残業や業務量の多さが問題になる保育士さんの仕事。忙しい時期は事務作業を持ち帰る日が続くことも…という保育士さんも少なくないようです。ここでは、保育士さんの働き方を効率化する「業務改善」をテーマに、保育士さんができる業務改善へのアプローチ、こども家庭庁が推進する「保育DX」についてや導入事例を見ていきます。

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保育士の業務改善が急務な理由とその対策
保育士さんの業務改善は、いまや急務と言うべき課題ではないでしょうか。
この課題が取り上げられる背景には、近年続いている慢性的な保育士不足があります。
厚生労働省が公表している資料「保育士の現状と主な取組」では、保育士の退職理由として、職場の人間関係、給料面の理由に次いで、「仕事量が多い」「労働時間が長い」が上位 を占めています。

これらを見て分かるように、保育士の業務量や残業時間を減らし、働きやすい環境を整えワークライフバランスを確保することが、保育士不足解消の一助となる可能性が高いのです。
また、この業務効率化が実現し定着することで、保育の質向上にもつながることが期待されます。
負担が大きい保育士の業務とは
保育士さんにとって、まず改善したい業務の筆頭とされているのが「事務作業」とされています。
2020年に公表された「保育事業者の事務負担軽減等に関する調査・分析報告書」においては、保育士さんが事務業務にかける負担は、おおむね1カ月に50時間と推定されています。
また、特に業務量が多い保育士さんの負担になっている業務の例として以下が挙げられています。
【給食関連事務】
- アレルギー管理
【保護者対応関連】
- 事務日次以外の情報発信
- 園児写真撮影・整理・販売管理
- 遅刻・休み・延長等の受付・記録・引継
【その他保育関連事務】
- 保育計画策定、実績管理
- 防火・防災
- 園児情報管理、登降園の記録
- 地域安全情報の共有・管理
- 職員会議の書類作成業務
これらを踏まえて、事務作業の業務改善案として保育園単位でのICT導入が進められています。
ICT活用による業務改善の一例
保育の現場における計画や記録をはじめ、数ある保育士さんの負担業務の見直しとして、ICTを周辺業務に活用していく取り組みを行なっている園も増えてきています。
これらの具体的な課題と、ICT導入によって業務改善した例を見てみましょう。

出典:「ロボット・AI・ICT等を活用した保育士の業務負担軽減・業務の再構築に関する調査研究」について/厚生労働省
上記は、複数園の取り組み事例をまとめています。
いずれも、事務作業の物理的・時間的な負担や、園児の安全への心理的負担が、ICT導入によって大幅に改善されている一例として参考になるでしょう。
また、ICTの活用により、保護者との円滑なコミュニケーションや負担軽減による保育の質向上 についても効果が現れることも実例として示されています。
業務改善4つの課題と保育士さんができる解決策

