子どもに関わる仕事は保育士を含め、多くあります。その中には「幼稚園教諭として正社員として働く」という選択肢があります。保育士不足という言葉は聞きますが、幼稚園教諭不足という言葉は聞かないのではないでしょうか?このコラムでは幼稚園教諭と保育士の違いをおさらいするとともに、幼稚園教諭の仕事の内容、勤務条件、働くメリット・デメリットをまとめました。
簡単におさらい!幼稚園と保育園の違い
幼稚園と保育園のさまざまな違い
幼稚園と保育園にはさまざまな違いがあります。まず、開所時間が違います。保育所は8時間~11時間程度、幼稚園は4~5時間程度。保育所は0~2歳児も預かりますが、幼稚園は3歳児以上の幼児を対象としています。
保育園は自園調理の給食が原則ですが、幼稚園ではお弁当のところもあります。また、幼稚園では保育園で行う午睡がありません。
制度上でも違いがあり、幼稚園は学校の一つで、文部科学省の管轄です。幼稚園教育要領に従って運営され正社員として働くには幼稚園教諭免許が必要です。保育園は児童福祉施設の一つで、保育所保育指針に従って運営されています。正社員として働くには保育士資格が必要です。
近づいていく幼稚園と保育園
一方で、近年は保育所と幼稚園の垣根はなくなり始めています。3歳児以上のガイドラインに示される内容はほぼ同じものであり、教育の部分は両者とも「幼稚園教育要領」に従うとされています。「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が示されるなど、幼稚園、保育園のどちらを利用しても子どもが同じように成長できるような施設運営が目指されています。
また、幼稚園と保育園の両方の側面を兼ね備えた認定こども園が増えていたり、幼稚園でも延長保育を保育所並みにしたりすることによって、保育内容の面でも両者の違いは少なくなっています。
資格の違い
両施設の違いが少なくなる一方で、働くには異なる資格が必要です。幼稚園教諭免許は幼稚園教諭の教育課程がある学校を卒業することで取得できます。資格には学歴で差があり、4年生の大学を卒業した場合は第1種免許、2年制の短大・専門学校を卒業した場合には第2種免許、大学院まで終了した場合には専修免許が得られます。あまり大きな差ではありませんが、資格ごとに給与に差を付ける職場もあります。10年に一度更新が必要です。
保育士資格は専門の課程のある学校を卒業するか、資格試験に合格することで取得できます。どちらの方法で取得しても区別はなく、更新はありません。
一方で、専門学校・短大・4年制大学では両方の資格を取得できる学科も増えてきているため、資格を両方とも持っている人は、現職の人で75%~76%ほど、新卒の場合ではおよそ8割以上にもなります。そのため、保育士も幼稚園教諭も、自身の希望に合わせて幼稚園、保育所の両方とも選びやすい環境になっているといえるでしょう。
幼稚園教諭のお給料、勤務時間、休日
お給料
幼稚園教諭のお給料は2017年度で月額約23.2万円。これにボーナスなどを考慮した年収は342.2万円となります。5年前の2012年度の給与が月額22.5万円のため若干の改善傾向にあるようです。保育士の給与が2017年度で月額約23万円のため、幼稚園教諭が特段給与が高いわけではありません。
キャリアアップ
幼稚園のキャリアアップには目安として10年以上程度の経験が求められる園長、その下の副園長や教頭、5年以上の経験が必要な主幹教諭があります。それぞれ役職に応じた役職手当が給与に加算されるところが多いでしょう。実際には、役職に限りがあるため同僚や先輩との兼ね合いになることが多いようです。
幼稚園教諭にも保育士同様、給与改善を目指して新役職が設置されています。勤務3年程度で月5千円程度の給与アップの若手リーダー、7年程度の経験で月4万を目安に給与上乗せがある中核リーダー、専門リーダーが創設されています。
勤務時間
幼稚園の預かり時間は4時間が原則とされています。子どもと関わる時間は短いですが、もちろん勤務時間はそれだけではありません。開所準備や書類作成などの事務作業の時間が4時間~5時間あります。また、シフトによっては延長保育で1~2時間ほど長く子どもと過ごす場合もあります。
休日
年間休日は多くなる傾向にあります。中には土曜日も園庭開放などをしているところもありますが、原則土日は休み、祝日も休みになることが多いです。さらに、幼稚園には長期休暇があります。年末年始の休暇に加えて、夏季休暇、春期休暇もあります。これらの期間のすべてが休みになるわけではありませんが、年間休日120日越えの園も多いでしょう。
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お仕事内容
基本的にはクラス担任
