退職・転職時の退職交渉にあたって保育士さんが特にハードルの高さを感じるのが、勤務先からの引き止めではないでしょうか。今回は、手ごわい引き止めをしっかりガードして退職できる対処法について考えましょう。保育士さんが引き止められる理由を見ていきながら、引き止めへの対応策や引き止めにあった際の心構えを紹介します。
buritora/stock.adobe.com
退職交渉で引き止められる理由
まずは保育士さんが退職交渉する際に、なぜ引き止めにあってしまうのか、勤務先の立場で考えてみましょう。原因を探ることで適切な対策が見えてくるかもしれません。
人材不足
深刻な保育士の人材不足にある状況は、どの園でも大きく変わらないようです。
特に、経験豊富な保育士さんや子ども・保護者に人気が高い保育士さんは、退職によって園全体の運営に大きな影響を与える可能性も考えられるため、引き止められやすい傾向があります。
退職者が出たあとは欠員を補充する必要がありますが、保育士の需要は高いため、求人を出しても人材確保が難しい状況と言われています。
保育士不足が加速すれば、国から定められた保育士の配置基準を満たせなくなり、園児の受け入れ人数にも影響します。園児の減少は、引いては園の存続にも関わるでしょう。
後任確保の難しさ
保育士は専門性の高い職種であり、資格取得や実務経験が必要です。そのため、短期間で後任を見つけることは容易ではありません。
特に、退職を希望する保育士さんがある程度長く働いている場合や、経験豊富なベテラン保育士さんであれば、その穴を埋める人材を見つけるのはさらに困難となるでしょう。
また、新卒や中途採用者を受け入れた場合、OJTや研修などによる指導コストが発生します。
保育士さんの退職による穴を埋めるには、ただ人を雇うだけではなく、育成に関する多くの時間とコストを費やす必要があり、経営面での負担が大きくなると考える園も多いでしょう。
引き継ぎや業務負担の増加
保育士さんが退職する際、園としては後任に円滑に業務を引き継ぎ、子どもたちの保育に支障が出ないようにすることが大切です。
特に退職する保育士さんがクラス担任をしていたり、英語やパソコン業務など特別なスキルや経験を持っていたりする場合などでは、業務の引き継ぎには多大な時間と労力が必要になるでしょう。
すみやかに後任を決め、引き継ぎの手はずを整えなければなりませんが、保育士さんは日常の保育に忙しいことも多く、引き継ぎ業務には混乱がともなうことが予想されます。
また、保育士さんが一人退職することによって、残りの保育士の業務負担が増加することもあるでしょう。これは、子ども一人ひとりに十分な目が行き届かなくなる可能性と、保育の質の低下につながる恐れがあります。
職員や子ども・保護者への影響
退職するのがベテラン保育士さんであることや、後輩指導やリーダーとしての役割を果たしている場合などは、退職によって職員の働き方やチームワークに影響をおよぼすことがあるでしょう。
退職する人によってはチームワークが低下し、園全体の士気が下がる可能性があります。
また若手であっても、子どもたちや保護者から人気や信頼を得ている保育士さん、職場でのムードメーカー的なポジションにいた保育士さんなどが退職する場合も影響が予想されます。
特に、担当していた保育士が急に退職した場合や退職者が続くような場合は、保護者は子どもへの影響を心配し、園への不信感を持つこともあるでしょう。これも園としては避けたい状態と言えます。
退職交渉で引き止められたときの対応策
polkadot/stock.adobe.com
退職交渉で引き止めにあった場合には、どんな対応をとればよいのでしょうか。
ここでは、あくまでも円満に退職することを前提にし、引き止めのガード策について考えます。
自分の意思を明確に伝える
引き止められたら、「退職したい」という自分の意思を明確に相手に伝えることがまずなによりも重要と言えるでしょう。
ここでは、曖昧な言葉や退職以外にも選択肢があると取られてしまうような表現は避けましょう。相手に誤解を与えてしまったり、強く引き止めれば受け入れそうと思われて、退職交渉が長引いたりする可能性があります。
なぜ退職するのか、今後どのようなキャリアプランやライフプランを持っていて、そのために退職が必要なステップであるということを丁寧に説明しましょう。
感謝の気持ちを伝える
退職交渉の際に引き止められるということは、上司や園側に高く評価され、必要とされている証拠と考えましょう。
その評価に感謝しつつ、園や上司・同僚などともに働く人たちに、これまでお世話になったこと、保育士として自分の成長や経験へつながったことへの感謝の気持ちを伝えましょう。
感謝の気持ちをしっかり伝えることで、決して勤務先に対するネガティブな感情が退職の大きな理由ではないことをアピールできます。
また言葉で「今まで本当にお世話になりました。ありがとうございました」と過去形ではっきり伝えることで、退職の意思が揺らがないことをやんわりと伝えられる効果もあります。
代替案を提案する
検討が可能なのであれば、こちらから代替案を提案することで、園側の負担を軽減して引き止めを緩和することができるかもしれません。
たとえば、後任を確保するまでの期間を定め、その間だけパート勤務でサポート的に続けることを提案するなどがあります。ほかにも、退職時期を遅らせる、週数・勤務時間を減らす、他部署に移るなどの代替案なども有効かもしれません。
ここで大切なのは、園側から提示された代替案を受けるのではなく、自分から可能な案を提案して交渉するということです。
これにより、相手にとって都合のよい代替案になってしまうことを防ぎます。
あくまで譲歩しているのはこちらであるということを忘れないように、その際の働き方、期間、給与などもしっかり交渉しましょう。
簡単1分登録!転職相談
転職に関するご質問や情報収集だけでもかまいません。
まずはお気軽にご相談ください!
