井桁容子先生インタビュー【後編】子どもにとっての”ドラえもん”になる。保育者の魅力とすばらしさ

    新型コロナウィルスの流行により、保育現場でも子どもを取り巻く状況が一変しました。その影響は学生さんにも及び、園見学や実習を中止する養成校も多くあったようです。こうした状況下で、自分に合った就職先選びができない、保育者になるべきかどうか悩むという方も増えたのではないでしょうか。


    井桁容子先生へのインタビュー前編では、保育者を志した経緯や求められる専門性についてお聞きしました。今回の後編は、働く園を見極めるポイントや、井桁先生が保育現場で体験されたエピソードを掘り下げていきます。あわせて、40年以上の保育経験を持つ井桁先生が贈る、未来の保育士さんへ向けたメッセージもお届けします。


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    子どもと先生の「表情」が園選びのカギ


    ー保育士の存在が必要とされるいま、保育士や幼稚園教諭を目指して実習や園見学を予定している学生さんも多くいると思います。大事なことや見ておくべきポイントがあれば教えてください。


    園を見るうえでのポイントですが、


    1つ目は、子どもたちの表情です。明るさや伸び伸びした感じがあるか?ということを見てほしいと思います。
    なぜなら保育者の関わりが、指示や命令や否定的な言葉が多いと子どもの表情は固いからです。



    それは、園で働く職員にも言えることなので、子どもも大人も柔らかい表情をしていて、自然な笑顔が見られる園かどうかが目安になると思います。



    笑顔で絵本を見る子ども

    milatas/shutterstock.com



    2つ目は、保育園でのアルバイトや実習先で見たり経験したりしたことに、惑わされないでほしいということです。



    特にアルバイト経験のある学生さんの場合、子どもを見るのではなく、保育雑務を頼まれることが多いために、「早く終わらせよう」「要領よく片付けてしまおう」といった仕事の姿勢が身につきやすくなりがちなんです。


    そうすると、仕事としてのテクニックを覚えたりするのを優先してしまって、純粋に子どもを見るということや、保育者としてのあるべき姿勢を意識することを忘れてしまうことが多いんですよね。



    本来保育者は、物言えない子どもの代弁者としての役割があります。


    しかし、作業効率を優先し始めると、いつのまにか、子どもを見ることに努力するのではなく、周囲の人の顔色を伺い、その場に生き残ることを考えて、つらくなってしまう人も出てきます。



    そういう意味では、言葉にならない子どもたちの思いを汲み取る「代弁者」であることに使命感を持てるようになると、保育の楽しさややりがいを感じられるようになります。


    これは長く働き続けるうえでも、質の高い保育者でいるためにも非常に大切な心がけになると思います。

    「ドラえもん」として子どものそばにいる。保育者のすばらしさ

    保育士に金メダルをかける子ども

    yamasan0708/shutterstock.com



    ー現役時代、保育士の仕事の面白さや素晴らしさを実感したエピソードがあれば教えてください。



    オリンピックにちなんだお話として思い出したエピソードです。


    わたしが2歳児クラスの担任をしていたときにちょうどオリンピックが開催されていました。
    お友だちにやさしくできたり、面白いことを思いついたりした子どもに、「ありがとう」「素晴らしいね」と言って、子どもの首に金メダルをかける真似をする遊びをしていたんですね。



    そしたらある日、一人の女の子から「容子先生にメダルをあげる!」と言われて。


    「ありがとう!どんなメダル?」と聞くと、その子はわたしがいつもしていたように賞状を読む仕草をしながら、「あなたはいつも笑顔が素敵なので金メダルあげます!」と言われたんです。2歳の子どもに。



    ものすごく驚いたのと同時に、「ご飯を食べさせてくれるから」「抱っこしてくれるから」というような”お世話をすること”に対してではなく、わたしの人間性を見て金メダルをくれているというその子の感性にとても感動して涙がでました。



    笑った子ども

    MIAStudio/shutterstock.com



    それともうひとつ、お昼ごはんのときの話です。


    わたしの園では、子どもたちが一斉にご飯を食べるのではなく、食べたくなった子から順次というスタイルなのですが、わたしが前の活動の片づけを終えてテーブルにつこうとしときに、手元にあったカラーペンがたくさん入った入れ物を落としてしまい、部屋中に散らかしてしまったんです。



    「せっかく片付けて、落ち着いたところなのに、また子どもたちが落ち着かなくなってしまう」と残念で泣きそうになっていたら、既にテーブルについて食べ始めていた子どもたちが手を止めて、2歳児の子どもたちがみんなで、散らばったペンを何も言わずに拾い集めてくれて…。 「容子先生泣かなくていいよ」と言ってくれたんです。



    子どもたちに救われたエピソードは山ほどあるけれど、このとき改めて「どれだけ子どもたちに助けてもらっているんだろう」「絶対にこの人たちを裏切ってはいけない」と思いましたね。



