公務員保育士とは、公立保育園で働く保育士さんを指します。公務員として勤務するため、給料や待遇面の安定性から人気があるようです。今回は、私立保育士との違いを挙げながら公務員保育士とは何かをくわしく解説します。また、公務員保育士になるにはどうすればよいのかや、働くメリット・デメリットなどもまとめました。
polkadot/stock.adobe.com
公務員保育士とは?
公務員保育士とは、地方自治体が運営する公立の保育園に勤務する保育士さんです。
自治体の採用試験に合格すればなることができるため、地方公務員でもあります。
待遇のよさから人気が高く、また年に1度しか採用試験が行われないため、公務員保育士になるのは難しいよう。
公務員保育士は正職員のほかに臨時職員での募集が多く、年度途中での退職者などの穴埋めとして通年で採用が行われているそうです。
公務員保育士と私立保育士との違い
では、公務員保育士とはどういった仕事なのかを見ていきましょう。ここでは、私立保育士との違いを比較しながら紹介します。
給料・待遇
内閣府の「令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報値>【修正版】」資料をもとに、役職ごとの給与月額(賞与込み)を以下にまとめました。
役職 | 公務員保育士の給与月額 | 私立保育士の給与月額 |
---|---|---|
園長 | 63万2982円 | 56万5895円 |
主任 | 56万1725円 | 42万2966円 |
一般保育士 | 30万3113円 | 30万1823円 |
一般保育士で見てみると、公務員保育士と私立保育士の月給はほとんど変わりありません。
しかし、園長や主任保育士などの役職に就くと月ごとの給料に大きな差があることがわかります。
転勤・異動の有無
Pixel-Shot/stock.adobe.com
公務員保育士と私立保育士では、異動の有無にも違いがあります。
公務員保育士は、2~4年ごとに異動があります。
採用された自治体内での異動になるため、市や県をまたいでの転勤が必要になることはありませんが、保育園以外にも児童福祉施設などへ異動する可能性があることに留意しておきましょう。
一方、私立保育士の場合は勤める園によって異動の有無が異なります。
全国で保育園を運営している株式会社などに勤めた場合は、定期的に異動があるケースもあるかもしれません。また、総合職保育士として採用された場合も数年単位での異動が伴うようです。
ただし、系列園がない保育園に勤めれば異動はなく、系列園がある場合でも希望しなければ異動を命じられることは少ないでしょう。
勤務時間
公務員保育士と私立保育士では、勤務時間にも違いがあります。
公立保育園では保育標準時間が明確に定められており、延長保育や休日保育に対応していないケースが多いよう。そのため、保育士さんの勤務時間はどの園でもほとんど同じになります。
一方私立保育園は運営元によって方針が異なるため、早朝や夜間の延長保育に対応していたり、休日保育を実施していたりすることが多いでしょう。
そのため、施設によっては勤務時間が長くなる可能性があります。
保育方針
akira_photo/stock.adobe.com
保育方針にも違いがあります。
公立保育園は自治体が定める保育方針に沿って運営されるため、同じ自治体内であればどこの園でも同じ保育方針のもと保育ができます。
しかし、私立保育園は運営元によって特色があるため、転職する場合はそれぞれの園のやり方に合わせていく必要があります。
福利厚生
公務員保育士は地方公務員の福利厚生を利用できます。
主な福利厚生として挙げられるのは、結婚祝金や退職金制度、人間ドックの補助などです。
一方、私立保育士が利用できる福利厚生は園によって異なります。
そのため、福利厚生を重視する場合は求人や園のホームページなどをチェックしておきましょう。
就職の流れ
公務員保育士と私立保育士は、就職や転職の流れも異なります。
公務員保育士になるには、各自治体が実施する採用試験に合格する必要があります。採用試験は1年に1度しか行われないため、転職する場合は事前に日程を把握して退職時期を見極めることが大切です。
一方私立保育士になるには、法人や園が実施する選考を受ける必要があります。
書類と面接の二段階で選考が行われるのが一般的で、中途であれば通年採用を行っている園も多いのが特徴です。
出典:令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報値>【修正版】/内閣府
簡単1分登録!転職相談
転職に関するご質問や情報収集だけでもかまいません。
まずはお気軽にご相談ください!
読んでおきたいおすすめ記事
保育士をサポート・支える仕事特集!異業種への転職も含めた多様な選択肢
保育士の経験を経て、これからは保育士のサポート役として働きたいという方はいませんか?責任の重い仕事だからこそ、人の優しさや支えが必要不可欠な仕事かもしれませんね。今回は、保育士さんをサポートする・支え...
