保育士さんが苦しむ職業病の一つが「腰痛」。保育士は子どもを抱えたり、子どもの目線で話したりと腰痛になりやすい動きや要因が多い職業です。このコラムでは保育士がどんな時に腰痛になるのか、腰痛対策として気をつけるべきポイント、予防法などを紹介していきます。腰痛でお悩みの方は参考にしてみてくださいね。
腰痛持ちになりやすい保育士という職業
職業柄、保育士は腰痛になりやすいと言われています。保育士さんの身の回りにも腰痛持ちの方がいらっしゃることは多いのではないでしょうか。保育士さんが腰痛に苦しむ割合、どういう場面で腰痛を感じるのかまとめました。
どれくらいの割合で腰痛持ちの保育士がいる?
ややローカルな調査ではありますが、宮城産業保健総合支援センターが2015年度に社会福祉施設で働く職員の腰痛に関する調査を実施しています。
この調査によると、調査に回答した保育所174施設のうち、前年度に腰痛を抱えている労働者がいると回答した施設は142施設で、これは対象の保育所の81.6%。8割以上の施設で、腰痛を抱える人がいることがわかりました。この調査からは腰痛を抱えている正確な人数はわかりませんが、かなり多くの保育施設で、腰痛持ちの人がいることが予測されます。
腰痛の原因となる仕事の場面
以下より、厚生労働省の『社会福祉施設における安全衛生対策~腰痛対策・KY活動~』に関する資料をもとに、想定される腰痛の原因をまとめました。
子どもを抱きかかえた時
子どもを抱きかかえる、というのは特に低年齢児の保育において頻繁に行われています。
こうした場合、子どもが軽いからという理由で負担がかからないわけでななく、特に抱きかかえるために前かがみになる動作は腰に負担を与えるようです。
おむつ替えをするとき
乳児を中心におむつ替えの際に、床など保育士が膝をつくような体制になるときにも注意が必要です。大人である保育士さんと、床面に近く子どもを寝かせておむつ替えをする場合はどうしても前かがみにならざるをえず、前かがみの姿勢になります。この時にも腰に負担がかかり、腰痛の原因となってしまうようです。
トイレ介助や着替え補助
トイレや着替えがまだ子ども一人ではできない場合、こうした介助も保育士の仕事ですが、ズボンを上げてあげたり、おしりを拭いてあげたりと子どもの身長に合わせた動きをしなければいけません。この時に中途半端にかがんだりすることも上記のパターンと同様に腰への負担につながるようです。
食事の介助
給食を食べる時には、保育士は子どもがこぼしたりしていないか、子どもの間に入って指導します。子どもの視線と同じ高さに姿勢をあわせつつ、かつ体を左右にひねるような動きも保育士の腰痛につながります。
保育ならではの動きが腰痛につながる
以上で見てきたように、保育士は、子どもの目線になったり、抱き上げたりと、身長差のある子どもに合わせるために前傾、中腰、体をひねるなどの動きが多い仕事です。こうした姿勢や仕事柄必要な動きをする中で腰に負担がかかりがちになっているようです。
保育士ができる腰痛の予防
ですが、腰痛になりやすい仕事だからといって、予防できないわけではありません。ここでも上述の厚労省の腰痛対策の資料を参考に、保育士が日頃からできる予防策をまとめました。
同資料に書かれている「保育施設における腰痛予防のポイント」には以下の3点があります。
(以下文章のみ引用)
・保育士が園児に近い位置で正対してしゃがみ、近づいて、前かがみ・ひねりなどを避ける
・腰椎の生理的前弯を保持した姿勢(パワーポジション)で作業することを習慣化する
・適宜、腰痛予防体操を行うなど
※生理的前弯・・・自然な状態では、腰は少し前に向かって曲がっているという、ひとの体のつくりのこと。ここで整理定前弯を保持する、ということは腰を無理に反らせたり、曲げたりしない自然な姿勢ということ。
ここからはこの点を踏まえたうえで、保育士の腰痛予防対策を考えていきます。
子どもの身長に合わせるときはしっかり腰を落として
前かがみ、中腰、などが腰の負担になるように、保育士が子どもの目線に合わせて介助や抱き上げたりする際はしっかりしゃがみ込むことが大切です。中途半端に前かがみになって子どもを抱きかかえたりすると、腰への負担がかかるため、子どもが顔の正面に来るくらいまでしゃがみ込んでから次の動作に移るようにしましょう。
自然な姿勢になるように工夫しよう
おむつ替えを床でする、子ども向けの椅子に座って資料を書く、保育士が低い姿勢でミルクを授乳したりすると、どうしても無理な前傾姿勢になりがちで腰に負担がかかります。おむつ替えは保育士の腰程度の高さのベビーベッドなどで行ったりすると保育士が腰に負担をかけない程度の自然な前傾姿勢になります。また、子ども用の椅子でなるべく作業をしない、授乳は椅子に座ってする、など自然な姿勢を保つ工夫で腰痛は予防できるでしょう。
腰痛予防の体操をする
就業前に腰痛予防の体操をすることも効果が期待できます。こうした腰痛予防の体操は専門家や医療機関の監修があるようなものを選択して活用するようにしましょう。
施設の福利厚生制度を利用する
特に全国展開しているような園では、職員は健康保険組合や福利厚生クラブのようなものに所属している場合があります。こうした組合やクラブに所属していると、医療機関やマッサージなどの利用料が補助される場合もあるため、制度を利用するのも腰痛予防の一つの手段です。
簡単1分登録!転職相談
転職に関するご質問や情報収集だけでもかまいません。
まずはお気軽にご相談ください!
