保育士として働いていくなかで「転職」を決断する転職理由をランキングするとどのような結果になるのでしょうか。今回は、厚生労働省による調査結果を参照しながら、実際に保育士が転職したい理由ランキングの上位の結果を解説します。保育士さんが転職したいと考える背景から、職場や転職先への伝え方についても考えていきましょう。
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【保育士の転職理由】転職を考える背景とは
保育士の仕事はやりがいがある一方で、さまざまな理由から転職を検討する人も多いようです。
厚生労働省の資料「保育を取り巻く状況について」によると、退職した保育士さんについて、退職理由全体から見て最も多い理由が「保育業界への転職」です。
また、他業界や他福祉業界なども含めると、退職した理由が「転職のため」となっているのは、全体の62.9%にのぼることが分かります。
上記のグラフから「転職を理由に退職した保育士」のみを抽出した内訳は、以下の通りです。
保育業界への転職 | 33.4% |
他業界への転職 | 18.9% |
他福祉業界への転職 | 10.6% |
全体の約60%の転職した保育士さんのうち、30%以上の方が保育業界へ転職し、2割弱が他業界、残りがそのほかの福祉業界へ転職しており、転職のニーズは非常に高いことが見えてきます。
今回は厚生労働省の資料を基に、保育士が「転職」を決断する理由について見ていきましょう。
【保育士の転職理由】ランキングベスト5
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続いて、厚生労働省の統計データ「過去に保育士として就業した者が退職した理由」から、保育士さんの退職理由ランキングのベスト5を見ていきながら、保育士の転職理由について考えていきましょう。
なお、以下のグラフはあくまで「退職理由」なので、転職を目的としていない離職のケースも含まれています。そのため転職を目的としていないことが明らかに推察される「妊娠・出産」「結婚」といった項目は、本記事ではランキング外としています。
【転職理由 1位】職場の人間関係(33.5%)
職場の人間関係が転職理由のトップとなっていることからも分かるとおり、保育士の仕事は、保育士同士の連携によるチームワークがとても重要な職種です。
そのため、保育士同士における良好な人間関係が築けるかどうかは、日々保育士としての役割をしっかり果たすためには不可欠と言えるでしょう。
ストレスの多い環境では、子どもたちへの影響も懸念されるため、よりよい職場環境を求めて転職を考える方が増えているのもうなずけますね。
【転職理由 2位】給料が安い(29.2%)
保育士の給与水準は長年の課題となっているようです。子どもの安全を預かる責任の重さや業務内容の厳しさに比べて、給与が見合わないと感じる保育士さんは少なくないでしょう。
生活の安定や将来設計を考えると、より高い給与を求めて同業や他業種への転職を決意する保育士さんは多くいるようです。
【転職理由 3位】仕事量が多い(27.7%)
子どもに接する日常の保育業務に加え、連絡帳や月案・週案などの書類作成や園内外の環境整備など、こなさなければならない仕事量の多さに悩む保育士さんは多いでしょう。
そのうえに慢性的な人手不足も相まって、一人あたりの負担が増えていることも指摘されます。保育士さんそれぞれがワークライフバランスを重視し、より適切な働き方や業務量の職場を求めた場合に、転職に踏みきることもありそうです。
【転職理由 4位】労働時間が長い(24.9%)
保育士の労働時間の長さは深刻な問題と言われているようです。シフトによっては早朝から夕方までの勤務に及ぶこともあり、さらに残業も加れば、プライベートの時間を確保することが難しくなってしまう保育士さんもいるでしょう。
家庭との両立や自分のライフステージを見据えたプライベートの時間を求めて、より労働時間に配慮のある職場への転職を検討する保育士が増えているのかもしれません。
また、園によっては「休みがとりづらい」といった不満が、このなかに含まれることもありそうです。
【転職理由 5位】健康上の理由(体力含む)(20.6%)
保育士の仕事の特徴として、体力面だけでなく精神面にも大きな負担がかかることが挙げられるでしょう。しゃがんで子どもたちと話したり、何人もの子を抱っこしたりする機会も多く、疲労や腰痛など身体への問題を抱える保育士さんも少なくありません。
基礎体力にも個人差があるため、人によっては自分の健康維持のため、より身体的な負担の少ない環境や職種への転職を考える保育士さんもいるでしょう。
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【保育士の転職理由】他業種への転職理由
厚生労働省の調査結果に基づくグラフを元に、前章で解説したランキングのベスト5以外に、保育士さんの他業種・他職種への転職理由をピックアップしました。
【転職理由 6位】他業種への興味(15.2%)
保育士として働くなかで、保育士以外の業種に興味を持って転職を考えたという方も一定数いるようです。
なかには、子育てや子どもに関連するサービスや商品の企画・流通、また教育関連事業を行なう企業や法人団体など、子どもに関わる事業を行なう一般企業への転職を考える方もいるでしょう。
