これからフリーランスや個人事業主で活動する保育士さんの中には「今は収入なしだから開業届はいらないのでは?」と考える方がいるかもしれません。結論から言うと、開業届は収入なしでも提出したほうがよいでしょう。なぜなら、収入額に左右されないメリットがたくさんあるからです。今回は開業届の基礎知識から、収入なしでも開業届を提出すべき8つの理由を紹介します。
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収入なしでも出した方がよい!開業届の基本
開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。
これは、提出者が開業したことを税務署に申告するための書類で、対象の事業が本業・副業にかかわらず提出するのが原則です。提出先は所轄の税務署です。窓口だけでなくウェブや郵送でも提出できます。
開業届の提出は「事業を開始した日から1カ月以内」が提出期限ですが、期限を過ぎてしまったり提出せずに事業を続けたりしても、罰則などは特にありません。
また、開業から年月が経ってしまっていても、さかのぼって提出することが可能です。
そのような理由から、開業届をあえて提出しない、収益が安定してから提出するという考えを持っている事業主も多いようです。
開業届を提出する理由のひとつには、確定申告の問題があります。
個人事業の所得であれば、年間48万円(副業は年間所得20万円)を超えると確定申告をする必要があります。
開業届を提出していれば、確定申告の際に大きく影響します。そのため、年間の所得が確定申告が必要な額に達した時点で提出すればよいと考える方が少ないようです。
しかし、事業での収入がない場合はもちろん、たとえ赤字であっても事業を始めたのであれば開業届は出すことによるメリットが多いのです。
その理由について、以下で見ていきましょう。
収入なしでも開業届を提出するメリット
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収入がなくても開業届を提出することで得られるメリットは数多くあります。
大きく分けると、確定申告、金融関係、事業運営上で、開業届の提出による恩恵を受ける場面が増えるようです。
開業届を出すことによる8つのメリットを、上記のカテゴリーごとに見ていきましょう。
確定申告
【1】最大65万円の税控除が受けられる
開業届を提出していれば、確定申告の際に「青色申告」を利用できるようになります。
青色申告を行なうことで最大65万円の税控除が受けられるのが、開業届提出の最大のメリットと言えます。
先述した通り、年間の所得が規定の額以上ある場合は確定申告を行なう必要があります。
青色申告を利用しない場合は「白色申告」を利用することになりますが、この場合は控除が受けられません。
青色申告は、開業届を提出し「青色申告承認申請」を行なうことで利用が可能となります。この申請書の提出期限は「開業日から2カ月以内」です。
開業日は、開業届を出すことで決定されます。そのため、この期限内に開業届が提出されていないと、その年度に青色申告を利用できず、税控除を受けられなくなるでしょう。
【2】赤字の繰り越しができる
青色申告を利用することで得られるもうひとつのメリットは、赤字が出た場合に翌年以降に繰り越しができる点です。白色申告を使用している場合は繰り越しできません。
この繰り越し制度を利用できれば、赤字になった年の翌年以降に収入があった際に、前年度の赤字を繰り越すことで節税の効果が期待できます。
赤字は最大3年の繰り越しが可能ですので、事業を軌道に乗せるために計画的に運営することもできるでしょう。
【3】家族への給与を経費にできる
配偶者や親きょうだいなど自分の家族を雇用する場合には、その給与を経費として計上することができます。これはかなり大きな節税となります。
これには青色申告を行なう必要があります。白色申告では利用できない制度なので、これにも開業届の提出が必要になるでしょう。
金融関係
【4】事業名義の銀行口座を開設できる
開業届を提出していることで、事業名義の銀行口座を開設することができます。
プライベート用と口座を分けることで入出金が厳密に管理できるので、確定申告では格段に作業効率が上がり、ミスや申告漏れを防ぐことにもつながります。
事業名義の口座は、法人用のクレジットカードを作る際や、税務調査が入る場合にも必要になってくるでしょう。
【5】金融機関からの融資を受けられる
事業を運営していくなかで、ビジネスローンなど金融機関からの融資が必要な局面があるかもしれません。
個人事業主として融資を受ける場合にも、開業証明書が必要になります。設備投資などの目的で、さしあたってまとまった金額が必要な場合は、融資が受けられると心強いですね。
【6】助成金や補助金の申請ができる
開業にあたっては、なにかと資金がかかるでしょう。そんな個人事業主を支援するために、国からさまざまな助成金・支援金などに制度が設けられています。
小規模事業者や個人事業主の開業を支援する助成金や補助金には、主に以下があります(自治体主導のものなどは各母体によって名称が異なります)。
- 地域雇用開発助成金
- 創業促進補助金
- IT導入補助金
- 起業支援金
これらの助成金や支援金を受給するには、事業内容などが分かる書類を提出して審査を受ける必要があります。審査の際には、支給元から開業届の控えや事業証明書の提出が求められます。
事業運営
【7】小規模企業共済に加入できる
小規模企業共済とは「小規模な企業のための退職金制度」です。廃業するときや退職するときのために、退職金代わりに資金を積み立てることができます。
加入は任意ですが、掛金は全額税控除となるため節税にもなります。
この小規模共済に加入するための手続きには、開業届の控えが必要になります。
【8】事業の証明書になる
開業届を提出すると「開業届出済証明書」が発行され、個人事業主の証明になります。
融資や補助金を申請する際に必要になることは先述しましたが、ほかにもさまざまな場面で必要になることがあるでしょう。
たとえば、子どもが保育園に入園する際に保護者が勤務していることを証明する申請書類や、二次元バーコード決済を支払方法に導入する場合の手続きなどで開業の証明が必要になります。
ライフステージや運営上のあらゆる場面で、開業届の提出をしていることは有利に働くでしょう。
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