保育士さんの退職原因や潜在保育士の理由などでも挙がってくるのが「保護者対応の難しさ」。特に保護者からのクレーム対応には、保育士さんなら多かれ少なかれ頭を悩ませたことがあるのではないでしょうか。ここでは実例を交えながら、保護者の心理をもとにした対処法、クレームを円滑におさめるための攻略法について考えます。
maroke/stock.adobe.com
目次
クレーム対応で心がける基本のポイント
保護者からのクレームを受けた場合、対応に気をつけるポイントがいくつかあります。
ここを間違えると、小さなクレームでも大問題に発展してしまうことも起こりえますので、十分な注意が必要です。
まずは「クレームの受けとめ方」と、その後の対応について考えます。
聴く姿勢を見せる
保育士さんは「クレーム」とひとくくりにしてしまいがちですが、保護者は「要望」「お願い」「提案」「意見」などを述べている、というケースも多く見られます。
だからこそ、たとえ多少理不尽なことを言われていたとしても、言葉や態度がきつかったとしても、「クレームだ」と決めつけずに、まずはしっかり相手の目を見て、うなずきながら最後まで聞きましょう。
ここでは、相手が完全に話し終わるまで、相づち以外は口を挟まず、できるだけ表情も変えずに聞ききることがポイントです。謝罪の言葉もここでは最小限にとどめてよいでしょう。
そして、保護者がひととおりすべて話し終わったことが確認できたら、「ありがとうございます。○○について△△だから××してほしいということですね」と、相手の話した内容を復唱します。
これは、「ちゃんとあなたの言葉を聞いて受け止めました」と相手に示すことと、こちらが聞き取った内容が間違っていないか確認するという、2つの意図があります。
あいまいな部分をはっきりさせる
保育園の生活のなかでのクレームの内容には、事実関係があいまいな場合があります。
たとえば、「同じクラスの男子がうちの娘をいじめて泣かせたのに、その場にいた先生はなにもしてくれなかった!と娘が言っている」というクレームがあったとします。
この場合は、保護者にただ謝って終わらせるのではなく、「いつ頃のことか」「相手は誰か」「具体的にあったことは何か」「その場にいた保育士は誰か」などを、分かる範囲で確認しましょう。
ここでのポイントは、事実にもとづいて内容を整理することで「大事なことなので、わたしたちが真摯に対応・改善するために確認させてほしい」という親身な姿勢を見せることです。
子どもの言葉からのまた聞きであれば、起きたことを正確に把握するのは困難です。わからない部分は「わからない」ということを、あえてしっかり復唱して確認すればよいでしょう。
「きっと悪いのは○○さんに違いない」というような保護者の思い込みを鵜呑みにするようなことは避けましょう。
本当にただのクレームだった場合は、こちらが落ち着いて事実確認を掘り下げているあいだに、相手が次第にクールダウンしてくれることもあるようです。
その場で対応などの結論を出さない
保護者との1対1の場面では、よほど個人的に解決できることでない限り、その場で「今後は○○します」と、自分の判断で対策を約束しないようにしましょう。
その場ではできるだけ「園全体で検討して、改めて連絡する」という対応ですませる のがベターです。
そのうえで、上長(主任・副主任、園長など)に、できるだけその日のうちに報告します。
報告を受けてミーティングが行なわれたり、関係する保育士に聞き取りが行なわれたりすることもありますが、これらはあくまでも上長の判断と行動にゆだねましょう。
個人の判断で行なうのはトラブルのもとになるので、避けた方がよいでしょう。
また、上長に報告したうえで検討後に対策が提示された場合は、できるだけ早急に保護者に報告や謝罪をするようにしましょう。
この対応は上長におまかせする方がスムーズに運ぶケースもあります。
やっちゃだめ!クレームへのNG対応
milatas/stock.adobe.com
保護者からのクレームを受けているときに、とってはいけない対応をまとめました。
相手が話している途中にさえぎる
まずは必ず最後まで相手の話を聞きましょう。
聞いている途中で、明らかにおかしい部分や論理展開があったとしても話し終わるまで我慢します。
疑問や質問も、話し終わってからするようにしましょう。