在宅ワークで保育士資格を活かせる仕事とは?自宅でできる保育関係の仕事を徹底解説
通勤時間なく働ける在宅ワークをしたいと考えても「保育士は無理なんじゃないか……」とあきらめている方はいませんか?保育園の事務職や保育ママ、保育園業務のサポートなど、保育士の経験や資格を活かして自宅でで...
病院内保育とは。役割や仕事内容、病院内保育士として働くメリット
病院内保育とは、病院や医療施設の中、または隣接する場所に設置されている保育園のことです。保育園の形態のひとつであり、省略して院内保育と呼ばれることもあります。転職を考えている保育士さんの中には、病院内...
子ども・赤ちゃんと関わる仕事31選!資格の有無や保育士以外の仕事を関わる子どもの年齢別に紹介
子どもと関わる仕事というと主に保育園や幼稚園を思い浮かべますが、それ以外にも意外とたくさんあります!今回は赤ちゃんや子どもと関わる仕事31選を紹介!無資格で活躍できる職場もまとめました。子どもと携わる...
保育士を辞める!次の仕事は?キャリアを活かせるおすすめ転職先7選!転職事例も紹介
保育士を辞めたあとに次の仕事を探している方に向けて、資格や経験を活かせる仕事を紹介します。ベビーシッターなど子どもと関わる仕事はもちろん、一般企業での事務職や保育園運営会社での本社勤務といった道も選べ...
保育士から転職したい!転職先としておすすめの異業種22選。保育士以外の仕事やメリット・デメリットも
保育士以外から異業種への転職を考えている際、どのような転職先がおすすめなのでしょうか。今回は、次の仕事として保育士から転職しやすいおすすめの異業種22選を紹介します。保育士から異業種に転職するメリット...
保育園運営会社の仕事内容とは?本社勤務でも保育士資格は必要?働くメリットや求人事情まで
保育園運営会社にはどんな仕事があるのでしょうか?保育園運営会社で働くことは「本社勤務」とも呼ばれ、保育園の運営に携わる仕事として、主に一般企業に就職したい保育士さんにとって人気の高い職種のようです。今...
【2024年最新】保育士に人気の転職先ランキング!異業種や選ばれる職場を一挙公開
保育士の資格を活かして働ける人気の転職先をランキング形式で紹介!企業主導型保育園や病院内保育所、ベビーシッターなど保育士経験やスキルを活かせる職場はたくさんあります!今回は保育施設や異業種別に詳しく紹...
【完全版】保育士資格を活かせる仕事・働ける企業25選!
保育園で保育士として働くのが辛いと感じて、転職を考えているという方がいるかもしれません。しかし、せっかく取得した保育士資格を活かして働きたいですよね!保育士として得たスキルや経験は一般企業や福祉施設、...
【2024年最新版】幼稚園教諭免許は更新が必要?廃止の手続きや期限、対象者をわかりやすく解説
幼稚園教諭免許は更新が必要なのか、費用や手続き方法などを知りたい方もいるでしょう。今回は、2022年7月1日より廃止された教員免許更新制について詳しく、そしてわかりやすく紹介します。幼稚園教諭免許を更...
保育士は年度途中に退職してもいいの?理由の伝え方や挨拶例、再就職への影響
「年度途中で退職したい...けれど勇気が出ない」と悩む保育士さんはいませんか。クラス担任だったり、人手不足だったりすると、退職していいのか躊躇してしまうこともありますよね。そもそも年度途中で辞めるのは...
幼稚園教諭からの転職先特集!資格を活かせる魅力的な仕事18選
仕事量の多さや継続して働くことへの不安などを抱え、幼稚園教諭としての働き方を見直す方はいませんか。幼稚園教諭の転職を検討中の方に向けて、経験やスキルを活かせる18の職場を紹介します。保育系の仕事から一...
【2024年度】放課後児童支援員の給料はいくら?年代別の年収やこの先給与は上がるのかを解説
放課後児童クラブや児童館などで働く「放課後児童支援員」の平均給料はいくらなのでしょうか。別名「学童支援員」とも呼ばれ、「給与が低い」というイメージがあるようですが、国からの処遇改善制度などにより、これ...
保育士が働ける保育士以外の仕事21選。資格や経験を活かせるおすすめの就職先
保育園以外の職場に転職・就職先を探す保育士さんもいるでしょう。今回は企業内保育所や託児施設、児童福祉施設など、保育士さんが働ける保育園以外の職場を21施設紹介!自身の働き方や保育観を見つめ直し、勤務先...
