障がい児保育において、加配保育士の配置は子どもたちの安全と適切な支援のために重要な役割を果たします。しかし、加配保育士が必要となる基準は自治体によって異なるため、理解するのが難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、障がい児保育における加配基準について詳しく紹介します。
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目次
障がい児保育の基本と「加配」について
「障がい児保育」とは、身体不自由や知的障がい、発達障がいなどを抱える子どもたちの成長をサポートし、安心して過ごせる環境を提供する保育の形です。
障がい児保育が行なわれる施設
障がい児保育は、未就学児から小学生以上までと幅広い支援が必要とされていることから、児童発達支援施設などの専門施設だけでなく、保育園や幼稚園、認定こども園、学童保育などの施設で行なわれています。
各施設で行なわれる障がい児保育の内容については、それぞれの施設に通園・通所する児童の障がいの度合いや種類によって個別に行なわれるため、決まった制度やシステムがなく、支援の方法も施設や対象の子どもによってさまざまです。
健常児とともに保育を行なう施設では、個々の障がいに応じた適切な支援を行なうことで、子どもたちの日常生活における困難へのサポートになるよう配慮する必要があります。
「加配」と保育士ニーズについて
保育園や幼稚園などの施設で障がい児を受け入れる場合は、保育士の配置基準に加えて、障がい児に対して一定数の保育士を配置することが法令で義務づけられています。
これを「加配」といい、この際に増員する保育士を「加配保育士」と呼びます。
障がい児の支援が社会的に一般的になってきた現状もあり、障がい児を受け入れている保育施設は、2012年の14600施設から年々増え、2023年には21100施設にまで増加しています。
その現状を受け、保育士の加配については、国と各自治体が財源を確保して障がい児の手厚い支援を後押ししています。
このような障がい児保育のニーズからも、専門的な資格を持つ保育士の需要が高まっています。
【障がい児保育】加配が必要となるケース
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保育園などの施設が保育士の加配制度を利用する場合は、自治体からの補助金が必要です。
そのため加配保育士配置に至るまでの手順は、以下のように保護者・施設・自治体の三者の連携によって行われます。
(1)障がい児や個別の支援が必要な子どもを施設が受け入れる
(2)障がい児の保護者が、保育士の加配を希望する
(3)保護者が、主治医の診断書と加配申請書類を自治体に提出する
(4)自治体から施設に加配保育士受け入れ要請が行なわれる
(5)施設が補助金の申請や受け入れ環境の整備、加配保育士の募集を行なう
自治体によって異なりますが、保育士の加配はおおむね上記のような流れで実施されます。
また、どの自治体においても、原則として障がい児が3歳以上であること、加配の可否については医療機関の診断を受けて自治体が承認することが必要となっているようです。
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【障がい児保育】加配保育士の配置基準
保育士の加配についての基準は自治体によってさまざまです。ここでは、加配の実施に対する基準と配置に対する基準について見ていきましょう。
加配が行なわれる基準
原則として加配が行なわれるにあたり、子どもの障がいの程度や種類などに対する決まりはありません。
一般的には、障がい児保育の現場として必要な支援が行き届くことが目的のため「障がいにより保育上や日常生活の困難が生じる」ことが基準と考えてよいでしょう。
実績として、以下のいずれかに該当する子どもに対して加配保育士の導入が検討されるようです。
- 肢体不自由や知的の遅れがあり日常生活の介助が必要
- 発達障がいなどで集団生活への適応が困難
- 情緒の不安定などで特別な支援が必要
- 療育手帳や障がい者手帳を所有している
基本的には、保護者が加配を希望し、医療機関が発行する診断書を取得することが前提となるので、施設側が独断で加配保育士を手配することは手順としてできないようです。
加配保育士の配置基準
加配保育士の配置基準は自治体によって異なり、基準の方向性もさまざまです。
厳格な基準を設けずに、個々の子どものニーズに合わせた柔軟な配置基準を導入している自治体が増えています。
その中でも、主な例としては以下のような基準を定めている自治体が多いようです。
- 子どもと保育士の比率による基準
- 子どもの障がいの程度による基準
(例)「障がい児2人にあたり保育士1人配置」
(例)「自治体が定めたランクによる障がいの程度による配置」
また、施設の規模により補助金となる「障害児保育加算」の基準を設けているケースもあるため、加配保育士を導入する基準については、自治体の最新の情報を参照する必要があるでしょう。
障がい児保育に興味がある
【障がい児保育】加配保育を行なう上での課題
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保育士の加配制度は、子どもたちの安全と適切な支援を実現するために重要な役割を果たしていますが、以下のようなさまざまな課題も指摘されています。
加配保育士の不足
加配保育士は障がい児の専任となる場面が多く、障がい児保育に対する経験や知識が必要とされることから、新規採用が難しいことが挙げられます。
このような保育士さんの人員不足には、多くの施設が頭を悩ませているようです。そのため潜在保育士や障がい児保育未経験の保育士についても、非常に広く求められている現状があります。
加配基準の曖昧さ
保育現場において対応が必要となる「障がい児保育」の判断が自治体や保育施設で異なることで、加配に向けて行政と支援の足並みが揃わなかったり、子どもや保護者に必要な支援が行き届かなかったりといった状態が起こるケースがあります。
療育施設と保育園との連携やフォローアップが不十分になってしまうことや、障がいが見えづらいグレーゾーンの子どもに対する加配や対策なども、多くの施設で課題となっています。
質の高い支援の提供
障がい児保育に携わる場合は、子どもそれぞれの状態や発達段階に合わせた個別の支援計画を立てる、療育施設との連携を行なうなどの専門業務が生じることがあります。
また、日常的な声かけや見守りにおいては、場合によって健常児と異なる対応が必要になることもあり、特別な配慮を要する場面も多々あるでしょう。
このような障がい児保育の質の向上に対するニーズに応えて、施設内で支援のための環境を整えることや、加配保育士や職員を対象とした研修・勉強会の実施などが、国や自治体の施策として求められています。
障がい児保育への転職は、自治体ごとの加配基準をチェックしよう
障がい児保育は、身体的・知的・発達上の課題など、さまざまな障がいを抱える子どもたちに対して、それぞれの困難に立ち向かえるよう支援する、とても有意義な役割と言えるでしょう。
すべての子どもの健やかな成長を見守ることを基本としながら、障がい児保育に関する正しい理解を深め、子どもたち一人ひとりに合ったきめ細かい支援を行なっていくことが重要です。
外からはなかなか見えづらい障がい児保育の現場ですが、「障がい児保育に興味がある」「加配保育士になるにはどうしたらいい?」と考えている保育士さんは、保育士バンク!にご相談ください。
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