    給食を食べながら話す子ども

    milatas/shutterstock.com



    そのあとも、食卓についてみんなでごはんを食べていたら一人の子が「ご飯が食べ終わったらドラえもんごっこしない?」と言い出したんですよ。


    「じゃあ〇〇ちゃんはしずかちゃんね」「〇〇くんはジャイアンね」と、役を振り分けているのをわたしは黙って聞いていたのですが、最後まで出てこない人がいました。



    わたしが、「あれ大事な人がいないよ。ドラえもんがいないんじゃない?」と子どもたちに問いかけると、「ドラえもんは容子先生だよ!」と答えてくれたんです。


    「先生はペンを散らかしたり、失敗したりすることがあるからドラえもんじゃなくてのび太君だと思うな」と言っても、「違う!先生はドラえもんだよ」と言ってくれたんですね。



    わたしはこの日をきっかけに、子どもたちにとってのドラえもんになろうと決めました。
    のび太くんにとってドラえもんが「困ったときに必ず助けてくれる存在」であるように、わたしも保育者としてはもちろん、困った人たちを本気で助けるドラえもんになろうと心に決めました。



    抱きしめ合う保育士と子ども

    chaponta/shutterstock.com



    ー2歳という小さな子どもであっても、井桁先生のことをよく見て、子どもたちなりに助けているのがよく伝わってきますね。



    0歳、1歳、2歳って赤ちゃん扱いされやすいんですけれど、一人の人間として自分を大切にしてくれる保育者や大人に出会うと、素敵な人間であることを表現してくれます。



    大人になると、目先のことについつい捉われてしまいがちです。その感覚のままで子どもと接すると、 効率や成果が気になり、子どもを見る目が濁ってしまうんです。


    ですから、子どもたちから”学ぶ姿勢”を持つことが大事。そうすることで、やっと一人前の保育者、大人になれるのだと思います。



    加えていえば、子どものころの自分が持っていた”素直さや純粋さ”大好きだったことを思い出して、もう一度見直して、改めて自分に身に着けることができれば、自然に子どもたちの心に近づくことができるでしょう。


    どんなにすばらしい保育者と言われる人でも、子どもの気持ちを100%分かるということは、できません。大切なのは、分かろうとし続けることなんです。

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    失敗を認めて学びに変えられる保育者に

    苗を持った子ども

    narikan/shutterstock.com



    ー井桁先生にとって保育士の仕事を一言で表すとどんなものですか?



    生きていることを面白いと思える仕事」だと思います。


    失敗したり悩んだり、子どもとのかかわりに困ったりしても、あとから振り返ったときに面白い経験だったなと学びに変えることができるお得感のある仕事だと。



    もちろん、命にかかわるような失敗は絶対にしてはいけないけれど、それ以外の失敗は、「これで一つ学ぶことができた」と心がけていけば自分にとっての”栄養”に変わっていきます。


    子どもたちとの日々は、一期一会です。似ていることはあっても、同じことは二度と起こりません。



    だから、今を大切に生きていること、面白がることにつながり、子どもを育てるというよりもいつの間にか自分が「子どもに育ててもらっている」ということに気づきます。保育者はそういう意味でほんとうに素晴らしい仕事だと思いますね。



    ー最後に、現役の保育士・幼稚園教諭・保育教諭の方々や、保育者を志す学生さんに伝えたいメッセージをお願いします。



    「自分らしさを大事にする」ということを一番伝えたいですね。


    成果や結果で評価され、比べられて育った世代は、自分を肯定できない人が多いので、それは間違った教育観だったと気付いて欲しいです。同じ間違いをしないようにするためにも、自分らしさを大切にしてほしいと思います。



    もう一つ大事なこととして、出来栄えや失敗を恐れないということ。


    常に「失敗は次に活かす」という心構えで、子どもも保育者としての自分自身も育て急がず、ゆっくりと育むことを大事にしてほしいです。



    本当の意味で「自立した人」、「有能な保育者」というのは、失敗しない人ではなく、うまくいかないとき、失敗したときに誰かに”助けて”と言える人なんです。


    それは、できると思い込んだりできるふりをしたりしても、結局は周りの人には伝わってしまうんです。
    それよりは、失敗をしたら素直に「助けて」「教えてください」と言える人こそが、信頼され、助けてもらうことで学び、いい仕事に結びつくということです。



    笑った子どもと保育士

    metamorworks /shutterstock.com



    わたしたち人間は誰もが、歩くのだって食べるのだって、話すのだってみんな失敗しながら上手になったんです。だから、うまくいかないことがあって当たり前。保育者もいっしょですよ。


    これからの人生、うまくいかないことも、思い通りにいかないこともあるかもしれないけれど、失敗を「経験できてよかった」という学びに変えて、それを自分の栄養として、自分の魅力にしていってほしいと思います。



    【後編・終】

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    井桁容子先生プロフィール

    井桁容子(いげたようこ)先生。福島県いわき市出身。1976年4月に東京家政大学短期大学部に入学し、2018年3月までの42年間、東京家政大学ナースリールームに勤務。


    2018年4月~現在、非営利団体コドモノミカタ代表理事を務める。保育者研修や大学等での特別講師など、講師・講演のほか、「保育でつむぐ子どもと親のいい関係」「0・1・2歳児のココロを読みとく 保育のまなざし」などの著者としても活動。さらに、Eテレ「すくすく子育て」や「ホンマでっかTV」「ノンストップ」等のコメンテーターとしても活躍中。



    <取材・執筆> 保育士バンク!編集部



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