までのすべての子ども・若者が登録可能。
ここで集まった意見をもとに、こども家庭庁は子どもたちや若者に関わる制度や政策の改善を目指して、子どもたちや若者にとって最良の政策を考え、実行しています。
\詳細はこちら/
こども若者★いけんぷらす
こどもデータ連携の取組の推進
現代の子どもを取り巻く環境は貧困や虐待など厳しさを増している状況ですが、困難を抱える子どもや家庭ほど、自ら助けを求めるのが難しい場合が多いです。
そのため、積極的に支援を届ける「プッシュ型」や「アウトリーチ型」のアプローチが重要とされています。
そこで、地方自治体が教育・保健・福祉などの分野を超えて情報を連携し、子どもや家庭の状況を適切に把握する仕組みづくりを支援するようになりました。
この取り組みでは、個人情報の適正な管理を確保しながら、支援が必要な子どもや家庭を見つけ出し、具体的な支援へとつなげることを目指しています。
また、新しいアイデアや仕組みが本当に使えるかどうか考えて試すためのガイドライン作成や調査研究も併せて実施し、効果的な取り組みを全国に広げる準備を進めています。
国際関係
こども家庭庁では、国際的な協力を通じて子どもの権利や福祉を守る取り組みを進めています。
具体的には、国際機関との連携や諸外国との政策対話、交流事業を実施し、日本の取り組みを情報発信することで、国際社会と連携を深めていくというものです。
諸外国との対話や交流を通じて、他国の優れた政策や取り組みを学んで日本の子どもや家庭に適した形で取り入れたり、日本の成功事例を発信して国際社会に貢献したりすることを目指しています。
また、「児童の権利に関する条約」の内容を広く知ってもらうため、その周知や理解促進に向けた活動も推進しています。
条約に関するイベントの開催などの取り組みを周知していくことで、大人やこどもたちがこどもの権利について学ぶ機会が増えることが期待されています。
都道府県こども計画・市町村こども計画
都道府県や市町村は、国が策定した「こども大綱」を参考に、それぞれ「都道府県こども計画」や「市町村こども計画」を作成することが求められています。
こうした計画を一体化して策定することで、地域全体でのこども施策を統一的に進めやすくなる効果が期待されています。
また、住民にとってわかりやすくなるだけでなく、行政の事務負担軽減にもつながることが期待されているようです。
こども家庭庁では、地方公共団体がこれらの計画をスムーズに作成できるよう、情報提供や支援を通じて後押しを行なっています。
こどもまんなかアクション
「こどもまんなかアクション」とは、子どもや子育て中の人たちが安心して制度やサービスを利用できる社会を目指す取り組みです。
この取り組みは、地域社会や企業など、年齢や性別を問わずすべての人が子どもや子育て中の家庭を支援することを目標としています。
社会全体で意識を変え、子育てを支え合う環境づくりを進めるもので、具体的な取り組みとしては以下のようなものが挙げられます。
- こども食堂
- こども体験イベント
- 妊娠・育児と仕事の両立支援
- プレママ・プレパパレッスン
2. こどもが健やかで安全・安心に成長できる環境の提供
続いて、「こどもが健やかで安全・安心に成長できる環境の提供」の取り組みを紹介します。
子ども・子育て支援制度
「子ども・子育て支援制度」は、幼児期の教育や保育、地域での子育て支援を充実させるために設けられた制度です。
子どもを産み育てやすい環境を整えるため、こども家庭庁では、すべての子育て家庭を対象に地域のニーズに応じた子育て支援の充実を進めています。
具体的には、妊産婦や子育て家庭が身近な場所で相談し、必要な支援を受けられる仕組みの整備に取り組んでいます。
さらに、地域で親子が気軽に集まり、交流や相談ができる拠点を設けることで、孤立を防ぐ環境づくりを目指しています。
また、放課後に安心して過ごせる場として放課後児童クラブを充実させることで、子どもたちの安全を確保し、保護者の負担軽減にもつながると考えられています。
保育
小学校入学前の子どもが健やかに成長できる環境を整えるため、保育所や認定こども園などの受け入れ体制を拡充し、待機児童の解消に努めています。
また、指導や監督を通じて保育の質を高め、安全で安心な保育の提供を目指しているのが特徴です。
文部科学省とも調整を行ない、保育内容の質を確保するための指針や要領を整えるとともに、人材育成や確保に向けた支援にも力を入れていく考えのようです。
幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン
2023年12月22日、「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン(はじめの100か月の育ちビジョン)」が閣議決定されました。
