保育園ではお正月が近くなると、子どもたちに「鏡開き」の由来や意味を教える機会があるかもしれません。いつ行うのかなど正しいやり方や、おしるこを食べる意味なども知っているとより理解が深まりますよね。今回は、鏡開きとは何かや、保育に取り入れるねらいを紹介します。また、子ども向けの説明方法や保育園での過ごし方についてもまとめました。
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鏡開きとはどんなもの?
年末からお正月にかけて、鏡餅が飾られる保育園も多いでしょう。
鏡餅には、お正月の期間を過ぎたら「鏡開き」を行い、年神様にお供えしていた鏡餅をおろして食べ、新年の無病息災を願うという習慣があります。
正しいやり方や詳細な時期などがある鏡開きですが、そもそも鏡餅とはどんなものなのかから見ていきましょう。
そもそも鏡餅とは
鏡餅はお正月飾りの一つとして飾られ、お正月にやってくる年神様にお供えするもので、年神様の居場所でもあります。
神棚に飾るのが一般的ですが、家族が集まる居間やトイレ、台所などにも神様がいらっしゃると言われるため、それぞれの場所に飾るのもよいと言われています。
鏡開きのやり方
鏡開きを行うにあたり、まず注意しなければいけないことは「包丁などの刃物を使わない」ことです。
このポイントに注意しながら以下の手順で鏡開きを行ってみましょう。
1.宿っていた神様に感謝の気持ちをささげながら、鏡餅をおろします。
2.飾っていた鏡餅の表面についたホコリやカビをふきんなどで丁寧に払い落とします。
3.木槌や金槌などでお餅を割ります。
ずっと飾っておいた鏡餅は固くなっていることが多いので、少しずつ叩いてヒビを入れながら割っていくとよいでしょう。
4.割った鏡餅は、調理して残さずいただきましょう。
一般的にはおしるこやお雑煮にして食べることが多いようです。
鏡開きはいつやるの?
鏡餅を食べる時期は、「松の内」とよばれる年神様が各家庭にいらっしゃる期間が過ぎてからとされています。
毎年同じ時期にはあるものの、関東や関西など地域によって行われる時期が異なるようです。
関東では松の内を1月7日までとする「1月11日」に、関西では、松の内を1月15日までとする「1月15日もしくは1月20日」に行われています。
鏡開きにまつわる風習の意味や由来
古くから伝わる鏡開きの由来や意味について紹介します。
鏡開きのはじまり
諸説ありますが、鏡開きはもともと武家時代からはじまった行事と言われています。
武家では、正月に鏡餅を供え、11日には供えた鏡餅を食べるという習慣がありました。
男性は、鎧などの具足にお供えした「具足餅」を、女性は鏡台に供えた「鏡餅」をお雑煮にして食べたことが行事のはじまりとされています。
なぜ鏡餅を「割る」ことを「開く」と言うの?
武家社会では、「切る」という言葉から切腹を連想して嫌っていたため、刃物を使わずに割っていたと言われています。
しかし、おめでたい日に「割る」という表現も縁起が悪いということから、「運を開く」にかけて「鏡開き」と呼ばれるようになったようです。
そのため現在でも、家庭や会社などで、年のはじめに鏡餅を供え、一年の健康と発展を願って供えた鏡餅を食べる「鏡開き」が正月の伝統ある行事として受け継がれていると言われています。
どうして「鏡」餅という名前なの?
太古の日本では鏡には神様の力が宿ると考えられていました。
また、餅の丸い形と、昔の日本で使われていた丸い鏡の形が似ていたことに関係しているようです。
神聖な「鏡」というモチーフが使われているのも、鏡餅には年神様が宿るということを考えてみると自然ですね。
鏡餅の飾りの意味は?
鏡餅に添えられる飾りにもそれぞれ意味があります。
橙(だいだい)
鏡餅の上に橙をのせるのには、「代々(だいだい)栄えますように」という願いがあるようです。
御幣(ごへい)
御幣とは、白い紙を細長く垂らしたお供えものです。
鏡餅では、赤と白の四角形が連なったような帯状の御幣が用いられていることが多いでしょう。
これには、「両手を大きく広げて繁栄しますように」という願いを込めて飾られています。
また、紅白の色使いには魔除けとしての役割もあるようです。
四方紅(しほうべに)
四方紅とはお供えものである餅をのせる、四方を紅で縁取った色紙のことを指します。 「天地四方」を拝して災いを払い、新しい年の繁栄を願うという意味があるとされています。
また、2つの餅を重ねるのには「円満に年を重ねる」といった縁起のよい意味があるとも伝えられています。
鏡開きにおしるこを食べる意味は?