読んでおきたいおすすめ記事
保育士をサポート・支える仕事特集!異業種への転職も含めた多様な選択肢
保育士の経験を経て、これからは保育士のサポート役として働きたいという方はいませんか?責任の重い仕事だからこそ、人の優しさや支えが必要不可欠な仕事かもしれませんね。今回は、保育士さんをサポートする・支え...
在宅ワークで保育士資格を活かせる仕事とは?自宅でできる保育関係の仕事を徹底解説
通勤時間なく働ける在宅ワークをしたいと考えても「保育士は無理なんじゃないか……」とあきらめている方はいませんか?保育園の事務職や保育ママ、保育園業務のサポートなど、保育士の経験や資格を活かして自宅でで...
病院内保育とは。役割や仕事内容、病院内保育士として働くメリット
病院内保育とは、病院や医療施設の中、または隣接する場所に設置されている保育園のことです。保育園の形態のひとつであり、省略して院内保育と呼ばれることもあります。転職を考えている保育士さんの中には、病院内...
子ども・赤ちゃんと関わる仕事31選!資格の有無や保育士以外の仕事を関わる子どもの年齢別に紹介
子どもと関わる仕事というと主に保育園や幼稚園を思い浮かべますが、それ以外にも意外とたくさんあります!今回は赤ちゃんや子どもと関わる仕事31選を紹介!無資格で活躍できる職場もまとめました。子どもと携わる...
保育士を辞める!次の仕事は?キャリアを活かせるおすすめ転職先7選!転職事例も紹介
保育士を辞めたあとに次の仕事を探している方に向けて、資格や経験を活かせる仕事を紹介します。ベビーシッターなど子どもと関わる仕事はもちろん、一般企業での事務職や保育園運営会社での本社勤務といった道も選べ...
保育士から転職したい!転職先としておすすめの異業種22選。保育士以外の仕事やメリット・デメリットも
保育士以外から異業種への転職を考えている際、どのような転職先がおすすめなのでしょうか。今回は、次の仕事として保育士から転職しやすいおすすめの異業種22選を紹介します。保育士から異業種に転職するメリット...
保育園運営会社の仕事内容とは?本社勤務でも保育士資格は必要?働くメリットや求人事情まで
保育園運営会社にはどんな仕事があるのでしょうか?保育園運営会社で働くことは「本社勤務」とも呼ばれ、保育園の運営に携わる仕事として、主に一般企業に就職したい保育士さんにとって人気の高い職種のようです。今...
【2024年最新】保育士に人気の転職先ランキング!異業種や選ばれる職場を一挙公開
保育士の資格を活かして働ける人気の転職先をランキング形式で紹介!企業主導型保育園や病院内保育所、ベビーシッターなど保育士経験やスキルを活かせる職場はたくさんあります!今回は保育施設や異業種別に詳しく紹...
【完全版】保育士資格を活かせる仕事・働ける企業25選!
保育園で保育士として働くのが辛いと感じて、転職を考えているという方がいるかもしれません。しかし、せっかく取得した保育士資格を活かして働きたいですよね!保育士として得たスキルや経験は一般企業や福祉施設、...
【2024年最新版】幼稚園教諭免許は更新が必要?廃止の手続きや期限、対象者をわかりやすく解説
幼稚園教諭免許は更新が必要なのか、費用や手続き方法などを知りたい方もいるでしょう。今回は、2022年7月1日より廃止された教員免許更新制について詳しく、そしてわかりやすく紹介します。幼稚園教諭免許を更...
保育士は年度途中に退職してもいいの?理由の伝え方や挨拶例、再就職への影響
「年度途中で退職したい...けれど勇気が出ない」と悩む保育士さんはいませんか。クラス担任だったり、人手不足だったりすると、退職していいのか躊躇してしまうこともありますよね。そもそも年度途中で辞めるのは...
幼稚園教諭からの転職先特集!資格を活かせる魅力的な仕事18選
仕事量の多さや継続して働くことへの不安などを抱え、幼稚園教諭としての働き方を見直す方はいませんか。幼稚園教諭の転職を検討中の方に向けて、経験やスキルを活かせる18の職場を紹介します。保育系の仕事から一...
【2024年度】放課後児童支援員の給料はいくら?年代別の年収やこの先給与は上がるのかを解説
放課後児童クラブや児童館などで働く「放課後児童支援員」の平均給料はいくらなのでしょうか。別名「学童支援員」とも呼ばれ、「給与が低い」というイメージがあるようですが、国からの処遇改善制度などにより、これ...
保育士が働ける保育士以外の仕事21選。資格や経験を活かせるおすすめの就職先
保育園以外の職場に転職・就職先を探す保育士さんもいるでしょう。今回は企業内保育所や託児施設、児童福祉施設など、保育士さんが働ける保育園以外の職場を21施設紹介!自身の働き方や保育観を見つめ直し、勤務先...
- 同じカテゴリの記事一覧へ
腰痛持ちになりやすいと自覚して予防をしっかりと
身長差のある子どもと関わることが多い保育士は、その日々の生活で腰に負担がかかる動作をしがちです。腰痛は日々の予防を心がけることで腰痛の発症を減らすことはできます。その予防も、大胆な予防策ではなく、腰をしっかり下ろすようにしたり、姿勢を気をつけたりという日々の心がけが大切。ですが、予防をしていてもなるときにはなってしまうものですから、腰痛でつらいときは医療機関に相談して早めの対処をするようにしましょう。
参照:
宮城産業保健総合支援センター 社会福祉施設における腰痛予防対策に関する調査研究
厚生労働省 社会福祉施設における安全衛生対策~腰痛対策・KY活動~