認可保育園は運営費はその多くが補助金といわれています。国や自治体から開設や建設、経営に関する運営費が支給されているようです。働く保育士さんにとって、自身の勤める園の運営状況は知っておきたいものですが、その内の補助金はいくら支給されているのでしょうか。このコラムでは厚生労働省の資料を中心に、公定価格や保育料を含めた認可保育園の補助金制度について見ていきます。
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認可保育園になるには?
運営に補助金が出る認可保育園ですが、保育士さんの職場としてもその基準はしっかり確認しておきたいもの。ここでは認可保育園として認められるにはどのような条件を満たす必要があるのか見ていきます。
「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」を満たしている
厚生労働省の定める「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」を満たしていることが必要です。これは認可保育園として保育園を運営していく上での最低ラインのようなもの。保育所を含む児童福祉施設には、設備、運営、職員の人数など、法律で定められた基準があります。
例えば、2歳未満児の保育を実施する園の場合はほふく室を設ける必要がある、4歳以上児30人に対して保育士が1人必要、などその敷地面積や必要となる職員の人数に関しても厳格に基準が定められています。
認可保育園として保育所が運営するにはまず、この基準を満たす必要があります。
自治体が定める認可の基準を満たしている
厚生労働省の基準はあくまでも最低基準。都道府県、政令指定都市、中核市はこれに加えて独自の認可基準を条例で定めることができます。
自治体によって異なりますが、厚生労働省の基準を一部そのまま採用している場合もあれば、地域の実情に合わせて基準を厳しくして保育の質を担保しようとする自治体もあります。
例えば、神奈川県では保育士の配置基準を国と同じ基準に設定しているのに対し、県内の政令指定としての横浜市では、1歳以上の保育士の配置基準を国、県より厳しくしています。一例をあげると、国と神奈川県の基準が3歳児に対して、子ども20人に保育士1人のところを、横浜市は子ども15人に保育士1人を配置することにしています。
保育所が運営を考える自治体の基準も合わせて満たしたうえで、厚生労働省の基準に加えて二重の基準を満たしているのが認可保育園といえるでしょう。
認可保育等の手引き(資料編)/神奈川県
自治体と相談、認可の申請
認可保育園として運営を始めるには自治体に申請をして認可をもらう必要があります。
認可保育園として運営、開設の準備を始めるには、上述の国の基準、自治体の定める基準に加えて、建設に関する条例や運営のための補助金が下りるかどうかなど各種関係法令などと照らし合わせてさまざまな条件をクリアする必要があり、自治体と相談したうえで申請します。こうして認可保育園として認められることで運営を始めることができるようです。
認可保育園の補助金制度とは?
では、具体的な補助金制度の説明に移っていきましょう。認可保育園の運営費の中心となるのが補助金ですが、こうした補助金がどのような仕組みとなっているのか簡単に説明していきます。
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「補助金」=「公定価格」-「保育料」
補助金は以上のように、公定価格から保育料を引いた分だけ支給されるのが一般的です。しかし、公定価格というのは一般的にはなじみがない言葉ですし、保育料の額もいったいどれくらいか想像するのは難しいですよね。そこで、まずは「公定価格」と「保育料」について見ていきましょう。
認可保育園の補助金制度に関わる公定価格
公定価格というものが保育園の運営には大きく関わってきます。認可保育園に関わる公定価格は、大まかにいえば国が算定する保育園の運営にかかる費用のこと。公定価格には次の要素が関係していきます。
基本分単価
子ども1人を預かるのにこれくらいかかります、というのが単価です。この単価は子どもの年齢、園がある地域、保育の利用に関わる1号、2号、3号の区分、保育所の定員によって変わってきます。
つまり、基本分単価は、「これくらいの年齢でこの区分の子どもを、これくらいの人数、この地域で保育するのにかかる費用」ということができます。
加算
加算も公定価格を決める費用です。これはその保育所が実施するサービスや待遇改善によって変わってきます。
例えば、朝夕の延長保育をすればその分朝夕に配置しなければならない保育士の人数が増えるように、保育園を運営する費用が余計に加わりますよね。キャリアアップに関する処遇改善なども運営に関する人件費が増えるでしょう。
基本分単価と各種加算を加えたものが保育園の運営にかかる費用として計算され、それが一般的に公定価格と呼ばれるものです。
利用者負担の保育料
そして、保育園の運営費に関わるのが利用者負担の保育料です。
この保育料は国が住民税の課税区分ごとに上限額を設定しており、さらに自治体がこの上限額の中で保育料を決定しているようです。こうした上限があるため保育料は一定程度に抑えられています。そのため、保育所は運営にかかる費用を利用者にすべて払ってもらう、ということができません。
そこで、国や自治体でこうした負担を肩代わりしようというのが認可保育園に支給される補助金です。
認可保育園の補助金制度の意味
上述のように補助金は大まかにいえば、公定価格から利用者負担である保育料を引いた額となります。公定価格は保育所運営にかかる大まかな費用であり、保育料は認可保育園が手にすることのできる制限された収入。本来であれば、保育料として収入を得たいところを、保育サービスを安価に提供するために保育料には上限があるということでした。
そこで、運営にこれくらいかかるだろうという公定価格から、実際に受け取る収入の保育料を引いた、いわば認可保育園の負担になってしまう部分を国や自治体が補助金という形で補ってあげましょう、というのが認可保育園へ支給される補助金の大まかな位置づけです。
実施されている補助金の内容は自治体ごとに異なり、補助金制度の中には施設側の自己負担が発生する場合もあるため一概には言えませんが、その運営費の多くを補助金で賄うことができるでしょう。
そのため、認可保育園は運営や経営に関して安定している園が多いといえるかもしれません。
出典:公定価格の仕組み/内閣府
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認可保育園の補助金制度を理解しておこう
認可保育園は運営のために国、自治体のさまざまな基準を満たして開設、運営されています。その運営、開設には大きな費用もかかることでしょう。
また、保育サービスを利用しやすくなるようにその利用料も国や自治体の基準によって抑えられています。
その運営費、開設にかかる負担は大きなものですが、それを負担してくれるのが補助金制度です。保育の質を担保し、保育料を抑えて設定することで社会全体で利用しやすい保育サービスを提供するための制度が、認可保育園の補助金制度だといえるでしょう。
保育士さんの人件費の多くも、こうした補助金によって賄われており、認可保育園で働く保育士さんにとっては補助金は自身の職場を支える大きな役割を持っているといえますね。