鏡開きの際には鏡餅を調理して食べますが、これには神様が宿っていたお餅を食べることでその力を授かり、その年の健康を願う意味があると言われています。
また、おしるこにして鏡餅を食べるのには、昔ながら小豆に「魔除け」や「邪気払い」の意味があり、新年を無病息災、健やかに過ごせるようにという意味が込められているようです。
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保育園での鏡開きのねらいと過ごし方
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保育園の鏡開きのねらいには、以下のようなねらいが挙げられるでしょう。
- 餅つきやお供えもの作りを通して、お正月の伝統ある行事に親しみを持つ
お正月にまつわる伝統的な習わしから、昔の人の願いなどをイメージできるとよいですね。
また、このようなねらいをもとに園で鏡開きをしたり、制作をしてみたりと活動を行ってみましょう。
導入として、絵本を読んだりペープサートを行ったりして、子どもたちがより文化への理解を深められるような工夫をするとよいかもしれません。
活動例1:実際に鏡開きをして、おしるこを作ろう
鏡餅を飾っている園では、実際に鏡開きをしてみましょう。
この活動では、先述したねらいの他にも、「鏡餅を食べることにより、古来の風習に興味を持ち、食べ物を大切に思う気持ちを育む」ことなどがねらいにあたるかもしれません。
活動の流れ
1.鏡開きの由来や意味を子どもたちに説明します。
2.木槌を使って鏡餅を割ります。子どもも順番に叩いて体験します。
3.割れた鏡餅(もしくは誤飲防止のため白玉など)で作ったおしるこを食べます。
ポイント
導入で鏡開きに込められた願いをきちんと説明することで、「おしるこを残さず食べて元気になろう」という気持ちを引き出せそうですね。
鏡餅を実際に叩いてみることで、お餅の硬さや割るときの感覚などが強く印象に残るでしょう。
おしるこを食べる前に、みんなで「今年も元気ですごせますように」などお願いをするとよいかもしれません。
活動例2:鏡開きの製作をしてみよう
鏡開きの行事にちなんで、鏡餅の製作活動をしてみましょう。
この活動のねらいには、「鏡餅の製作を通して昔の風習や伝統に興味を持ち、想像したことや一年の願いについて友だちや先生と話す」ことなどが挙げられそうですね。
紙をくしゃくしゃに丸めてつくる鏡餅
新聞紙をくしゃくしゃにして、ガーゼなどで包んで作れる立体鏡餅を紹介します。
<用意するもの>
- 新聞紙
- 折り紙
- フラワーペーパーやガーゼ
- セロハンテープ
<作り方>
1.くしゃくしゃに丸めた新聞紙をフラワーペーパーやガーゼでくるんで餅を2つ作ります。
2.新聞紙を小さく丸めてオレンジ色の折り紙で包み、セロハンテープでとめます。
3.餅とみかんを重ね、セロハンテープで固定したらできあがりです。
<ポイント>
紙をくしゃくしゃにする工程は、1歳児後半からでもできるかもしれません。
テープなどを扱うのが難しい場合は、のりで画用紙に貼ってもよいでしょう。
餅を重ねてくっつけるときは、両面テープを活用してもよさそうです。
両面テープをはがす工程は保育士さんが補助するとスムーズに進みそうですね。
折り紙でつくる鏡餅
折り紙の鏡餅の作り方を紹介します。
<用意するもの>
- 折り紙(オレンジ)
- 千代紙
- のり
<作り方>
【土台】
1.千代紙を半分に折って開き、中心に向かって1回折ります。
2.(1)を裏にして、中心に向かって折ります。
3.折り重なっている部分を上にして、両側の角を三角に折ります。
4.(3)を袋状に開き、両側の辺を内側に折り込みます。
5.両端と下の部分を裏側に折り、裏返してできあがりです。
【鏡餅】
1.オレンジ色の折り紙を三角に2回折って開きます。
2.頂点を上から1cmのところで2回折ります。
3.裏返して、両側を中央の折り目に合わせて折ります。
4.下部を上に向かって折ります。このとき、少し隙間を空けて折りましょう。
5.下部の両端を内側に折ります。
