保育士とは、保育所はじめさまざまな保育施設で、子どもたち一人ひとりの状況に応じて、子どもたちの心と体の成長を助ける仕事です。児童福祉法が定める国家資格の1つでもあり、待機児童問題による保育士不足も相まって仕事内容と役割は重要度と注目度が高まっている仕事と言えるでしょう。保育士の資格取得の方法や試験内容、保育士としての仕事のやりがい、保育士への就職転職を考える上での求人状況をまとめました。
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目次
保育士とはどんな仕事?
「保育士」とは、どのような仕事に就く人を指すのでしょうか。
保育士とは
保育士とは、全国の保育所(保育園)を中心に、児童養護施設や乳児院などの児童福祉施設等で、保育や地域の子育て支援の職業につく人のことです。
多くの保育士が選ぶ主な職場は保育所です。子どもたち一人ひとりの年齢や発達の状況に応じて、子どもたちの心と体の成長を助ける仕事をしています。主に子どもとの遊びや行事活動、体験活動や地域とのふれあいを通じて、子どもの成長を援助します。
また子どもを預かる保護者から、子育てに関する相談に応じるのも保育士の重要な仕事です。近年では、在宅で育児をしている家庭への支援や、地域の子どもたちや保護者への子育て支援も保育士の重要な役割の1つとなっています。
保育士資格の法律による定義
保育士は「児童福祉法」にもとづく国家資格です。誰でも保育ができるわけではなく、保育の専門的な知識と技能があると国が認めた方のみが保育士として働くことができるようになっています。
保育士は国家資格である
保育士とは、児童福祉法第18条の4が定める
「保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者」
で、資格取得者以外の者にその資格の呼称の利用が法令で禁止されている国家資格になります。基本的には、この資格を取得していなければ「保育士」と名乗ることはできません。
出典:「児童福祉法」/総務省
保育士になることができない人
児童福祉法第18条の5では、保育士となることができない人を定めています。例えば保育士が禁錮以上の刑に処せられた場合、刑の執行から二年経過するまでは、保育士登録ができる状態であっても保育士登録を登録を受けられず、保育士になることはできないといったような決まりがあります。
保育士登録ができない「欠格事由」について、詳しくは以下の児童福祉法に記されています。
出典:「児童福祉法」/総務省
保育士と幼稚園教諭の違い
保育士と非常に近い職業に関係する免許の1つに「幼稚園教諭免許」があります。保育士資格と幼稚園教諭免許の違いは、主に管轄や法律、創設された目的が異なっています。
保育士資格と幼稚園教諭免許の違いの比較についての詳しい説明はこちらから
国家資格と教諭免許の違い
保育士は「資格」、幼稚園教諭は「免許」
「保育士免許」は間違いであり、保育士は資格です。幼稚園教諭は「幼稚園教諭免許」になります。
管轄や法律、預かる子どもの年齢の違い
保育士資格と幼稚園教諭免許は子どもの保育を行うというほぼ同じ内容であるにも関わらず、それぞれの所轄省庁の違いによって、次のような違いがあります。
幼稚園 | 保育所 | |
---|---|---|
所轄省庁 | 文部科学省 | 厚生労働省 |
根拠法令 | 学校教育法第1条 | 児童福祉法第7条 |
機能・役割 | ・満3歳児~小学校就学前 満3歳から小学校就学の始期に達するまでの幼児を対象に教育を行う学校 (特区においては2歳児入園が可) |
・0歳児~小学校就学前 保護者の就労等により保育に欠ける乳児又は幼児等を保育する児童福祉施設 |
教育・保育内容 | 幼稚園教育要領 | 保育所保育指針 |
1日の教育・保育時間 | 4時間を標準として各園で定める。(39週以上) | 8時間を原則とし,保育所長が定める。(約300日) |
必要な資格 | 幼稚園教諭普通免許状 | 保育士 |
資格登録と免許更新の違い
保育士資格には更新がない
保育士資格は更新がありません。一度保育士登録を受け、保育士証が交付されれば、その後更新を行う必要はなく、全国どこででも保育士として働くことができます。本籍地や結婚などにより姓が変わった際には、申請が必要になります。
幼稚園教諭免許には更新がある