途中で口を挟むことにより、脱線して話の着地点がおかしくなったり、怒っている場合であれば火に油を注いだりすることにもなりかねません。
否定言葉から入る
「でも」「だって」などの言葉は、とりあえずこの場では呑みこみましょう。
ほかにも「そんなことはないです」「それはできません」「私じゃありません」や、
一見、冷静に答えているつもりになりがちな「どうしてですか」「(では)どうすればいいのですか」も、控えた方がよい否定言葉です。
たとえ正当な反論であっても、まずその言葉から始まってしまっては、相手の怒りを増長させることが多いでしょう。最終的によい結果に結びつくことも期待できないのではないでしょうか。
子どもを引き合いに出す
「それじゃ○○ちゃんがかわいそうですよ?」「○○くんのためを思って言ったんです」など、子どもを引き合いに出して保護者を説得するのは悪手となる場合が多いでしょう。
他人にネガティブな側面から自分の子について言及されて、素直に受け止められるほど冷静な判断ができる保護者であれば、そもそもクレームには至っていませんよね。
感情的になる・早口になる
クレームをつける側は、怒りや感情にまかせている場合も多いでしょう。
ここで保育士さんが同じ土俵に上がってヒートアップしたり、早口で応対してしまったりしては、まとまる話もまとまりません。
謝る必要がある場合でもできるだけ冷静を保ちましょう。保護者にとってはプライベートに近い場ですが、保育士さんにとっては、ここは仕事の場 だということを忘れないようにしましょう。
簡単1分登録!転職相談
転職に関するご質問や情報収集だけでもかまいません。
まずはお気軽にご相談ください!
読んでおきたいおすすめ記事
保育士をサポート・支える仕事特集!異業種への転職も含めた多様な選択肢
保育士の経験を経て、これからは保育士のサポート役として働きたいという方はいませんか?責任の重い仕事だからこそ、人の優しさや支えが必要不可欠な仕事かもしれませんね。今回は、保育士さんをサポートする・支え...
在宅ワークで保育士資格を活かせる仕事とは?自宅でできる保育関係の仕事を徹底解説
通勤時間なく働ける在宅ワークをしたいと考えても「保育士は無理なんじゃないか……」とあきらめている方はいませんか?保育園の事務職や保育ママ、保育園業務のサポートなど、保育士の経験や資格を活かして自宅でで...
病院内保育とは。役割や仕事内容、病院内保育士として働くメリット
病院内保育とは、病院や医療施設の中、または隣接する場所に設置されている保育園のことです。保育園の形態のひとつであり、省略して院内保育と呼ばれることもあります。転職を考えている保育士さんの中には、病院内...
子ども・赤ちゃんと関わる仕事31選!資格の有無や保育士以外の仕事を関わる子どもの年齢別に紹介
子どもと関わる仕事というと主に保育園や幼稚園を思い浮かべますが、それ以外にも意外とたくさんあります!今回は赤ちゃんや子どもと関わる仕事31選を紹介!無資格で活躍できる職場もまとめました。子どもと携わる...
保育士を辞める!次の仕事は?キャリアを活かせるおすすめ転職先7選!転職事例も紹介
保育士を辞めたあとに次の仕事を探している方に向けて、資格や経験を活かせる仕事を紹介します。ベビーシッターなど子どもと関わる仕事はもちろん、一般企業での事務職や保育園運営会社での本社勤務といった道も選べ...
保育士から転職したい!転職先としておすすめの異業種22選。保育士以外の仕事やメリット・デメリットも
保育士以外から異業種への転職を考えている際、どのような転職先がおすすめなのでしょうか。今回は、次の仕事として保育士から転職しやすいおすすめの異業種22選を紹介します。保育士から異業種に転職するメリット...
保育園運営会社の仕事内容とは?本社勤務でも保育士資格は必要?働くメリットや求人事情まで
保育園運営会社にはどんな仕事があるのでしょうか?保育園運営会社で働くことは「本社勤務」とも呼ばれ、保育園の運営に携わる仕事として、主に一般企業に就職したい保育士さんにとって人気の高い職種のようです。今...
【2024年最新】保育士に人気の転職先ランキング!異業種や選ばれる職場を一挙公開
保育士の資格を活かして働ける人気の転職先をランキング形式で紹介!企業主導型保育園や病院内保育所、ベビーシッターなど保育士経験やスキルを活かせる職場はたくさんあります!今回は保育施設や異業種別に詳しく紹...