- 同じカテゴリの記事一覧へ
公務員保育士として働くメリット・デメリット
milatas/stock.adobe.com
続いて、公務員保育士として働くメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット
給料が高め
公務員保育士として働くメリットとして、安定した給料をもらえることが挙げられます。
また先ほど紹介したように、年数を積むにつれて給料の額も上がっていき、しっかりと昇給できるシステムがあることが考えられます。
キャリアに応じて評価される仕組みがあり、経験年数が給料に反映されるのはうれしいポイントですね。
福利厚生が手厚い
福利厚生が手厚いのも公務員保育士として働くメリットと言えるでしょう。地方公務員の福利厚生が適用されるので、退職金制度や医療費補助、保養施設の利用補助などさまざまなサービスを受けられます。
また、多くの自治体では有給休暇が1年で20日付与されるようなので、休みが多いのもメリットと言えそうです。
デメリット
採用試験の競争率が高い
公務員保育士のデメリットとして、採用試験の競争率の高さが挙げられます。
通年採用が行われていないうえに正職員の採用人数が少ないため、公務員保育士になるのは狭き門のようです。
定期的に異動がある
転勤を避けたい保育士さんにとっては、定期的に異動があるのもデメリットと言えるかもしれません。
同じ区や市内での異動になるため引っ越しなどは必要ないかもしれませんが、一つの園で長く勤め続けたい方にとってはマイナスポイントとなるでしょう。
その一方で、「いろいろな園を見てみたい」「新しい環境に順応するのは得意」といった方は公務員保育士に向いているかもしれませんね。
公務員保育士になるには
kapinon/stock.adobe.com
先ほど説明した通り、公務員保育士になるには、各自治体が実施する採用試験に合格する必要があります。採用試験の流れや受験資格などをくわしく見ていきましょう。
採用試験~就職先決定までの流れ
採用試験の流れを以下にまとめました。
1.自治体の募集要項に申込み、一次試験を受験する
2.二次試験を受験し、合格すると地方公務員になる
3.採用候補者名簿へ登録後、施設側から採用希望があれば就職先が決定する
自治体によっては、試験の前に適性検査や面接を行うところもあるようです。
公務員保育士の採用試験の倍率はだいたい約2~5倍のようですが、自治体によっては10倍といった高倍率の市町村もあるようなので、難易度は高いと考えられます。
受験資格
公務員保育士を目指す場合、年齢の制限があることに注意しましょう。
基本的にはどの自治体もだいたい29歳~34歳までを上限としており、その他に
- 保育士登録簿に登録を受けている人
- または試験年度の3月までに保育士登録簿に登録を受ける見込みの人
といった条件が設定されているケースがほとんどです。
試験日程
公務員試験は一次試験と二次試験の二回に分けて実施されますが、自治体によって時期にばらつきがあります。
試験を受ける年度の4~5月頃から日程や試験内容が開示されるため、早めにチェックしておきましょう。
試験内容
One/stock.adobe.com
試験内容は、保育の専門知識や一般教養を問われる座学の試験はもちろん、保育実技の試験としてピアノの演奏をしたり、模擬保育を実施したりとさまざまです。
他にも、保育内容について話し合うグループワークや、小論文試験、面接なども行われるため、幅広い対策と模擬練習をしておく必要がありそうです。
募集要項にくわしい内容が記載されているため、自治体のホームページなどを確認してみてくださいね。
就職・転職における注意点
採用試験を受ける場合に注意したいのは、試験に合格した時点で就職先が決まるわけではない点です。
先ほど簡単に紹介しましたが、採用試験に合格すると、採用候補者名簿へ登録されます。
そして、施設から採用希望の申し出があってはじめて就職が決まります。
この採用候補者名簿への登録有効期限は1年間となっているので、その間に保育園から採用の申し出がないと、次年度に再び採用試験を受験する必要があるので注意しましょう。
公務員保育士になる前に、このような点を考慮したうえで、計画的に就職・転職活動を進めることが大切です。
公務員保育士の働き方を知って転職に役立てよう
今回は、公務員保育士とは何かを私立保育士との違いとともに紹介しました。
公務員保育士になるには採用試験に合格する必要があり、難易度が高いと言われています。しかし、給料や雇用の安定性、福利厚生の手厚さなどから人気が高いようです。
現在私立保育園に勤めている方は、公務員保育士になるメリットやデメリットなどを踏まえたうえで今後の転職活動の参考にしてみてくださいね。
保育士バンク!は、あなたにぴったりの職場を紹介する転職サポートを行っております。
- もう少し給料がアップすればなあ…
- 年間休日数が多い園がいい!
などあなたのご希望をお聞かせください。
転職相談や情報収集のみでもOKなので、まずは保育士バンク!に相談してみませんか?