一方で、幼稚園教諭免許状は2009年から10年の有効期限が設けられるようになりました。2009年度以降に発行された新免許状には有効期限が記載されるようになり、有効期限の満了前に更新が必要です。2009年度以前に取得した旧免許状をお持ちの方も、生年月日によって最初の修了期限が設定されており、以降は10年ごとの更新となります。
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保育士の仕事内容
保育士の仕事内容や流れについて、簡単に説明すると次のような種類の仕事を行っています。
保育士の仕事内容についての詳しい説明はこちらから
子どもの保育
子どもといっしょに遊ぶ
保護者(親)に代わって子どもの「保育」することが基本の仕事です。
保育は「子どもが健全な心身の発達を図ることを目的」としているため、子どもとの間に愛着や信頼を育むためにいっしょに遊び、楽しい時間を共有することが大切です。また子どもの遊びや活動を通して、自分で考えてできることを増やせるように援助をします。
子どもの基本的生活習慣確立のための援助
着替えやトイレなど、子どもが1人ですることが難しく大人の手伝いを必要としているときに、手助けをしていきます。また、子どもの健康状態に常に気を遣い、確認することも大切です。食事、睡眠、排泄、清潔、衣服の着脱などを子どもが1人で行えるよう、自分でやろうと思える環境をつくっていきます。まだ1人では難しいときは支えていき、基本的な生活習慣を学べるよう手助けをします。
集団生活を通して社会性を育む援助
保育園では多くの友だちといっしょに生活します。子どもがそれぞれ心地良い生活が送れるよう、集団生活のルールを伝え、子どもたちの社会性を育てることが大切です。
保育のための環境設定や活動準備
子どもが楽しく安全に遊びに熱中したり、清潔に食事をとるなど保育を行うための環境を整えます。
保育に関連する書類事務作業、保護者対応など
事務作業
保育士には、子どもの成長カリキュラムに合わせ、さまざまな書類作成、事務作業があります。
・保育日誌の作成
・月間や年間の指導計画案作成
・園だよりやクラスだよりの作成
・個人記録
・連絡帳記入
・行事計画書
・クラス懇談会の報告書 など
保護者対応
保育士は子どもの保育だけでなく、子どもたちの保護者に対しても子育てに関する相談やケアを行うという重要な役割があります。
「連絡帳」や「園・クラスだより」を使って、子どもの園での様子や成長の度合い、できたこと、気になることを伝えたり、懇談会や個人面談を通じて子育て相談や育ちの相談を行います。
地域の子育て支援
最近では、地域の子育て支援として、相談事業や学童保育に取り組む保育所も増え、保育士は子育ての専門職として大いに期待されています。
保育士の一般的な一日の流れとシフト制
保育士はシフト制勤務が多い
保育園が子どもを預かるのは、基本的には朝7時から夜7時まで12時間程度で、時間外保育を行うとさらに長い開園時間になります。適切な勤務時間を守るために、保育士はシフト制で勤務を行っています。所定労働時間を「1日8時間」で組んでいる園が多いようです。預かり時間が長い保育園・認定こども園では、「早番・中番・遅番」でシフトを組み、労働時間を所定内におさめる勤務形態が多く見られます。
児童養護施設や病院などでは、24時間体制で保育士が常駐していることもあり、看護師のように夜勤を含めたシフト制が組まれています。
保育士の仕事の1日の時間流れ・タイムスケジュール例
保育士が保育園で行う仕事の1日の流れとスケジュール例です。
時間 | 業務 | 仕事内容 |
---|---|---|
8:00 | 登園 | ・早番の職員が出勤。開園準備や前日からの引継ぎ事項を確認 ・登園した子どもの出迎え ・保護者から子どもの体調や様子を聞くコミュニケーションどり |
10:00 | 朝の会 | ・朝の会を行い、通常保育の開始 |
11:00 | 昼食 | ・昼食の準備 ・子どもの手洗いやうがいの手伝い ・食後の片づけ、子どもの歯磨き |
12:00 | 午睡 | ・小さい子どものクラスはお昼寝 ・お昼寝の間に保育日誌や連絡帳を記入 ・大きいクラスは散歩や外遊びに行くことも |
14:30 | おむつの交換 | ・おむつがとれていない子どもにおむつの交換 |
15:00 | おやつ | ・おやつの準備と片づけ |
16:00 | 自由遊び | ・子どもを自由に遊ばせて集団行動を学ばせる |
16:30 | 帰りの会 | ・先生の話や歌を歌って帰りの会を行う |
17:00 | 降園 | ・降園の準備 ・迎えに来た保護者に子どもの1日の様子などを伝える |
