保育士資格を取得する方法として、通信制大学に入学する方法があります。通信制大学は社会人として働きながら、または子育てをしながらなど自分のペースで資格取得を目指すことができます。今回は、通信制大学にかかる費用や期間、メリットなどを紹介するので、通信制大学を選ぶ際の参考にしてみてくださいね。
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目次
保育士資格取得を目指せる通信制大学(大学通信教育)とは
そもそも通信制大学とはどのようなものか、簡単に解説します。
通学が難しい状況・環境でも学べる通信教育
通信制大学とは、「働きながら勉強したい」「事情があって通学が難しい」などさまざまな事情があり、キャンパスへ定期的に通うことが難しい人の学習ニーズに応えるためにつくられた教育課程です。
指定保育士養成施設の通信制大学を卒業すると、保育士資格だけでなくその大学の学士と大学卒業資格が得られます。
そのため、通信制大学は自分のペースで勉強を進めたいという方におすすめと言えるでしょう。
「指定保育士養成施設」の通信制大学卒業で保育士資格取得可能
通信制大学(大学通信教育)は、文部省(文部科学省)に認可された正規の大学教育機関であるため、卒業することで通学制大学と同じ学士やその他の資格を自動的に得ることができます。
通信教育卒業で保育士資格取得を目指すためには、各自治体の知事によって認定された「指定保育士養成施設」である通信制大学、または専門学校を選ぶ必要があります。
また、多くの学校で幼稚園教諭免許状とのW取得が可能です。
指定外の大学では国家試験受験が必要
指定保育士養成施設の認定を受けていない学校でも、保育士になるための勉強は可能です。
ただし、保育士資格を取得するためには、国家試験を受験し、合格する必要があります。
幼稚園教諭免許状を持っている人の特例制度
厚生労働省「 幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例」の資料によると、2012年度に幼稚園教諭免許状所有者(臨時免許を除く)を対象に、保育士資格取得特例(以下、「特例制度」)が始まりました。
特例制度とは、幼稚園教諭免許状を持ち、幼稚園等で一定の実務経験がある人を対象に、保育士資格の取得に必要な単位数等の特例を設けたものです。
幼稚園教諭免許を持っていて、3年かつ4320時間以上の実務経験がある(または卒業までに見込みがある)人の場合、特例制度を利用できる大学や通信制大学があります。
特例制度の期限は2019年度末までになっていましたが、2024年度末までに延長されました。
出典:「幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例」/厚生労働省
通信制大学の入試と卒業所要単位
通信制大学に入学するにあたって気になるのが入学や卒業にまつわることでしょう。ここでは入試の有無や入学時期、卒業所要単位について解説します。
入試や入学時期
多くの通信制大学は書類選考のみで、入学試験を設けていない大学が多いようです。
一部大学では小論文の提出や面接を設けている場合もあるので、大学を選ぶ際に確認をしましょう。
入学時期は4月と10月の年2回の学校が多いですが、年1回の場合もあるのでこちらも確認するとよさそうです。
卒業するための取得単位数
通信制大学でも卒業するには一定の単位を取得する必要があります。
卒業所要単位数
通信制大学の卒業に必要なのは124単位以上。短大では2年制で62単位、3年制で93単位です。
大学では卒業までに30単位以上、短大では卒業までに15単位以上スクーリング(面接授業)を履修する必要があると定められていましたが、2001年からの積極的なインターネット授業の導入により、インターネットやeラーンニングでも取得可能な単位が増えました。
教育関係の大学は面接授業を重視するため、他学部と比較してもスクーリングが多い傾向にありますが、中にはスクーリング期間を短くしてインターネット授業を増やしている学校もあります。
取得単位認定による途中編入
既に一度大学・短大を卒業している場合、その取得単位が認定されれば途中編入が認められ、より短い学習期間で資格取得を目指すことができます。