【完全版】保育士資格を活かせる仕事・働ける企業25選!
保育園で保育士として働くのが辛いと感じて、転職を考えているという方がいるかもしれません。しかし、せっかく取得した保育士資格を活かして働きたいですよね!保育士として得たスキルや経験は一般企業や福祉施設、...
【2024年最新版】幼稚園教諭免許は更新が必要?廃止の手続きや期限、対象者をわかりやすく解説
幼稚園教諭免許は更新が必要なのか、費用や手続き方法などを知りたい方もいるでしょう。今回は、2022年7月1日より廃止された教員免許更新制について詳しく、そしてわかりやすく紹介します。幼稚園教諭免許を更...
保育士は年度途中に退職してもいいの?理由の伝え方や挨拶例、再就職への影響
「年度途中で退職したい...けれど勇気が出ない」と悩む保育士さんはいませんか。クラス担任だったり、人手不足だったりすると、退職していいのか躊躇してしまうこともありますよね。そもそも年度途中で辞めるのは...
幼稚園教諭からの転職先特集!資格を活かせる魅力的な仕事18選
仕事量の多さや継続して働くことへの不安などを抱え、幼稚園教諭としての働き方を見直す方はいませんか。幼稚園教諭の転職を検討中の方に向けて、経験やスキルを活かせる18の職場を紹介します。保育系の仕事から一...
【2024年度】放課後児童支援員の給料はいくら?年代別の年収やこの先給与は上がるのかを解説
放課後児童クラブや児童館などで働く「放課後児童支援員」の平均給料はいくらなのでしょうか。別名「学童支援員」とも呼ばれ、「給与が低い」というイメージがあるようですが、国からの処遇改善制度などにより、これ...
保育士が働ける保育士以外の仕事21選。資格や経験を活かせるおすすめの就職先
保育園以外の職場に転職・就職先を探す保育士さんもいるでしょう。今回は企業内保育所や託児施設、児童福祉施設など、保育士さんが働ける保育園以外の職場を21施設紹介!自身の働き方や保育観を見つめ直し、勤務先...
- 同じカテゴリの記事一覧へ
保育園にクレームをつける保護者の特徴と対応策
ここでは、保育園や保育士にクレームを言ってくる保護者の特徴と、そんな保護者への対応をタイプ別に見ていきましょう。
家庭や職場でのストレスがある
ポイント・事例
仕事や家庭・プライベートで抑圧されている(またはそう強く感じている)人は、他人に対して攻撃的になりやすいと言われています。
こういった人は、自分より弱い立場や反論してこない立場の相手に強くあたることで、ストレスのはけ口にしていることが多いようです。
「○○先生は笑顔が少ない」「着替えのコーディネートが気に入らない」といった、いわゆる言いがかり的な内容のクレームは、この可能性が高いでしょう。
対応
とにかく話を聞きましょう。
言いがかり的なクレームは「自分の方が立場が上だということを誇示したい」場合が多いようです。
ストレスがたまっているのだと思い、個人で解決できることであれば笑顔で「気にさわったのであれば申し訳ありません。今後気をつけますね」と返してあげればよいでしょう。
ポイントはこちらの話や言い訳はできるだけしない、無駄に話を長引かせないことです。
自己中心的な考え方が強い
ポイント・事例
「保育園でトイレトレーニングを完璧にしてほしい」「忙しいから熱があっても電話してこないでほしい」「送迎が面倒なのでバスを出してほしい」といった、理不尽な要望をしてくる保護者は「自己中心型」と言えます。
家庭や友人関係ではまかりとおるかもしれませんが、社会性に欠ける行為かもしれません。
対応
明らかに無茶な要望であっても、まずは受け止めましょう。
そのうえで「私では決めかねますので園長と相談します」と回答せずに持ち帰りましょう。
ここで「できません」と保育士さん個人が回答してしまうと、「お願いしたのに意地悪された」と、自分の物差しで判断され、関係が悪化する可能性が高いのです。
そして翌日などできるだけ早いタイミングで「園長と検討の結果、こういう理由で難しいという結論に至った」と伝えましょう。
同じ回答でも、個人の見解ではなく社会的に無理があるという回答をするのがのぞましいようです。
保育園に対する不信感が強い
ポイント・事例
園への不信感が強い保護者は、保育内容にクレームをつけてくることが多いようです。
