保育士=子育て・教育のプロ!発達が気になる子の保護者対応を万全に!
保育士は教育のプロとして保育園や幼稚園の現場に立ちます。
保護者の方から「子どもの成長が遅い」という相談を受けたとき。
また、発達が気になる子が担当クラスにいる場合にどのように保護者対応をすればいいのか、考えはまとまっていますか?
発達が気になる子の保護者への対応
教育のプロとして保護者たちからしっかり信頼されるよう、子どもの発達についての知識をしっかりと身につけることはもちろん大前提ですが、その上で子どもの発達に悩みを抱えている保護者への対応の仕方も頭に入れておくことが大切です。
ここでは、発達が気になる子の保護者への対応の仕方をまとめます。
発達が気になる子の背景を見極めることが大切
保育士にとって「気になる子」とは、「どのようにかかわってよいかわからない子」であり、必ずしも「気になる子=障がいがある子」ではありません。
気になる姿を示す原因はさまざまですが、大きく分けると、
・発達障がいによるもの
・保護者の育て方や養育環境によるもの
・園環境とのミスマッチ
の3つがあげられます。
ここでは近年特に注目が必要な「保護者の育て方や養育環境によるもの」について、掘り下げてみたいと思います。
保護者自身に何らかの障がいがある場合(精神障がい含む)
保護者自身が「うつ病」「統合失調症」などの精神的な疾患を抱えている場合があります。
一概には言えませんが、そのような場合、子育てにまで十分に手が回っていないことがあるようです。
保護者と良好な愛着関係を築けず、それが原因で落ち着きのない行動をとる子どももいます。
保護者からの虐待を受けている場合
保護者からいわゆる虐待(身体的・精神的・性的虐待・ネグレクトなど)を受けている子どもの場合は、上で挙げた例と同じように、保護者と充分な愛着関係を結べず、周囲に対して安定よりも恐れのほうが上回り、過敏に反応する傾向があります。
自分に気を向けてもらいたい気持ちから、落ち着きのない行動をとる子もいます。
本来なら、保護者から得られるべき愛情を外部の大人(保育士など)に求めるということです。
「世界で一番受け入れてもらいたい保護者から受け入れてもらえない」という人として一番ベーシックな部分が揺らいでいる状態なのです。
保護者が過保護すぎる場合
過保護な保護者による背景も存在します。
事例として、「砂遊びを極端に嫌がり、走り方がぎこちない」子がいた場合、「自閉性から感覚的な過敏さがあり、砂の感覚が苦手で、不器用なため、走り方がぎこちない」と仮に理解することもできます。
しかし、後で保護者から話を聞いてみると、「砂場が不衛生という理由で砂遊びをさせたことがなく、またけがをすると危ないので、戸外でも走らせたことがない」といった子育てをしてきた経緯がありました。
こちらは極端な例かもしれませんが、最近はこのような子育てのスタイルをとっている保護者は決して珍しくなく、生活全般に関する経験不足の子どもが増えているようです。
「経験不足」は今後の保育現場での大切なキーポイントとなりそうです。
一括りにはできない愛着不全
ただ、発達障がいと愛着関係の不全には、複雑で入り混じった関係性があり、「発達障がいが起因して愛着不全になるのか」、「愛着不全から発達障がい児のような行動をとるのか」、双方の見極めはとても難しいです。
愛着不全のケースについては、発達障がいに対する支援の他に、保護者により愛着関係の築き直しが必要です。
専門家と連携を取り、子どもの家庭環境や家族関係などの背景を探っていくことが、状況の改善に求められます。
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発達が気になる子の保護者をタイプ別に分類
保護者に子どもの状態を伝えようと試みたものの、子どもの課題を意識していなかったり、認めようとしていなかったり、という経験はありませんか?
