ピアジェの発達理論「前操作期」とは?2歳からの保育に役立つ例と活かし方

    保育士さんが幼児期の発達について学ぶためには「ピアジェの発達理論」の「前操作期」を知っておくとより理解が深まりそうです。本記事では、ピアジェが提唱した基本となる発達の4つの段階について、特に2歳から7歳の発達段階を指す「前操作期」の子どもの特徴と、保育への活かし方について解説していきます。

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    ピアジェの発達段階とその概要

    ジャン・ピアジェは、子どもたちの認知的な発達が段階的に進むと考え、以下の4つの段階を提唱しました。保育現場でこの理論を理解することで、子どもたちの成長をより深くサポートできるようになります。

    ■感覚運動期(0〜2歳)
    子どもが感覚と運動を通じて世界を理解する段階です。物が見えなくなると存在しないと思い込む「対象の永続性」の欠如がこの時期の特徴です。

    ■前操作期(2〜7歳)
    具体的な論理操作はまだできないものの、記号やイメージを使った思考が発達し、物事を感覚的に理解します。自己中心性が強いのもこの時期です。

    具体的操作期(7〜11歳)
    子どもは具体的な物事について論理的に考えられるようになりますが、まだ抽象的な概念には苦手です。

    形式的操作期(11歳以降)
    抽象的な思考や仮説立てができるようになり、論理的推論を行なうことが可能になります。

    本記事では、この4つの段階の中でも特に「前操作期」に焦点を当て、その特徴や保育現場での実際の対応例について詳しく見ていきます。

    ピアジェの発達理論における「前操作期」とは

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    ピアジェの発達理論によれば「前操作期」は、2歳から7歳頃の子どもが示す思考の特徴を説明したものです。

    この時期の子どもは、具体的な論理的操作をまだ十分に行なえず、物事を感覚的に捉えがちです。自己中心的な思考や、物の見方が一面的であることが多いのが特徴です。

    以下の3つの特徴が、前操作期の主な発達段階に見られるようです。

    • 表象・象徴機能
    • 自己中心性
    • アニミズム
    • 象徴機能
    • 直観的思考

    保育園では、主に0歳から6歳児を保育するため、この前操作期における子どもの認知的な特徴を理解したうえで対応すると、保育士としての関わり方を適切に調整することや、子どもの育ちのための環境構成に役立てることにつながりそうです。

    子どもたちの思考や行動の背後にある発達段階を知ることで、保育の質を向上させ、子どもたちが安全かつ安心して成長できる環境を作り出すことが可能です。

    ここからは、前操作期の主な特徴と、それをもとに保育の現場で見られる例を通じて、日々の保育の中でどのように対応できるかを考えてみましょう。

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    【ピアジェの理論・前操作期】自己中心性

    前操作期にみられる「自己中心性」の特徴と保育現場での関わり方について見ていきます。

    特徴

    他者の視点を理解するのが難しく、自分の視点が世界のすべてであるかのように捉えることが、この自己中心性の特徴です。このため、友だちと意見が合わないときにも「自分が正しい」と主張しやすく、他者の意図や感情に共感するのが難しい段階です。

    たとえば、遊びの中で自分の考えが否定されることや、順番を守る場面で譲らなければならないといったときにも、「自分が先に使うべきだ」と感じやすく、他人の気持ちを考えるよりも、自分の欲求を優先しがちです。

    こうした自己中心的な視点は、この時期の子どもにとって自然な発達段階であり、保育士として理解と共感を持って関わることが重要です。

    保育現場でみられる例

    • ブロック遊びで自分の作品を壊されたとき、「壊した人が悪い」と決めつける
    • 友だちとおもちゃを共有できず、「これは自分のものだ」と主張する
    • 読み聞かせの時間に、物語の登場人物の気持ちよりも自分の気持ちを話し続ける

