地域型保育事業は、2015年スタートの「子ども・子育て支援新制度」の中で、各地域が抱える保育の問題を解決するための新たな制度の1つとして誕生しました。今までの認可保育所ではカバーできなかった大都市や地方の保護者のニーズにきめ細かく対応するために生まれた小規模保育施設や企業主導型保育施設に対し、新たな基準のもと認可を与えることで、保育士の質の向上や環境の整備を行い、子育てを支援していく制度です。
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地域型保育事業とは
地域特有の保育ニーズに対応するための新制度
子ども・子育て支援新制度の制度の1つとして、「地域型保育事業」が始まりました。
地域型保育事業は、原則0~2歳児を対象としています。特に大都市部で問題となっている待機児童対策(待機児童は0~2歳児が最も多い)や、地方の児童人口減少地域での保育基盤維持できるように取り計らうなど、その地域が抱えるさまざまな保育ニーズに、きめ細かく対応していくための制度です。
認可外保育施設が認可されやすくなった
それまでの認可保育所だけでは解決できなかった保護者のニーズ。例えば都市部では駅近くのビル内の小規模な保育施設や、働いている事業所内にある保育所、地方では山間部や離島にあるへき地保育所など、地域特有のニーズに合わせ、様々な形式で作られた保育施設があります。
そういった施設は、施設面積や保育士の数などで国が定めた保育所の認可基準を満たすことができないため、今までは認可外として国の補助や保育士の研修制度が受けられない状態でした。しかし、改めて「地域型保育事業」としての定めた基準を満たすことで、さまざまな事業所や形態の保育施設が、認可を受けられるようになったのです。
認可によって補助金が受けられる
地域型保育事業に認可された保育施設には、「地域型保育給付」という補助金を給付する財政措置がとられる制度になりました。事業の認可については、国が新たに設けた基準を満たしている施設を市町村が確認し、認可することになっています。補助金によって、設備への投資や保育士の確保など、保育の質を保つことができます。
地域型保育事業の4つの事業の内容・特徴
「地域型保育事業」に位置づけられているのは4つの事業形態です。
小規模保育事業
定員は6~19人以下と、通常の保育所に比べ小規模な施設型の保育事業です。家庭的保育に近い環境で、0~2歳の子ども一人一人にきめ細かな保育を実施します。
定員20名以上の認可保育所に比べ、施設準備や認可までの期間がかからず、多様なスペースで新設園を開園できるため、待機児童が多い都市部は待機児童解消のための施設として期待されています。
家庭的保育事業
家庭的な雰囲気の下で、少人数を対象にきめ細かな保育を実施する保育事業です。
家庭的保育(保育ママ)1人につき、3人の子どもまで預かることができます。施設としては、家庭的保育者の居宅その他のさまざまなスペースなどを利用することが認められています。家庭的保育者は、保育士、もしくは資格がなくても従事することができますが、市町村が指定した研修の修了が必要です。
事業所内保育事業
主な設置主体は事業所内で従業員のために保育施設を備えている企業です。定員は数人~数十人程度、設置場所も事業所やその他の様々なスペースと、園によってさまざまです。認可基準は、定員が19人以下の場合は小規模保育事業と同様の基準、20人以上の場合は保育所と同様の基準になります。
居宅訪問型保育事業
保育認定された誰もが利用できるわけではなく、障害・疾患などで個別のケアが必要な場合や、施設がなくなった地域で保育を維持する必要がある場合などに、保護者の自宅を訪問して、1対1で保育を行います。
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地域型保育事業の認可基準
企業内の保育所などの認可外保育施設の事業所や、新規参入する企業、家庭的保育を行う個人など、さまざまな事業形態からスムーズに地域型保育事業の認可へ移行できるよう、それぞれの事業の認可基準を定めています。
地域型保育事業の認可基準
<地域型保育事業施設と認可保育所の認可基準の比較>
出典:子ども・子育て支援新制度ハンドブック 「地域型保育事業の概要」/内閣府
市町村による運営基準と監査
運営基準
