国の施策などにより、保育士の給料が年々上がってきていることは、ご存知の方も多いのではないでしょうか。その上で、実際の手取り額がどのぐらいなのかも気になりますよね。このコラムでは保育士の給料、手取り額についてまとめてみました。また、保育園と幼稚園との比較や、その2つを合わせた認定こども園についても解説しているので参考にしてみてください。
「手取り」とは?
まずは、給料の手取りについておさらいしましょう。
手取り=手元に残る実際の金額
給与の手取り金額とは、基本給や各種手当となるプラス分から、各種保険料や税金などのマイナス分を引いたものです。その金額が手取り、すなわち実際に受け取れる金額になります。
手取り額を出すには?
プラス分をすべて合計した総支給額から引かれるものは、住民税、所得税、健康保険料、厚生年金保険料、給食費、駐車場代などです。住民税や保険料に関しては、昨年度の所得額を参考に金額が決められるため、人によって多少は異なります。おおよそ総支給額の80%ぐらいだと思っておいてよいでしょう。
比べてみました!幼稚園教諭と保育士のお給料
まずは、幼稚園教諭と保育士の初任給、手取り、月収、年収の平均を比べてみました。
幼稚園教諭と保育士の初任給
厚生労働省の調査(2017年)によると、1年目が多い20~24歳の平均月収は、
幼稚園教諭:19.2万円
保育士 :18.7万円
という結果が出ています。初任給を比較すると、幼稚園教諭の方が保育士よりも5000円ほど上回っていますが、ほぼ差はないと言えます。手取り額はだいたい幼稚園教諭は約16.5万円、保育士だと約16万円となります。
幼稚園教諭と保育士の月収・賞与・年収・手取り
2017年度の政府統計によると、幼稚園教諭・保育士の月収、年間賞与、年収は以下になります。また、カッコ内はおおよその手取り額です。
幼稚園教諭(全年齢平均)
月収 :22.9 万円(18.3万円)
年間賞与:63.0 万円(50.4万円)
年収 :337.7万円(270.2万円)
保育士(全年齢平均)
月収 :22.8 万円(18.2万円)
年間賞与:65.8 万円(52.6万円)
年収 :339.7万円 (271.8万円)
幼稚園教諭に関しては、2016年度の年間賞与額が64.5万円だったのに対し、2017年度は63.0万円と、1.5万円ほど下がっています。一方保育士の方は、2016年度は58.8万円だったのに対し、2017年度は65.8万円と、大幅にアップしたことがわかります。年収に換算すると12.6万円ほど上がったことに加え、保育士の年収がわずかに幼稚園教諭の年収を上回る結果となりました。2017年度から新たに始まった、キャリアアップ研修による処遇改善の影響が表れていると言えるでしょう。
参照:賃金構造基本統計調査(2017年)
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幼稚園&保育園…お仕事の違いは?
幼稚園教諭・保育士に、給与の違いはほとんどないようでした。
では、その仕事内容に違いはあるのでしょうか。
お仕事内容に大きな違いはない!
幼稚園は「教育」を重視して、保育園は「保育」をするとよく言われますが、
幼稚園と保育園のお仕事に、大きな違いはありません。
まず、第一にどちらも子どもを預かるお仕事です。
幼稚園教諭も保育士も、保護者の代わりに、誰にとっても大切な子どもの面倒をみて、
健やかに育つように導きます。
通う子どもに地域差や個人差はありますし、手法は園によって異なりますが、責任の大きさは変わりません。
仕事の本質に違いはないと言っていいでしょう。
ちょっとだけ違います…保育時間や保育する子どもの年齢
幼稚園と保育園の小さな違いとすれば、開設時間や預かる子どもの年齢です。
幼稚園は日中の4~5時間の保育です。
例えば、お昼の時間を含めて、朝の9時から夕方3時までの時間です。
一方、保育園の中には延長保育を夜10時までやっている園も。
保育園は0歳の乳児から2歳児までも預かりますが、
幼稚園は原則3歳からの受け入れです。
幼稚園・保育園はやっぱり似ている
幼稚園教育要領には「幼児を保育し、適当な環境を与えて、心身の発達を助長する」とあり、
保育所保育指針には「養護と教育が一体になって、豊かな人間性を持った子どもを育成する」とあります。
この二つの文はほぼ同じ意味といえるでしょう。
そこで、働く保護者のための保育需要が増加していることもあり、
幼稚園と保育園の垣根を取り払っていこうという取り組みが進んでいます。
その一例が、幼稚園と保育園が合体した「認定こども園」です。保護者が働いていても、
いなくても同じ施設で子どもを預かることができ、
地域の子育て支援サービスを充実を推進する役割が期待されます。
将来的に、保育園と幼稚園がさらに近くなることは確実といっていいでしょう。
幼稚園教諭と保育士資格、これからどうなっていくの?
