毎日の保育の中で、同僚とのコミュニケーションがうまくいかずモヤモヤしたり、「本当にこのままでいいのだろうか…」「私は保育士に向いていないのではないか…」とキャリアや人間関係に悩んだりすることはありませんか?
こうした人間関係や自己肯定感の低さによるストレスは、保育士さんが抱えやすい代表的な悩みのひとつです。
そこで今回は、特別ゲストらいおん先生🦁から“自分らしく働く”ために欠かせない「自己理解」についてお話を伺いながら、具体的な方法や日常ですぐに取り入れられるワークを紹介します。
自分を深く知ることが、職場の人間関係の改善や自分らしく働くきっかけを見つけるヒントになるかもしれません。ぜひ最後までご覧ください。
プロフィール
らいおん先生🦁
Instagramフォロワー数:8万人
その他の活動: SNSでの発信、自己理解に関わる講座など多岐にわたる活躍
経歴
2009年4月〜2023年3月 フルタイム保育士として活躍
2022年 Instagramを通じて保育士さんに製作アイデアを発信
2023年 保育士向けのインスタ運用講師として多くの保育系インフルエンサーを輩出
2024年 保育士や悩みを抱える方々に向けて「人間力の向上」「自己理解の大切さ」について発信
人間関係で不満を持っている保育士さんは多い!
人間関係に悩んでいる保育士さんって、本当に多いんですよね。
これは保育士に限らず、どんな職場でも起こりうることなんですが、保育の現場って特にチームワークが求められるし、関わる人も子ども・保護者・同僚・上司ととても多い。
だからこそ、ちょっとしたすれ違いが積み重なると、強いストレスになってしまうんです。しかも人間関係の悩みって、年齢や立場が変わってもついてまわるもの。学生のときは友人関係、社会人になると職場、結婚すれば家族や義実家、子どもができたらママ友や保護者との関係…と、ライフステージにあわせてずっと続いていくんです。
だから、どこかに転職したら解決するというよりも、「どう自分が向き合っていくか」という考えを持つことがまずは必要だと思っています。
保育士さんが抱えやすい悩み
フォロワーさんである保育士さんからよく聞く悩みは、人間関係とキャリアが多いです。この2つはセットで出てくることが多いですね。
私自身も保育士として現場で働いてきましたが、やっぱり職場の雰囲気はすごく影響されます。自分の意見が言いづらい、空気を読んで行動しないといけない、でも読んだところで正解がない……。そんな状況が続くと、どんどんしんどくなってしまうんですよね。
毎日誰かと一緒に動く仕事だからこそ、自分の思いやペースを大切にするのが難しくて、気づかないうちに無理してしまう人が多いです。
また、キャリアの悩みも本当に多いです。特に、自分のライフステージが変わり、結婚や子育てをするようになった時に直面することが多い。
私も経験しましたが「子どもが好き」で保育士になったはずなのに、自分の子どもよりも、園児に時間をかけている割合の方が多い葛藤に直面しやすいです。本当はもっと自分の子どもと過ごしたいのに、朝も夜もバタバタで、子どもと向き合えていないと感じてしまったり。
しかも、保育士ってテレワークやフレックスといった柔軟な働き方が難しい職業。だからこそ、働きたくても働けない、復帰したくても条件が合わない……そんな風に、仕事と家庭の間で揺れてしまう方もたくさんいます。「このままでいいのかな?」「転職したいけど、保育士以外に何ができるんだろう?」って、立ち止まってしまうんですよね。
悩みの原因は自己肯定感の低さかも?
私は、「保育士さんって、自己肯定感が低くなりやすい職業」だと思っていて。その理由のひとつが、“やさしさ”なんです。
保育士さんって、人にやさしくできる人が多いです。子どもにも、保護者にも、同僚にも。周りの様子をよく見て、困っている人がいたらサッと手を差し伸べて……そうやって「誰かのために」動くことが当たり前になっている人が多いんですよね。
でもそのやさしさが、ときには自分を追い詰めてしまうこともある。たとえば、「みんな頑張ってるから、自分だけ弱音を吐いたらダメなんじゃないか」「こんなこと思っちゃう私はわがままなんじゃないか」って、どんどん自分の気持ちにフタをしてしまうんです。自分のことより、誰かのために頑張ることが習慣になっているため、自分に目を向ける時間がすごく少なくなってしまいます。
それに、他の先生と比べて「私はあの人みたいにできてない」と落ち込んだり、誰かからの評価で自分の価値を決めてしまったりすることもあります。そうやって自分を責め続けていると、どれだけ頑張っても「まだ足りない」「私なんて…」という気持ちが残ってしまって、いつまで経っても満足感が得られず、自分を追い込んでしまうことになってしまうんです。
だからこそ、自分自身を大切にすること、自分の声に耳を傾けることが本当に大切。誰かのために頑張ることも素敵だけど、同じくらい“自分のために”頑張っていい。そう思えるようになることが、保育士としても、一人の人としても、健やかに働き続ける第一歩なんじゃないかなと思います。
「自分らしく働くために必要なこと」とは?