認定されやすいのは一般教養などの単位で、その他、保育や教育に関しての専門性が高い取得単位も認定されやすくなっています。
取得単位が認められれば、短大・大学共に、2年次または3年次からの編入が可能です。
特例制度
幼稚園教諭免許状を持ち3年かつ4,320時間以上の実務経験がある方を対象に単位取得の特例制度が設けられています。
対象者は最大8単位の履修、スクーリング授業を1~2日受講することで保育士国家試験を受験することができ、全教科試験免除で保育士資格を取得することができます。
通信制大学に通い特例制度を利用して保育士資格の取得を目指す場合、最短学習期間は約半年間になります。
出典:「大学設置基準等の一部改正省令」P5.P9/文部科学省
出典:「インターネット等のみを用いて授業を行う大学における校舎等施設に係る要件の弾力化による大学設置事業の全国展開について」P1/文部科学省
出典:「幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例」/厚生労働省
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通信制大学の学習期間や費用
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通信制大学に入学した場合に必要な学習期間やかかる費用について解説します。
通信制大学の学習期間
通信制大学の学習期間について見ていきましょう。
1年次新入
1年次から入学する場合、学習期間は短大では3年・4年制大学では4年が最短学習期間です。
在学可能期間は大学によって変わりますが、多くの大学では8年間と定められています。
途中編入
既に一度大学・短大を卒業し取得単位がある場合は途中編入できることもあります。
取得単位数によって勉強期間は少なくなり、最短2年で保育士資格を取得できることもあります。
特例制度
幼稚園教諭免許を持っていて実務経験など一定の条件を満たしている場合は、特例制度を利用することができます。
最短半年間程度の学習期間と保育士国家試験申請(全教科免除)で保育士資格が取得可能です。
通信制大学の費用
通信制で学習する利点はかかる費用の安さでしょう。
通学制大学では年間約100万円程度の学費がかかるのに対し、通信制大学であれば年間30万~50万円程度の学費に抑えることができます。
学費の内訳
通信制大学の学費の内訳はおおむね以下のようになります。
- 入学時納付金 50000~80000円
- スクーリング費用 8000円×履修科目数(30単位)
- 資格科目履修費 5000~6000円×履修科目数(94単位)
- 他に教材費、交通費、実習費、補助教材費など
通学制大学と比較した場合に、入学金や交通費など、学費以外にかかる費用を抑えることができるのも通信制大学のメリットと言えそうです。
そのため、費用を安く抑えて保育士資格の取得を目指したいという方にはおすすめでしょう。
通信制大学の学習スタイル
通信制大学ではどのようなカリキュラムが提供されているのか解説します。
学習スタイル
通常は年間使用のテキストを購入後、通学せずに独学で学習します。定期的に課題やレポートを大学側に提出するスタイルです。
その他インターネット・DVDを利用した授業やeラーンニング(パソコンやタブレットなどのデバイスでインターネットを介してどこでも学習できるシステム)などで、より理解度を高められるようなカリキュラムを用意しているケースも増加しているようです。
また、期末の試験時は大学に通学して大学構内で授業を受けることになっていることが多いそうです。
ピアノなど実技科目
保育士資格を取得するための必修科目にピアノなどの実技科目が含まれています。
実技科目には試験があり、基本は独学で練習する必要があるため、まったくの初心者の場合は自分でピアノレッスンなどに通うなどの対策が必要です。
ピアノのレッスン料は自費ですが、学校によっては全国に教室のある音楽教室と提携があり、入学料などについて割引制度が利用できる場合もあるので学校側に確認してみましょう。
スクーリング(面接授業)
通信制大学には、在籍する大学に一定期間通学し授業に出席して課題を提出することで、単位を取得できる仕組が設けられています。
GW・夏季冬季休暇期間・連休などにスクーリングスケジュールが設定されており、スケジュールの中から自分で通学期間を選ぶことが可能です。