以降 | 延長保育 | ・延長保育の子どもたちは他の保育士と合同で見る ・子ども全員が降園後、園の片づけや掃除、戸締り ・業務終了 ・イベントや行事が近い場合は残業が発生する場合もある |
保育士が資格を生かして働ける職場や保育施設
保育士の資格を生かして働ける就職先として、保育所を始めとする児童福祉施設が挙げられます。一方で認可外施設でありながら補助金が出る企業主導型保育事業や、新たに認可された小規模保育所や事業所内保育所など、今までの「保育所」という枠にとらわれない、現状の保護者のニーズに対応した新たな育児施設が続々と誕生しています。また、学童保育や保育ママなど、保育士のスキルを活かした働き方や働く環境の選択肢が増えている傾向です。
保育士資格が生かせる就職先についての詳しい説明はこちらから
保育資格で働ける保育施設の種類
一般的にいう「保育園」です。保育園には国の基準を満たした認可施設と、国の基準をさまざまな理由で満たしていないものの保護者のニーズに対応する、認可外施設があります。
保育所(公立保育園、私立保育園)
一般的にいう認可保育園。自治体が運営する公立保育所と、民間団体が運営する私立保育所があります。
就学前の0~5歳の子どもを定員原則20人以上で預かります。就労などのため家庭で保育のできない保護者に代わって保育する施設です。利用できる保護者は自治体によって「保育の必要性の認定」を受けた世帯で、共働き世帯、親族の介護などの事情で、家庭で保育のできない保護者に限ります。利用時間は夕方までの保育のほか、園により延長保育を実施しています。
地域型保育事業
保育所(原則定員20人以上)より少人数の定員で、0から2歳の子どもを保育する新しい形態の保育事業です。「保育の必要性の認定」を受けた保護者の子どもが利用できます。地域型保育事業は、保育ママや小規模保育園など、少人数で家庭的な雰囲気のもとで保育が行われる形態の施設が多いことが特徴です。
地域型保育事業には、次のような形態の施設があります。
・小規模保育事業
・事業所内保育事業
・家庭的保育事業(保育ママ)
・訪問型保育事業
認定こども園
就労には保育士資格と幼稚園教諭免許の両方の取得を求められるケースが多いようです。
幼稚園と保育所の機能や特長をあわせ持ち、地域の子育て支援も行う施設です。
0歳から2歳は「保育の必要性の認定」を受けた保護者の子どものみ利用できます。利用時間は昼過ぎごろまでの教育時間に加え、保育を必要とする場合は夕方までの保育を実施しています。3歳から5歳の子どもについては、保護者の働いている状況に関わりなく教育・保育をいっしょに受けます。保護者の就労状況が変わっても、通いなれた園を継続して利用でき、園によっては延長保育も実施しています。
認可外保育施設(無認可保育園)
国の認可を受けていない保育施設のことです。保護者のニーズに合わせたさまざまな保育施設とサービスがあります。
・認証、認定保育園
国の基準は満たしていないものの、その地域の保育ニーズの受け皿となる認可外保育施設を対象にした、自治体が定めた独自の基準を満たしている保育施設です。
・企業内保育所や院内保育所
2016年度に新設された企業主導型保育制度によって、運営に国から補助が受けられるようになったため、企業や病院などで働く人たちを対象とした子どもを預かる保育施設が増加しています。
・託児所
主に商業施設や病院などで、一時的に子どもを預けたいときに利用する保育施設です。
・国や自治体の基準に満たない保育施設
国や自治体の基準を満たしていないものの、さまざまな保護者の保育ニーズを満たすサービスを提供する保育施設も多くあります。例えば、24時間子どもを預けることができるベビーホテルや、海外の文化で育ってきた子どもたちのための教育・保育の施設や、英語教育に力を入れているプリスクールやインターナショナルスクールなどがあります。
出典:「平成27年度 認可外保育施設の現況取りまとめ」/厚生労働省
保育所以外の児童福祉施設
児童福祉法第7条によって定められた、保育所や認定こども園を含む12種類の施設を指します。保護者や家庭環境にさまざまな事情のある子どもや保護者を保育したり、保護、養護、支援する施設で、国家資格である保育士資格を持っていることで、職員として働くことが可能です。それぞれの施設の役割や仕事内容をしっかりと理解する必要があるでしょう。
・乳児院
・児童養護施設
・助産施設
・母子生活支援施設
・児童厚生施設