幼稚園教諭の正社員として働く場合には、基本的にはクラス担任を任されることが多いようです。幼稚園の預かる幼児の年齢は3~5歳児。少人数クラスが基本の0~2歳児を預からないため、幼稚園教諭は保育園ほど人手を必要としません。文部科学省の基準では1クラス35人以下とされており、一定程度の規模のクラスを1人で受けもつことが一般的なようです。
幼稚園バスで送迎も
幼稚園は園バスで送り迎えをする園も多いです。保育園では保護者が園に直接迎えに来ることが一般的ですが、幼稚園では近隣の地域の園児がバス停前に集まったり、直接家の前まで迎えに行くこともあります。そのため、バスの中で子どもが安全に過ごせるように気を遣うのも幼稚園教諭のお仕事です。
時には小学校と連携も
学校幼稚園と呼ばれる学校と併設されているような公立幼稚園では、学校との連携を実施するところも多いようです。幼稚園に通園している園児のほとんどが併設されている小学校に通う地域では、小学校の生徒が園児と遊ぶ時間を設けたり、運動会などの行事も合同で行ったりします。
他にも、年度末には小学校の先生と引継ぎのための交流会があったりします。また、私立幼稚園においても幼小連携として幼稚園の先生と小学校の先生への引継ぎをしているところもあり、小学校への移行がスムーズに進むよう取り組んでいます。幼稚園教諭は学校の先生と関わる機会も多いお仕事です。
幼稚園教諭の正社員として働くメリット・デメリット
メリット 時間に余裕をもった働き方ができる
メリットは、保育士に比べて時間に余裕をもって働くことができるということでしょう。預かり時間が短いため、子どもと過ごす時間は保育士に比べると少なくなりますが、空いた時間を書類作成や翌日の遊びに使う教材や道具の準備にあてたりなど、準備に余裕を持って働くことができるでしょう。
子どもは環境が整っていればいるほどその中に遊びを見つけ出します。子どもが園にいる時間が、より有意義な成長の時間になるような工夫ができるのが幼稚園教諭としての醍醐味ではないでしょうか。こうした時間を活用し、職員間のコミュニケーションや振り返りの時間を設け、保育の質を向上させようという園もあります。
また、年間休日も多いため、仕事とプライベートを両立しやすい働き方ということができます。
デメリット 幼稚園教諭としての職場は減ってきている
全国の幼稚園の数は、認定こども園に移行した施設を含めて、2016年には11252施設あり、この数値は前年に比べて422施設減っています。利用している園児も前年比で約62000人減少しています。共働きの世帯が増加したり、幼保連携型認定こども園などの増加によって、預かり時間の短い幼稚園の需要が減ったことが主な理由です。
そのため、幼稚園が認定こども園に移行したり、預かり時間を長くして、幼稚園を利用してもらおうという動きがみられます。この傾向はこれからも緩やかに続いていくと見込まれており、昔ながらの「幼稚園」という職場は減っていくでしょう。
一方で、認定こども園の需要が増えています。認定こども園では幼稚園教諭免許と保育士資格の両方をもつ「保育教諭」としての勤務が原則であり、両方の資格を持っている方が有利になります。
2019年度まで、片方の資格を持っている方でもこども園で働くことはできますが、それ以降は基本的に両方の資格が必要です。幼稚園教諭免許を持っている方が保育士資格を取得しやすくなる優遇制度もあるので、早めの取得がおすすめです。
自身にあった施設選びが大切
幼稚園で正社員として働くことの概要を解説してきました。幼稚園と保育園の垣根は取り払われてきています。延長保育や休日保育の需要が高まるにつれて、幼稚園でも預かり時間を長くしたり、土曜日や長期休暇中も仕事に入ることは珍しくなくなっています。幼稚園を利用しても、保育園を利用しても、小学校に上がったときにギャップがでないように、保育の中身も統一されつつあります。
就学前施設で大切なのは、幼稚園や保育園といった施設の種類に関わらず、子どもの健やかな成長を見守り、手助けしてあげること。自身の理想や、働き方にあった施設選びができるといいですね。
参照
厚生労働省 賃金構造基本統計調査
内閣府 保育士の処遇改善案についてhttps://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000146788.pdf
文部科学省 幼稚園施設を取り巻く現状等に関する資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/044/001/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2017/08/28/1394385_001.pdf