地域型保育事業の認可基準は国によって定められています。その基準に沿った施設かどうかの確認と、運営基準に沿った確認をして許可を行うのは区町村が行っています。
市町村による監査
1年に1回以上、認可した地域型保育事業施設が、児童福祉法第34条の規定に基づき定められた基準を遵守しているかどうかについて、市町村が監査を行っています。
出典:「児童福祉法に基づく家庭的保育事業等の指導監査について(通知)」/厚生労働省
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地域型保育事業の連携施設とは
地域型保育事業は原則的には0~2歳までが対象です。
定員20名以上の事業所内保育事業を除く、家庭的保育事業や小規模保育事業の施設では、3歳以降の子どもは他の施設に転園する必要があります。そこで、認可を受ける際には、卒園後の受け皿となる「連携施設」を設ける事が決められており、連携施設から人員やアドバイスなど、保育内容の支援を行うことで保育の質を保つよう求めています。
連携施設は、認定こども園・認可保育所・幼稚園で、事業者が探すことが原則として求められます。
連携施設に求められる「保育内容の支援」の例
地域型保育事業では子どもたちに適切な保育が行われるようにするため、連携施設から「保育内容の支援」が行えるように指導しています。
給食の支援
献立作成、給食の調理と搬入、子どもへの個別対応(離乳食対応、アレルギー児対応、体調不良児対応等)など
嘱託医(健康診断)
必要に応じ、連携施設との合同で健康診断を行う
園庭開放
屋外遊戯場があまり広くない場合、定期的な利用(例えば月数回、週1回など)に対応
合同保育や行事への参加
定期的な合同保育や行事参加よって、集団保育の機会の確保を行う。
代替保育の提供
施設の職員の病気や休暇などで保育サービスが提供できない場合は、連携施設の支障のない範囲で保育サービスを提供してもらう。
卒園後の乳幼児の受け入れ
施設を利用している乳幼児の卒園や転園後は、小学校に入学するまでの保育・教育を継続する為に、保護者の希望に基づいて連携施設先に提携する必要があります。連携施設となった保育所は、受け入れのための優先的利用枠を設定し、それを市町村が明示することが求められています。
出典:「家庭的保育事業等の連携施設の設定状況について(平成30年4月1日時点)」/厚生労働省
連携施設の現状
連携施設の経過措置
待機児童問題解消のため、多くの保育施設や法人に、家庭的保育事業や小規模保育事業を始めとする地域型保育事業に参入してもらおうと、国は2019年末までは連携施設がなくても認可できる経過措置を設けています。
そのため、いまだに連携施設が未設定のままになっている事業所や保育施設もあるのです。国や市区町村が積極的に連携施設を紹介するなどの姿勢が求められている状況です。
出典:育て支援に関する行政評価・監視_施設の整備等の推進/総務省
・参考出典
小規模保育事業の入園対象年齢の拡大
連携施設が見つからない、という問題が特に大きい東京都や大阪府などの自治体の声を受け、政府は待機児童の多い国家戦略特区内に限って、0~5歳を対象とする小規模保育事業を認める措置をとることになりました。(国家戦略特別区域法改正による児童福祉法の特例措置)
出典:「小規模保育事業の入園対象年齢の拡大について」/内閣府
・参考出典
連携施設が未設定であることの問題点
地域型保育事業の施設では保育士資格のない職員が働ける事業もあり、有資格者のフォローが必要になる場面もあるでしょう。
連携施設が決まっていければ、そういった情報を共有しカバーすることができますが、連携先が決まっていない、または一部しか連携していない場合、人員確保や保育へのアドバイスが適切に受けられないことが考えられるのです。
出典:「【連携状況別】家庭的保育事業等(居宅訪問型保育事業を除く)の連携施設設定数(平成30年4月1日時点) /厚生労働省」
地域型保育事業の今後の課題
地域型保育事業の制度導入により、保育の受け入れ枠は確実に拡大しており、都市部での待機児童問題は数字の上では確実に減少しつつあります。
今後の幼児教育・保育無償化によって潜在保育ニーズの高まりや、連携施設未設定の施設についての解消問題について、国と自治体がどう対応していくのか、子ども・子育て支援新制度施行後の動きと見直しをどのように行うのかに注目が集まっています。