・障害児入所施設
・児童発達支援センター
・児童心理治療施設(情緒障害短期治療施設)
・児童自立支援施設
・児童家庭支援センター
出典:「保育士試験Q&A」/一般社団法人全国保育士養成協議会
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保育士になるには。保育士資格の取り方
保育士になるには、どのような方法があるのでしょうか。資格取得のための学校や国家試験についてまとめました。
保育士になるための詳しい説明はこちらから
保育士資格を取得する方法
保育士資格を取得するには、児童福祉法第十八条の六によって、次のように定められています。
・保育士試験に合格した者
指定保育士養成施設とは
都道府県知事が指定している、保育士を専門的に養成する勉強をする学部学科・コースを設置する学校です。卒業することで保育士資格が取得できます。
多くは大学・短大・専修学校(実践的な職業教育、専門的な技術教育を行う教育機関・主に専門学校)などが指定されています。また、保育士養成施設には、昼間部のほか、夜間部や通信課程もあります。
指定保育士養成施設についての詳しい説明はこちらから
保育士国家試験とは
保育士資格は国家資格ですが、保育士試験は、都道府県ごとに実施されます。その試験に全教科合格することで、保育士資格を取得できます。
保育士試験についての詳しい説明はこちらから
出典:「保育士試験を受ける方へ」/一般社団法人 全国保育士養成協議会
受験資格
保育士試験を受けるためには、学歴ごとの取得単位数や実務経験の有無によって、受験資格が規定されています。保育士試験に挑戦する前に、自分に受験資格があるのかを確認することが大切です。
最終学歴が4年制大学、短期大学、専門学校を卒業、または中退した人の受験資格についての詳しい説明はこちらから
最終学歴が高校卒業、高校中退または中学卒業した人の受験資格についての詳しい説明はこちらから
試験実施機関
児童福祉法によって、保育士試験は各都道府県知事が実施することになっています。ですが、都道府県知事は試験事務の全部又は一部を、厚生労働省令で定めるところにより、一般社団法人又は一般財団法人に試験の委託し、行わせることができることとされています。
現在は、「一般社団法人全国保育士育成協議会」が47都道府県知事から保育士試験の指定試験機関としての指定を受けて、保育士試験の全てを実施しています。
試験内容及び科目
保育士試験には一次試験の「筆記試験」と、その筆記試験を合格した人だけが受験できる二次試験の「実技試験」があります。
筆記試験は8科目あり、実技試験は3科目中2科目の選択制です。
筆記試験科目
各試験で例年20問程度の出題があり、各科目6割の得点で合格となっています。筆記試験は8科目あります。筆記試験は広く児童福祉に関わるための知識が求められる試験です。
・保育原理
・教育原理及び社会的養護
・児童家庭福祉
・社会福祉
・保育の心理学
・子どもの保健
・子どもの食と栄養
・保育実習理論
実技試験科目
実技試験は3科目中2科目の選択制です。実技試験も筆記試験と同様に合格点は6割のようです。
以下3科目からの2科目選択制
・ピアノなどの演奏を試験する音楽表現
・絵画などを試験する造形表現
・子どもへの素話を試験する言語表現
試験日程
保育士試験は2016年から前期と後期に分けて年2回開催されています。
・前期試験
前期は筆記試験が4月、実技試験が7月(6月下旬の場合も)に開催されます。合格発表は8月頃です。
・後期試験
後期は10月、実技試験が12月に開催されるのが一般的です。合格発表は翌年1月頃です。
科目合格の制度
保育士試験には科目合格の制度があります。これは一度合格した科目は通常3年間、再受験が免除される制度です。年に2回試験があるため、筆記試験を通過するために6回のチャンスがあります。実務経験がある方はさらにこの免除期間を5年間に延ばすこともできます。
特例制度(幼稚園教諭免許所有者を対象とした科目免除)
2020年3月までの、幼稚園教諭免許状所有者等対象の制度です。
幼稚園教諭免許を持っている方(臨時免許を除く)が対象の制度で、幼稚園等での「3年以上かつ4320時間以上」の実務経験により、「保育の心理学」「教育原理」「実技試験」が免除になります。
また、幼稚園教諭は保育士養成校で指定の科目を学ぶことで国家試験の該当の試験科目が免除される制度があるため、保育士資格を取得しやすくなっています。
合格後の保育士登録
