働き方改革によって、残業時間の見直しが進められています。しかし、保育士は持ち帰り仕事などもあり、残業が多い状況が続いているようです。今回は、厚生労働省の資料をもとに保育士の残業事情について、平均時間や実態をまとめました。また、残業が少ない保育園の特徴や、残業なしを実現するための対策なども紹介します。
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保育士の残業の実態
保育士の仕事は業務量が多く、勤務時間内に終えられないといったイメージがありますが実態はどうなのでしょうか。
保育士の仕事の現状
サービス残業が多い
子どもたちが園にいる時間帯は保育活動がメインの仕事となるため、事務作業などの仕事は夕方や夜になってから始めることも多いようです。したがって、残業が発生しやすい環境があるのかもしれません。
また、保育士不足が問題となっていることもあり、なかには最低限の職員数でまかなっている園もあるでしょう。そのような園では一人が抱える業務負担も大きくなるため、勤務時間内に仕事を終えることが難しいことも考えられます。
そのため多くの園では残業代が支払われない「サービス残業」が浸透しているようです。
保育園の運営は利用者からの保育料や補助金でまかなわれているため、保育士に払える残業代に限りがあり、このような状況になってしまっているのかもしれません。
持ち帰り仕事がある
園によっては家に持ち帰って仕事をする、いわゆる「持ち帰り残業」が常態化していることもあるようです。
持ち帰り残業では主に、保育計画書、園だより・クラスだより、保育日誌などの作成や行事の準備が多く、保育士はプライベートの時間を削らなければならないでしょう。
ただ、このような状況を改善しようと「残業なし」に取り組む園や、製作物の再利用などで業務の簡素化を目指す園も増えてきているようです。
保育士の平均残業時間
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、2019年、全国の保育士の時間外労働時間平均は4時間と示されています。
1カ月に4時間というのは、1日あたりに換算すると約12分という数字になります。(20日働いた場合)
ただし、残業代が発生しないサービス残業を含めると、1カ月の残業時間が40~60時間に達する園もあり、これは1日に換算すると約2~3時間。
大量の事務作業や製作物の仕事をしているためにこのような長時間の残業が発生していると考えられるでしょう。
出典:賃金構造基本統計調査/厚生労働省
保育士の残業が多くなる理由
保育士の残業が増えてしまう要因について紹介します。
事務作業が多い
保育園では、朝に子どもを受け入れてから夕方や夜まで保育を行うこともあります。その間子どもから目を離すことはできないので、事務作業や壁面装飾の製作といった仕事をこなすことは難しいでしょう。
事務作業に取り組める時間がきちんと確保できないうえに、保育士が担当する事務作業の量は膨大なようです。
事務作業には連絡帳の記入や園だよりの作成、保育計画の作成や保育日誌の記録などがあります。ほかにも、事務員を置いていない園では行政への提出書類の作成や人事、経理関係の仕事まで行うこともあるようです。
保育士は事務系の仕事も多く負担しているため、残業時間が長引いてしまうのかもしれませんね。
イベントや行事で忙しい
1年のなかで特に残業が増えるのは3月から4月で、卒園や入園に伴う事務作業が多くなります。メインとなるのは書類作成の業務。
園内で必要となる書類に加えて、小学校や行政に提出する書類が多いため、業務時間内で終わらせることは難しく、残業が発生してしまうようです。
また、運動会やクリスマス会など、大きなイベントの前は残業が増える傾向にあるでしょう。イベントの計画書やタイムスケジュールの作成のほか、製作物の準備などもあるため、保育士の残業時間を増やす要因であると考えられます。
さらにシーズンごとのイベント以外にも毎月のお誕生日会などもあるため、職員が力をあわせて計画的に準備を進める必要があるでしょう。
人手不足
保育士の慢性的な人手不足はずっと続いており、園によっては配置基準をぎりぎり上回る人数で保育をしていることもあるかもしれません。
保育士が最低限の人数しかいなければ、一人ひとりが負担する事務作業の量が多くなってしまいますよね。
そのため、勤務時間内に仕事を終えることができずに残業や持ち帰りをすることが常態化してしまうのかもしれません。
残業が長かったり持ち帰り仕事が多かったりすると、だんだん労働環境に不満を抱えるようになり、退職を考えることにもつながるでしょう。
保育士として長く働き続けるためには、残業なしを実現していたり、積極的に残業をなくす取り組みをしていたりする園で働くとよさそうですね。
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保育士の残業が少ない園の特徴
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保育士の残業が減らない一方で、残業なしを実現している園もあるようです。
残業が少ない園にはどのような特徴があるのでしょうか。
行事が少ない