読んでおきたいおすすめ記事
保育士をサポート・支える仕事特集!異業種への転職も含めた多様な選択肢
保育士の経験を経て、これからは保育士のサポート役として働きたいという方はいませんか?責任の重い仕事だからこそ、人の優しさや支えが必要不可欠な仕事かもしれませんね。今回は、保育士さんをサポートする・支え...
保育士資格を活かせる在宅ワークのお仕事特集!保育関係の自宅でできる仕事を徹底解説
保育士資格を活かせる在宅ワークにはどのような仕事があるのでしょうか。保育園の事務職や保育ママ、保育園業務のサポートなど自宅でできる仕事は意外に多いもの。今回は、保育士資格を活かして働ける在宅ワークの仕...
病院内保育とは。役割や仕事内容、病院内保育士として働くメリット
病院内保育とは、病院や医療施設の中、または隣接する場所に設置されている保育園のことです。保育園の形態のひとつであり、省略して院内保育と呼ばれることもあります。転職を考えている保育士さんの中には、病院内...
子ども・赤ちゃんと関わる仕事31選!資格の有無や保育士以外の仕事を関わる子どもの年齢別に紹介
子どもと関わる仕事というと主に保育園や幼稚園を思い浮かべますが、それ以外にも意外とたくさんあります!今回は赤ちゃんや子どもと関わる仕事31選を紹介!無資格で活躍できる職場もまとめました。子どもと携わる...
保育士を辞める!次の仕事は?キャリアを活かせるおすすめ転職先7選!転職事例も紹介
保育士を辞めたあとに次の仕事を探している方に向けて、資格や経験を活かせる仕事を紹介します。ベビーシッターなど子どもと関わる仕事はもちろん、一般企業での事務職や保育園運営会社での本社勤務といった道も選べ...
保育士から転職したい!転職先としておすすめの異業種22選。保育士以外の仕事やメリット・デメリットも
保育士以外から異業種への転職を考えている際、どのような転職先がおすすめなのでしょうか。今回は、次の仕事として保育士から転職しやすいおすすめの異業種22選を紹介します。保育士から異業種に転職するメリット...
保育園運営会社の仕事内容とは?本社勤務でも保育士資格は必要?働くメリットや求人事情まで
保育園運営会社にはどんな仕事があるのでしょうか?保育園運営会社で働くことは「本社勤務」とも呼ばれ、保育園の運営に携わる仕事として、主に一般企業に就職したい保育士さんにとって人気の高い職種のようです。今...
【2024年最新】保育士に人気の転職先ランキング!異業種や選ばれる職場を一挙公開
保育士の資格を活かして働ける人気の転職先をランキング形式で紹介!企業主導型保育園や病院内保育所、ベビーシッターなど保育士経験やスキルを活かせる職場はたくさんあります!今回は保育施設や異業種別に詳しく紹...
【完全版】保育士資格を活かせる仕事・働ける企業25選!
保育園で保育士として働くのが辛いと感じて、転職を考えているという方がいるかもしれません。しかし、せっかく取得した保育士資格を活かして働きたいですよね!保育士として得たスキルや経験は一般企業や福祉施設、...
【2024年最新版】幼稚園教諭免許は更新が必要?廃止の手続きや期限、対象者をわかりやすく解説
幼稚園教諭免許は更新が必要なのか、費用や手続き方法などを知りたい方もいるでしょう。今回は、2022年7月1日より廃止された教員免許更新制について詳しく、そしてわかりやすく紹介します。幼稚園教諭免許を更...
保育士は年度途中に退職してもいいの?理由の伝え方や挨拶例、再就職への影響
「年度途中で退職したい...けれど勇気が出ない」と悩む保育士さんはいませんか。クラス担任だったり、人手不足だったりすると、退職していいのか躊躇してしまうこともありますよね。そもそも年度途中で辞めるのは...
