国家資格である保育士ですが、その難易度はどの程度なのでしょうか?このコラムでは保育士資格の取得の難易度を国家試験の内容や合格率から見るとともに、同様の国家試験である公務員試験や社会福祉士、看護師と内容や難易度を比較してみていきたいと思います。
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保育士資格取得の難易度
保育士の資格を取得するのはどれくらい難しいことなのでしょうか?
まずは、国家試験の内容や合格率を中心にその難易度について考えます。
保育士資格試験の内容から見る難易度
まずは、保育士試験の内容の面から、保育士試験の難易度について考えていきます。
保育士試験は筆記試験と実技試験から構成されており、2019年現在、筆記試験は9科目、実技試験は3科目中2科目の選択となっています。
筆記試験は「保育の心理学」といった直接保育に関わる分野はもちろんのこと、「社会福祉」のように保育に関連する福祉分野の知識に関する出題もあります。
実技試験は、「音楽」「造形」「言語」の表現に関する実技を披露します。
試験は年2回開催されていて、2回目以降の受験の際に1度合格した科目試験が3年間免除される科目合格制度があり、複数回の受験で合格を目指すこともできます。
また、幼稚園教諭免許や介護福祉士、社会福祉士、などの関連資格の所有者は一部科目免除などの優遇措置があるようです。
科目数は多いものの、1年に試験が2回あること、科目合格や免除制度の利用で資格取得のチャンスは少なくないといえるでしょう。
保育士試験の合格率から見る難易度
保育士試験の合格率は例年2割程度が一般的なようです。筆記試験だけの合格率で見ると受験者の2割前後が合格、実技試験では実技試験受験者の8割前後が合格しているようです。
具体的に見てみましょう。厚労省の調査によると2014年の保育士試験全体での合格率は約26.7%で、筆記試験と実技試験を個別に調査した資料で見ると、2014年度の合格率は筆記試験で21.3%、実技試験の合格率は88.7%、となっています。
こうしたデータを見ると、保育士試験は筆記試験の難しさによってかなり難易度の高い国家資格のように見えますが、科目合格の制度を利用している方が一定数いることを考えると、難易度がかなり高いとは一概には言えないでしょう。
養成校を卒業することでも資格取得はできる
試験に合格することで資格取得ができる保育士資格ですが、難易度が高そうだと感じた方は養成校に通って資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。
保育士養成課程は4年制大学、短大、専門学校を中心に設置されており、卒業と同時に保育士資格が取得できます。最低2年間の修学が必要で、カリキュラムには保育士試験の筆記試験科目に相当する内容の授業、実技の授業や実習も含まれています。学費や通学する時間はかかりますが、卒業することで保育士資格の取得ができるため、試験の難易度が高いと感じる方はこうした通学による取得も視野に入れて考えるようにしましょう。
他の国家試験、国家資格と比べた保育士試験の難易度は?
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保育士試験の内容や合格率からその難易度を見てきました。では、他の国家資格や試験と比べてその難易度はどれほどなのでしょうか?
公務員試験、社会福祉士、看護師の3つの国家試験、国家資格について保育士試験と比較しながら、並行して取得を目指しやすいかについても考えます。
公務員試験(事務職・公立保育園の保育士)
まずは、公務員試験についてみていきましょう。公務員試験は、市役所などの事務的な仕事を担当する事務職と呼ばれる職種の他に、公立保育園で働く保育士も募集しています。
事務職は学歴によって受験区分が分かれていることがあり、筆記試験として数学や国語などを中心とした一般教養試験と法律や経済などの専門的な知識を必要とする専門試験を通過しなくてはなりません。筆記試験を通過した後の2次試験として、面接や作文試験、グループディスカッションなどがある場合が多く、こうした試験の対策も必要です。
公立保育園の保育士を目指す場合は、筆記試験では事務職と同様の一般教養試験に加えて、専門試験として保育関連分野の知識を問われる試験の通過が必要です。2次試験では面接以外にもピアノなどの実技試験があることが一般的です。
公務員試験は、保育士としてのキャリアを目指す場合であっても、保育養成校との学びとは異なる一般教養なども学ぶ必要があり、勉強量は多くなる傾向にあります。
また、一般的な資格とは異なり、公務員は決められた定員の枠にその数倍もの受験者が採用を目指して受験します。資格取得を目指す保育士試験とは異なる難しさがあるでしょう。
社会福祉士
保育と密接にかかわることの多い国家資格の仕事が社会福祉士です。
社会福祉士試験には保育士試験よりも科目数が多く、2019年現在18科目からの出題があるようです。そのうちの6割正解で、かつすべての科目で得点することが合格の条件です。受験資格にはさまざななルートがありますが、実務経験が必要な場合や追加で養成講座を受講しなければならない場合が多く、資格取得までに比較的長い期間がかかることもあります。(※試験の内容などは年度ごとに変わる場合があります。)
社会福祉士試験の合格率は3割程度で推移しています。2017年度の合格率は30.2%です。
社会福祉資格の取得者には保育士試験の試験科目の一部免除があるように、一部の福祉系の内容は保育士試験と共通する部分が多いでしょう。業務としても児童福祉に関連する分野の多い職種であるため、保育士と同時の取得を目指すことで、より視野の広い福祉の観点が身につくでしょう。
看護師
試験の内容は10科目の内容から出題されており、午前試験と午後試験に分かれているようです。そのうちの必修問題とその他の問題に分けて合格ラインを満たした方が合格になります。保育士試験は1問ごとに点数が変わらないのが一般的なのに対して、看護師試験は問題の形式ごとに点数が多少変化します。
看護師の合格率がかなり高い値で推移しています。2017年度試験の合格率は91.0%。保育士試験の合格率を大きく上回っています。
試験科目は看護に関する内容が中心で保育士試験の内容と重なることは少なく、看護師試験の受験資格が看護師養成校を卒業した方、卒業する見込みのある方を中心にしていることからも、保育士と看護師の両資格を取得するのは時間がかかるといっていいでしょう。
近年は、看護師を保育士の配置基準を満たす人員としてカウントできる配置基準の緩和や、看護師の求人を出す保育園もあり、看護師の保育現場でのニーズは高まっているようです。そのため、さまざまな違いや両資格の並行しての取得は難しいものの、看護師資格は保育に携わることができる資格といえるでしょう。
出典:第104回保健師国家試験、第101回助産師国家試験及び第107回看護師国家試験の合格発表について/厚生労働省
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他の国家試験の難易度とも比較してきましたが、どの試験を比べても試験科目や受験資格、試験の内容などが異なり単純には比較できません。もちろん個人によっても難しいと感じるポイントは変わりますから、さまざまな要素を考慮したうえで、保育士試験を受験するのか、養成校に通うのか、また他の資格を目指すのか、考えてみてくださいね。