こども家庭庁は、こども政策の司令塔として、幼児期までの子どもが健やかに成長できるように以下のようなビジョンを設定しました。
- こどもの権利と尊厳を守る
- 「安心と挑戦の循環」を通してこどものウェルビーイングを高める
- 「こどもの誕生前」から切れ目なく育ちを支える
- 保護者・養育者のウェルビーイングと成長の支援・応援をする
- こどもの育ちを支える環境や社会の厚みを増す
これらのビジョンをもとに、すべての幼児期の子どもの成長を保障するため、社会全体への周知や啓発を行なっています。
こどもの居場所づくり
2021年12月22日に「こどもの居場所づくりに関する指針」が閣議決定されました。
子どもの視点に立った多様な居場所を作るため、地方自治体における実態調査や広報活動の支援、コーディネーター配置への支援を行なっています。
たとえば、広報活動支援では居場所マップの作成・配布、コーディネーター配置支援では居場所を求める子どもをつなげるなどの支援を実施。
また、NPOなどが独自に進める居場所づくりや子どもの可能性を引き出す取り組みを支援も実施しています。
具体的には、居場所がない若者が自ら利用・相談できる場を提供したり、朝食の提供を行なう早朝の居場所の開設などです。
こども・若者育成支援
すべての子どもや若者が、自分の居場所を見つけ、成長し活躍できる社会を目指し、意見を取り入れながら社会参加を後押ししています。
この取り組みは、教育や福祉、保健、医療、雇用など幅広い分野にわたるため、関係省庁と連携しながら総合的に進めているのが特徴です。
たとえば、2023年度は一部の都道府県や政令市、市区町村などでこども・若者支援体制整備及び機能向上事業として以下のような支援を実施しました。
- アドバイザーなどの招へいにかかわる支援
- 子ども・若者総合相談センター設置に向けた支援
- 子ども・若者総合相談センター職員の人材養成を目的とした講習会の支援
- 相談業務に従事する職員の資質向上にかかわる支援
こどもの安全
すべての子どもが健やかに成長できる安全で安心な環境を提供することは、こども政策の基本といえます。
そのため、教育・保育施設や家庭だけでなく、インターネット空間においても、さまざまな角度から子どもの安全を守るための取り組みを進めています。
子どもの安全を守るため、事故防止や犯罪からの保護、登下校時の安全確保など、府省庁や団体と連携しながら幅広い対策を実施しています。
青少年の安全で安心な社会環境の整備
青少年の成長には、周囲の社会環境が大きく影響することがあります。
こども家庭庁では、青少年の成長に悪影響をおよぼす有害な環境から守るため、インターネット利用環境の整備や少年非行対策などの取り組みを行なっています。
3. 結婚・妊娠・出産・子育てに夢や希望を感じられる社会の実現、少子化の克服
次は、「結婚・妊娠・出産・子育てに夢や希望を感じられる社会の実現、少子化の克服」の取り組みを紹介します。
地域少子化対策重点推進交付金、税制措置など
少子化対策を効果的に進めるには、政府だけでなく、地方公共団体が地域の実情に応じた取り組みを進めることが重要です。
そのため、結婚や子育てに関する地方公共団体の施策を「地域少子化対策重点推進交付金」を通じて支援しています。
これは地域における少子化対策推進のため、地方自治体の先駆的な取組みに対して国が支援する交付金のことで、結婚支援や相談支援などの事業を実施するときに活用できます。
また、両親や祖父母が早めに資産を子や孫に移転し、結婚や出産、子育てを支援できるよう、「結婚・子育て資金の一括贈与」に対する贈与税の非課税措置も実施。
さらに、子どもや若者、子育て当事者に優しい社会を目指し、啓発活動にも取り組んでいます。
母子保健・不妊症・不育症など
すべての子どもが健やかに育つ社会を目指し、母子保健法や成育基本法にもとづいて、妊産婦健診や乳幼児健診、産後ケア事業などを通じて、妊娠期から子育て期まで地域で切れ目のない支援を進めています。
また、男女を問わず、性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、健康管理を促す「プレコンセプションケア」を推進。
不妊症や不育症で悩む方への相談支援にも取り組み、幅広いサポートを提供しています。
妊婦・子育て家庭への伴走型相談支援と経済的支援の一体的実施(出産・子育て応援交付金)
地方自治体の工夫を活かし、妊娠期から出産・子育てまで、一貫して身近で相談に応じる「伴走型の相談支援」を充実させています。
この相談支援では、さまざまなニーズに合わせて必要な支援につなぐとともに、経済的支援も一体的に実施しているのが特徴です。
具体的には、出産・育児の見通しを一緒に立てるために妊娠届出時・妊娠8カ月頃・出産後に3回面談を行ないます。
