保育士が不足していると言われている昨今、その原因はお給料の低さや残業の多さなど、待遇面にあることも多いようです。保育士の場合、どの保育園に勤めるかによって、かなり条件や環境が左右されます。「現状がなかなか改善されない」「今より良い待遇の職場を見つけたい」と思ったときには、思い切って他の園への転職が必要になります。
今回のコラムでは、待遇アップを目指すための転職のコツをご紹介していきます。
保育士は「離職率が高い」のウソ・ホント
子どもに聞く「将来の夢ランキング」では、毎年上位に入る保育士。
かわいい子どもたちとふれ合え、間近で成長を見守れるというやりがいのあるい職業ですが、「離職率が高いお仕事」というイメージがあるのではないでしょうか。
2015年の調査によると、保育士の離職率は就職して2年未満で14.9%、全体で10.3%この年の全産業の離職率が11.8%。結婚や子育てなどでの退職が未だに多い女性だけに限ると、全産業で17.7%。ほかの職業と比べると、実は保育士の離職率は低いというのが実情です。
保育士が足りないのは、辞めたら保育業界にかえってこない=潜在保育士の多さ
それではなぜ保育士が足りなくなるのかというと、一度保育士をやめた人が保育業界になかなか戻ってこない、という点にあると考えられます。
2013年度、全国の保育所等で働く保育士は41万人いました。それに対し、資格はあるものの保育現場を離れている「潜在保育士」は70万人以上もいたのです。
その原因はどこにあるのでしょうか?
出典:「厚生労働省/保育士等確保対策検討会「保育士等における現状」/平成27年」
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/s.1_3.pdf
「厚生労働省/雇用動向調査/平成27年」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/16-2/dl/gaikyou.pdf
お給料が安い?
保育士のお給料が安すぎることが、近年話題になりました。その中でも、残業代が出ない、「サービス残業」が慣例になっている保育園も少なくありません。求人票では保育園の開園時間のみを表示して、実際には夜遅くまで事務作業やイベントの準備に追われる、しかもその分の残業代は出ない、ということでは、モチベーションを維持するのは難しいですよね。
また、月給として提示されている金額に、「見込み残業代」として残業代が含まれている場合もあります。この場合、残業をしてもお給料は上がりません。求人票を見るだけではわからないことも多いので、面接などで確認してみると良いでしょう。
休みが取りにくい
小規模の保育園はギリギリの人数で運営していることも多く、なかなか休みが取りづらいのが現実です。しかし、有給休暇や産休・育休は、労働者に与えられた当然の権利です。保育士もまた労働者。忙しい時期は仕方ないかもしれませんが、平常時にはある程度自由に有給を取りたいですよね。
そのため、「有休取得率」「有給消化率」を面接時にたずねてみるのもよいですね。直接聞きにくい場合は、保育士専門の人材紹介サービスを活用し、キャリアアドバイザーにお願いしましょう。あとから後悔するよりも、懸念事項は先に無くしておいたほうが安心です。
福利厚生が整っていない
公立保育園に採用された場合には、公務員並みの手厚い福利厚生が期待できます。
その一方、認可外など一部の私立保育園では、年金や保険といった福利厚生が完備されていない場合があるので注意が必要です。社保に入らず、国民年金や国民健康保険料を自分で支払うとなると、給料の手取りも13~15万円まで減ってしまいます。
このような事態を避けるため、応募前に求人票をしっかり確認しましょう。「社会保険完備」と書いてあれば、保険料等の心配は要りません。
条件をよく確認してから応募しよう
このように、保育士として働く人が不足しているのには、さまざまな理由が考えられますが、その多くは就業前に求人票をよく読めば回避することにつながります。
ポイントは「残業の実態」「有給取得率」「社保などの福利厚生」を確認し、納得できるお給料の園を選ぶこと!
