幼稚園の先生の中には、保育需要の高まりを受けて保育士資格も取っておきたいと考える方もいるのではないでしょうか。保育士養成協議会が実施する保育士試験では、幼稚園教諭の一部科目免除がある一方で、2019年度末(平成31年度末)までの特例制度が設置されています。このコラムでは特例制度について、どのような条件で、どの科目が免除されるのか解説していきます。
leungchopan/shutterstock.com
特例制度の目的
まずは、特例制度ができた目的、その大枠についてみていきましょう。
特例制度の概要
特例制度の概要についてみていきましょう。
このコラムで扱う特例制度は「幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例」です。つまり、幼稚園教諭が保育士資格を取ることに関する特別な措置ということ。
この制度の主な条件は幼稚園教諭免許を持っている方の「実務経験」と指定保育士養成校での「学び」を主な条件としています。
幼稚園教諭が保育士養成協議会が実施する保育士試験を利用して保育士資格が取りやすくなるようにするように取り組むというのが主な内容になっています。
特例制度の目的
この特例制度の目的は、主に「認定こども園」が制度化されたことが大きくかかわってきます。
2015年度(平成27年度)から幼保連携型認定こども園をはじめ、認定こども園が制度化されました。幼稚園と保育園のどちらの子どもも預かることができるこの施設で働くのは「保育教諭」で、原則として保育士資格と幼稚園教諭免許の両方を持っていなくてはなりません。
制度が出来上がってすぐに、保育者全員が両資格を持った保育教諭の条件を満たすのはむずかしい、ということでこうした特例を一定期間設けて認定こども園で働ける保育教諭を増やそうと取り組みが行われています。
特例以前に保育士資格を取りやすい幼稚園教諭
特例は、一部の条件を満たす対象者向けに、保育士試験の科目免除をするというのが主な内容ですが、特例以前に、幼稚園教諭は保育士試験にすでに一部科目の免除があります。
筆記試験では「保育の心理学」と「教育原理」が免除され、実技試験も免除となります。特別な条件はなく、幼稚園教諭免許状のコピーを提出で科目が免除されます。
また、幼稚園教諭免許を取る際に卒業した学校が保育士養成課程を設置しており、特定の科目を受講していると、その科目に対応した試験科目が免除される、という制度も利用できます。
そのため、すでに幼稚園教諭がとりやすい保育士資格が、特例を設けることによってより取得しやすくなるということですね。
特例制度の条件と免除となる試験科目
maroke/shutterstock.com
もともと保育士試験免除科目がある幼稚園教諭免許ですが、では特例制度でさらに取得に有利になるのはどのような方なのでしょうか。特例制度が利用できる条件、またその免除対象となる科目について詳しく見ていきます。
必要な実務経験
制度の対象は幼稚園教諭として一定以上の実務経験がある方です。勤務時間について基準があり、3年以上かつ4320時間以上働いたことがある方が対象です。
実務経験としてカウントされる施設
主に実務経験として認められる施設は次のような種類があります。
・幼稚園(特別支援学校幼稚部含む)
・認定こども園
・保育所
・小規模保育事業
・事業所内保育事業
・公立の認可外保育施設
・へき地保育所
・幼稚園併設型認可外保育施設
・認可外保育施設指導監督基準を満たす認可外保育施設
また、各施設に関して詳細は厚生労働省の特例制度に関する資料を参考にしてみてくださいね。
免除科目「保育実習理論」
保育実習理論がこの特例制度の対象となる科目です。保育実習理論は実務経験以外に特別な講習や講義を受けなくとも、実務経験を満たすことで免除されます。
その他の免除科目
幼稚園教諭免許取得による免除科目、実務経験による免除に加えて、指定保育士養成校での「学び」によって科目が免除されます。
指定の大学、短大、専門学校で開催される幼稚園教諭向けの指定の講義を受講することで、科目に対応した保育士試験科目が免除されることになります。
免除できる科目に上限はなく、特例制度によって設置された4教科8単位分を修得することで、筆記試験全科目と実技試験を免除して保育士資格を取得することができます。通学の場合、8単位分で20日程度を要するようです。
また、在学中に受けた授業内容に対応する教科に関しては、こうした設置科目を受講しなくても免除が認められる場合があるため、より少ない時間で全教科免除での保育士資格取得ができる場合があるということです。
こうした特例制度を利用すれば、時間はかかりますが、当日の問題に左右されがちな試験を受けずに保育士資格を取得できますね。
免除の申請には実務証明書が必要
免除には実務証明書が必要になります。自身が勤める施設に特例制度を利用して保育士資格を取得したい、という旨を伝えたうえで、実務証明書を作成してもらいましょう。
特例制度の期限は2019年度末まで
この特例制度には期限があります。それは、認定こども園の制度が出来上がってから5年となる2019年度末まで。保育士資格の取得を考えている方は早めの対応をしたほうがよさそうです。
その他、申請方法などの詳細については保育士養成協議会のホームページをチェックしてくださいね。
簡単1分登録!転職相談
転職に関するご質問や情報収集だけでもかまいません。
まずはお気軽にご相談ください!