新たなキャリアにチャレンジしたいという意欲が、転職の動機となっていることも考えられますね。
【転職理由 9位】職業適性に対する不安(9.9%)
働く中で、今の職業に対する適性に疑問や不安を感じる保育士さんもいるようです。子どもが好きでも、日々のさまざまな業務や責任の重さに戸惑ってしまい「自分に向いていないかも」と感じたり、改めて自分の適性について考えたりしたという保育士さんの声も聞かれます。
保育士としての働き方だけでなく、自分の能力や興味をより活かせる職場や職種を探し、キャリアの見直しのために転職を選択する保育士さんもいるようです。
【転職理由 10位】保護者対応等の大変さ(7.4%)
保育士という仕事の特性上、子どもたちだけでなく保護者との密な連携が必要になってくる場面が多くあるでしょう。しかし、さまざまなシーンでの保護者対応に苦慮するケースも多いことから、保育士さんにとっては大きなストレスの要因となることも少なくないようです。
保育士としての資格や経験を活かしながら、できるだけコミュニケーションの負担が少ない職場や、保育士とは異なる業態で子どもに関われる職種への転職を考える方もいるでしょう。
【保育士の転職理由】現在の職場や転職先への伝え方
保育士さんが転職を考える際、現在の職場への伝え方、また転職先での面接での退職・転職理由の説明が必要になってくるでしょう。
この場合、現職と転職活動の面接では、転職理由の伝え方や伝える際のポイントもやや異なる部分があることを意識できるとよいかもしれません。
たとえば現職に対しては、感謝の気持ちを忘れず、前向きな転職をイメージさせる理由を伝えるとスムーズに退職へ進みやすくなります。また、転職を希望する先での面接では、自身のこれまでの経験やスキルを活かして貢献できることを示し、転職によるキャリアアップへの意欲を伝えるのがよいでしょう。
今の職場への伝え方
まずは、現在の職場で学んだことや経験できたことに感謝を伝え、転職したいという意思を伝えるとよさそうです。
たとえ現在の職場に不満があるとしても、転職するための退職であれば 「新しい環境で自分のスキルをさらに高めたい」や「キャリアアップを目指してチャレンジしたい」など、成長意欲を強調する理由を挙げましょう。
なお、転職の意向はできるだけ早めに伝え、スムーズな引き継ぎができるよう、年度途中での急な退職を避けるなど、適切なタイミングを選ぶ配慮も必要かもしれません。
転職先での面接での伝え方
転職先に前職場の退職理由を伝える際も、明らかに労働基準法などの法令に違反しているケースでない限り、職場環境への不満はダイレクトに口にしない方が無難かもしれません。
それよりも、自分が保育士として主に行なってきたこと、結果を出してきたことなどを具体的に示しながら、保育士としてのスキルや経験を活かす意欲をアピールできるとよいでしょう。
そのうえで、自身の成長やキャリアアップの意欲につなげます。 「もっと専門的なスキルを高めたい」「管理職を目指したい」などの目標を示し、そのために新しい環境で挑戦したいという積極的な理由にフォーカスできるとよいかもしれません。
【保育士の転職理由】転職に向けてのポイント
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保育士の転職は、個々の状況によってさまざまな理由がありますが、主に職場環境や待遇に対する不満が大きな要因であることが見えてきました。
そのような現状にあてはまると感じた保育士さんは、転職を考える際に以下のポイントを考慮できると、よりよい転職活動ができるかもしれません。
- 現状の問題点を客観的に整理する
- 自分のキャリアゴールを明確にする
- 新しい職場の労働条件や環境を確認する
- 転職後のキャリアパスをイメージする
- 保育士としての経験やスキルを活かせる職場を探す
保育士さんの転職理由は人それぞれでしょう。転職先を探す際に気になる、職場環境や待遇、働き方、またキャリアアップができる環境があるかといった職場ごとの状況は、求人広告を見るだけではつかみづらいかもしれませんね。
そのような悩みでなかなか転職に踏み出せなかったり、希望の転職先を探すのに行き詰まりを感じたりしている方のなかには、転職エージェントへ相談する保育士さんも多いようです。
待遇や働き方、キャリアプランなど、自分の希望をしっかり伝えたうえで、新しい転職先とのマッチングが叶うかもしれません。
また、はじめての転職や保育士としての勤務に不安を感じている方は、一度相談してみるだけでも、具体的な転職へのイメージがつかめるといったメリットもあるようです。
転職エージェントに相談する!出典:保育士の現状と主な取組/厚生労働省
出典:保育を取り巻く状況について/厚生労働省
転職理由ランキングで保育士としての働き方を見直そう
保育士さんにとって転職は大きな決断と言えます。自分に合った職場で働くことで、保育士としてのやりがいや満足度が高まることもあるでしょう。
転職理由はさまざまですが、転職先や業種、保育士資格や経験の活かし方などを慎重に検討し、よりよい働き方ができる環境でキャリアを築いていけるとよいですね。
なお、転職について気になっている保育士さんに向けて、保育士バンク!では就職・転職に向けたサポートを行なっています。
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