    対応

    上記のような場面では、子どもの視点を認めながらも他者の気持ちや行動を理解する手助けが重要です。

    たとえば、ブロックを壊された場合に「どうしてそう感じたのか」を話すよう促し、次に相手がどのように感じたかを考える機会を設けるなどがよいかもしれません。

    また、おもちゃの共有についても、自分が遊んだ後に友だちが楽しめるような言い方で「順番に使おう」と伝えることで、相手の立場に少しずつ気づくことができる機会をつくっていけるとよいでしょう。

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      【ピアジェの理論・前操作期】実念論/人口論

      前操作期にみられる「実念論」「人工論」の特徴と保育現場での関わり方について見ていきます。

      特徴

      実念論とは、子どもが物事の名前や概念に実体があると考える傾向です。この時期の子どもは、抽象的な概念が具体的な存在であるかのように感じることが多いでしょう。たとえば「お日様は天気を作るおじさん」などと捉えることもあるかもしれません。

      一方で、人工論とは、自然現象が人間によって作られていると信じる傾向です。たとえば「川は人が作ったもの」「雨は誰かが空で水をこぼしたから降っている」などと考えることが特徴です。

      このように、前操作期の子どもは物事の因果関係を感覚的に捉えることが多く、理解を深めるために独自の理論を作り上げるのが一般的です。

      保育現場でみられる例

      • 「星は夜になると誰かが空に置いてくれている」と言う(実念論)
      • 「海の色は青い絵の具で塗られている」と信じている(実念論)
      • 「山は誰かが土を集めて作った」と話す(人工論)
      • 「風は空に住んでいる巨人が吹いている」と考える(人工論)

      対応

      こうした思考は、子どもの知的発達の一環であり、豊かな想像力の証でもあります。保育士としては、まず子どもの話しを肯定的に受け止め、「なるほど、そう思うんだね」と反応することが大切です。

      その上で、「ほかにも風が吹く仕組みがあるよ」といった具合に、興味があるときに自然現象の簡単な説明を加えることで、子どもの知識が少しずつ増えていく機会を提供できます。

      また、実念論に基づく話しをした際には、絵本や物語を通じて、さまざまな自然や社会について子どもに教えるきっかけをつくり、理解を深めていけるようにしましょう。

      これにより、子どもの持つ感覚的な世界観を尊重しながら、徐々に現実的な認識を促していくことができそうです。

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      【ピアジェの理論・前操作期】アニミズム

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      前操作期にみられる「アニミズム」の特徴と保育現場での関わり方について見ていきます。

      特徴

      アニミズムとは、無生物に対して生命や感情があると捉える思考傾向です。この時期の子どもは、たとえば「人形が痛いと言っている」と考えたり、「月が自分を追いかけている」と感じたりします。

      さらに、風が吹くと「風さんが怒っている」と表現したり、雨が降ると「空が泣いている」と感じたりすることもあります。ピアジェによると、こうした考えは、子どもが感覚的に世界を理解し、身の回りの物事に親しみを持つための自然な過程と言えるようです。

      この思考を通じて、子どもは周囲の環境に対して独自の意味づけをし、豊かな想像力を育んでいると考えることができます。

      保育現場でみられる例

      • ぬいぐるみに「お腹が空いているの?」と話かける
      • 落ち葉を見て「葉っぱさんが泣いちゃった」と表現する
      • 自分が転んだときに、地面を指して「地面が悪い」と言う

      対応

      このような場合は、子どもの視点を尊重しつつ、彼らが無生物と感情を通じて関わることを見守る姿勢が大切です。

      たとえば、人形に話かけている子どもには「今日はどんな気持ちなのかな?」と問いかけ、子どもの想像力を引き出すことができます。

      また、落ち葉の話をした場合には、「どんな風に見えるの?」と質問し、自然とのつながりを感じられる遊びや活動を取り入れるのも効果的です。


      【ピアジェの理論・前操作期】象徴機能

      前操作期にみられる「象徴機能」の特徴と保育現場での関わり方について見ていきます。

      特徴

      言語やイメージを使って、具体的な物を頭の中で表現することができるようになりますが、まだ論理的な推論が難しい段階です。たとえば、1つのブロックを「車」として見立てたり、紙を「お金」として使ったりするなど、象徴的な遊びが始まる時期です。

