どこまで進んだ?保育士の処遇改善 2018年最新情報

「新役職による処遇改善」「キャリアアップ研修で待遇改善」というニュースを耳にする保育士さんは多いのではないでしょうか。一方で、どのような条件で、制度なのかまだよくわからない保育士さんも多いと思います。このコラムでは、新役職による処遇改善の内容や制度が始まった理由、どれくらいの保育士さんの給与が上がったのかなど、詳しく解説していきます。


どこまで進んだ?保育士の処遇改善 2018年最新情報

「新役職」へのキャリアアップで処遇改善!でも、新役職って何?

 


キャリアアップと処遇改善のために新設された保育士の新しい役職。まずは簡単に見ていきます。

 

中堅保育士向けの「副主任保育士」と「専門リーダー」

 



中堅保育士、おおむね7年目以上の保育士としての経験を積んだ方向けの新役職が「副主任保育士」と「専門リーダー」です。

副主任保育士はその名前通り、主任のサポートができるような立ち位置の役職。担任などを持ちつつ現場のリーダーの一人として働きながら、若手保育士とベテランの主任の間に立って園の保育を支えることが期待されています。そのため、副主任になるためのキャリアアップ研修には3つの専門分野研修に加えて、「マネジメント研修」というリーダーとしての現場経営を学ぶことも必要とされます。将来、主任や園長などのリーダーになるための下準備をしよう、ということですね。

「専門リーダー」はあくまで現場のスペシャリストとして頼れるベテランを目指す役職です。現場の担任などで専門性が高いベテラン保育士に役職を付けるようなイメージです。園によっては乳児リーダーや幼児リーダー、0歳児主任など、現場で年齢別のリーダー職となることも考えられます。
4つの専門分野研修を修了することが必要で、乳児保育や食育・アレルギー対応、障害児保育などの中から自身の興味のある分野を学びます。専門分野の知識を蓄え、若手保育士が対応に困っている時にも迅速に対応できる人材としての成長が期待されます。

どちらも将来的にはベテラン保育士として活躍されることが求められており、こうしたキャリアアップ研修や新役職を経験することで、将来の園の運営を支える人材育成のための取り組みとなっています。

役職に就くことには責任も伴います。その対価として、お給料が上がります。園の状況によって異なりますが、役職手当として月最大4万円、最低でも5000円の給与アップがあります。

 

若手保育士向けの「職務分野別リーダー」

 



若手保育士、おおむね3年目以上の経験を持つ保育士さん向けの新役職が「職務分野別リーダー」です。

この役職はキャリアアップ研修の1分野を修了することで、役職に就くことができます。研修を受けた分野の若手の専門リーダーとして若いうちから知識や経験を深め、よりよい保育者としてのステップアップを目指す役職です。食育・アレルギー分野のリーダーになって、園の食育を改善したり、保護者支援・子育て支援分野のリーダーとなって、より保護者に寄り添うアドバイスや情報提供をします。

中堅保育士ほど、給与の上げ幅は大きくありませんが、この役職に就くことで、月額5000円の給与アップがあります。

 

新役職・キャリアップ研修制度ができた理由

 


では、どうして最近になって新役職のような研修を通した処遇改善の取り組みが進んできたのでしょうか?

 

中堅保育士の置かれたきびしい現状

 



新役職のできた大きな理由の一つは中堅保育士の置かれたきびしい現状がありました。保育士のお給料は女性の給与の平均とほぼ同じ。決して給与自体が低いわけではありません。ですが、中堅~ベテランにかけての給与の上がり方はそこまで大きくありません。

これは、保育士の給与のもとになる国・市区町村からの補助金が、勤続10年目以降は上昇が頭打ちになるためです。また、一般企業の場合ですと、係長や課長補佐、課長などさまざまな役職がありますが、保育園には管理職は主任と園長の2つしかありません。そのため、結婚や出産といったライフイベントに合わせて退職する中堅保育士が多い、ということが保育業界の大きな問題でした。

