保育士さん向けの補助金や助成金の制度があるのはご存じですか?保育士不足の解消に向けて月額9000円の賃金の引き上げや自治体独自の手当の支給などが実施されています。今回は2023年度時点の保育士さん向けの補助金や支援制度をわかりやすく解説します。これから保育士を目指す方、復職予定の方も参考にしてみてくださいね。
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目次
なぜ、保育士向けの補助金・支援制度ができたの?
待機児童解消が着々と進み、認定こども園や企業型保育園などが新設された中、保育士の人材不足が大きな問題となっています。
人材不足の背景には、保育施設での「給与の低さ」が最も大きな原因として挙げられます。
そのため、保育士不足の解消に向けて、国や自治体から補助金や助成金などさまざまな支援制度の取り組みが始まりました。
「子どもが好きで保育に携わりたい」「長く保育士を続けていきたい」などの気持ちがあっても、給与面や仕事量を理由に離職してしまう方もいれば、復帰になかなか踏み出せない保育士さんもいるようです。
国や自治体の補助金や支援制度を把握し、就職や転職などに役立てていきましょう。保育士さんを目指す方向けの制度もあるため、参考にしてみてくださいね。
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保育士を目指す方・復職者向けの補助金・支援制度
保育士を目指す方や復職者向けの補助金制度を紹介します。
保育士修学金貸付
補助金として「保育士修学金貸付」という支援制度があります。
保育士修学資金貸付指定保育士養成施設へ通う学生や再就職を目指す方に対して、修学に必要な資金などを無利子でするものです。
貸付期間は2年となり、詳しい貸付額は以下の通りです。
【学費】
月額 5万円
【入学準備金】
20万円(初回に限る)
【就職準備金】
20万円(最終回に限る)
※生活費加算として月額 4〜5万円
貸付を受けた都道府県で5年間勤務した場合は返還が免除となります。過疎地域の場合は返還免除特例として5年間→3年間に縮小されます。※2023年時点
就職準備金貸付
保育士就職準備金貸付とは、就職に必要な準備金を貸付するものです。
詳しい要件や内容は以下の通りです。
【要件】
- 保育士登録後1年以上経過した方
- 幼保連携型認定こども園、家庭的保育事業、小規模保育事業、事業所内保育事業、学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する幼稚園に勤務したことがない方または離職後1年以上が経過した方
- 保育所で新たに勤務する方
【貸付額】
上限を40万円以内
※同一の貸付対象者は1回限り
自治体が指定する保育所などに2年間程度継続して勤務すれば、返済が全額免除されるメリットがあります。
未就学児をもつ保育士の子ども預かり支援
未就学の子どもがいる保育士さんに保育料を無利子で貸付する制度です。
貸付期間は2年となり、詳しい貸付額は以下の通りです。
【貸付額】
保育料の半額
指定の勤務先に2年間程勤務すると返済が全額免除されます。
保育士資格取得支援事業
認可外保育施設で働く保育者の中で保育士資格がない方向けの資格取得を支援する制度です。
養成校の受講料や保育士試験受験のための学習費などの一部が支給されます。
【支給額】
- 受講料1/2※上限30万円
- 保育士試験受験のための学習経費(教材費など)の1/2※上限150万円
支給対象期間は保育士試験(筆記試験)から起算して2年前までに要した費用となります。
また、働いている認可外保育施設が「認可外保育施設指導監督基準適合化支援計画」を作成した施設であることが条件となるため、勤務先に確認することが大切です。
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現役保育士向けの補助金・支援制度
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続いて現役保育士さん向けの補助金や支援制度について見ていきましょう。
月額賃金の引き上げ
2022年2月から保育士さんや幼稚園教諭の3%(月額9000円)の賃上げが行われています。※2023年時点
処遇改善加算Ⅰ
2015年に導入され、平均勤続年数やキャリアアップなどに応じて加算される仕組みです。
職員一人当たりの平均経験年数の区分に応じた基礎分と賃金改善要件分、キャリアパス要件分それぞれの割合を加えたものから構成されます。
対象は正社員や1日6時間以上かつ月20日以上就労するパートやアルバイトなどの非正規職員となります。
処遇改善加算Ⅰの詳しい内容はこちらをご覧ください。
処遇改善等加算Ⅱ
処遇改善等加算Ⅱとは、2017年から始まった制度で新しい役職を設置し、経験に応じた手当の支給を行なっています。
対象者は処遇改善等加算Ⅰと同様、正社員や1日6時間以上かつ月20日以上就労するパートやアルバイトなどの非正規職員となります。
