保育士は、子どもと関わる中で、目標を立て、計画をし、時には評価をしながら日々の保育を行っています。
また、それに伴い、さまざまな書類を記入し、記録しなければなりません。
今回は、そうした、「保育計画」や「保育日誌」などについて、ご紹介したいと思います。
◆日々の保育は、「保育計画」から始まります
保育計画とは、幼稚園や保育所において、一定の保育理念に基づき保育目的を決め、その目的を達成するために、手段や方法をどのようにしたらよいかを考えてまとめたものです。
〇保育計画と指導計画
保育所では、入所している子どもの生活全体を通じて、設定した保育の目標が達成されるように、全体的な「保育計画」と具体的な「指導計画」とから成る「保育の計画」を作成します。
このような保育の計画は、全ての子どもが入所している間、常に適切な養護と教育を受け、安定した生活を送り、充実した活動ができるように柔軟で発展的なものとし、また、一貫性のあるものとなるように配慮することが重要です。
「保育計画」は、設定したねらいと内容を基に、地域の実態、子どもの発達、家庭状況や保護者の意向、保育時間などを考慮して作成します。
また、「指導計画」は、この保育計画に基づき、子どもの状況を考慮して、乳幼児期にふさわしい生活の中で、一人ひとりの子どもに必要な体験が得られる保育が展開されるように具体的に作成します。
〇保育計画の留意事項
保育計画は、保育者側の立場にたって考えられたものが多く、子どもの自発的活動を束縛するものになりがちであることが、批判の対象になっています。
これは、子どもの自発的な活動は、しばしば保育者にとって予測がつかないことがあるからです。
保育計画では、年間計画に基づいて、月案、週案、日案が作られます。
子どもたちの自発的な活動が、保育計画の中のどの柱に該当するかを考えると共に、一人ひとりの子どもの発達が、自発的な活動の中でどのように実現されているかを確認していく必要があります。
決して日案を子どもに強要してはいけません。
それが自発性の発達を阻害し、意欲に乏しい子どもを作り出してしまいます。
現在のわが国の幼稚園や保育所には、その傾向が著しいと言われています。
◆月の保育活動を計画する「保育月案」
保育月案とは、保育のねらい、内容から作成された保育計画および年間指導計画に基づいて、月の保育活動を計画するものです。
〇保育月案の様式
各園には、それまでの年度で作成された月案が保管されています。
参考にしてフォーマットや書式を作成しましょう。
ただし、過去の月案や月間指導計画をコピーしてはいけません。
子どもたちを観察し、情報を集めて内容を記載します。
情報源としては、下記があります。
– 児童票
– 過去の保育日誌
– 個人記録
– 過去の担任から話を聞く
– 子どもたちの様子を観察する
– 連絡帳
〇子どもたちの様子を観察する際のポイント
– どこまで生活習慣が自立できているか?
– どんな遊びを楽しんでいるか?
– 友達とどんな関わり方をしているか?
– 何に興味関心があるか?
〇月案を作った後の留意点
計画だけにとらわれず、子どもたちの実際の様子を見て、援助をしていきましょう。
子どもが、安心して取り組み、挑戦し、喜び、満足感、意欲、待つ態度等が身に着くように、援助していく必要があります。
保育とは、ねらいや内容を環境の中に組み込んで、子ども自身が環境に関わっていけるようにすることが大切です。
特に3、4月はしっかりと準備と環境を整えていくことで、子どもたちが落ち着いて過ごせるように、 また気持ちをしっかりと受け止めていき、信頼関係を築いていく必要があります。
〇月案の基本項目
1) 月の目標、ねらい
2) 子どもの発達の姿
3) 保育内容
4) 具体的な援助、関わり
5) 反省、評価(※月末に記載します)
「保育内容」については、項目ごと(5領域など)に分けられている場合もあります。
・健康:夏であれば水分補給、冬であれば手洗いうがいなど
・人間関係:言葉で気持ちを伝える など
・環境:発達に合わせたおもちゃの設定など
・言葉:絵本のタイトル など
・表現:歌のタイトル、製作、描画など
その他、「ねらい」が、自分の気持ちを言葉で伝えるということであれば、トラブルになった時や、なりそうな時に、子どもが自分の気持ちをうまく伝えられなかった場合、 保育者が仲立ちとなり、気持ちを代弁することで、 お互いの気持ちが分かるようにするなど、 ねらいを達成するために、保育者がどう動くかを 考えて書きます。
◆「保育日誌」に記録する
保育日誌とは、保育の実施状況を日々、記録するものです。
1日を振り返り、その日の「保育のねらい」との関連の中でポイントを定めて、これだけはと思うものを子どもの姿と共に、保育者の行為や思いを書きます。
〇保育日誌に記録する項目
1) その日の保育の状況
2) 子どもの姿と保育者の対応や思い
3) 評価・反省
4) 子どもの出欠席とその理由、天気、健康状態、保護者への連絡、特記事項(個人記録)
〇保育日誌の記録のポイント
1) 子どものあるがままの姿を、保育者の対応やその時の思いも含めて、具体的に記録することで、保育の反省・評価に繋がる
2) 時間の経過と共に活動を羅列するだけの記録にならないようにする
3) 子どもの表情・言動から内面の変化をとらえる記録
4) 個の変化と集団としての変化の両面から記録する
5) 今日の保育が明日の保育に生かせる
◆保育日誌とプラスして、週案日誌を記録する
週案のねらいは、長期(年月)の指導計画に基づき、その週の計画をより具体的に記録することにあります。
実践の方法や配慮点などを文章化することにより、保育者がより具体的に意識できる意味でも大切な過程になります。
月案作成の段階では書き表せなかった部分も具体的になり、保育現場では必要な書類として定着しています。
今日の経過があって、継続的に遊びが展開する可能性もあります。
明日への展開を予想し準備できることは、子どもたちが求めている内容により近い案が立てられるなど、保育が円滑になり効果的な方法と考えられます。
〇週案の項日
1) ねらいと内容を月案よりより具体的に書く
2) 明日への展開(子どもの動きを想定して)
3) より遊びが発展するための準備(材料、場所、その他危険性についても)
〇週案の記録のポイント
1) 箇条書きにするなど要領よく記す
2) 1週間の保育の継続性を大切にする
3) 誰にでも読みやすい文字で書く
◆保育士の仕事は、たくさんあります
冒頭でもお話しましたが、保育士は、子どもと遊ぶのが仕事ではありません。
保育士の仕事は、子どもたちと過ごしている中で、目標やねらいを定め、それに対して、どこまで達成できたか、できなかったかを振り返りながら保育しなければならないのです。
1日だけの記録では、変化や意味が読みとれませんが、継続した記録を読み返してみると、子どもの発達のプロセスやクラスの保育の方向が見い出されます。
日々の保育の記録が、指導計画作成や保育者の在り方に生かされるようになります。
このように、目標や計画を立てて、それを文章にし、振り返ることで、最終的には子どもたちの成長に繋がっていくのです。