      また、子どもがおままごとの中で空の容器に「ジュースが入っている」と想像して飲む真似をすることもあります。このようにして、子どもたちは現実のものを使わずに遊びを楽しむ力を身につけ、頭の中で想像したものを実際の行動で表現する能力を育んでいます。

      こうした遊びを通じて、日常生活のさまざまなシーンを再現したり、社会的な役割を経験したりするなどの経験を経て、子どもの想像力や創造性は豊かに発達していきます。

      保育現場でみられる例

      • 折り紙の作品を「ご飯」や「果物」に見立てて、ごっこ遊びをする
      • 空っぽのカップを持ちながら「コーヒーを飲んでいるの」と言う
      • 絵を描きながら、描いたものに自分で名前をつけて紹介する

      対応

      絵やお話を通じて、自分の経験や感情を表現する場を提供することで、子どもの発達を促すことができるでしょう。たとえば、自由にお絵描きをしてもらい、「これは何を描いたの?」と問いかけて、その中での思考や感情を引き出します。

      また、物語を通じて象徴機能を育むために、お話の続きや登場人物について子どもが自分で考えられるような問いかけも有効です。

      このような対応を意識的に続けることで、日々の活動を通じて、子どもたちの発想力や表現力を養うことができます。


      【ピアジェの理論・前操作期】直観的思考

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      続いて、前操作期にみられる「直観的思考」の特徴と保育現場での関わり方について見ていきます。

      特徴

      この「直観的思考」は、4歳以降からみられる発達段階とされています。

      これは、子どもが直接的な感覚や印象に基づいて物事を判断する傾向です。この時期の子どもは、見た目や体験をもとに結論を出すことが多く、論理的な根拠を必要としません。

      たとえば、同じ量の水を形状の異なる容器に移すと「背が高い容器のほうが多い」と考えるように、視覚的な情報が判断に大きく影響を与えることが特徴です。

      ピアジェによれば、この段階では、論理的操作が難しく、全体的な関係性よりも一部の印象に重きを置く傾向があります。

      保育現場でみられる例

      • お皿に乗せたおやつを、形が大きいほうが多いと感じる
      • 丸いものが多く見えると「すべてが同じ種類のものだ」と思い込む
      • 水を細長いグラスに入れたとき「このほうがたくさん入っている」と主張する

      対応

      この時期の子どもには、見た目で判断する直感的な思考の発展をサポートできるとよいでしょう。具体的な体験を通じて、物の量や形状を理解できる遊びを提供するといった対応がのぞましいかもしれません。

      たとえば、異なる形の容器に水や砂を移し替える遊びを通じて、量が変わらないことを体感してもらうことができます。

      また、保育者としては、直感的な発言に対して「どうしてそう思うの?」と質問し、子どもが自分の考えを言葉にして説明できるように促すこともできそうです。

      これらの対応により、直感的な思考を尊重しつつ、少しずつ論理的な思考への移行をサポートしていくことにもつながるでしょう。

      ピアジェの「前操作期」の理解を深め、保育の質を高めよう

      ピアジェの前操作期の概念は、保育士が子どもの発達を理解し、日々の保育に役立てるために知っておきたい知識の一つと言えるでしょう。

      保育士さんは、これらの発達段階を通じて子どもたちが独自の視点で世界を理解しようとしていることを尊重しながら、彼らの成長に寄り添った保育を行なえるとよいでしょう。

      理論にもとづいた対応で、子どもたちが安心して自分らしさを発揮できる環境を整えたいですね。

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