そして、妊娠届出時と出産後に面談を受けると、各5万円相当のギフトをもらえるというものです。
子ども・子育て支援金制度について
日本が直面する少子化や人口減少の危機に対応するため、2023年12月22日に閣議決定された「こども未来戦略」では、総額3.6兆円規模の「こども・子育て支援加速化プラン」(加速化プラン)がまとめられました。
このプランにより、児童手当の拡充をはじめとした大幅な給付の増加が実施される予定です。
その財源の一部となるのが「子ども・子育て支援金制度」です。この制度は、社会全体で子どもや子育て世帯を支える仕組みで、収入は児童手当やこども誰でも通園制度など、全国の子育て世帯への給付に充てられます。
また、この支援金は、医療や介護分野での歳出改革や賃上げによる社会保険負担軽減効果の範囲内で導入される予定です。
2026年度からは、医療保険料とあわせて所得に応じた拠出が始まります。
4. 成育環境にかかわらず誰一人取り残すことなく健やかな成長を保障
最後は、「成育環境にかかわらず誰一人取り残すことなく健やかな成長を保障」の取り組みを紹介します。
児童虐待防止対策
すべての子どもには、「児童の権利に関する条約」にもとづき、適切な養育を受け、健やかに成長し、自立する権利が保障されています。
その中で、子どもの成長に深刻な影響を与える児童虐待の防止は、社会全体で取り組むべき重要な課題です。
具体的な防止対策として、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」や、親子のための相談LINEなどの相談窓口を設置しています。
社会的養護
社会的養護とは、保護者がいない子どもや、保護者による適切な養育が難しい子どもを、公的な責任で保護し育てる仕組みです。同時に、養育が困難な家庭の支援も行ないます。
具体的には、児童養護施設退所者に対して以下のような支援を実施しています。
- 施設退所後の施設職員や里親による訪問支援
- 施設入所者・退所者を対象とした就労支援
- 施設退所者後に気軽に立ち寄り、交流できる居場所を提供
これらの取り組みは、「こどもの最善の利益を守ること」と「社会全体でこどもを育てること」という理念にもとづいて進められています。
ひとり親家庭等関係
ひとり親家庭は、子育てと生計の両方を支援するべく「子育て・生活支援」「就業支援」「養育費の確保」「経済的支援」の4つを柱に、さまざまな施策を進めています。
子育て・生活支援策:自立支援員による相談・支援、日常生活支援など
就業支援: ハローワーク、母子家庭等就業・自立支援センターによる支援など
養育費の確保:離婚前後親⽀援、養育費等⽀援、親⼦交流⽀援など
経済的支援:児童扶養⼿当、ひとり親の経済的⽀援など
障がい児支援
障がいのある子どもが健やかに成長できるよう、乳幼児期から学校卒業まで一貫した支援を身近な場所で提供できる体制づくりが重要です。
そのため、専門的な発達支援を行なう障害児通所支援事業所や障害児入所施設における支援の質の向上や、支援内容の適正化に取り組んでいます。
また、障がいのある子どもが地域社会に参加し、包容(インクルージョン)を実現するため、文部科学省や厚生労働省と連携しながら、以下のような取り組みを進めています。
- 個別指導や必要教材を活用し、一人ひとりに合った教育サポートを強化
- 将来的に働くことになる職場や企業へのスムーズな移行支援
- 医師や支援員、学校の先生が情報を共有して一緒にサポートする体制の強化
さらに、医療的ケアが必要な子どもや発達に課題を抱える子どもへの支援を充実させ、切れ目のない支援体制の実現を目指しています。
こども家庭庁におけるいじめ防止対策
いじめの問題については、これまでも学校や教育委員会、国(文部科学省)が中心となって取り組みを進めてきました。
これに加え、子どもの権利を守る役割を担うこども家庭庁が、いじめ対策における第三者性を確保するための地域体制づくりを推進しています。
また、文部科学省や関係府省と連携し、こどもまんなか社会の実現を目指して、いじめ防止対策の強化に取り組んでいます。
こどもの貧困対策
日本には、生まれ育った家庭環境やさまざまな事情により、健やかに成長するための生活環境や教育の機会が十分に確保されていない子どもたちがいます。
すべての子どもが生まれ育った環境に関わらず、夢や希望を持てる社会を実現するため、こども家庭庁は関係省庁と連携し、子どもの貧困の解消に向けた総合的な取り組みを実施。
こども家庭庁では、策定された「こども大綱」を踏まえ、以下のような取り組みを進めています。
- 教育支援
- 生活の安定につながる支援
- 就労支援による職業生活の安定や向上
- 経済的支援
これらの多角的な視点から、関係省庁と協力して子どもの貧困対策に取り組んでいます。