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厚生労働省が2021年に発行した「保育分野の業務負担軽減・業務の再構築のためのガイドライン」では、業務改善のヒントとなる「4つの課題」が提示されています。
各課題について以下でくわしく見ていきましょう。
ICTの導入
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前章でもとりあげたように、保育計画や連絡帳などの日常的な書類作成、保護者との情報共有、職員間の情報共有などへのICT活用をすすめている園は増えているようです。
ほかにも、登降園の記録や給食費および各費用の徴収、写真管理といった保護者との情報共有やコミュニケーション分野、また保育士さんの勤務シフトの作成・情報共有といったマネジメント業務への活用にも非常に効果があります。
園児の安全管理に関しては、センサーなどを用いた午睡時の業務支援、緊急連絡をはじめとする情報共有にもICTを導入することによって、より安全性を高めた保育が実現できます。
保育士さんができること
ICTの導入は、各園など施設によって検討・決定されるため、保育士さんが個別に解決できるものではありませんが、導入にあたってスムーズに活用できるよう、ICTスキルを高める必要があります。
こども家庭庁が発表した「保育DXの実現に向けた提言」においても、国と自治体に対して以下の対策が提言されています。
ICT研修の受講費用の補助や、キャリアアップ研修へのICT分野のメニュー化、処遇改善加算に「ICTリーダー」を増設するなど、保育職員のICTスキル水準を高めるための施策を実施する。
保育士さんのITスキルやリテラシーも今後求められていく ことを想定して、それらに対応できるように高めていくのがのぞましいでしょう。
保育補助の活用
課題・解決イメージ
無資格でも保育園のスタッフとして勤務ができる「保育補助者」は、清掃や洗濯などの保育の周辺業務を主に担う心強い存在です。
これによって有資格者である保育士さんは、本来の保育業務に専念することができます。
このように周辺業務を担当する保育補助スタッフと連携することで、保育士さんの業務改善に大きく貢献できるでしょう。
保育士さんができること
保育補助スタッフを活用して業務改善するには、まずそれぞれの業務分担を明確にするために担当分けを実行しましょう。
また、それぞれの業務を行なっていく中で、円滑にコミュニケーションをとりながら、必要に応じて業務分担の見直しを検討することも大切です。
業務を明確に分担することのデメリットとして、コミュニケーション不足によるトラブルの誘発が考えられます。そういったことのないように、保育補助スタッフとの密な連携を心がけたいですね。
記録・書類業務の見直し・工夫
課題・解決イメージ
保育士さんの業務の多くを占めている作業に、保育計画や記録、めあての作成、保護者へのお便りなどがあります。
このような書類作成への負担は、ICTツールの活用である程度は改善されますが、まずICT活用に移行する前にそれぞれの書類の作成意図を改めて見直し、様式、記載方法などを改定・工夫することも、業務改善の大きな一歩です。
保育士さんができること
まずは、自園で現在作成している書類について、それぞれの目的・内容を改めて確認しましょう。
必要な情報と内容、記載のルールなどを精査し、効率的な書類作成ができるよう見直したいですね。
なかには、複数の書類で内容や作成意図が重複しているものや、実際にはほとんど活用されていない書類、過去の慣習で惰性的につけていた書類もあるのではないでしょうか。
とはいえ、保育計画・記録やお便りなどの書類は、保育の質にも影響する大事な資源とも言えます。
時間や手間のかかる書類を削減することが主目的となり、大切な記録を怠ることのないよう、勤務している保育士さん同士で精査しながら進めていきましょう。
働き方の見直し
課題・解決イメージ
慢性的に残業が続き、常態化してしまうと、残業への抵抗感がなくなってしまいます。
園や保育士がそれを容認していては、職員の離職率や新しく入職する保育士さんの定着率にも影響がおよぶでしょう。長い目で見てよい環境とは言えないのではないでしょうか。
残業時間の短縮だけでなく、有給休暇の取得、正しい休憩時間やノンコンタクトタイムの確保など、さまざまな場面において働き方全体を見直すことが大切です。
保育士さんができること
働き方の見直しにおいては、ここまで挙げてきた他項目とも連携して考えることができます。
業務内容をリスト化して取捨選択をする、業務分担の偏りを再検討してブラッシュアップできる体制をつくる、会議の見直しなど、あらゆる業務を見直してみましょう。
多岐にわたる膨大な業務の最適化と効率化が実現することで、保育士さんの働き方もより無駄なく変えていくことができるのではないでしょうか。
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業務改善をすすめる「保育DX」とは?
2023年に発足したこども家庭庁の施策「保育DX」をご存じでしょうか。
DXは「デジタルトランスフォーメーション」のことで、企業が新規事業モデルを創り出したり、業務フローや古い企業風土をアップデートしたりするために、AI、IoT、ビッグデータなどのIT技術を活用することを指します。
この考え方を保育の現場に応用しようというのが「保育DX」の骨子のようです。
具体的には、保育士さんの業務負担を軽減することで、子どもや子育て家庭への支援にかける時間やエネルギーを確保することが目的とされています。
そのために、国・自治体・保育施設に、それぞれの課題と体制強化の施策を設けています。
また、三者が「保育DX」によって連携し、保育現場の改善につながるアクションを起こしていくことが計画されています。
こども家庭庁が発表した資料「保育DXの実現に向けた提言」では、これにより「保育者の業務負担の軽減と、保育施設・自治体・政府の運用モデルの構造化」を実現するとしています。
これらが実現することで、保育士さんの業務改善への期待も高まりますね。
出典:「保育事業者の事務負担軽減等に関する調査・分析」報告書について/東京都福祉局
出典:「ロボット・AI・ICT等を活用した保育士の業務負担軽減・業務の再構築に関する調査研究」について/厚生労働省
出典:保育分野の業務負担軽減・業務の再構築のためのガイドライン/厚生労働省
保育士さんが笑顔で働ける現場に!今すぐ業務改善をはじめよう

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保育士さんの業務改善は、保育士さんの意識改革はもちろんですが、勤務している園や自治体がいかに業務改善を重視して実現に向けて動いてくれるか、という部分に大きく左右されるようです。
現在、勤務している園はどうでしょうか?
保育士さん自身も改めて業務改善について考えてみたうえで、より働きやすい職場環境を求めるなら、転職という選択肢もあるかもしれませんね。
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