不安な点はキャリアアドバイザーを経由して確認したり、面接でそれとなく聞いてみましょう。
保育士の転職の流れを詳しく説明。中途保育士転職マニュアル
保育士という働き方は続けたい。でも今の保育現場は厳しい…そんな時は、園を変えるという決断も必要になってきます。とはいえ、就職活動と一口に言っても、新卒と中途採用では、流れに大きな違いがあります。保育士の中途採用の流れはどういうものか、いっしょに見ていきましょう。
採用枠・注目ポイントの違い
中途採用の場合は求職者が現役で働いていることが多いため、応募受付をしてから、その都度入社時期や採用枠を調整をしていくパターンが多いでしょう。
面接官が採用で注目するポイントも違います。人柄や社会人としての常識、清潔感などは新卒同様に見られるのですが、それに加え、コミュニケーション能力はもちろんのこと、今までの経験や知識能力が注目されるでしょう。採用基準が違うので、新卒の頃と同じ心構えではいけません。
選考フロー、採用時期も新卒とは異なる
選考の流れも新卒とは違いがあります。筆記試験や実技試験の実施内容が違っていたり、面接のみの場合もあります。だからと言って、楽に内定を獲得できるわけではありません。
また、採用時期も、4月など年度の切り替えの時期とは限りません。現職者の退職スケジュールや事業所の職員体制の関係で、年度の途中に入職することも多々あります。中途採用は、即戦力として採用される場合が多いので、内定後すぐに入職となります。そのため、事前研修ではなく、現場でのOJTでの対応となることが多いでしょう。
就活スケジュールはシンプルだが、忙しい
中途採用の選考スケジュールはシンプルですが、現職がある場合、退職の手続きも同時に進めていかなくてはなりません。
入職してから業務や環境等に不満を漏らすことがないように、自ら転職先について調べる姿勢が必要となります。情報収集には、各地で開催されている転職フェアの活用もオススメですよ。興味のある求人を見つけたら、その園のホームページや電話連絡先に積極的にコンタクトを取りましょう。
このように、中途採用は現職と就活の両立が必要になるため、何かと忙しいものです。そんな時には人材紹介サービスを活用してみると良いでしょう。条件に合った求人の紹介や選考の日程調整など、さまざまなサポートが受けられるため、スムーズに転職活動が進められます。転職は一般的にはなってきましたが、それでも人生の大きなターニングポイントです。だからこそ、妥協しないで情報収集に努めましょう。
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保育士の求人探し・転職の際に気をつけたいポイント
ここからは、たくさんある求人の中から、自分にピッタリ合った運命の職場を探すためのポイントをご説明していきます。
ポイント1 妥協せず、長く働けそうな職場を選ぶ
求人サイトを見ていると、たくさんの保育士求人が並んでいますね。保育士不足が社会問題となっている今、保育士資格を持っている方にとってはまさに売り手市場と言えます。それはつまり、妥協せずに働きたい職場を選べる立場だということ。目先の魅力だけでなく、5年後、10年後、さらにその先のことをしっかりと想像して、ここなら結婚や出産、引っ越しや子育てなど自分をめぐる環境が変わってもずっと長く働いていけると思えるような求人を選びましょう。
ポイント2 希望条件を具体化する
では、妥協せずに求人を選ぶにはどうしたらいいでしょうか?まずは自分自身と向き合ってみることをオススメします。職場にどんなことを求めているか、心に描いている理想像を具体化してみましょう。
・保育方針(のびのびしている・教育的な要素が多い、など)
・雇用形態(正社員かパートか)
・給与(月給または時給いくら以上)
・勤務時間(残業や休日に対する希望も)
・通勤時間(自宅から何分以内)
・福利厚生(保険・キャリアアップ・産休育休など)
・その他の希望
など、項目ごとに具体的な希望条件を紙に書き出して整理してみます。こうしておけば、求人票を見た時に自分の希望と合う・合わない、どこが合っていてどこが食い違うか、一目瞭然になり、効率よく絞り込むことができます。
ポイント3 優先順位を決めよう
次に大切なのは、その中で優先順位をつけることです。全ての希望条件がピッタリ当てはまる園があればそのまま応募すればいいですが、仮に見つからなかった場合でも、部分的に少し譲歩すれば大丈夫、というような求人はたくさん見つかるかと思います。
まずは前もって、妥協できる点と妥協できない点を整理しておきましょう。
具体的には、先ほど作った希望条件の各項目ごとに、
◎(絶対に譲れない)
☆(比較的重要だが少しは譲歩できる)
△(譲歩できる)
などで印をつけていきます。細かく振り分けるのが大変な場合は、絶対に譲れない点だけ決めておくというのでもいいかと思います。
ポイント4 面接で雰囲気をチェックする
実際に行ってみないとわからないのが「職場の雰囲気」です。いくら待遇が良くても職場の雰囲気が悪かったら気持ちよく働くことはできません。長く働くにあたって、職場の雰囲気はとても重要ですから、面接や見学に行く際はしっかりとチェックしましょう。
・勤務している保育士の表情や声掛けは生き生きしているか?
