なぜ保育士不足が続くのでしょうか。子育て支援の重要性が増す中で、資格を持ちながらも保育士として就業する人が少ない状況を受け、国や自治体ではさまざまな対策を行なっています。今回は、深刻な社会問題でありながら保育士不足の状況がなかなか解消されない原因を解説します。あわせて、国や自治体が取り組む対策や園で取り組める解決方法をまとめました。
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保育士不足の原因はなに?
保育士不足が深刻な社会問題となっていることは、ニュースなどで耳にしたことがあるのではないでしょうか。
子育て支援の充実に向けて、認定こども園増設の推進やこども誰でも通園制度の策定などが進む一方、人手不足の影響から保育士の人材獲得競争が激化しています。
厚生労働省の資料によると、2024年4月の保育士の有効求人倍率は2.42倍。
全職種の平均の求人倍率は1.18倍であることから、高い水準で推移していることが伺えます。
このような現状をふまえ「保育士を確保したくても応募が来ない」など、人材採用に困る保育施設も少なくありません。
また、保育士不足を引き起こす要因のひとつとして考えられるのが、「潜在保育士が減らない」ことです。
潜在保育士とは、保育士資格を取得していながら保育士として働いていない人のことを指します。
保育士資格を取得してから保育現場で一度も働いたことのない方の他、保育士として長年働いていた上で離職し、そのまま復帰しない方がその例です。
以下、保育士さんが離職する要因として考えられることをまとめました。
給料が低い
保育士の仕事は、子どもを保育する以外にも事務的な仕事など業務内容が多岐にわたります。
しかしながら、他の職種と比較すると給料が低いということが、保育士さんの離職につながっているようです。
責任感が重い
保育士さんは、子どもが日々安全にすごせるよう配慮する必要があります。
子どもの命を預かるという責任感の重さも、保育士の仕事を辞めたいと考える要因でしょう。
労働環境への不満
残業や持ち帰りの仕事に追われたり、休暇が取りづらかったりすれば、自分の時間を確保できないことにストレスを感じることもあるでしょう。
また、早番や遅番など不規則な勤務体制や、土日や祝日が出勤といった労働環境に不満を抱く保育士さんもいるようです。
人間関係の悩み
保育士は同僚と協力し合う場面も多く、職場の人間関係に悩む保育士さんも少なくありません。
また、保護者との関わり方に戸惑ってストレスを感じ、退職に至るケースもあるようです。
このように、保育士さんが退職するのにはさまざまな理由があるようです。
このまま保育士の仕事を辞めてしまう人が増え続けると、保育士不足の状況に拍車がかかってしまうことでしょう。
次に、保育士を確保するために国や自治体、園が実施している対策を紹介します。
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保育士不足の解消につながる国の対策
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待機児童問題を受けて、2021年度に「新子育て安心プラン」が導入されました。
待機児童問題を解消するためには、保育の受け皿を確保する必要があります。
そのため、不足している保育士の人材を確保するために、保育士にとって魅力ある職場づくりを推進しています。
以下、取り組んでいる施策の例をまとめました。
- 保育補助者の活躍促進
- 短時間勤務の保育士の活躍促進
- 保育士・保育所支援センターの機能強化
- 若手保育士や保育事業者等への巡回支援の拡充
このように、国は保育士不足の解消のためにさまざまな施策を実施しています。
保育士さんの業務負担が軽減され、より働きやすくなることが期待できるでしょう。
また、この他にも保育士の処遇改善に取り組んでおり、約3%(月額約9000円程度)の賃金の増加やキャリアアップ研修の修了・役職認定による月額5000円~4万円の昇給などが行なわれています。
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保育士不足の解消につながる自治体の対策
自治体が保育士確保に向けて実施している支援のひとつに、「保育士宿舎借り上げ支援事業」が挙げられます。
これは、保育士さんの宿舎を借り上げるための費用の全部または一部を支援することにより、働きやすい環境作りを目的としています。
ほかにも、保育士不足の解消に向けて自治体独自の取り組みがなされています。
自治体により支援の内容が異なるため、実施されている施策についてあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
保育士不足の解消に向けて園でできる対策
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最後に人手不足解消を目指し、各園でできる対策例をまとめました。
潜在保育士の復職支援
まず、潜在保育士さんが復職できるような取り組みを行なうことが人手不足解消の鍵を握るでしょう。
潜在保育士さんの中には、子どもが好きという気持ちを持ちながらも、保育士という責任のある仕事を全うできるかを不安に感じている方がいるかもしれません。
このような方々が安心して復職できるよう、気軽に参加できる職場体験・研修会を実施できるとよいですね。
例えば、「保育園を4、5カ所回る見学バスツアー」や「現役保育士さんとの交流会」などを主催している園があるようです。
また、求人票の作成時はブランクがある方を歓迎する旨を伝え、復職の後押しができるような取り組みを考えてみましょう。
労働時間の調整
保育士の仕事は「労働時間が長い」「残業が多い」仕事だといわれています。
このようなイメージを払拭し、保育士さんが働きやすい環境を作り上げることで離職防止や人手不足の解消につながるかもしれません。
例えば、以下のような仕組みの導入を検討するとよさそうです。
ICTシステムの導入:正確に勤務時間や残業時間を把握し、有給休暇の付与や取得、残業時間の調整に役立てる
変形時間労働制の導入:1ヵ月月単位や年単位などで仕事量の状況に合わせて労働時間を調整し、閑散期・繁忙期の労働日数のバランスを考え、働きやすい環境をつくる
特にICTシステムは多くの保育施設で導入されており、保育士さんの担う事務作業の負担軽減に役立てられているようです。シフト作成や給与計算業務の効率化をICTシステムで叶えるには「保育士バンク!コネクト」が便利です。詳細はこちらをご覧ください。
居心地のよい職場環境の構築
保育士さんは職員同士で協力する場面が多く、上手く連携がとれないと人間関係にひずみが生じ、離職してしまうケースがありそうです。
チームワークを高めるためにも、食事会の開催や本音を語ることができる場を用意し、交流を深めることが重要でしょう。
「職員同士が相談しやすい」「お互いを励まし合える」ような職場環境を作り上げられるとよいですね。
この他にも、待遇改善に向けた園独自の昇給制度の導入や新人保育士さんへの手厚い育成支援などを検討し、人手不足解消に向けた対策に取り組みを考えていくことが大切ですね。
出典:保育士の有効求人倍率の推移(全国)/こども家庭庁
出典:保育分野における人材不足の現状/厚生労働省
出典:新子育て安心プランの概要/厚生労働省
出典:保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ/厚生労働省
保育士不足の原因と国や自治体の施策などに目を向けてみよう
保育士不足が解消しない原因はさまざまですが、保育施設の労働条件に不満を抱き、他の業種へ転職することも潜在保育士の増加につながっているようです。
国や自治体が実施する施策に目を向け、各園が保育士さんの職場環境の改善に取り組むことも重要になるでしょう。
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