国家試験の合格後、資格取得から保育士として就業するには、「保育士登録」を済ませ、都道府県知事から「保育士証」の交付を受ける必要があります。
登録事務処理センターは、都道府県から委託を受けて保育士登録の事務を行う機関です。こちらで保育士証交付の事務手続きと保育士登録申請書を提出し、登録料を納付することで保育士登録を行うことができます。
地域限定保育士と試験
地域限定保育士とは合格した地域(自治体)でだけ働くことのできる保育士のことです。地域限定保育士としての登録から3年経過した後は全国で保育士として働くことができます。
2015年に保育士確保が難しい状況を解消するため、保育士試験を年2回行うことを促す仕組みとして制定されました。地域限定保育士の試験実施は毎年自治体によって異なります。
出典:国家戦略特区における「地域限定保育士」について/厚生労働省
保育士国家試験のための勉強方法や対策
保育士国家試験に合格するための勉強方法としては、次のような方法が取られます。
保育士試験の合格率は拡大傾向にあるものの、例年約2割ほどと難易度が高いため、受験のためには事前の計画的な試験対策が必要と言えるでしょう。
保育士試験合格率と難易度についての詳しい説明はこちらから
通信講座・通学講座
資格学校や教育出版会社の通学講座や通信講座で勉強する方法があります。
通信講座は試験に合格するためのノウハウや問題を解くことに重点を置いているため、スクリーング授業や実習はなく、独学で購入した教材を勉強するスタイルが基本です。勉強時間や場所を選ばない利点がありますが、実技試験対策や現場での保育経験は自身での対応が必要です。
通学講座は通学での勉強のため、勉強時間は限定されますがモチベーションを維持しやすいなどのメリットがあります。
保育士試験の通信教育についての詳しい説明はこちらから
独学
市販の教材や携帯の保育士試験アプリを利用して、試験勉強を行うことも可能です。独学は自分で学習計画を立て勉強を進めていく必要があるため、教材選びやモチベーションを維持できる勉強期間での学習計画に注意が必要です。
保育士試験の独学での学習方法についての詳しい説明はこちらから
保育士の給料や年収
平成28年度(2016年)の調査で、保育士の平均給料は次のようになっています。
月収平均 28.5万円(賞与込みの年収÷12)
年収平均 342.1万円
※おおよその手取り額は、この数字に0.8を掛けたもの
出典:「平成29年度保育士及び幼稚園教諭の平均賃金等の実態について」/内閣府
保育士の給料や年収についての詳しい説明はこちらから
保育士の平均給料
保育士の給料平均を、勤務環境や勤務施設別に比較してみました。公立は私立と比較して高い傾向ですが、公立の保育園は民間企業に委託運営が進んでおり、総じてその施設数は減少傾向にあります。また、自治体による地域差も大きいようです。
出典:「平成29年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果について」/内閣府
認可保育施設の私立と公立の平均月収
公立 | 私立 | |
---|---|---|
保育所 | 279,797円 | 262,158円 |
認定こども園 | 251,128円 | 242,043円 |
保育士の給料の引き上げ
政府は、待機児童問題などへの対策の一つである、保育士不足解消のために、「待機児童解消加速化プラン」の一環として、保育士の給与引き上げについてさまざまな施策を進めており、今後も行う予定です。
処遇改善とキャリアアップ研修
保育士の給与引き上げ策として、平成29年度(2017年)から「技能・経験に応じた処遇改善」を導入しています。保育士の処遇改善として始まった「キャリアアップ研修」では、指定の研修を経て新しい役職に就くことで待遇を改善するという制度です。具体的には、保育経験が3年以上ある保育士を対象として、条件を満たせば職務分野別リーダーとなることができ、経験年数によって処遇改善手当が加算されます。
出典:「技能・経験に応じた保育士等の処遇改善について」/内閣府
保育士のやりがい
一般社会でも「保育士不足」という状況が広く知られるようになった昨今「保育士は大変な仕事」というイメージも広がりつつあるようです。子どもを保護者から預かり、育ちの援助を行う仕事は大きな責任を伴いますが、子どもの成長を間近で見守ることができるため「保育士をしていて良かった!」と大きなやりがいを感じられる瞬間もたくさんあります。