役職や対象者の経験年数は以下の通りです。
- 職務分野別リーダー(対象:経験年数がおおむね3年以上)
- 専門リーダー(対象:経験年数がおおむね7年以上)
- 副主任保育士(対象:経験年数がおおむね7年以上)
各自違いが実施する研修を修了が必要となり、役職別の支給額は以下の通りです。
【支給額】
職務分野別リーダー:月額5000円
専門リーダー:月額4万円
副主任保育士:月額4万円 ※2023年時点
ただ、支給額の配分方法は施設の判断に任されており、各保育園が決定できるため、必ずしも全て上記の金額が役職者に支給されるというわけではないことをおさえおきましょう。
保育士宿舎借り上げ支援事業
園が保育士さんを住まわせるために物件を借り上げた場合、その家賃の全額または一部を国や自治体が補助する事業です。
対象は採用された日から起算して8年以内の常勤の保育士さんです。
補助額は以下の通りです。
【補助額】
月額8万2000円が上限
※1人当たりの月額(上限)の金額は市区町村が設定します。※2023年時点
管理費や礼金、更新料が不要となるケースもあるため、入居の初期費用や月々の負担を軽減できるのがメリットでしょう。
この他にも自治体や園独自の家賃補助を実施するケースもあるため、確認するとよいでしょう。
手当のある施設を紹介してもらう
自治体による保育士向けの補助金・支援制度の事例
続いて、2023年時点の各自治体が独自に実施する保育士向けの支援制度の事例を紹介します。
東京都千代田区
千代田区は、奨学金を利用して保育士資格を取得し、現在奨学金を返済しながら区内の保育施設に勤務している保育士さんを対象に、返済費用の一部を補助しています。
対象者は、保育士養成施設を卒業して保育士資格を取得し、雇用契約が1年以上で、1日6時間以上かつ週20時間以上勤務する保育士さんです。
補助対象期間は10年間で補助額は以下の通りです。
【補助額】
年間24万円が上限
※10年間で最大240万円
他の補助制度を利用し、返済支援を受けた場合は対象となりませんので注意しましょう。※2023年時点
埼玉県さいたま市
さいたま市では、民間保育園の職員給与に上乗せ補助を実施しています。
【補助額】
常勤職員1人あたり::年額19万3500円(月額1万500円×12カ月+期末手当6万7500円)
民間保育園を運営する法人に対して市が手当てを支払い、保育士さんの給与に上乗せ補助されます。
千葉県船橋市
船橋市は、市内の保育園などで働く保育士さんに手当を支給しています
【手当】
年額 587,880円(月額4万2610円×12カ月+賞与7万6560円)
年数は関係なく勤務開始1年目から支給され、正規職員だけでなくフルタイムのパート職員も対象のようです。
このように独自で支援制度を行なう自治体はさまざまあります。
年度ごとに内容が変わる場合もあるため、詳細については各市町村のホームページを調べたり直接問い合わせたりすることが大切ですね。
条件のよい施設を紹介してもらう
保育士向けの補助金・支援制度における注意点
最後に、保育士向けの支援制度を利用する際に知っておきたい注意点を紹介します。
自治体によって導入している支援制度は異なる
全国的に慢性的な保育士不足と言われていますが、深刻度は地域によって異なります。そのため、自治体によって導入している支援制度が異なることを念頭に置きましょう。
県や市独自の支援制度は、主に首都圏や、大阪府、福岡県といった主要都市で手厚い傾向にあるようです。実際にどのような制度が導入されているか、事前に調べるとよいですね。
保育士に直接支払われない補助金もある
保育士支援制度の中には、国・自治体から保育園に対して助成金や補助金が支払われ、保育士さんは直接もらえないケースがあります。
助成金や補助金は、園の保育士1人に対していくら、という形で支給されているものもあり、保育士さんへの支給方法は事業者に委ねられているようです。
そのため、「補助額が月額〇〇円だと聞いていたのに、給与としてもらえない」などの事態も起こり得るかもしれません。
どのように補助金が支給されるのかあらかじめ把握しておくこともポイントです。手当としていくら加算されるかなどは園に確認しておきましょう。
好待遇の施設を紹介してもらう
保育士向けの補助金・支援制度を把握して、上手に活用しよう
国や自治体は保育士人材を確保するために、家賃補助や待遇改善などさまざまな支援を行なっています。
自治体によって補助金の支給方法や細かい条件は異なるので、事前に窓口へ問い合わせるなどして確認してみることが大切です。
どのような支援制度があるのか把握して、上手に活用できるとよいですね。
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出典:2020年度における処遇改善等加算の運用の改善/厚生労働省
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