幼稚園教諭からの転職先特集!資格を活かせる魅力的な仕事18選
仕事量の多さや継続して働くことへの不安などを抱え、幼稚園教諭としての働き方を見直す方はいませんか。幼稚園教諭の転職を検討中の方に向けて、経験やスキルを活かせる18の職場を紹介します。保育系の仕事から一...
【2024年度】放課後児童支援員の給料はいくら?年代別の年収やこの先給与は上がるのかを解説
放課後児童クラブや児童館などで働く「放課後児童支援員」の平均給料はいくらなのでしょうか。別名「学童支援員」とも呼ばれ、「給与が低い」というイメージがあるようですが、国からの処遇改善制度などにより、これ...
保育士が働ける保育士以外の仕事21選。資格や経験を活かせるおすすめの就職先
保育園以外の職場に転職・就職先を探す保育士さんもいるでしょう。今回は企業内保育所や託児施設、児童福祉施設など、保育士さんが働ける保育園以外の職場を21施設紹介!自身の働き方や保育観を見つめ直し、勤務先...
- 同じカテゴリの記事一覧へ
退職交渉で引き止めに流されないために
退職交渉の中でも、引き止めにあうことが大きなストレスだと感じる保育士さんは少なくないようです。
保育士さんが引き止められた際に「流されない」ための心構えを紹介します。
気持ちを落ち着かせる
強く引き止められると感情的になることがあるでしょう。気持ちを落ち着かせて対応することは非常に大切です。
引き止めにあたっては「転職しても変わらない」「ここであきらめたらどこへ行っても通用しない」「子どもたちを裏切ることになる」など、否定的な言葉を投げかけてくることがあるかもしれません。
また、退職理由が待遇や就労環境に対する不満だった場合は、改善することを提案する、人間関係の不満がきっかけであれば、なだめたり関係回復を促したりすることもあるかもしれません。
強い言葉や口調でまくしたる・厳しく反論するといった反応をされると、どんなに退職の意思を固めていても感情には過度なストレスがかかります。
このような場合に気持ちを落ち着けるためには、深呼吸が有効です。
しっかり意識しながら息を深くゆっくり吐くことで、副交感神経の働きが高まり、自律神経をバランスよく作用させることができると言われます。
できるだけ冷静に、感情に流されないこと、気持ちを揺るがせないことを心がけましょう。
自分のキャリアプランを再確認する
退職や転職を考えている間は、さまざまな新しい情報をインプットする機会や考えなくてはいけないことが増えるため、つい自分の軸や初心を忘れて浮ついてしまいがちです。
このような状態でいるときに、あの手この手による引き止めにあうことで、さらに混乱し、冷静な判断が失われてしまうことも。
そうならないためには、一度立ち止まって自分のキャリアプランを再確認しましょう。
本当に退職したいのか、引き止めに応じて妥協できるのか、そもそもの退職の必要性も含めながら、じっくりと検討することが大切です。
そのためにも、退職交渉はできるだけ時間的に余裕をもって望めるとよいかもしれません。
周囲のサポートを活用する
退職にあたっては、さまざまな悩みや葛藤を乗り越えて決断したという保育士さんも多いでしょう。
ひとりで考えて結論を出したという保育士さんも、信頼できる家族や友人、先輩保育士、恩師などに相談し、さまざまな立場からアドバイスをもらうことが大切かもしれません。
また必要であれば、キャリアコンサルタントや専門家、労働組合などの第三者に相談するのも有効です。
身近な人からの親身な言葉やプロである第三者からのアドバイスをしっかり胸にとどめておくことで、無理な引き止めにあった場合も、流されない意思を強く持つ手助けとなるでしょう。
転職先を見つけて退職交渉する!
引き止めへの対策を知って退職交渉を成功させよう
yamasan/stock.adobe.com
保育士の退職交渉で引き止められる理由、引き止められた際の対応策、引き止めに流されない心構えなどについて見てきました。
退職を決意した保育士さんが退職交渉にのぞむ際は、引き止めにあっても流されたり感情的になったりすることなく、円満に退職できるための対処方法を身につけられるとよいかもしれませんね。
転職を目指す保育士さんや、退職してから身のふりを考えたい保育士さんは、保育士バンク!へご相談ください。
保育士バンク!は、保育士資格を活かして働ける職場と保育士さんをつなぐ求人サービスです。
豊富な求人の中から、あなたのご希望に合う仕事を紹介します。
転職に向けた悩みや相談もお聞かせください。もちろんサービスの利用は完全無料です!お気軽にお問い合わせください。