東京都の調査によれば、過去に保育士をしていた方の退職理由第1位は「妊娠・出産」です。女性の社会進出により、共働き世帯は年々増加していますが、保育士が産休育休を経て正社員として復帰するのはまだまだハードルが高いようです。今回のコラムでは、第1子を出産したあと職場復帰する人の割合や、復帰しやすい保育園の見分け方などについて調査していきたいと思います。
保育士の産休・育休後の職場復帰について
産休・育休を取ったあと、どのくらいの方が職場復帰しているのでしょうか?
全国の女性の職場復帰率は約50%
内閣府が行った第15回出生動向基本調査によれば、出産前に働いていた女性のうち、第1子を出産したあとも仕事を続けていたのは53.1%(2010年~2014年の調査)だそうです。このうち、約7割の方が産休に加え育休を取得しています。
この結果から、全国の約半数強の女性が第1子出産後も仕事を続け、半数弱の女性が仕事を辞めてしまうということが分かりました。
復帰する保育士の半数以上がパートや非常勤を希望
職場の雰囲気や経営方針によって一概には言えませんが、昨今の保育士不足を受け、「産休・育休取得率100%」や「復帰率の高さ」をアピールする園は増えています。
東京都保育士実態調査によれば、配偶者と子どもがいる元保育士さんが復帰を考えるとき、「非常勤やパートの雇用形態で」と希望する割合は59.0%。妊娠出産で一度は退職してしまっても、半数以上の方は雇用形態や勤務条件が合えば復帰をと考えているようです。
復帰率の高い職場とは?
職場復帰率の高い保育園には、どのような特徴があるのでしょうか?
福利厚生が整っている
そもそも福利厚生は、従業員の経済面や健康面の安定を目的として作られた制度です。この制度が整っている会社ほど、従業員の生活を大切に思っていると言えるでしょう。
そう考えると、社会保険に加入して一定の条件を満たしていながら、産休・育休が取れない、取りづらい園では、長く働き続けることが難しくなってくるかもしれません。就職・転職を考える際には、ぜひ福利厚生の整った保育園を選びましょう。
有給が取れて残業が少ない
子育てをしながら働くのはそう簡単なことではありません。勤務時間を終えてからも、育児に加えて食事の準備や掃除など、しなければならない家事は多いです。
子どもがいないうちは引き受けられた残業も、出産後は難しくなるのが実情です。持ち帰りの仕事も、子どもが家にいる間は思うように進まないでしょう。
また、子どもは体調を崩しやすいので、看護のために有給やお休みが取れるのかというのも大事なポイントです。育児中はこうした小さな負担が積み重なります。復帰後はぜひ、残業やお休みに配慮のある園を選んで働きましょう。
子育て経験のある保育士が多い
ママさん保育士が多い園は、復帰後も働きやすい雰囲気がすでにできあがっていることが多いでしょう。子育て経験がある人が多く、お互いの状況が理解しやすければ、フォローし合って円滑に作業を進めることができますね。子どもがすでに自立しているベテラン保育士さんがいれば、強い味方になってくれるかもしれません。
研修が充実している
最大まで育休を取得した場合、産休を含めておよそ2年と1カ月半、仕事を休む形になります。「復帰するのはいいが、仕事についていけるか不安…」と悩む方もいるのではないでしょうか?
そんな保育士さんの復帰を応援するため、研修に力を入れる園も増えています。そういうサポートをしてくれる園なら、復帰したいと思う方は多いはずです。
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スムーズに復帰するための準備
妊娠・出産を経て円滑に職場復帰ができるよう、休業中にやっておきたいことをまとめました。
子どもの預け先を確保しよう
保育園のリサーチは、妊娠中からなるべく早めに始めましょう。集団生活を始めたばかりの子どもは病気にもかかりやすいです。夫や実家の協力や病児保育についても、この時期に検討しておくと良いでしょう。
また、近年の保育士不足を受け、さまざまな自治体で「保育士の子どもを優先して保育園に入園させる」制度を設けています。東京23区のうち大多数では、すでに入園の優先順位を上げる措置や調整指数を加点できる措置をとっています。
子育てに関連して引越しを検討しているなら、そういう自治体を選ぶのもひとつの方法でしょう。東京都以外にお住まいの方にも、2018年度からは全国的にこうした優先措置を拡大していくようです。保育所の入所基準を確認してみましょう。
福利厚生を見直そう
復帰前に、勤務先の福利厚生を見直してみましょう。
・託児所の有無
・時短勤務ができるか?
・勤務先の保育園に、子どもを入園させられるか?
・子どもの看護や行事、誕生日などに休暇が取れるか?
子育て中の保育士が勤務しやすいよう、こうした福利厚生制度を整える園が増えているので、利用できる手当がないか確認しましょう。
無理のない働き方を考える
子育ての中でも、乳幼児期は想像以上に手がかかります。子育てしながら一日どのくらいの時間働けるのかを休業中によく考えておきましょう。特に出産してから1~2年までは、自分で思う以上に身体を酷使しています。無理のない働き方ができるよう保育園とよく相談して下さい。
まとめ 保育士は復帰しやすいお仕事です
「保育士は妊娠したら辞めるもの」少し前は、そう考える方も多かったようです。しかし最近の保育園は、時短勤務やパートなど雇用形態を希望に合わせて変更できたり、残業無しを推進していたり、子育て中の方も働けるような体制があちこちで整えられています。
子育て経験を生かして欲しいと、あえてママさん保育士を優先する園もあるそうです。もし離職してしまっても、保育士は資格さえあれば、年齢や場所を問わずいつでも復帰が可能です。
せっかく取得した保育士の資格を活かし、保育のキャリアを続けることもぜひ検討してみてください。状況に応じて休んだり調整したりしながら、長く続けていけると良いですね。
参考:東京都保育士実態調査
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2014/04/DATA/60o4s201.pdf