ヤングケアラーについて
「ヤングケアラー」とは、本来は大人が担う家事や家族の世話を、日常的に行なっている子どものことです。具体的には、以下のような子どもが該当します。
- 障がいや病気のある家族に代わって家事をしている
- 家族に代わって、自分より幼い弟や妹の世話をしている
- 障がいや病気のある兄弟姉妹の世話・見守りをしている
- 目を離せない家族の見守り・声かけなどの気遣いをしている
- 家計を支えるために労働をして家族を助けている
これらはあくまで一例ですが、このような活動の負担が重くなると、学業や友人関係などに悪影響が出てしまう場合があります。
こども家庭庁では、ヤングケアラーを支えるため、助け合いや情報共有ができるつながりの場を作ることを推進しています。
その一環として、民間団体などが主催する全国規模のイベントやシンポジウムの開催を支援し、地域ごとに当事者や支援者同士が交流できる機会を提供。
これにより、ヤングケアラーへの理解を深め、支援の輪を広げる取り組みを進めています。
子どもの自殺対策
こども家庭庁では、子どもの自殺対策の司令塔として「自殺対策室」を設置しています。
この取り組みでは、厚生労働省や文部科学省、警察庁などの関係省庁と連携し、子どもの自殺を防ぐための対策を強化しています。
こども家庭庁の取り組みで保育士さんに関わるのは?
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前述したとおり、こども家庭庁は子どもに関わるさまざまな取り組みを行なっていることがわかるでしょう。
この中で、保育士さんに関わりがあるのは「子ども・子育て支援制度」「保育」「こどもの安全」などの取り組みです。
これらは保育士さんの業務や子どもたちの成長を支えるために欠かせない施策といえるでしょう。それぞれについて、わかりやすく解説します。
子ども・子育て支援制度に関する取り組み
こども家庭庁では、子どもや子育て家庭を支えるため、「子ども・子育て支援制度」の充実に力を入れています。
具体的には、保育所や認定こども園などの受け入れ枠を拡大し、待機児童の解消を目指しています。
この取り組みにより、保育園の利用がスムーズになるだけでなく、保育士さんの負担軽減につながることが期待されるでしょう。
また、保育士さんの待遇改善や人員配置基準の見直しにも取り組んでおり、働きやすい環境の整備を進めているところです。
さらに、スキルアップのための研修や支援を充実させることで、保育の質を高め、保育士さんがより安心して働ける職場づくりを推進しています。
保育に関する取り組み
保育士さんが日々関わる「保育」に関する取り組みも、こども家庭庁の重要な施策のひとつです。
その中でも、地域全体で子どもを見守る居場所づくりの取り組みでは、保育園がその拠点として期待されています。
これにより、地域の子どもや家庭とつながり、支援の輪を広げる機会が増えるかもしれません。
また、発達に課題を抱える子どもや障がいのある子どもへの支援も強化されています。
専門機関や関係者との連携を通じて、保育士さんが子どもたちをサポートする役割を担うことで、より効果的な支援が実現するでしょう。
子どもの安全への取り組み
子どもたちが安心して育つための「安全」を守ることも、こども家庭庁の大切な使命といえます。
保育士さんにとっても、子どもの安全を守る日々の活動は重要な役割のひとつです。たとえば、子どもの事故を防ぐための注意喚起や、災害時の対応に関する体制づくりなどが進められています。
また、児童虐待の防止においては、保育士さんの目による早期発見が重要です。こども家庭庁では、保育士さんを含む関係機関が連携しやすい仕組みを整え、虐待の防止や早期対応を目指しています。
出典:こども家庭庁について/厚生労働省出典:こども政策の新たな推進体制に関する基本方針のポイント/厚生労働省出典:こども施策の総合的な推進/こども家庭庁出典:こども家庭庁の取組/こども家庭庁出典:政策/こども家庭庁
こども家庭庁は保育士にも深い関わりのある大切な行政機関
保育士として働くうえで、こども家庭庁の具体的な取り組みを知っておくことは非常に重要です。
こども家庭庁が進める施策や政策には、子どもたちや保護者を支えるだけでなく、保育士さん自身の働きやすい環境を整えるための内容が多く含まれています。
これらを理解し、現場で活用することで、子どもたちや家庭により適切なサポートを提供できるようになるでしょう。
詳しい政策や制度を理解することは、現場での保育の質を向上させるだけでなく、子どもたちや家庭に寄り添う保育士さん自身の安心感や働きがいにもつながるかもしれませんね。
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