「子どもになめられな」と根っこが同じ「コントロールする保育」
前々回から「なめられない保育」について見てきました。今回のテーマは、一見そこまで威圧的な保育には見えないけれども、その根っこには同じものが流れている大人が子どもを「コントロールする保育」です。
前回までに書いた通り、園の保育者の大半が「子どもになめられるな」とばかりに威圧の保育を日常的に展開していると、それに違和感を感じなくなってしまいます。また、威圧や支配の保育をしていると、職員や保護者からも「優しさがない」「いつもイライラしている」という違和感を覚えやすくもあります。
そこで、威圧的な保育は避けるようにしている、という現場も少なくありません。しかし、保育の理解の仕方によっては、威圧の保育ではないものの、本当に子どものためにはなっていない不適切な保育になってしまっている、ということもよくあるのです。
それが今回のテーマである「子どもをコントロールする保育」です。
「子どもをコントロールする保育」とは?
例えば、トイレに行くことを渋る2歳児に
「トイレで○○(キャラクターのシールが貼ってある)が待ってるよ~。早く来て欲しいなって言ってたよ~」と、声をかけて子どもを誘導するのは、多くの保育園現場で見かけませんか?
こういった関わりが、子どもの個性や子どもの状況により必要な場合がある可能性は否定しません。
しかしこれは、子どもが自主的にトイレに行く、行きたい、という気持ちを奪っていることに他なりません。大人が子どもをコントロールしてしまっているのです。
このように子どもをコントロールすることを当たり前と思って、こうしたやり方を多用して保育を組み立ててしまうことは、専門性のある保育とは言いがたいのです。
似たような子どもをコントロールする関わりとしては、「脅し」「釣り」「おだて」「作為的な褒め」「疎外」などがあります。
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「脅し、釣り、おだて、作為的な褒め、疎外」はコントロールの保育
ここでの「脅し」は「そんなところでごねているとオバケが来るよ」などの、コントロールのための脅しのこと。(世間一般でも大人が子どもに、「お巡りさんが来る」「お店の人に怒られる」「お父さんに怒ってもらう」といった、子どもをコントロールする脅しが頻繁に使われているのを目にしていることでしょう)。
同様に、
「釣り」は「○○したら△△できるよ(あげるよ)」など、交換条件を持ち出すもの。
「おだて」は「(まだできてもいないのに)わ~、○○ちゃんえらいな~」とおだててやらせるようなアプローチ。
「作為的な褒め」は、「ほうれん草食べられたら、お姉さんだな~」など。
「疎外」とは、集団からの仲間はずれにすることを示唆することで、子どもを思い通りに動かそうとすることです。「言うことを聞かないと置いていきますよ」「そんなことでごねるのなら赤ちゃん組にいきなさい」「他の子はできているのになー・・・・・・」など。
繰り返しになりますが、個々の子どもの状況や保育の環境などによっては、こういった関わりが時として必要なケースがあるかもしれません(疎外をのぞく)。しかし、それで子どもが大人の思い通りに動くからといって、そこで満足しては、プロの保育者とは言えません。
(※「疎外」は子どもを傷つけ、大人への信頼を大きく損ねるので、保育上のどんな場面でも使うべきではない)
これらのことは一般的な子育てのなかでは、当たり前のように使われている手法です。保育者であるあなた自身もそういった関わりを、子ども時代に大人から受けたことがあるかもしれません。しかし、それは残念ながら子どもに関わる際の適切な方法ではありません。こうしたかかわりは、支配や威圧を使う「なめられるな保育」と一見対極のようにみえます。ただ実は、そうした威圧的な保育を「やさしさ風味」でくるんだ、同じものでしかないのです。子どもをコントロールするのを、上からの威圧ではなく、下手に出ることでトゲのないような関わりに見せているにすぎません。
上からの「支配・威圧」。下からの「管理・コントロール」。
これらのどちらにも欠けているのが、子どもの「自主性・主体性・自発性」です。
自主性・主体性の視点を持とう
最初の例に戻ります。「○○のキャラクターがいるからトイレに行った」というのは、子ども自身の本当の成長になっているでしょうか?
このように指摘されて考えれば、それは大人にコントロールされた結果にすぎないというのが容易にわかるかと思います。そこには、子どもの「自主性」も「主体性」も「自発性」もないのです。
これでは、その子自身の成長と言うことはできません。
そこにあるのは、「トイレに行かせたいから行かせた」という保育者の自己満足のみです。なので、このようなアプローチは、プロによる専門的な保育ではないわけです。
それはあえて言うならば「子どもにどう関わっていいかわからない一般人による、子どもを思い通りにするテクニック」と言ったものです。
保育のなかで多用すべきことではありません。
保育士は、子どもの成長を見守り、導くプロです。保育士としての専門性は、「自主性・主体性」の視点を踏まえた保育の中にあります。次回はそれについてみていきます。
プロフィール
保育士おとーちゃん(須賀義一)
1974年生まれ。大学卒業後、男性としてはまだ珍しかった保育士(当時は保父)資格を取得する。
2009年、保育士としての経験などを元にブログ『保育士おとーちゃんの子育て日記』を開設。
現代の子育てに合った具体的な関わり方を伝えつつ、多くの人からの子育ての悩み相談にも応える。
著書に『保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」』『保育士おとーちゃんの「心がラクになる子育て」』(ともにPHP研究所)など。
東京都江戸川区出身、墨田区在住。一男一女の父親。