読んでおきたいおすすめ記事
保育士をサポート・支える仕事特集!異業種への転職も含めた多様な選択肢
保育士の経験を経て、これからは保育士のサポート役として働きたいという方はいませんか?責任の重い仕事だからこそ、人の優しさや支えが必要不可欠な仕事かもしれませんね。今回は、保育士さんをサポートする・支え...
保育士資格を活かせる在宅ワークのお仕事特集!保育関係の自宅でできる仕事を徹底解説
保育士資格を活かせる在宅ワークにはどのような仕事があるのでしょうか。保育園の事務職や保育ママ、保育園業務のサポートなど自宅でできる仕事は意外に多いもの。今回は、保育士資格を活かして働ける在宅ワークの仕...
病院内保育とは。役割や仕事内容、病院内保育士として働くメリット
病院内保育とは、病院や医療施設の中、または隣接する場所に設置されている保育園のことです。保育園の形態のひとつであり、省略して院内保育と呼ばれることもあります。転職を考えている保育士さんの中には、病院内...
子ども・赤ちゃんと関わる仕事31選!資格の有無や保育士以外の仕事を関わる子どもの年齢別に紹介
子どもと関わる仕事というと主に保育園や幼稚園を思い浮かべますが、それ以外にも意外とたくさんあります!今回は赤ちゃんや子どもと関わる仕事31選を紹介!無資格で活躍できる職場もまとめました。子どもと携わる...
保育士を辞める!次の仕事は?キャリアを活かせるおすすめ転職先7選!転職事例も紹介
保育士を辞めたあとに次の仕事を探している方に向けて、資格や経験を活かせる仕事を紹介します。ベビーシッターなど子どもと関わる仕事はもちろん、一般企業での事務職や保育園運営会社での本社勤務といった道も選べ...
保育士から転職したい!転職先としておすすめの異業種22選。保育士以外の仕事やメリット・デメリットも
保育士以外から異業種への転職を考えている際、どのような転職先がおすすめなのでしょうか。今回は、次の仕事として保育士から転職しやすいおすすめの異業種22選を紹介します。保育士から異業種に転職するメリット...
保育園運営会社の仕事内容とは?本社勤務でも保育士資格は必要?働くメリットや求人事情まで
保育園運営会社にはどんな仕事があるのでしょうか?保育園運営会社で働くことは「本社勤務」とも呼ばれ、保育園の運営に携わる仕事として、主に一般企業に就職したい保育士さんにとって人気の高い職種のようです。今...
【2024年最新】保育士に人気の転職先ランキング!異業種や選ばれる職場を一挙公開
保育士の資格を活かして働ける人気の転職先をランキング形式で紹介!企業主導型保育園や病院内保育所、ベビーシッターなど保育士経験やスキルを活かせる職場はたくさんあります!今回は保育施設や異業種別に詳しく紹...
【完全版】保育士資格を活かせる仕事・働ける企業25選!
保育園で保育士として働くのが辛いと感じて、転職を考えているという方がいるかもしれません。しかし、せっかく取得した保育士資格を活かして働きたいですよね!保育士として得たスキルや経験は一般企業や福祉施設、...
【2024年最新版】幼稚園教諭免許は更新が必要?廃止の手続きや期限、対象者をわかりやすく解説
幼稚園教諭免許は更新が必要なのか、費用や手続き方法などを知りたい方もいるでしょう。今回は、2022年7月1日より廃止された教員免許更新制について詳しく、そしてわかりやすく紹介します。幼稚園教諭免許を更...
保育士は年度途中に退職してもいいの?理由の伝え方や挨拶例、再就職への影響
「年度途中で退職したい...けれど勇気が出ない」と悩む保育士さんはいませんか。クラス担任だったり、人手不足だったりすると、退職していいのか躊躇してしまうこともありますよね。そもそも年度途中で辞めるのは...
幼稚園教諭からの転職先特集!資格を活かせる魅力的な仕事18選
仕事量の多さや継続して働くことへの不安などを抱え、幼稚園教諭としての働き方を見直す方はいませんか。幼稚園教諭の転職を検討中の方に向けて、経験やスキルを活かせる18の職場を紹介します。保育系の仕事から一...
【2024年度】放課後児童支援員の給料はいくら?年代別の年収やこの先給与は上がるのかを解説
放課後児童クラブや児童館などで働く「放課後児童支援員」の平均給料はいくらなのでしょうか。別名「学童支援員」とも呼ばれ、「給与が低い」というイメージがあるようですが、国からの処遇改善制度などにより、これ...
保育士が働ける保育士以外の仕事21選。資格や経験を活かせるおすすめの就職先
保育園以外の職場に転職・就職先を探す保育士さんもいるでしょう。今回は企業内保育所や託児施設、児童福祉施設など、保育士さんが働ける保育園以外の職場を21施設紹介!自身の働き方や保育観を見つめ直し、勤務先...
- 同じカテゴリの記事一覧へ
特例制度を有効活用して保育士資格を取得
特例制度は、保育士試験で免除できる科目のある幼稚園教諭の方がより保育士資格を取得しやすくなる制度です。その条件は一定以上の実務経験がある方です。
その免除科目に制限はなく、指定保育士養成校で科目を受講することで全科目を免除して保育士資格を取得することもできるようになっています。2019年度末までの期限のある制度のため、この制度の利用を考えている方は早めに利用して、保育士資格を取得したほうがいいでしょう。
出典:幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例/厚生労働省