“自分らしさ”とは、自分の考え方や行動のクセに気づいて、無理をせずにいられる状態のことだと考えています。そのためにはまず“自己理解”が必要です。
たとえば、「どうして私はいつも自分と他人を比べて落ち込んでしまうんだろう?」とか、「なんでこんなに自分を責めてしまうんだろう?」って思うことって、ありますよね。こういう“思考のクセ”って、実は性格ではなくて、過去の体験から根付いていることが多いんです。
たとえば、昔「頼まれごとを断ったら人間関係が悪化してしまった」っていう経験があると、「断ったらいけないんだ」っていう価値観ができてしまう。それが大人になってからも無意識のうちに影響して、頼まれると断れないっていう行動パターンにつながるんですよね。
人って、自分を守るために無意識でいろんな判断をしています。そうした“自然にやっていること”は、実は潜在的な行動だったりします。だからこそ、自分の思考や行動のクセを一度洗い出して、自分の傾向に気づくことが、自己理解の第一歩になるんです。
そして大事なのは、「その価値観は過去の体験が作り出したもの」だと知ること。子どものころの経験や、傷ついた出来事が、今の考え方の土台になっていることって本当に多いんです。でも、今の自分はもうそのときと同じ状況にいるわけじゃない。だからこそ、一歩引いて、俯瞰して、自分を他人のように見つめてあげる視点がとても大切です。
自己理解は、すべての悩みが魔法みたいに解決するわけじゃないんです。でも、「自分が今こう考えてしまうのは、あの時の過去の体験が影響してしまっているんだな」って気づけると、それが悩みを解決するためのヒントになります。
たとえば、職場の人間関係で悩んでいるとき、「私は人の目を気にしすぎる傾向があるな」って気づけば、「実際今の環境で誰かに否定された事実はあるのか?(事実=実際に起きたこと)」「他人からどう思われるのかが怖い(解釈=自分の感情や思い込み)」と、事実と解釈を切り離して考えて、事実ではないことを恐れずに「ではどういう関わり方なら自分らしくいられるかな?」と次のステップに進めます。
また、自分の過去の経験や、どんな努力をしてきたかを振り返ってみることもおすすめです。どんな些細なことでもよくて「ゲームを最後まであきらめずにクリアした」「部活のキャプテンとして目標に向かい仲間を励まし続けた」とかでも、それは“粘り強さ”や“リーダーシップ力”いう立派な得意なことだったりします。そうやって自分の得意を見つけていくと、「どんな環境ならその得意が活かせるかな?」って考えられるようになって、キャリアの選択肢も広がっていきます。
自分の得意を活かせる環境、自分の価値観が大事にされる職場を選ぶことで、転職するときの判断軸も変わってきますよね。なんとなく条件だけで選んでしまうとミスマッチが起こりやすいけど、「私はアクティブに動いて子どもたちと遊ぶのが得意で、さまざまな経験をしたり達成感を築き上げることを大切にしたいから、家庭的で落ち着いた保育園よりも行事や活動の多い場所が合いそう!」と理解することで、やりがいを感じられる職場に出会える確率も高くなります。
「自己理解」を深めるためには何をすればいい?