保育士のやりがいについての詳しい説明はこちらから
保育士の仕事のやりがいや魅力
子どもの成長にかかわるやりがい
子どもの成長を助け、援助し、子どもの育ちや自立を見守ることが保育士の最も大きな仕事です。子どもの成長を常に見届けることができ、新しい発見や感動や学びなどを感じることができるでしょう。
同僚や先輩との関係の中で感じるやりがい
保育士は、1人でできる仕事ではなく、同僚保育士や先輩保育士、園長との協力体制やお互い助け合い、フォローしあうチームワークが非常に重要です。日常だけでなく大きな行事やイベントの際などには、連帯感が生まれ、1つのことをやり遂げることのやりがいをかんじることができるでしょう。
保護者の手助けや地域の保護者の相談
保育園にはさまざまな保護者がいます。また、地域にも子育て支援を必要としている保護者がいます。そういった保護者の子育ての悩みに寄り添い、共により良い方向に解決していく手助けができるでしょう。
社会貢献へのやりがい
保育士の資格を生かして、保育所だけでなくさまざまな児童福祉施設の仕事に尽力することも可能です。保育を必要としている環境にある子どもと保護者に、社会貢献として寄り添うことができるため、非常にやりがいを感じることができるでしょう。
保育士の仕事の大変なこと
保育士の仕事は、子どもの命や健康を預かっている側面もあり、非常に責任が求められる仕事でもあります。子ども一人ひとりに合わせたさまざまな対応力が求められるため、まだ経験が浅いうちは、対応策が見つからず悩むことも多いでしょう。また、経験を積んでも予期せぬことに決断や対応を求められるさまざまな場面も出てくるかもしれません。
職員同士の人間関係や、保護者への対応力の面で、円滑なコミュニケーション能力も現在は求められることが多いため、「人と居心地よく接する」ために、自分自身の対人スキルを磨かなければならない大変さも考えられます。
自分1人では抱え込まずに、できるだけ周囲に相談しながら、一歩一歩成長していくことが大切になってくるでしょう。
保育士の就職・転職に関する求人状況
保育士の有効求人倍率
有効求人倍率とは今ある求人に対して、どれくらい働きたい人がいるかの指標です。倍率が高いほど、就職しやすい状況と言えます。
平成29年10月の保育士の有効求人倍率は2.76倍で、全職種の同時期の平均1.58と比較して2倍近い求人があることが分かります。いま、さまざまな保育施設が保育士を求めていることがうかがえます。
保育士求人の探し方
平成12年年に認可保育所の設置主体制限が撤廃され、平成25年度からの保育所(認可保育園)への株式会社やNPO法人等の参入拡大に伴い、現在ではさまざまな運営母体が保育園の経営、運営に参入しています。また、大都市のニーズを組んだ小規模保育児事業や企業主導型保育事業など、さまざまな規模の保育施設が増加しました。それに伴い、保育士が働く環境は多様化しています。
保育士の就職・転職に関しての求人は、学校主体の紹介制やハローワークから探すだけでなく、現在ではWEBサイトや保育士専門の求人サイトからも検索し、探すことができるようになりました。
ハローワーク
正式名称は公共職業安定所。国によって運営されている、職業紹介事業を行っている機関です。
大学、短大、専門学校の紹介や就職課
未経験で就職する際には、信頼がおける学校からの就職先の紹介や、学校の就職課を通じての応募は心強いでしょう。
各運営法人や園のWEBサイト
現在では、保育施設を運営する多くの法人が自社の公式サイトを持ち、そこで独自に求人募集を行っていることも多いようです。
保育士専門求人サイト
保育士の転職やパート求人、派遣など、さまざまな待遇の求人を幅広く網羅しています。
北海道の詳しい求人状況についてはこちらから
東京の詳しい求人状況についてはこちらから
愛知の詳しい求人状況についてはこちらから
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福岡の詳しい求人状況についてはこちらから
保育士資格の取得方法も保育士の仕事内容も広がりつつある
今後は一人ひとりの子どもに合わせた「保育の質」を向上させていくために、保育士の資格と役割や仕事は、ますます注目を浴びていると言えるでしょう。待機児童問題は国の製作により改善の方向に向かってはいますが、より保育の質を高めるには、保育士が必要となる場面は今後ますます増えていくと考えられます。「保育の専門家」としての資格の重要性は日々高まっていると言えるでしょう。