保育士が不足している現場 なぜ不足する?

保育士不足が深刻な問題になる中で、保育の需要が高まり、新規園や定員増が相次ぎ、どれくらいの保育士が不足しているのでしょうか?このコラムでは保育士不足の現状を解説するとともに、保育士にとって保育士不足の現状がどういう意味をもっているのか解説します。保育士不足問題についてしっかり考えてみましょう。

 


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保育士はどれぐらい足りていないのか?

 


実際のところ、日本全体で保育士は何人足りていないのでしょうか?まずは具体的に足りていない人数と、将来必要とされる人数を考えます。

 

保育士需要の高まり/待機児童の増加

 



なぜ、保育士がこれほどまでに必要とされているのでしょうか。その大きな要因が待機児童問題です。2000年代から続いた不景気などにより、共働き世帯が増え、さらに核家族化も進んだことによって、保育園に子どもを預けたいという保護者が増えてきました。一方で、保育所整備の遅れや保育人材の確保が進まず、主に都市部で子どもを預けられないため保護者の職場復帰が思うように進まないというのが待機児童問題です。

こうした待機児童に注目が集まり、社会問題化する中で、保育所の受け入れ枠の拡大や保育士確保が国や自治体を中心に積極的に進められてきました。しかし、まだまだ解決はできておらず、2018年4月時点で1万9895人が保育所を利用できていません。

特に保護者の産後休暇が終わる、1~2歳児の保育所整備が進んでおらず、2017年度では約7割の待機児童が1~2歳児となっています。

 

「子育て安心プラン」で32万人の定員増

 



待機児童を解消するために国は「子育て安心プラン」という目標を設定しています。これは2018年度~2020年度までの3年間の間に待機児童をゼロにして、待機児童を出さないようにするために、保育園を増やす政策と目標をまとめたもの。その目標は約32万人分の保育の定員を確保することで、そのために、小規模保育・企業主導型保育の設置推進や保育士の待遇改善などに取り組むこととしています。

 

どれくらいの保育士が必要になるのか?

 



待機児童の年齢層の割合(2017年度)と保育士の配置基準から、将来的にどれくらいの保育士が必要になるのか考えてみました。

待機児童の年齢別の割合は0歳児で15.7%、1~2歳児で71.1%、3歳以上児で13.2%です。ここでは計算しやすいよう四捨五入してそれぞれ16%、71%、13%とします。
保育士の国の配置基準は0歳児3人に対して1人、1~2歳児に対しては6人に1人、3歳児に対しては20人に1人、4歳以上児に対しては30人に1人となっています。ここでは3歳以上をひとくくりにして平均の25人に1人で考えることにします。

将来的に受け入れる予定の32万人に関して年齢ごとに人数を計算すると、
0歳児:5万1200人
1~2歳児:22万7200人
3歳以上:4万1600人

これをそれぞれ配置基準で割ると、
0歳担当保育士→1万7067人
1~2歳児担当保育士→約3万7867人
3歳以上担当保育士→1664人

現時点で待機児童を解消するために必要な保育士、すなわち不足している保育士は約3538人となります。

また、将来32万人を受け入れるために必要な保育士は同様の計算で、約5万6598人にもなります!もちろんこれは配置基準と待機児童の現時点での割合を単純計算したものなので、施設形態別の配置の原則や管理職が担任に入らないことなどを考えるとより多くの保育士が必要なことが予想されますが、少なくとも直近の3年で5万人もの人員が必要になり、この不足を補うために国や自治体、運営法人はさまざまな努力をしなくてはなりません。

 

保育士不足の実際

 



実際に、保育士が不足していることを表す指標が保育士の有効求人倍率です。この数値はここ数年で高い数値で推移しています。

保育士の有効求人倍率の全国平均は最新の厚労省のデータがある2018年の8月時点で2.69。これは保育士1人に対して、2つ以上の求人がある、ということ。つまり、求人が保育士の数の2倍出ているということなのです。ちょうど5年前にあたる2015年の8月時点でこの有効求人倍率は1.10だったわけですからこの5年で保育士の需要は2倍以上増えたということになります。

さらに、過去5年間の中でも、2017年の就活・転職シーズンの12月時点では全国平均が3.40となるなど、非常に多くの園が保育士不足を感じているということがわかります。同時期の東京の有効求人倍率は6.61倍。保育士一人に対して6件以上の求人があり、都市部では保育士不足がかなり深刻になっていることがデータから見てうかがえます。

東京都の保育士の有効求人倍率は最大の5.68となっており、保育士がまさに必要とされている、保育士不足だろいうことができます。
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保育士不足の理由

 


では、保育士が不足する理由には何があるのでしょうか。そこには保育業界のさまざまな問題があるようです。

 

保育士になる人に対して、保育園が増える量が多すぎる

 