指定の単位数を取得するためには出席が不可欠となっており、この単位を取得できなければ卒業ができません。
スクーリングでは、授業に参加しなければ学びづらい実践的な内容を中心にカリキュラムが組まれています。
一緒に学ぶ同級生と会えるチャンスでもあり、モチベーションアップにもつながるケースが多いようです。
遠方から通学する場合は宿泊費や交通費が別途必要で、どの程度まで学校が費用を負担してくれるかは学校によって異なるので、学校を選ぶ際にはスクーリングが可能な地域か、費用面とアクセス面も考慮に入れる必要があります。
保育実習
保育士資格を取得するには保育実習参加が不可欠です。
通信制大学の場合は、保育実習を行うための保育施設は自分で探し、自分で実習を申し込む形式がほとんどです。大学規定の保育実習期間を満たすことが卒業条件になります。
通信制大学の卒業率
卒業率を公開していない大学がほとんどであるために、正確な数字を出すことは難しいのですが、一般的な卒業率は20%から30%ほどと言われているようです。
ただ、保育士資格が取得できる通信制大学の中には、修業年限4年間で55%の卒業率、8年間の最長在学期間で60%の卒業率という学校もあります。
通信制大学の卒業率が低いと言われる要因として、社会人など働いている人がスクーリングに出席することが難しい、モチベーションの維持が難しいなどと言われています。
そのため学習アドバイザーを常設したり、WEB上やSNSなどで学生同士のコミュニケーションと交流を深める後押しをして、学習モチベーションを維持を維持するために工夫をしている学校が増えています。
保育士を目指せる通信制大学・短期大学・専門学校一覧
2019年度4月時点で、指定保育士養成施設である通信教育制のある大学・短大・専門学校をまとめました。学校選びの参考にしてみてくださいね。
通信課程のある大学・短期大学・専門学校
2019年4月1日時点で、通信課程がある全国の指定保育士養成施設は以下になります。
大学・短期大学
北海道 星槎道都大学通信教育科指定保育士養成課程
群馬県 東京福祉大学保育児童学部保育児童学科通信教育課程
東京福祉大学短期大学部こども学科こども教育・保育専攻通信教育課程
千葉県 聖徳大学通信教育部児童学部児童学科
聖徳大学短期大学部通信教育部保育科
東京都 明星大学教育学部教育学科(通信教育課程)保育士養成課程
帝京短期大学こども教育学科こども教育専攻通信教育課程
神奈川 小田原短期大学保育学科通信教育課程・専攻科
京都府 佛教大学社会福祉学部社会福祉学科通信教育課程
佛教大学教育学部教育学科通信教育課程
大阪府 大阪芸術大学短期大学部通信教育部保育学科保育コース
大阪芸術大学通信教育部芸術学部初等芸術教育学科
兵庫県 豊岡短期大学通信教育学部こども学科保育専攻
神戸親和女子大学発達教育学部児童教育学科保育学コース(通信教育部)
姫路大学教育学部こども未来学科通信教育課程保育士養成コース
岡山県 吉備国際大学通信教育部心理学部子ども発達教育学科
福岡県 近畿大学九州短期大学通信教育部保育科
専門学校
大阪府 日本メディカル福祉専門学校保育士科
大阪保健福祉専門学校保育士通信教育科
通信課程のある大学や専門学校は、北海道から、関東地方や関西地方、九州地方まで全国に幅広くあるので、それぞれの通信制大学のカリキュラムを比較して自分に合った学校を選ぶとよさそうです。
出典:「指定保育士養成施設一覧(平成31年4月1日時点)」/厚生労働省
通信制大学で保育士資格取得を目指そう
現在社会人として働いていたり、子育てをしていたりなど通学が難しい方には、通信制大学で保育士の資格を取得するという選択肢があります。
ひと昔前はモチベーション維持が難しく挫折してしまうケースがクローズアップされ、卒業率が低いことから通信制大学の卒業は難易度が高いと思われていました。
現在はモチベーション維持やより分かりやすく学習しやすいスタイルの導入・工夫がみられる魅力的なカリキュラムが増えつつあります。
また、通信制大学は費用を抑えることができるほか、途中から編入できたり自分のペースで勉強を進められたりと、さまざまなメリットがあります。
入学前に大学ごとの特色を比較し、学習スタイルと自分の環境とのミスマッチがないように、学習へのモチベーションを維持しながら保育士資格の取得を目指しましょう。