・保育士同士や、保育士と子どもたちの意思疎通は円滑で信頼関係が築けているか?
・保育士の年齢層がある程度高く勤続年数が長そうか?
・保育園の雰囲気や保育方針は自分と合いそうか?
などを意識してみてみると大体の雰囲気がわかると思います。
面接の場合はこちらが審査されている立場ということばかり考えて緊張してしまいがちですが、あくまでも採用側と応募者のマッチングの場に過ぎません。お見合いととらえて、自分も相手をチェックする気持ちでいきましょう。また、希望条件の中で妥協できない大切なことは面接でも改めて確認しておくと安心ですね。
公立・私立、保育施設ごとのお給料の実態
保育士は他の職業に比べて、お給料が安いというイメージがあると思いますが、その実態を見てみましょう。
まず、保育士の職場である保育施設には、公立と私立があります。
公立のお給料
公立の保育施設の場合、給料は地方公務員と同等の扱いになります。そのため、基本給も安すぎることはありません。賞与もきちんと出るので、年収も安定しているでしょう。内閣府の調査によれば、平均経験年数8.7年の20代~30代保育士の平均年収は約335.7万円です。産休や育休など、充実した福利厚生が利用できるので、長く働ける環境にあると言ます。
ただし、このような地方公務員としての待遇を受けることができるのは、公立保育施設の正社員のみで、非正規社員は待遇が異なることがほとんどです。また、国や市町村が運営主体となっているので、生活が困難になるほどの大幅な変更はないでしょうが、国の政策で待遇が変更になる可能性はあります。
私立のお給料
私立の保育施設の場合、園や運営母体によって待遇は大きく異なります。厚労省の調査によれば、平均経験年数8.8年の20代~30代保育士の平均年収は314.5万円ほど。公立と比べれば若干低く感じるかもしれませんが、近年、東京都をはじめ首都圏の保育士給与は大幅に上昇しています。新卒の初任給でも、月額20~23万円程度支給される園も多数あります。月収は低めでも賞与が4カ月分など、まとまった収入が得られる園もありますので、「私立保育園のお給料は安い」と思い込まず、幅広い選択肢の中からしっかりと求人情報をチェックしましょう。
出典:「内閣府/幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査/平成29年」
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_33/pdf/ref1-1.pdf
最後に お給料アップのための転職のコツは?
公立・私立を合わせた保育士全体の平均月収は約22万円、年収は約329.5万円 になります(2017年度・全国平均)。他の職業に比べると、まだ若干少なく感じますよね。では、年収をアップするには、どんな転職をすれば良いのでしょう?
ベビーシッターなど、高時給の仕事を探す
保育士といえば保育園で働くもの!という既成概念にとらわれず、ほかの働き方を模索してみるのも良いでしょう。
例えば、近年ニーズが高まっているベビーシッターの時給は平均して1000~1500円、会社や経験数によっては2000円以上の高時給で働くことも可能です。
週1日、数時間~でも自分の好きなペースで働けるので、ダブルワークとしてもオススメ。お世話をする人数は1~2人くらいなので、ゆとりを持ってじっくり子どもと関わることができますよ。
保育士バンク!から生まれた「KIDSNAシッター」
保育士の専門転職サービス「保育士バンク!」から生まれた「KIDSNAシッター」は、保育士・幼稚園教諭の資格を持つ方のみが登録できる、プロフェッショナルなベビーシッターサービスです。充実したサポート体制で、あなたの希望に合わせた働き方を応援します!
年収アップの転職には、人材紹介を活用する!
転職活動は、できれば採用斡旋を事業主体としている企業に相談しましょう。そういった企業の中には、一人ひとりにカウンセラーが付く手厚いサービスを行っている所も多数あります。親身な相談の他、給料アップの交渉もお願いできるでしょう。必ずしも反映されるとは言ませんが、交渉をしなければ確率はゼロですので、ぜひチャレンジしてください。
また、「保育士の専門転職サービスサイト」の中には、登録している人にのみ公開する、非公開求人というものもあります。一般的に登録は無料なので、転職を考えている場合は登録しましょう。求人量も多く、保育士希望者に対するフォローも充実しています。こういったサイトは、どんどん利用して、転職を成功させましょう。