これは、「子どもが家で見せていないアニメを覚えてきた」「寒いのに散歩に行かせた」「ヘアゴムをなくされた」など、保育の現場でありがちなことを、なにかと園のせいにしてくるタイプです。
このような保護者は不安が大きく、保育方針や活動についてもあれこれ気にしてくるケースもあります。第一希望の園に入れなかった保護者にこの傾向があるかもしれません。
対応
こういった細かいクレームをつけてくる保護者には、対応できるものと難しいものがあります。
子どもの希望や持ち物に関してなど、対応策を考えなくてはいけない場合もあるでしょうが、まずは保育士さん個人を信頼してもらうことからはじめましょう。
できるだけ、保護者の不安に寄り添う気持ちで「そうなんですね」「それは心配ですよね」「私も気をつけて見ていきますね」と返しながら、信頼を得られるようにしましょう。
ポイントは、翌日以降も気にしていることをアピールする声かけをすることです。
「あの件なんですけど、今日はこうしてみました!また気になることがあれば教えてください」と、声をかけるだけで、次回のクレームが減少するかもしれません。
保育士さんへ
「もっと自分らしく働ける職場に転職したい!」「保育士は続けたいけど職場の人間関係につかれた…」そんなお悩みを抱える保育士さんは、保育士バンク!へご相談ください。
多すぎる要求は「バランス対応」で攻略
あれもこれも、とたくさんの要求をしてくる保護者に困った経験のある保育士さんもいるでしょう。そんなケースでの対応策をお伝えします。
すぐ対応できる「1:1:1」のバランス
たとえば、保護者から要求を3つ求められたら、ひとつは「却下」、ひとつは「保留」、そして、最後のひとつを「OK」、というバランスを保って対応してみましょう。
保護者としても、3つのうち、却下されたのはひとつだけなので、あとの2つの「保留」と「OK」については、受け入れられたという満足感を得ることができ 「いつも要求を取り入れてくれる」という印象を持ってくれるでしょう。
これが、「却下」がない代わりに、「OK」もないというパターンにしてしまうと、保護者に「いつも何も聞き入れてくれない」といった、まったく逆の印象を持たれてしまうので注意が必要です。
対応可能なものにはできるだけOKを!
保護者からのもっともな要求や、それを取り入れても何のさしさわりもない要求というのは意外とたくさんあるものです。
たとえば「子どもの洋服が汚れるような外遊びをする日は事前に連絡がほしい」、「行事の日はトイレの案内がほしい」といった、工夫次第で解決できる要求です。
これが、たとえば「日曜日も開園してほしい」「うちの子だけを発表会の主役にしてほしい」といった、無理難題や実現不可能な要求に対してであれば、できないことを説明する必要があるでしょう。
しかし、より園と保護者の関係をスムーズにしていくためと考えると、案外、かんたんに実現できることなのに、できない言い訳をしたり、習慣であることを優先したりするなどして、素直に「OK」と答えられない保育士さんも多いようです。
問題なく実現できる要求に対しては、素直に「はい」と受け入れていくと、「却下」「保留」「OK」のバランスはすぐに1:1:1になります。
そして、保護者からの印象は格段にアップするでしょう。
クレーム対応の鉄人を目指して頼れる保育士に!
maroke/stock.adobe.com
保育士さんが日々頭を悩ます保護者からのクレーム対応。
しかし、保育士も保護者も決して相対する関係ではなく「子どもを大切にしたい」「子どもを守りたい」という気持ちであることは同じはずですよね。
それぞれ立場が違っても、同じ方向を向いて協力していきましょう!という前向きな姿勢 を見せることが大切です。
保護者の話をしっかり聞きながら、保育士さんひとりで解決せずに園全体でていねいに対応できるような協力体制を、普段から作っておくことも大事ですね。
保育士バンク!は、保育士専門の求人サイトです。
「職場の人間関係がしんどい…」「もっと保育に集中して子どもと向き合える職場がいい!」などと悩んでいる保育士さんは、保育士バンク!にご相談ください。
専門のキャリアアドバイザーが、全国の豊富な求人情報の中から、あなたのご希望に合う保育園を紹介いたします。