思考のクセを変える
「自分の思考のクセに気づくこと」は、自己理解を深めるうえでとても大切です。思考のクセは、先程お伝えしたとおり長年の経験から根付いた“反射的な思考”です。
たとえば、「また嫌われたらどうしよう」と考えてしまうクセがある人は、きっと過去に“否定された”経験があるのかもしれません。それが心に残っているからこそ、人と関わるたびに無意識で身構えてしまう。そうやって、自分を守ろうとする反応が今の行動に現れているんですよね。
でも、その反応をするのは今の自分ではなく過去の自分の経験の1つです。大切なのは、「今はもうあのときの自分じゃない」と気づいてあげること。
そして、同じ状況に直面したときに、今までと違う選択をあえてしてみること。たとえば、いつもは「無理です」と言えなかった場面で、「一度考えてからお返事してもいいですか?」と伝えてみる。それだけでも、自分の思考に変化を起こす第一歩になります。
いきなり考え方をガラッと変えるのは難しいので、最初は“思い込む”ことから始めてもいいと思います。「断っても決して嫌われることではないんだ」と自分に言い聞かせるところから。自分に置き換えて考えた時に、伝え方さえ気をつければそのくらいのことで相手のことを嫌いになることなかなかありませんよね。それを習慣にしていくうちに、少しずつ考え方や行動が変わっていきます。
そして、違う行動をとってみたことで「うまくいった」という成功体験が得られたら、それがまた自信になって、自己肯定感にもつながっていくんです。
反対に、「うまくいかなかったな」と思っても、それは次にどうするかを考える材料になる。少しずつでも、自分で試していくことで、悩んでいた状況から抜け出すためのヒントが得られるようになります。
何かを変えるためには、何かを“変えてみる”ことが必要です。悩み続けるだけでは、状況は変わりません。まずは、できるところから自分のペースで始めてみてください。
自分を知るためのワーク
自己理解を深めたい、自分を変えてみたい—そんな想いを持っている保育士さんに向けて、まず取り組んでみてほしいのが「自分の内側を言語化する」ことです。
今回は、ワークを3つ特別にご紹介します。以下のワークはダウンロードができるので、ぜひ手元に用意して、ゆっくりと時間をとって試してみてください。
好き・得意・大事 発見ワーク
自分の「価値観」や「強み」を言葉にすることで、自己理解がぐっと深まります。テーマを一つ決めて、次の3つの項目を書き出してみてください。
・自分の「理想の保育スタイル」が分かる
→ 「自分は〇〇な保育がしたい」と明確になる
・「この園で働き続けるべきか?」のヒントが得られる
→ 「私の大事にしていることと、職場のやり方が合っている?」
・得意なことをもっと活かすヒントが見つかる
→ 「自分の強みを仕事でどう活かせるか?」
【テーマ例:保育士としての自分】
- 好きなことを3つ書く
• 子どもとじっくり向き合う時間が好き
• 製作あそびが好き
• 子どもの笑顔を見ることが好き など - 得意なことを3つ書く
• 小さな変化に気づいて声をかけてあげられる
• 保護者対応が得意(※なぜ得意か?の深掘りも大切。「緊張している保護者の気持ちに寄り添える」など)
• 壁面づくりや装飾など製作が得意 - 大事にしていることを3つ書く
• 一人ひとりに丁寧に関わること
• チームで協力すること
• 子どもの「やりたい」を尊重すること
書き出した後は、それぞれの項目を見比べてみましょう。言葉の中に、共通するキーワードや価値観が見えてくるはずです。
たとえば「一人ひとりと丁寧に関わりたい」「小さな変化に気づける」などが重なっていたら、自分は“個を大切にした保育”をしたいんだな、という気づきにつながります。
それが、今後の職場選びや働き方を考えるヒントにもなるんです。
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※個人利用以外での使用はお控えください。
スリーグッドシングス
次におすすめしたいのは「スリーグッドシングス」。
これは、夜寝る前に“今日あった良かったこと”を3つ書くという、とてもシンプルな習慣です。
・1日をハッピーでポジティブな気持ちで終えられる
・小さな幸せに向き合えるようになる
・ストレスやネガティブな気持ちを軽減できる
- 今日のできごとの中から、ポジティブなことを3つ書く
(例:子どもにありがとうって言われた、お弁当がおいしくできた、同僚とゆっくり話せた) - 毎晩寝る前に続ける
夜はどうしても自己肯定感が下がりやすい時間帯なので、意識して“いいこと”を思い出すことで、自分の中に前向きな視点を育てることができます。
これは一人でももちろん、ご家族と一緒に実践するのもおすすめです。「今日はどんないいことがあった?」と声を掛け合うだけでも、気持ちがほっと温かくなりますよ。
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モヤモヤ解決シート
最後にモヤモヤ解決シートを紹介します。自分が今持っている負の感情を書き出すことにより対処方法を見つけやすくなります。
・モヤモヤの「本当の原因」が分かる
→ 「あの人が嫌!」ではなく、「私は〇〇を大切にしたいからモヤモヤしてる」と気づける
・自分の大切にしている価値観が見えてくる
→ 「私は“頑張りを認められること”を大事にしている」など、自己理解が深まる
・感情に振り回されず、冷静に対処できるようになる
→ 「ただイライラする」より、「次はこうしよう」と前向きになれる
- 自分の悩み・モヤモヤしていることを書き出す
- なぜモヤモヤしたのか原因について書き出す
- 自分の思考の癖の傾向について考える
- 悩みは思考の癖を変えたら解決するか考える
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まとめ :「自己理解」は自分の未来をつくる力
自己理解を深めたからといって、すぐに何かが大きく変わるわけではありません。でも、自分の考えや価値観に気づくことで、「じゃあ自分はこれからどう行動しよう?」「どんな選択をしよう?」と、自分で選べるようになるんです。その“選べる感覚”こそが、人生を少しずつ生きやすくしてくれるものだと思います。
もし今、自分に自信がなかったり、日々の中でモヤモヤしたりしている方がいたらまずは「自分を知ること」から始めてみてください。
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