そこで、中堅保育士に研修や新役職を通して保育の質を高めてベテランとしての活躍を推進し、同時に給与も改善しようというのが新役職とキャリアアップ研修という取り組みなのです。

 

処遇改善による保育士確保

 



問題を抱えているのは中堅保育士だけではありません。保育業界全体として保育士不足が大きな問題となっています。

待機児童問題の高まりから、保育施設の定員拡大や新規園の開設が相次ぎ、保育士は以前にも増して必要とされる職業になりました。しかし、資格を取得しても保育業界には就職しなかったり、就職しても辞めてしまう保育士は依然として多いままです。

その理由の一つが、割りに合わないと言われている給与の低さ。近年では日本全体で保育士の待遇改善が進んできて、保育士の給与も女性給与平均に追いついてきましたが、仕事の質・量ともに簡単ではない保育士にはよりその内容に見合った給与が求められています。

若手・中堅を含めて業界全体の給与を底上げしようというのも新役職による処遇改善の意味なのです。

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保育の質も向上が求められている

 



研修を通して保育の質を高めようというのも、この制度の目標です。現在は、核家族の増加や共働き世帯の増加などの社会の変化により、保護者が孤立したり周囲に頼りづらくなっており、地域の子育て支援の中心施設としての保育園の役割が大きくなっています。

こうした状況を踏まえ、保育園も変わらないといけない、ということで子どもや保護者により専門的な対応が求められています。研修を通してそうした専門分野の知識を深め、保育士として、より質の高い対応が求められていることからも、キャリアアップ制度が大きな意味を持っているのです。

 

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どうしたら新役職に就けいて処遇改善を受けられるのか?

 


処遇改善は施設が独断で対応するものではありません。研修を受けてから、さまざまな手続きをとることで、給与にも役職手当が上乗せされます。手続きについてここでは解説していきます。

 

ステップ1.勤務先が処遇改善の対象か確認する

 



まずは、自身の勤務先の保育施設が処遇改善の対象になっているのか確認しましょう。都道府県によって認証保育が対象でなかったりと、多少の違いがあるかもしれないので、まずは園長や主任に確認してみましょう。

また、この時に自身がキャリアアップの申請をしたい旨を伝えることも大切です。研修は一部のNPO法人や学校法人が主催するものを除いて、施設を通しての研修申請が原則。施設側も園で役職に就く人数を把握しなければならないため、事前に意思を伝えることでトラブルなく研修に進むことができるでしょう。

 

ステップ2. 研修を受ける

 



園からの申請が通ったら、研修を受けましょう。都道府県や政令指定都市が指定する教育機関や委託法人が開催する研修が定期的に開催されています。1つの分野については最低15時間の研修が必要で、3時間の講座を5回に分ける、5時間の講座を3回に分けるなど地域によって受講の仕方は異なります。

研修には8つの分野があります。
1.乳児保育
2.幼児教育
3.障害児保育
4.食育・アレルギー
5.保健衛生・安全対策
6.保護者支援・子育て支援
7.保育実践
8.マネジメント

この8つの中から、副主任保育士は「マネジメント+3分野」、専門リーダーは「4分野」、職務分野別リーダーは「1分野」修了することが必要です。

 

ステップ3.研修修了を申請する

 



研修を受けたら、まずは自身の勤める施設に申請しましょう。施設側が実施の主体なのでまずは上司に役職に就きたい旨を伝えることが必要です。その後は、施設側が自治体に補助金を申請、無事補助金支給が決まれば、新役職として登録されます。

 

ステップ4.新役職就任

 



施設側から新役職として認められれば、晴れて新役職として勤務開始です。園長や主任と相談して、自身の専門性を活かし、現場のリーダーの一人として働き始めます。
もちろん、給与には役職手当として一定額が上乗せされるようになります。

 

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    実際どれくらい新役職は広まっているの?