3年間で32万人の保育士の定員を増やすという目標に代表されるように、近年は保育所が施設の改築・改修をして定員を増やしたり、新規園の開設が相次いでいます。その一方で、保育士の人数の増え方は緩やかです。離職者が一定数いることもあり、なかなか保育士として働く人数は追いついていないのが現状です。

 

離職率の高い保育士の職場

 



離職率の高さも保育士の職場の特徴です。厚生労働省のまとめによると、2013年度には新卒で保育所で働き始めた保育士は4.9万人、一方で離職した人は3.3万人いることがわかっています。離職人数が多いと、全体として保育士の人数は大きく変化せず、増える保育需要に対して人手が不足しているようです。

離職率の高さには割りに合わない給与や仕事の大変さなどの理由が大きく、結婚や出産を機に退職して家事や子育てに専念するという方も多いようです。

 

資格を取得しても保育士として働かない人も多い

 



資格を取得していても、保育士として働かない方も多いのが保育業界の特徴です。保育士養成学校を卒業して資格を取得した方のうち、約半数が保育士として働かないという調査もあります。また保育士資格を持っていながら、保育士として働いていない潜在保育士数は2013年度時点で約75万人おり、こうした保育士さんにどうやって現場で働いてもらうかということも課題になっています。

 

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保育士不足の解決策

 


では、こうした保育士不足の理由を解消するために国や自治体、運営法人はどのような取り組みをしているのでしょうか。

 

待遇改善で保育士としての価値をアップ

 



給与アップや保育士が利用できるさまざまな経済的支援を通して、保育士として働くことの魅力を向上させています。

国では全国の保育士に対して2017年4月から給与の2%にあたる月6000円程度の給与上乗せが実施されています。自治体の中には新人保育士向けに2年間で40万円以上の一時金を支給したり、自治体内で働く保育士の給与に一定額上乗せするなど、保育士の給与を改善するさまざまな取り組みをしています。

また、都市部の自治体では、宿舎借り上げ制度という家賃補助制度を実施している地域もあり、こうした制度を利用すると年間でおよそ100万円の家賃負担が軽減されることも。運営法人側も、保育士を確保するために、給与の見直しをしたり福利厚生を充実させて保育士確保を目指しています。

中には、大型テーマパークの入場割引優待があったり、有給取得を推進する取り組みとしてバースデー休暇や勤務してからの節目の年に有給が追加して取得できるアニバーサリー休暇など、独自の有給制度を設ける法人も増えています。

 

潜在保育士向けの就職支援も

 



潜在保育士にも就職しやすい環境が整っています。例えば、自治体では復職のための経済的負担を減らすため、引っ越し代や研修に利用できる就職準備金を準備したり、復職支援セミナーや研修を設置して、数日で保育所での勤務を体験できるツアーなども実施しています。

施設側でも、「未経験可」や「ブランクあり歓迎」と求人広告に打ち出すことによって、保育業界全体としても潜在保育士さんが保育の現場に入りやすい環境が整ってきています。

 

園全体での業務負担の軽減

 



業務効率化も保育業界のトレンドです。近年ではパソコンやタブレットを利用して事務作業をより効率的にこなすことで、残業を少なくしようという取り組みが進んでいます。
園だよりや保育計画をパソコンで作成することはもちろん、タブレットやスマートフォンのアプリを通して連絡帳がわりに子どもの園での様子を共有するなどの取り組みも進んでいます。

他にも、園の壁面の装飾や行事の準備をなるべくシンプルにしたり、一定時間になったら保育園を完全に締め切って園全体で残業をしないなどの取り組みをしている園もあります。

 

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    マイナスなイメージの保育士不足も保育士にとってはプラスに!

     



    保育士不足の現状を見てきましたが、こうした問題は保育士とってはむしろプラスになっているといえます。国や自治体、運営法人が待遇改善や業務の効率を見直したりするなど、保育士のマイナスの面だった給与の低さや仕事の多さなどは徐々にではありますが解決しているといえます。

    また、保育士が不足している現状は保育士の売り手市場。今までは不満があってもなかなか辞めることができませんでしたが、求人の多さ、待遇改善を進めている施設も多いことから、転職もしやすい環境が整っています。自身の不満がある現状を自ら積極的に解決できるようになっています。保育士が不足しており、保育士の需要が高い今だからこそ、自身の将来の考え直すいい機会なのかもしれませんね。

    http://www.hoyokyo.or.jp/nursing_hyk/reference/27-2s6-13.pdf
    厚労省 保育士等確保対策検討会 資料

    https://www.kantei.go.jp/jp/singi/syakaihosyou_kaikaku/dai7/shiryou7.pdf
    厚労省 子育て安心プラン 

    厚労省 保育士の有効求人倍率及び就職件数(平成24年4月~平成30年8月)

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