保育士の給料の現状って?これからどうなるの?
あまり恵まれているとはいえない保育士の給料ですが、
実は地域によって平均額が大きく異なります。
また、待機児童問題を背景に、給与改善も少しずつ進められてきています。
実際の手取り額や、その基準はどうなっているのでしょうか?
今後の給与引き上げの見通しと合わせて考えていきます。
保育士の給料の「いま」
保育士の給料の現状を見ていきましょう。
給料の平均額
保育士の給料の全国平均は、2016年の調査によると、年収で326.8万円となっています。
その内訳は月給22.3万円、賞与が58.8万円です。
全職業の一か月の平均給与が30.4万円、年収にすると455.1万円ですので平均給与を下回る低い給与水準であることがわかります。
ただし、女性の就業者全体の年収を見てみると345.5万円であり、保育士と大差はありません。
保育士の給与水準が低いのは、主に女性が関わる職業に共通した問題ともいえるでしょう。
手取りはいくらになるのか
手取りの給与とは、所得税、年金、健康保険、雇用保険、住民税などを引いて、手元に残る金額です。
月給の約8割の額といわれており、月給を22万円とすると、17.6万円が手取りになります。
ただ、この金額は社会保険完備の保育園で働いた場合の基準であり、保険料が自己負担となる場合にはさらに手取りは少なくなります。
保育士の給与の基準
保育士の給与は保育料のほか、国や自治体の補助金が多くを占めており、給与の基準は行政の方針に従うことが多いでしょう。
保育士は福祉分野のサービス業なので、一般企業とは異なり、歩合制などの業務評価制度は導入しづらく、勤続年数や役職手当によって給料が決まることが多いでしょう。
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保育士の給料が上がらない理由とは?
子どもたちを保育園で一日預かるのが保育士のお仕事。
預かった子どもたちの一時の親代わりとなり、その成長を促し、見守る役割を担う、とても責任の重い仕事です。
体力的にも精神的にもかなりキツく、その上残業や持ち帰り業務もたくさんあります。
それにも関わらず保育士の給与は安いと言われています。
これだけのお仕事をしている、保育士の給与がなぜ安いのでしょうか。
保育士の給料が安い理由その1…サービス業であるため
保育士の給与が安い理由の一つには、保育士という職種の特徴があげられます。
世の中にある仕事の大半は、サービスや商品に対する対価を収入としています。
子どもを預かるという保育サービスも、他の職種同様サービス分に利益をのせて「月謝」という形で対価をもらうべきなのですが、
保育のようなサービスは多くの人が利用できるように、高額の対価は請求できません。
ちなみに「月謝」はだいたい公定価格で決まっているため、保育園が勝手に上げることも難しいです。
保育士の給料が安い理由その2…補助金が増えないため
月謝を過剰に上げるわけにもいきませんので、国は保育園に補助金を出し、保育園はそれを運営や給与の費用としています。
公立保育園の場合なら、市区町村が国や都道府県から補助金、保護者から保育料を受けとり、市区町村から各保育園に運営費が届く…という流れになっています。
補助金があるのなら、保育士のお給料はもう少し上がるのでは?
と考えてしまいそうですが、補助金は税金が使われているため過大に上げにくいため、なかなか給料が上がらないのです。
保育士の給料改善の取り組み
現在、低い保育士の給与の改善を目指す取り組みが盛り上がっています。
では、実際いつから、どのくらいの引き上げが実施されるのでしょうか。
国の給料アップ対策…新役職の設置
国は2017年4月から新たに副主任、専門リーダーなどの新たな役職を設置するように制度を変更しています。
中堅の保育士さんが対象で一か月で最大4万円、給料が上がります。
また、職務分野別リーダーを、若手保育士さん向けに作り、こちらは月5千円、給料が上がります。
今回の給料改善では職場の保育士さんの3分の1が昇給するように役職の補助金がでるようです。
補助金は2017年度の途中から支給されることになっていますが、役職設定がその前に行われていればその時から支給されます。
自治体の給料アップ対策…保育士さん補助のさまざまな取り組み
この他に、自治体が個別で給与補助もしています。
東京都は2017年から今までの給料上乗せの補助金からさらに2万1千円追加して、合計で4万4千円保育士の給与が上がるように補助する予定です。
また、現在では保育士さんが借りている家賃を補助してくれる自治体も増えており、保育士の手取りが増えるよう支援してくれています。
保育士の給料引き上げの理由とは?
それではなぜ給料を引き上げる必要があるのでしょう。
給与引き上げの理由その1…待機児童の問題
給与引き上げの理由の一番の原因は待機児童の増加です。
2016年10月の時点で待機児童はおよそ4万7千人います。
保育所、保育士の数が足りておらず、働きたくても働けない親御さんが増えています。
人口減少で悩む日本社会で、育児を担当することの多い女性が職場で輝ける環境を作るためにも、保育の受け皿を増やさなければなりません。
保育士の人数を増やすためにも給与の引き上げが必要なのです。
給与引き上げの理由その2…離職率の高さ
保育士は給料が低いだけでなく、仕事量の多い職場だといわれています。
日中に子どもの保育をするだけでなく、保育報告書の作成や、行事の前には掲示や展示、飾りつけの製作も保育士さんの仕事です。
そのため、サービス残業や持ち帰り残業などが多く、離職率の高い職でもあります。
そのため、保育人材が不足している中、給料を上げることで新たな人材の確保や職場を離れてしまうことが少なくなるように給与を上げよう、ということになっているのです。
給料の地域差
保育士の給料にも地域差があります。
保育士の給与が一番高い県は愛知県で431.1万円、一番低い県が岡山県で267.8万円です。
その差は、約170万円にもなります。どうしてここまで差が出るのでしょうか。
地域差の理由その1…物価が違う
都市部と地方では生活にかかる費用が違います。
土地が高ければ、家賃は高くなりますし、食べ物の値段が安ければ、食費も安くなります。
給料が高くても、生活にかかる費用が多ければ手取りとして手元に残る金額は給料の安い地域と変わらないこともあります。
物価の違いは給料に反映されるといっていいでしょう。
地域差の理由その2…自治体の支援が違う
前述したとおり、保育士の給料は補助金に依存しています。
先ほどの東京都のように給料に補助金を上乗せしたり、保育士に対する支援が多いとその支援の分が給与に上乗せされることになるため、給料は高くなるでしょう。
地域差の理由その3…保育士の需要が多い
需要と供給のバランスは給料にも影響を与えます。
待機児童が多い地域は保育士の需要が大きいです。
需要が大きいということは、たくさんの給料を払ってでも保育士が欲しいということです。
そのため、たくさんの保育士さんを集めるため、給料をを上げなければければなりません。
ですから、給与は自然と高くなるでしょう。
保育士のお給料の「これから」
保育士は現状では給料が高いとはいえないなか、仕事内容も軽くはなく、子どもの安全に対して責任もあります。
しかし、待機児童の解消を目標に需要が高まっている中、国や自治体のさまざまな取り組みがこれからも続くことでしょう。
特に給料は離職者を増やさないためにも、新しい保育士さんを確保し続けていくために重要な条件です。
保育士の給料はこれからも改善する余地がまだまだあることでしょう。
出典:平成28年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)