     


    新役職があっても、実際に施設が役職を設置しなかったり、処遇改善がないと意味がないですよね。ここでは、この制度がどれくらい広まって効果があるのかまとめました。

     

    給与アップの効果あり!処遇改善が着実に進んでいます

     



    実際にこの制度が多くの保育士さんに利用され、処遇改善に貢献しているという調査結果が出ています!
    内閣府がこの制度の実施状況を調査しています。2017年度にはこの制度の対象となる全国1万4543か所ある保育所のうち、およそ8割にあたる1万1650か所の保育所で何らかの処遇改善が実施されたことがわかりました。

    中堅向けの副主任または専門リーダーの役職に就いたのは、9万4840人。これは当初予定していた人数を3万人も上回る人数です。またその中でも最高額の4万円の給与アップのあったのは3万3843人、給与アップのあった3分の1の保育士さんが4万円の処遇改善したということになります。

    また、若手向けの職務分野別リーダーも3万7664人に対して5000円の処遇改善が実施されており、中堅・若手の保育士さんを含めて多くの方が新役職による待遇改善の恩恵を受けたことがわかります。
    新役職は着実にその目的の1つである処遇改善を果たしていることがわかりますね。

     

    各自治体でのキャリアアップ推進の取り組み

     


    このキャリアアップ制度に関しては、各自治体が推進しようとそれぞれの地域独自の取り組みをしています。ここでは3つの先進的な自治体の取り組みを紹介したいと思います。

     

    より早い時期から研修をスタートする静岡県

     


    静岡県では国が想定した時期より早く研修を受けられるようなキャリアアップ制度を実施しています。特徴的なのが、若手保育士向けの研修の要件です。3年目未満の経験しかない保育士でも、相当の技能を身に着けたとされる保育士は受講が開始できような制度になっています。資質のある若手保育士には早くから受講を受けられるようにし、職務分野別リーダーにすぐになることができたり、その後の副主任や専門リーダーを目指して余裕をもって研修を受けて昇進できるようになります。

     

    切れ目のないキャリアを支援している京都府

     


    京都府ではキャリアパスポート制度を実施中です。これは、キャリアアップ研修を受講した際にそれを記録するもの。保育士本人がどの研修を受講したのかや、役職に就く要件を満たしているのかが一目でわかるようになっています。このパスポートは京都府内全域で通用するものなので、転職したからといって、保育士が役職に就けなくなるような不利益がないようにする役割も果たしています。

     

    副主任保育士・専門リーダーの役職手当を全員4万円にする横浜市

     


    横浜市では副主任・専門リーダーだけでなく、同様の研修要件を満たした7年目以降の保育士全員が4万円全額の処遇改善を実感できるように予算を確保しています。

    通常のキャリアアップの処遇改善は施設ごとに補助金の額や支給できる人数が決まっています。て、例えば満額の4万円の給与アップは対象者の1/3程度しか受け取れません。施設内の中堅保育士の中には給与改善手当が受けられなかったり一人当たりの額が少なくなってしまうことも。こうした場合、給与改善を実感するのは難しいでしょう。

    そこで横浜市では、国の補助金に市が独自に上乗せすることで、副主任保育士や専門リーダーに任命された保育士だけでなく、同様の研修要件を満たした7年目以降の保育士全員が月額4万円給与アップできるようにしました。確実な処遇改善が実感できることで、市内全体で中堅保育士のキャリアアップがさらに進むことが見込まれます。

     

    読んでおきたいおすすめ記事

    保育の質と処遇改善を進めるキャリアアップ制度

     



    保育士の新役職の設置とそれに関する研修や処遇改善について見てきました。現在、国をあげて保育士の処遇改善が進んでいますが、特に保育士として、中堅という大切な時期に、給与が低いことや、将来の働き方に対する不安を解消することを目指しています。また、若手の保育士に対しても、保育の知見・知識を深め、給与をアップしていく方向です。

    どちらの新役職に関しても、保育士の需要が高い中で、保育士として長く働いてほしい、そして同時に保育の質もより高いものにしたい、という思いが感じられます。同時に、国や自治体もこの制度を浸透させようとさまざまな取り組みをしていますから、長く保育士として保育に携わることができるように、こうした処遇改善やキャリアアップの今後に期待したいですね。

     

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