さまざまな障がいを抱える子どもを支援する放課後等デイサービスでは、どんな療育内容が行なわれているのでしょうか。保育士さんが働くにあたって知っておきたい放課後等デイサービスの療育内容についてまとめました。対象となる子どもから支援の意図や方向性、療育における今後の課題を見ていきましょう。
kapinon/stock.adobe.com
目次
放課後等デイサービスとは
放課後等デイサービスは、障がいのある子どもたちのための福祉サービスを行なう通所施設です。各施設は児童福祉法にもとづいて運営され、利用には国や自治体から発行される受給者証が必要です。
障がいの種類は、肢体不自由児・医療的ケア児、発達や知的、自閉症などさまざまですが、対象は原則として小学生から18歳までです。
施設は上記の子どもたちが学校終了後の時間や休業日に利用することを目的としており、療育や日常生活の訓練の場所としてだけでなく、放課後に安心して過ごせる居場所としても機能しています。
厚生労働省が公表している放課後等デイサービスを運営するにあたって図るべき基本事項が示された「放課後等デイサービスガイドライン」には、施設としての「基本的役割」として、以下の内容が明記されています。
- 子どもの最善の利益の保障
- 共生社会の実現に向けた後方支援
- 保護者支援
このように、放課後等デイサービスは、障がいの種類や程度に関わらず、子どもたちの最善の利益を守り、保護者や家族を支援することで、共生社会の実現を後押ししています。
障がい児とその家族に寄り添い、適切な支援を行なうことが、放課後等デイサービスが担う重要な役割と言えます。
放課後等デイサービスの療育内容を定める基本活動
mapo/stock.adobe.com
放課後等デイサービスでは、以下の4つの「基本活動」を通じて、総合的な支援を行なうことが定められています。
- 自立支援と日常生活の充実
- 創作活動の機会の提供
- 地域交流の促進
- 余暇活動の提供
これらを基本の柱としてそれぞれの療育内容に落とし込みます。療育を含めた支援内容は、個別の支援計画を子ども一人ひとりに対して作成します。
支援計画は、児童発達支援ガイドラインに示されている、本人支援における「5領域」にもとづいて作成することが求められています。
- 健康・生活
- 運動・感覚
- 認知・行動
- 言語・コミュニケーション
- 人間関係・社会性
【本人支援の5領域】
この支援計画を作成する上での責任者となるのが「児童発達管理責任者」と呼ばれる役職です。
放課後等デイサービスでこの役職に就くには指定の国家資格を取得した上で、所定の各種研修を受講する必要があります。
また、現場で個別支援計画の元となるものを作成し、実施するのは保育士や児童指導員などの職員です。これらの職員が連携を取りながら、それぞれに合わせた支援計画にもとづいた療育を行ないます。
簡単1分登録!転職相談
転職に関するご質問や情報収集だけでもかまいません。
まずはお気軽にご相談ください!
読んでおきたいおすすめ記事
保育士をサポート・支える仕事特集!異業種への転職も含めた多様な選択肢
保育士の経験を経て、これからは保育士のサポート役として働きたいという方はいませんか?責任の重い仕事だからこそ、人の優しさや支えが必要不可欠な仕事かもしれませんね。今回は、保育士さんをサポートする・支え...
在宅ワークで保育士資格を活かせる仕事とは?自宅でできる保育関係の仕事を徹底解説
通勤時間なく働ける在宅ワークをしたいと考えても「保育士は無理なんじゃないか……」とあきらめている方はいませんか?保育園の事務職や保育ママ、保育園業務のサポートなど、保育士の経験や資格を活かして自宅でで...
病院内保育とは。役割や仕事内容、病院内保育士として働くメリット
病院内保育とは、病院や医療施設の中、または隣接する場所に設置されている保育園のことです。保育園の形態のひとつであり、省略して院内保育と呼ばれることもあります。転職を考えている保育士さんの中には、病院内...
子ども・赤ちゃんと関わる仕事31選!資格の有無や保育士以外の仕事を関わる子どもの年齢別に紹介
子どもと関わる仕事というと主に保育園や幼稚園を思い浮かべますが、それ以外にも意外とたくさんあります!今回は赤ちゃんや子どもと関わる仕事31選を紹介!無資格で活躍できる職場もまとめました。子どもと携わる...
