日本における障がい児保育の歴史。現状とこれからの展望

障がい児保育は、長い歴史の中でさまざまな変遷を遂げてきました。社会課題や福祉・教育活動の中での問題点を段階的に解決しながら、今日の障がい児保育の形が作られてきたと言えます。近年ではインクルーシブ教育の理念に基づいた新たな療育環境も求められています。今回は、障がい児保育の歴史から、現状と展望について紹介します。


青空と笑顔の子どもたち

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障がい児保育とは

障がい児保育は、身体不自由や知的障がい、発達障がいなど、日常生活に困難を抱える子どもたちを対象とした保育です。一人ひとりに合わせたサポートを行なうことで、子どもたちが安心して過ごせる環境を提供します。


未就学児の障がい児保育を行なう施設には、保育園・幼稚園・認定こども園といった一般的な保育施設から、未就学児を対象とした「児童発達支援施設」などがあります。


小学生以上は、障がい児を受け入れている学童保育や、主に発達障がい児の療育を行なう「放課後等デイサービス」、通所ではなく生活の場となる「障がい児入所施設」などがあります。


これらの施設では、法令により保育士の配置が定められているものが多くあります。そのため、専門知識や経験を持つ保育士の需要は非常に高いと言えるでしょう。


一般の保育園・幼稚園・認定こども園においては、保護者が自治体に申請することで、必要に応じて保育士の増員を希望できる「加配」制度があり、障がい児一人ひとりのニーズにきめ細やかに対応することが求められています。


学童保育でも、障がい児を受け入れるケースが増えており、専門知識や経験を持った保育士は広く必要とされています。

【障がい児保育の歴史】昭和から令和まで

畳の上のおはじき

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日本での障がい児に対する保育の歴史を、戦後から現在にかけて見ていきましょう。



昭和から平成にかけて


日本における障がい児保育の歴史は、戦後すぐの1947年が契機と言えます。


この年、日本国憲法に続く形で「学校教育法」が公布され、全国のろう学校・盲学校・養護学校に幼稚部を設置できる法令が制定されました。


さらに1974年には、現在の厚生労働省によって「障害児保育事業実施要綱」が定められました。これにより、全国の地方自治体ごとに保育園での障がい児保育が実施されることとなりました。


この取り組みにより、都道府県ごとに指定の保育所で健常児と障がい児の統合保育が行なわれました。


当時は、3歳以上の児童を原則として、1園につき8名の受け入れ、障がい児4名につき専任の保母(現在の保育士)1名という配置基準が定められていたようです。


また同時に「私立幼稚園特殊教育費補助事業」が始まり、全国の幼稚園でも同様に障がい児保育の施策が始まります。


1978年には制度改正が行なわれ、保育所が障がい児の受け入れを行なう際に国から補助金が支給される制度が整い、障がい児への保育を広く行なえるよう基盤づくりが進められました。



平成から令和にかけて


2004年に厚生労働省が打ち出した「子ども・子育て応援プラン」では、「障がいのある子どもの育ちを支援し、一人ひとりの適正に応じた社会的・職業的な自立が促進される」という展望が、目指すべき社会の姿として打ち出されました。


また、2008年には保育士が指針とすべき「保育所保育指針改訂」において、障がい児の保育にあたって個別の指導計画を作成することが示されました。


これにより、保育士は障がい児保育の知見や手法の習得を求められるようになりました。


障がい児通所支援においては、2012年に児童福祉法の法改正が行なわれ、身近な地域で支援を受けられることを目指した障がい種別の体系が再編され、児童発達支援や放課後等デイサービスを中心とする制度体系の骨格が形づくられました。


厚生労働省の資料によれば、2012年に約1700カ所設置されていた児童発達支援施設は、2021年には約8200カ所へ増加。放課後等デイサービスの設置は同年に約16700カ所に達するなど、飛躍的な増加を見せました。


これは、発達障がいに対する社会的な認知の広がりや、女性の就労率の上昇などが背景であると考えられると言われます。


令和以降の障がい児保育は、児童福祉法の改正が段階的に進んだことで、増加・拡大するニーズにあわせて発展しています。特に近年はインクルーシブ教育の理念に基づき、地域の中で障がい児と健常者がともに学び成長できる環境づくりが全国的に進められています。

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【障がい児保育の歴史】主な施設から見る現状

未就学の子どもを対象にした障がい児支援を行なっている施設を紹介しながら、役割と現状について見ていきましょう。


施設の形態ごとに特徴はさまざまですが、いずれの現場でも保育士が求められていることが多いようです。



保育園・認定こども園


基本的には多くの保育園で障がい児の保育が行なわれています。

園児によって加配が必要な場合もあるため、障がい児を受け入れている園では保育士のニーズが特に高いと言えます。


「保育所保育指針」に以下のような文言があることからも、障がい児に配慮した対応が保育の基本指針のひとつとして捉えられていることが分かります。


障がいのある子どもの保育については、一人一人の子どもの発達過程や障がいの状態を把握し、適切な環境の下で、障がいのある子どもが他の子どもとの生活を通して共に成長できるよう、指導計画の中に位置付けること。また、子どもの状況に応じた保育を実施する観点から、家庭や関係機関と連携した支援のための計画を個別に作成するなど適切な対応を図ること。