そのようなミスマッチを防ぐには、まずは、保護者が「自分の子どもをどのように受け止めているか」を保育士が理解することがとても大切です。
ここでは、保護者が子どもの姿をどのように受け止めているか、タイプ別に分け、掘り下げて考えたいと思います。
子どもの問題を意識していない場合
「自分の子どもしか見ていない」か、「子どもの状態を理解する視点をもち合わせていない」などが要因で、自分の子どもの発達を客観的に捉えられない保護者がこのタイプになります。
まずは、子どもの行動に気づいてもらうため、じっくりと関係を作っていくことから始めましょう。
具体的な取り組みとしては、送迎時など、日々のコミュニケーションを大切にし、深刻な話題を話せる土台作りに励みましょう。
保護者に子どもの問題を意識するよう、仕向けるような姿勢は、保護者に伝わり、かえって身構えさせてしまうこともあります。
まずは、子どもの「良かった行動や楽しかったできごと」などを中心に、保護者と談笑できる関係性を目指しましょう。
子どもの問題を心配していて、保育士に相談しようか迷っている場合
子どもの問題に気づいていますが、年度はじめなど、保育士と基本的な信頼関係が築けていない状態の場合、保育士を相談する対象として考えていないケースがあります。
まずは、「この人なら相談できるかも」と思えるような、親しみをもった接し方を心がけるようにしましょう。
ときには、同僚保育者に頼んで、保護者との接し方で気づいた点を教えてもらうなど、客観的な視点で保護者との接し方を振り返ることも有効ですね。
子どもの問題を心配しているが、保育士に相談しようと思っていない場合
「保育士に相談をして、障がい児扱いをされると困る」など、保護者が相談することをデメリットと受け止め、保育士を「発達の専門家」と捉えられていないケースも多くあります。
保育士としては残念なことですが、まずは子どもを深く理解し、「現在の子どもの姿」と「配慮していること」をわかりやすく保護者に伝えることから始めましょう。
そして「この先生は子どもの良い面をちゃんと見てくれて、頼りがいがある」と思ってもらえるよう、子どもの良い面を繰り返し伝え、安心感を与えることが大切です。
子どもの問題を心配しているが、周囲には隠したい場合
1~3のタイプと違い、保育士からのアプローチは必要最低限にして、保護者が相談してくるまで待つことが鉄則です。
このケースの場合、保護者が子どもの行動を隠したい気持ちが、周囲に伝わっている可能性もあり、保護者自身が追い込まれていることも考えられます。
また、母親が子育てについて、親族関係から非難されていて、園だけでなく家庭でも孤立しているような状況も予想できます。
その他に、気になる子の保護者が、他児の保護者から「クレーム」という形で子どもの園での行動を耳にしているケースも珍しくありません。
まずは、さまざまな情報を収集し、保護者が今置かれている状況を把握しましょう。
保護者が保育士の話を受け止められると判断できるときは、「あいまいな表現」ではなく、「正確な情報」を伝えます。
保育士は、保護者の唯一の理解者になるよう努めましょう。
発達が気になる子の保護者への対応
発達が気になる子の背景や保護者のタイプについて理解したところで、ここからはいよいよ本題です。
発達が気になる子がクラスにいたとき、その保護者に対してどのように対処していけばいいのか、基本姿勢~具体的な対応方法までをお伝えします。
まずは保護者の気持ちを汲み取る!
子育てについて悩みのある保護者さんの力になるのも、保育者の役目です。
この場合は、まず保護者が何に焦り、心を痛めているのか考えてみましょう。
保護者もそれぞれの子どもに個性や、成長スピードの違いがあるのは重々承知のはず。
それをわかっていながら不安があるのは、他の子どもと比べたり、不安な気持ちを抑えられないからです。
それをうまく汲み取ってお返事できるといいですね。
言ってはいけない言葉
「特に心配ありません、一人ひとりの個性です。」
と言い切ってしまうのは簡単ですし、間違ったことは言っていませんが、保護者の立場からすればこの対応は間違いです。
根拠もなく言い切ってしまっては、単に「やる気が無い人、子どもをあまり見てくれない人」と思われてしまう可能性もあります。
不安を受け止め、まずは共感して悩みを分かちあうのが一番の近道です。
客観的な事実に説得力を感じる!
まずは感情ではなく、客観的な事実を述べましょう。
例えば、今日は「これ」をお話ししましたよ、というのが思いつけばベストですし、日常生活で問題が無いと思えるならば、それを素直に伝えます。
そして、言葉の発達についての正しい知識を保護者にも伝えます。
まず「言葉をため込む時期」があり、それが満ちた後に言葉を話すようになる、といったように具体的に話してあげると良いですね。
具体的な園での様子、最後に、これからの対応を述べる
「たしかに園ではあまり口数は多くないですが、お友達とは〇〇のお話しをして楽しそうでしたよ」など、具体的に子どもの様子について伝え、最後にこれからの方針を述べます。
私も温かく見守っていきます、というような言葉や、〇〇ちゃんとお話ししたことをお伝えしますね、と保護者を安心させるようにします。
保護者一人ではなく、一緒に見守っていけたら、という気持ちが伝わるといいですね。
発達が気になる子の保護者と対するとき=焦りは禁物
発達が気になる子どもの背景や保護者のタイプを合わせてみた上で、具体的にどう保護者と対していけばいいのかを考えてきました。
「自分の子どもは大丈夫なのか」と不安になっている保護者にどう接していけばいいのか、参考になったでしょうか?
最後にもう一つだけ、発達が気になる子の保護者と対するときの心構えを。
それは「焦らないこと」です。
保護者は保育士の意図するところが見ないと、途端に不安になり、保護者に対して「私たちは困っています」と言われているのでは、と受け止めてしまいます。
園では課題に対してどのように取り組んでいるか、今後どう取り組んでいくのか、ということをきちんと整理した上で、子どもの様子や心配に感じていることを丁寧に伝えることが大切ですね。