男の保育士さんと聞くと、保育士さんも保護者の方もあまりなじみのないイメージがあるのではないでしょうか。ですが、その数は少しずつ増えているとともに、男性ならではの良い点もあるようです。このコラムでは男の保育士さんの給与や将来性を含め詳しく解説していきます。保育士になりたい方は参考にしてみてくださいね。
さまざまなデータからみる男性の保育士の実際
ここからはさまざまな保育士関係の調査をもとに、男性保育士の「実際どうなんだろう?」という点について解説していきます。
男性保育士はどれくらいの割合?
まずは女性に比べてイメージの薄い男性保育士が実際どれくらいいるのかをご紹介します。
厚労省の調査によると2017年の男性保育士の数は、1万6480人。これに対して女性の保育士は23万6710人。この数値だけ見ても圧倒的に女性の割合が高いことがわかります。割合にすると約6.5%しか男性保育士はいません。
ですが、人数の面からは徐々に増加していて、この5年前の2012年には1万280人しかいませんでした。この5年間で5000人以上増えています。
また、全日本保育協議会が調査したところによると、現場の男性保育士の割合は2016年時点で3.9%。調査した園の実に63.2%では男性保育士が1人もいないということがわかっています。
男性保育士は徐々に増えてきているとはいえ、まだまだマイナーな存在のようです。
雇用形態・現役保育士の割合
ここでは男性保育士の雇用形態や、現役保育士の割合を2014年の東京都保育士実態調査から見ていきましょう。
まずは、雇用形態に関して。男性保育士は女性に比べて圧倒的に正社員の割合が多いです。男女合計の正社員の割合は57.2%。女性は56.2%が正社員なのに対し、男性保育士は85%が正社員として働いています。これは、女性は結婚や出産のタイミングで一度退職してパートとして復職することが多い一方で、男性は途中で退職することが少ないため、ということが考えられます。
また、現役保育士の割合は男女それぞれに大きな違いはなく、男女合計で53.4%のところ、女性は53.5%が現役で働いているのに対し、男性も54.2%が現役の保育士として働いています。有資格者が離職する割合に関しては、男女問わず保育士特有の問題なのかもしれませんね。
気になる男性保育士のお給料
給与は厚労省の調査で次のような結果になっています。
月給で男性は女性よりも月額で2万程度高くなっており、その月給は25.4万円、賞与は75.3万円となっています。これは年収に換算するとだいたい380万円。
一方、女性だけの月給平均は22.8万円、賞与が65.8万円となっています。年収換算で約339.4万円と40万円以上の差がついてしまいます。
これは上記のように女性保育士に一般的なライフイベントによる差があることと、男性保育士の数が女性と比べて圧倒的に少ないことによる統計上の問題が考えられます。
また、男性保育士は全男性の平均給与と比べるとかなり給与が低くなっています。男性の給与平均は月給で37.2万円、賞与は106.5万円。年収に換算すると552.9万円となっており、男性保育士とは大きく給与差があることがわかります。
そのせいもあってか、東京都の調査で保育士を辞めようと考えている理由では、男性は80.4%で最も高い理由として、給与が低いことが理由となっています。
女性も同様に給与の低さが最も多い理由でしたが、その割合は64.6%と男性に比べて低く、特に男性にとって保育士の給与は低いと感じる傾向にあるといえるでしょう。
「子ども好き」が多い傾向にあるのかも?
男性保育士は「子ども好き」が多い傾向にあるのかもしれません。これも東京都の調査からの結果ですが、保育士資格の取得理由に対して、男女ともに最も回答が多かったのが「子どもが好きだったから」という理由でした。そのうち女性では52.3%が子ども好きを理由に挙げた一方で、男性全体では58.2%。特に20代の男性においては61.9%が子ども好きを理由にあげています。
男性全体から見て給与が低いにも関わらず、保育士の仕事を選ぶ男性はやはり「子どもが好き」という想いが強い方が多いのかもしれませんね。
男性保育士の将来性
さまざまなデータから男性保育士のことが分かったと思います。では、男性保育士の今後や将来はどのようになるのでしょうか?プラスとマイナスの両側面から見ていきましょう。
男性だからこその役割に期待
男性保育士の特徴を生かした役割は現場で大きく期待されています。
特に、体力があるということで、体を大きく使った子どもとの遊びでの活躍や行事の際の重い荷物運びがスムーズに進むなど、活躍できる場面は現場にたくさんあります。
他にも、防犯の観点からも女性だけの職場よりは安心できる、父親的な役割のできる保育士がいることで保育の幅が広がる、男性的な目線で物事を考えることで新たな視点が加わるという、男性ならではの役割が期待されています。
力強いリーダーシップで園長候補にも
男性ならではの力強いリーダーシップも期待される役割の一つです。これは強権的ということではなく、感情とは別に物事を割り切って考えられたり、はっきりした物言いができることで的確な指示が出せるリーダーであるということ。もちろん男性にもリーダー向きの人とそうでない人はいますが、合理的に物事を進めていく姿勢や数字や経営への強さも含めて「男性的」なリーダーシップは園運営に求められる素質の一つです。そのため、将来の施設長候補として長く園で勤めあげることも期待されています。
千葉市が進める男性保育士推進の取り組み
千葉市では市内の公立保育園で男性保育士の割合の増加を目指す、「男性保育士活躍推進計画」を策定しました。この計画では、男性の更衣室やトイレなどの環境整備や男性保育士を1園に複数配置して孤立しないようにしたりして、男性保育士も積極的に保育園で働いてほしいというもの。現在は千葉市だけの取り組みですが、こうした動きが全国で広まると、より男性保育士も働きやすくなりますね。
保護者からの理解・施設の受け入れ態勢が課題
一方で課題もあります。1つ目は保護者からの理解が得られにくいということ。特に、女の子のおむつ替えや着替えを男性保育士がすることを嫌う保護者もいるため、乳児の担当ができなかったり、時には着替えの時だけ女性保育士と交代することも。保護者から男性保育士への理解がないと、保育士としては納得のいく仕事ができない場合もあるでしょう。
また、施設の受け入れ態勢も課題です。保育士は以前から女性が多い職場ということもあり、トイレが男女兼用だったり、男性更衣室がない場合もあります。そのため、男性向けの施設が整備されていない場合は、男性だけトイレで着替えたりすることもあるといいます。また、周りが女性ばかりで人間関係に気をつかうこともしばしばです。
周囲からの理解や受け入れ態勢は依然として大きな課題だといえるでしょう。
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このように男性保育士は割合的にはかなり少なく、給料に関しても男性平均よりも低いなど、男性保育士の数が増えるには大きな課題があることがわかります。ですが、一方でその保育所で求められる役割は、どの役割に関してもいたら助かるものばかりです。まだまだ少ない男性保育士ですが、将来性は十分といえるでしょう。
参照:厚労省 平成29年度賃金構造基本統計調査
東京都 保育士実態調査
全国保育協議会 会員の実態調査報告書2016