6.上部を下に向かって折ったら、間隔を開けながら蛇腹折りします。
7.一番上の角を折って、裏返したら鏡餅のできあがりです。
<ポイント>
折り紙でつくる鏡餅は、台と鏡餅の2つの工程があるので、保育士さんが見本になって折り進めながら子どもといっしょに作っていくとよいでしょう。
折り紙が苦手な子どもには、保育士さんが手を添えたり、折り紙が得意な子が教えられるように促したりするとよいかもしれません。
低年齢で折り紙が難しいクラスでは、画用紙に土台の絵をかき、鏡餅の折り紙と組み合わせてみてもよさそうですね。
紙粘土でつくる鏡餅
<用意するもの>
- 紙粘土
- 絵の具(オレンジ)
- 千代紙 大小2枚
- のり
<作り方>
1.紙粘土で大小の鏡餅を作ります。
2.少量の紙粘土にオレンジの絵の具を混ぜ、みかんを作ります。
3.千代紙を2枚重ねて貼り付け台紙を作り、(1)(2)を上に重ねて置けばできあがりです。
<ポイント>
紙粘土で本物のような鏡餅を作ってみましょう。
どんぐりやビーズなどを貼り付けて、顔を作ってもかわいい作品になるかもしれません。
台紙となる千代紙は重ねて貼り付けてもよいですが、格子編みをしてみてもお正月らしい雰囲気が出そうですね。
参考動画:画用紙を使ってきれいな模様のお魚さんを作ってみよう/保育士バンク!
【子ども向け】鏡開きの由来を伝える方法
保育園の活動で子どもたちに「鏡開きってなに?」と聞かれたときの伝え方について紹介します。
鏡開きってなにするの?
回答例:「お正月に飾った鏡餅を食べて、来年も元気に過ごせるようにお祈りするんだよ」
新年の始まりに、鏡餅を食べて健康を願うことを伝えましょう。
あわせて、鏡餅には神様の力が込められていることを伝えれば、鏡開きを大切に思う気持ちやお餅を食べて元気になりたいという意欲につながるかもしれません。
年神様へのお供え物ってなに?
回答例:「年神様というのはお正月にやってくる神様のことを言うよ。年神様は、お家に幸せを運んできてくれるお正月の神様なんだ。神様に鏡餅を『どうぞ』することをお供えものって言うんだよ」
「おそなえ」することで、「今年もよい年になりますように」と神様にお願いすることを伝えれば、意味がわかりやすいかもしれませんね。
もしも「おそなえ」という言葉がピンとこない場合は、「どうぞ」など子どもがイメージしやすい言葉で言い換えるとよさそうです。
なぜ「鏡餅」って言うの?
回答例:「昔の人が使っていた鏡はお餅みたいにまんまるだったんだよ。」
現代では鏡にはさまざまな形があるため、丸い鏡の想像が付きにくいこともあるでしょう。
なぜ鏡とお餅が似ているのかを不思議がっている場合、鏡が出てくる紙芝居を後日読むのもよいかもしれません。
「あまのいわと」や「松山鏡」などの昔話は子どもも興味を持ってくれそうですよ。
また、鏡には神様の不思議な力があると信じられていたことも伝えれば、鏡餅が神聖なものであるとイメージできそうです。
どうして鏡割りって言わないの?
回答例:「割るという言葉は縁起がよくないんだ。だから昔の人は『運を開く』という言葉から『開く』を借りてきて、来年もよい年になるようという願いを込めたんだよ」
鏡開きは、新年がよい年になるようにというお願いの行事だから、縁起の悪い言葉は使わないことを伝えるとよいでしょう。
鏡餅は、お正月の間に神様がおうちに使っていた(宿っていた)ものだから縁起のよい言葉を使ったのだと説明すれば納得してくれるかもしれません。
鏡開きの由来や意味を説明し、保育園でも伝統行事に親しもう
日本のお正月に行われる鏡開きとは、1年の無病息災を願う気持ちが込められた行事です。
保育園や幼稚園でも、鏡開きにちなんでおしるこを食べたり、鏡餅の製作などを行ったりする機会があるでしょう。
子どもたちに向けて鏡開きの由来ややり方を伝えるときは、わかりやすい言葉に言い換えて伝えるとよいでしょう。
鏡開きの意味を知ることができたら、お正月行事により親しみを持てるかもしれませんね。
子ども向けの言い換え例や、活動のねらいを知って保育活動に鏡開きを取り入れてみましょう。