保育士を辞める!次の仕事は?キャリアを活かせるおすすめ転職先7選!転職事例も紹介
保育士を辞めたあとに次の仕事を探している方に向けて、資格や経験を活かせる仕事を紹介します。ベビーシッターなど子どもと関わる仕事はもちろん、一般企業での事務職や保育園運営会社での本社勤務といった道も選べ...
保育士から転職したい!転職先としておすすめの異業種22選。保育士以外の仕事やメリット・デメリットも
保育士以外から異業種への転職を考えている際、どのような転職先がおすすめなのでしょうか。今回は、次の仕事として保育士から転職しやすいおすすめの異業種22選を紹介します。保育士から異業種に転職するメリット...
保育園運営会社の仕事内容とは?本社勤務でも保育士資格は必要?働くメリットや求人事情まで
保育園運営会社にはどんな仕事があるのでしょうか?保育園運営会社で働くことは「本社勤務」とも呼ばれ、保育園の運営に携わる仕事として、主に一般企業に就職したい保育士さんにとって人気の高い職種のようです。今...
【2024年最新】保育士に人気の転職先ランキング!異業種や選ばれる職場を一挙公開
保育士の資格を活かして働ける人気の転職先をランキング形式で紹介!企業主導型保育園や病院内保育所、ベビーシッターなど保育士経験やスキルを活かせる職場はたくさんあります!今回は保育施設や異業種別に詳しく紹...
【完全版】保育士資格を活かせる仕事・働ける企業25選!
保育園で保育士として働くのが辛いと感じて、転職を考えているという方がいるかもしれません。しかし、せっかく取得した保育士資格を活かして働きたいですよね!保育士として得たスキルや経験は一般企業や福祉施設、...
【2024年最新版】幼稚園教諭免許は更新が必要?廃止の手続きや期限、対象者をわかりやすく解説
幼稚園教諭免許は更新が必要なのか、費用や手続き方法などを知りたい方もいるでしょう。今回は、2022年7月1日より廃止された教員免許更新制について詳しく、そしてわかりやすく紹介します。幼稚園教諭免許を更...
保育士は年度途中に退職してもいいの?理由の伝え方や挨拶例、再就職への影響
「年度途中で退職したい...けれど勇気が出ない」と悩む保育士さんはいませんか。クラス担任だったり、人手不足だったりすると、退職していいのか躊躇してしまうこともありますよね。そもそも年度途中で辞めるのは...
幼稚園教諭からの転職先特集!資格を活かせる魅力的な仕事18選
仕事量の多さや継続して働くことへの不安などを抱え、幼稚園教諭としての働き方を見直す方はいませんか。幼稚園教諭の転職を検討中の方に向けて、経験やスキルを活かせる18の職場を紹介します。保育系の仕事から一...
【2024年度】放課後児童支援員の給料はいくら?年代別の年収やこの先給与は上がるのかを解説
放課後児童クラブや児童館などで働く「放課後児童支援員」の平均給料はいくらなのでしょうか。別名「学童支援員」とも呼ばれ、「給与が低い」というイメージがあるようですが、国からの処遇改善制度などにより、これ...
保育士が働ける保育士以外の仕事21選。資格や経験を活かせるおすすめの就職先
保育園以外の職場に転職・就職先を探す保育士さんもいるでしょう。今回は企業内保育所や託児施設、児童福祉施設など、保育士さんが働ける保育園以外の職場を21施設紹介!自身の働き方や保育観を見つめ直し、勤務先...