幼稚園と保育園の違いは理解できましたか?
これからは、現場で働くために必要な幼稚園教員免許と保育士資格どちらが有利なのか、
どちらもとったほうがいいのか、そんな疑問に答えていきます。
減り続ける幼稚園!増え続ける保育園!
日本全国で、幼稚園の需要が減り、保育園の需要が高まっています。
これは、長い不況の影響から、共働き家庭が増えていることに加えて、産後の職場復帰を早くしたい女性が増えていることが原因。
預かり時間が短く、年齢も3歳からの幼稚園よりも、乳児から受け入れてくれて、遅くまで預かってくれる保育園の人気が高まっているのです。
ベネッセの調査によると2013年度の時点で全国の幼稚園の8割が定員割れしていると報告されています。
また、施設数も大きく変わってきました。
幼稚園数 | 保育所数 | |
---|---|---|
2005年度 | 13,949 | 22,624 |
2015年度 | 11,674 | 25,580 |
上の表は2005年からの10年間の幼稚園数・保育所数をまとめたものです。
10年の間に、幼稚園は約2,000施設減る一方で、保育所は約3,000施設も増えています。
そこで登場「認定こども園」
「認定こども園」とは幼稚園と保育園、両方の良いところを備えた保育施設です。
保育園のように、乳児保育や長時間保育も実施し、地域の共働きでない家庭の子どもも受け入れる保育施設です。
主な目的は、保育サービスの充実した認定こども園を増やして、待機児童の解消を目指すこと。
資格の要件は園によって異なりますが、幼稚園教諭免許と保育士資格の両方、またはいずれか一方を持っていれば働くことができます。
認定こども園で働く「保育教諭」とは?
認定こども園で働きたい方は、幼稚園教諭免許と保育士資格の両方を持っていると採用の幅が広がります。
この両方の資格をもっている保育者を「保育教諭」といいます。認定こども園を筆頭に保育の一元化が進む中で、
「保育教諭」を育成する仕組みが増えています。
保育学科のある専門学校・短期大学・4年制大学では、卒業と同時に保育士資格と幼稚園教諭免許の両方をとれる学校が増えています。
東京都では、すでに4分の3の保育士さんが、幼稚園教諭免許もあわせて持っています。
また、幼稚園教諭が保育士資格を取りやすい制度が整ってきています。
幼稚園教員免許を持っていれば保育士資格試験の筆記試験科目の一部の受験が免除されたり、
現場での勤務経験が一定以上あれば、簡易な講習と単位認定で、保育士資格を取得することができる特例制度もあります。
幼稚園教諭の給料はこれからどうなる?
今まで見てきたように、幼稚園教諭の月給、年収、初任給、手取り、どれをとっても保育士との大きな違いはありません。
お仕事の内容に関しても、保育時間、預かる子どもの年齢が違うのみで、子どもを預かり、
健康に育つようにする、という本質は変わりません。
さらに、耳寄りな情報もあります。
国は保育園だけでなく、幼稚園にも中堅の保育者向けに「副主任」などの新役職を設置すると発表しています。
この役職には基本給に上乗せで4万円の手当てがつくため、幼稚園教諭の給与はこれからも上がっていくでしょう。
一方で、幼稚園数は減少しており、幼稚園が認定こども園へ移行することもあって、
幼稚園教諭免許のみで働くことは難しくなるかもしれません。将来に備えて、保育士資格取得の特例措置を活用して、
保育士資格を取得しておいたほうがいいでしょう。
参考文献
文科省 平成28年度学校基本調査
厚労省 平成27年度社会福祉施設等調査
内閣府 認定こども園 概要
ベネッセ「第2回 幼児教育・保育についての基本調査」
文科省 幼稚園教育要領と保育所保育指針の対比表
厚労省 平成28年度賃金構造基本統計調査