出典:保育所保育指針/厚生労働省から一部抜粋


ほかにも「保育所保育指針」には、障がいや発達の課題が見られる子どもに対して、一人ひとりの心身の状態に応じて嘱託医やかかりつけ医、市町村などと連携・協力を図ることなど、障がい児保育に対する具体的な対応が明記されています。



児童発達支援施設


発達障がいや療育が必要な0歳からの未就学児を対象とした通所施設で、児童福祉法に基づく障がい児通所支援事業のひとつです。


発達に障がいを抱えた子どもに対する支援は「療育」と呼ばれます。医師による診断により、自治体から療育の必要性が認定された子どもが対象となります。


施設では、食事・排泄・入浴といった日常生活における基本的な動作の指導や、集団生活への適応訓練といった支援や療育を行なうことで、子どもたちの心身の発達を促し、社会参加をサポートすることを目的とした取り組みが行なわれています。


子どもの特性によって個別に支援計画が作成され、運動療育、言語療育、音楽療法、作業療法などさまざまなアプローチが行なわれます。また、保護者に対する支援も重要なサポートのひとつです。


就学後も療育を継続する場合は、同様に自治体からの受給者証の発行手続きを行なった上で、「放課後等デイサービス」での支援に移行します。



障がい児入所施設


24時間体制で重度の障がいを持つ子どもたちの生活支援や療育を行なうのが、この障がい児入所施設です。


主に心身障がい児を対象にしており、医療的ケアが必要な子どもも受け入れています。生活全般を施設内で過ごすことから、重度の心身障がいを持つ子どもの利用が多いようです。


支援内容は、医療ケア、日常生活の支援、療育、リハビリテーションなど幅広く行われます。子どもの状態や家庭の事情などによって、長期からショートステイなどに柔軟に対応する施設もあります。

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【障がい児保育の歴史】課題と展望

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現在の障がい児保育における課題と、今後の展望について見ていきましょう。



児童発達支援センターの在り方と位置づけ


これまでの支援施設は、肢体不自由児を対象とした「医療型」、発達障がいなどを対象とした「福祉型」に分類されていました。


そのため、抱えている障がいに該当する施設が地域にないなどで、なかなか支援が行き届かないという問題が指摘されており、これらの解消に向けて、2024年度から児童発達支援施設における「福祉型」「医療型」の類型を一元化する施策が実施されています。


これにより、より身近な地域支援が利用しやすくなることに加え、施設の統合により保育士の人手不足による発達支援の手詰まり解消にもつながるかもしれません。


利用者のニーズも多様化していることも踏まえ、複数の障がいを抱えている児童に対しても包括的な支援が実現することで、療育やサポートの向上が期待されています。



インクルージョンの推進


厚生労働省は児童発達支援センターに対して、地域の中核となる支援機関として、地域に住む発達の気になる子どもやその家族、子どもに関わる関係機関なども広く対象とする「地域支援」を実施することを通知しています。


そのため、児童発達支援センターによる「保育所等訪問支援」は重要な事業と位置づけられていますが、取り組みには地域や施設ごとに格差が生じていることが大きな課題です。


保育所等訪問支援事業では、児童発達支援センターと保育所が双方で子どもの支援について一体的な見直し・留意点をを検討しながら、支援計画を練っていく必要があると言われています。


これらの格差を埋めていくためには、保育園など障がいの有無に関わらずともに保育や支援を受けることができる、インクルーシブな保育の形が実現することが望まれるでしょう。



障がい児保育の質の底上げ


障がい児保育における支援の質の底上げは非常に重要な課題とされています。


厚生労働省が行なっている「障害児通所支援の在り方に関する検討会」の報告書では、支援の質の向上に向けて、各児童発達支援センターが地域の中核として対策することが求められています。


しかし、これらはより専門性と経験を持つ支援者やスタッフ、予算が必要になることから、地域単位で容易に解決できる問題とは言い難いでしょう。


支援の質の向上には、児童発達支援管理責任者といった高い専門性を持つ人材の育成と、それらの専門性を持った人材が見合った待遇で働ける、就労環境の整備が必要と考えられます。またそれにともない、現場を支える保育士や指導員の確保も急務と言えるでしょう。


国によってこれらの処遇改善が的確に行なわれ、保育士など支援にあたる職員がより働きやすくなることが、障がい児保育における質の向上につながると言えるかもしれません。

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歴史を振り返ることで、未来の障がい児保育につなげよう

障がい児保育は、子どもたちの成長と可能性を支える重要な役割を担っています。やりがいのある仕事ではありますが、専門性の高い知識や経験が必要となります。


歴史と現状を振り返って、より障がい児保育の現場には保育士などの専門性を持ったスタッフが必要であることが浮き彫りになったと感じるかもしれません。


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出典:学校教育法/厚生労働省

出典:平成30年版 障害者白書(全体版)/内閣府

出典:保育対策等促進事業の実施について」の一部改正について/厚生労働省

出典:福祉・介護障害児支援施策/厚生労働省

出典:就学前障害児の発達支援の無償化について/厚生労働省

出典:障害児支援/こども家庭庁

出典:障害児通所支援の在り方に関する検討会報告書/厚生労働省

出典:「障害児通所支援の在り方に関する検討会」の報告書について/厚生労働省

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