行事やイベントがあると、製作物や壁面装飾を準備や、職員の会議なども必要になります。そのため、保育士の残業も増えてしまいがちのようです。
つまり、裏を返せば行事やイベントが少ない園は比較的残業が少ないと言えるでしょう。
たとえば、行事が少ないとうたっている園や、定員数が少ない園、認可外で園のスペースが限られている園などは行事が少ない傾向にあるかもしれませんね。
保育士の人数が足りている
子どもの人数に対して保育士が多く配置されている園であれば、仕事の分担がしやすく残業が少ない環境が整えられているかもしれません。
製作物を専門の職員に担当してもらったり、事務員を雇って事務作業をこなしてもらったりと、仕事を分担することで保育士1人の業務負担を軽減できるでしょう。
また、保育士同士で保育経過記録や保育計画書などの作成を分担しやすくなるので、保育士の人数が多ければ残業が発生しにくくなるかもしれません。
ICTシステムなどを導入して業務効率化を図っている
ICTシステムを導入し、書類の作成や登降園管理などをアプリやパソコンで行っている園は、保育士の事務作業の負担を少なくする努力をしている園と言えるでしょう。
IT化が遅れがちとされている保育業界で、アプリなどを使って業務効率化を図っている園は応募者も集まりやすく、人手も足りているため残業が少ない傾向にありそうです。
面接や園見学の際には、ICTによって効率化している業務について確認してみるとよさそうですね。
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保育士が残業時間を減らすためにできること
なかなか減ることがない保育士の残業時間。
少しでも減らして、残業なしを実現するために保育士ができることをまとめました。
タスクを可視化する
自身が抱えているタスクを整理して、シートなどにまとめて可視化しましょう。
頭のなかで「あれもやらなきゃ」「これもやらなきゃ」と考えていると、どれに手を付けたらいいのか判断に困ってしまいます。
着手すべきタスクを見えるようにすることで、頭の中が整理されるうえに現在の進捗状況も把握しやすくなるでしょう。
また、タスクを完了したら消したりチェックを付けたりして、終わった業務であることを認識できるようにすると、仕事の漏れも防ぐことができそうですね。
業務の優先順位を設定する
やらなければならない業務に優先順位を付けて、優先度の高いものから着手するようにしましょう。
優先順位を付ければ、期日に間に合うようにするにはいつから着手すればいいのか決めやすくなりそうです。
また、優先度が高いものから着手するようにすることで、一日にこなすべき業務が明確になるため、無駄な残業を減らすことができるでしょう。
仕事を簡略化する
おたよりや保育日誌などの書類作成をするときは、テンプレートを利用したりイラストをダウンロードしたりして、できるだけ簡略化するようにしましょう。
他にも、製作物や壁面装飾を使いまわすなどして、一から行う業務を減らすようにするとよさそうです。
仕事を簡素化すれば作業にかかる時間を大幅に削減することができるので、残業時間を減らすことにもつながるかもしれませんね。
作業時間の目安を決める
30分、1時間など、作業を終わらせるための目安となる時間を決めましょう。
おおよその時間を設定して仕事に取り組むことで、時間内に終わらせようという意識が働き、不必要にだらだらとしてしまう時間を減らせそうです。
また、時間内に終わらなかった場合はどうやったら時間内に終えられるかを考えるきっかけにもなり、業務のなかでの無駄を発見することができるかもしれません。
残業が少なめの園で働く
仕事のやり方を工夫することで、ある程度の残業を減らすことができるでしょう。
ただ、なかには残業するのが当たり前という空気があったりICTの導入に渋っていたりと、保育士の業務負担を軽減させる取り組みに前向きでない園もあるかもしれません。
そのような園で働いているときは、思い切って「残業少なめ」「残業なし」をアピールしている保育園で働くのも一つの手でしょう。
残業を減らすための改善に積極的な園であれば、労働環境もよく保育士として長く働き続けることができるかもしれません。
自身の力ではどうにもならない環境がある場合には、残業が少ない園に転職することを検討してみるのもよさそうです。
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保育士として、残業なしを実現できる働き方を目指そう
今回は保育士の残業時間の平均や理由とあわせて、残業が少ない園の特徴や保育士自身が残業を減らすためにできることなどを紹介しました。
保育士は保育以外にも事務作業や製作物、行事の準備などさまざまな仕事を抱えているため、残業が多くなってしまうようです。
保育士が安心して働き続けるためには、サービス残業や持ち帰りの仕事などを減らす取り組みが重要になってくるでしょう。
今後も保育士の仕事を続けるためには、自身の業務を簡素化したり、あるいはICTを導入して労働環境の改善に前向きな園に転職したりするといいかもしれませんね。
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