- 同じカテゴリの記事一覧へ
放課後等デイサービスにおける療育内容の現状
厚生労働省が公開している「障害児通所支援の支援内容に関する調査研究」報告書によると、放課後等デイサービスで「支援・療育内容について重視していること」を調査した結果、以下のような回答となりました。
1 社会で生活するためのスキルを身に着けること
78.2%
2 児童の情緒や感性の発達を促進すること
73.5%
3 自分で考えて自己判断できるようになること、そのために必要な見分を拡げること
65.4%
4 本人の関心や趣味に合わせて活動すること
60.5%
5 滞在することでリラックスしてもらうこと
58.7%
また、個別の支援として行なっている具体的な療育内容についての回答(複数回答)では「宿題支援・学習支援」がともに40%前後で上位となっており、次に30%台で「ソーシャルスキルトレーニング」が挙げられています。
放課後の短時間を過ごすことから預かりとしての要素も大きいため、療育面で必要とされるスキルトレーニングと、療育を必要としない一般の学童保育(放課後学童クラブ)の要素という両方のニーズに応えるバランスが必要とされているようです。
放課後等デイサービスに転職したい
放課後等デイサービスにおける療育内容
maroke/stock.adobe.com
放課後等デイサービスでの療育内容としては、子どもたちが意欲的にかかわれる遊びを通して成功体験を重ねることや、将来の自立や社会生活を見据えた支援が多いようです。
いずれも、子どもたちの個性や特性を生かして可能性を最大限引き出しながら、日常生活における自立、社会参加へつなげていくことを目的としています。
厚生労働省が調査した「放課後等デイサービスの実態把握及び質に関する調査研究報告書」を参照しながら、放課後等デイサービスで実際に実施されている療育内容の例を見ていきましょう。
日常生活習慣にかかわる指導・支援
食事や衣類の着脱、歯みがきなどの健康管理、身だしなみや身辺の整理といった日常生活習慣にかかわる支援や指導を行なうことで、生活リズムや集団生活への適応、社会性や自立を促します。
そうじやクッキング、園芸体験など、日常生活の訓練を通じて身体や手先をつかって表現する、作業を完了させる体験をすることで療育につなげる活動も積極的に取り組まれているようです。
音楽や製作など芸術を通じた活動
「音楽療法」という療育手法があるように、音楽演奏や鑑賞を行なうことは、リラックスや感情表現、コミュニケーションについて学ぶねらいにもとづいています。
具体的な療育内容としては、音楽鑑賞、楽器演奏、合唱、リトミック、リズム&ランゲージなどが挙げられています。
また、絵画や製作、手芸やハンドメイドなどの作品作りは子どもたちも取り組みやすく、アートを通じて集中力や表現力、感覚統合などを刺激する効果が期待されているようです。
スポーツや身体トレーニングなどの運動
運動・スポーツ・身体を使ったゲーム遊びなどは、余暇を楽しみながら身体づくりやリハビリ、運動訓練にも効果を発揮するでしょう。
サッカーや乗馬、空手、縄跳びといったスポーツやゲームを通じて、身体を動かす楽しさを味わいながら協働やチームワークについて身につける活動を取り入れている施設も多いようです。
サーキットトレーニングやバランスボール、トランポリン、マット運動など、室内で取り入れられる運動療育もさまざまあります。
障がいに合わせた各種スキルトレーニング
直写・視写といった視知覚トレーニング、音読・リスニング、脳の機能向上トレーニングといった認知支援を行ないながら、学習支援につなげていく取り組みを行なっている施設もあるようです。
また、障がいの種別に合わせて、PT(理学療法)、ST(言語療法)、OT(作業療法)などの支援プログラムを取り入れている施設もあります。
療育内容を理解して放課後等デイサービスでの支援に活かそう
放課後等デイサービスで行なわれる療育は、障がいのある児童が社会参加できるようさまざまな支援を提供して子どもたちの可能性を引き出すことが目的です。
療育内容を理解し、子ども一人ひとりの障がいに合わせた個別支援計画を立てて実行することで、子どもたちの成長をより効果的にサポートすることが望まれるでしょう。
「保育園での勤務経験しかないけど放課後等デイサービスで働ける?」「療育に関わる仕事にはどんなものがある?」と考えている保育士さんは、保育士バンク!へご相談ください。
専任のアドバイザーが、保育士としてのあなたの資格や経験を活かせる場を親身に探し、転職をお手伝いします!
今すぐ転職を考えていなくても、すでに放課後等デイサービスで働いている保育士さんや指導員さんも保育士バンク!へ。相談だけでも大歓迎です!
出典:児童発達支援及び放課後等デイサービスの役割・支援内容等について/厚生労働省
出典:「障害児通所支援の支援内容に関する調査研究」報告書/厚生労働省
出典:放課後等デイサービスの実態把握及び質に関する調査研究報告書/厚生労働省