保育士さんの退職は職場への影響が大きいため、退職交渉が重要です。予定通りに進まず難航してしまったことで、せっかく決まった転職先の内定が取り消しになるというケースも。今回は、退職交渉が難航する理由を考えながら、保育士さんがスムーズな退職交渉を行なうポイントや内定取り消しにならないためのポイントを紹介します。
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保育士さんの退職交渉が難航する3つの引き止め理由
保育士さんの退職交渉が難航する原因は、勤務先や上長から強い引き止めにあっていることが挙げられるでしょう。
ここでは、退職希望者を引き止めてしまう側の理由について考えましょう。
人材不足
近年、保育士不足が深刻化しており、多くの園が人材確保に苦労しています。そのため、シフトや人員配置をギリギリの人数で回している園は少なくありません。
保育園は園児の人数に対して保育士の人員配置が決まっています。保育士が規定人数配置できなければ、園児を受け入れられないだけでなく、国からの助成金対象から外れる可能性もあります。
長く働いている・保育士としての力量がある保育士さんを園が手放したくないのはもちろんですが、単純に保育士人数の確保は保育園にとって死活問題と言えるようです。
業務量増加によるさらなる退職を防ぐため
保育士さんは、長時間労働や業務量の多さ、それに見合わない賃金、また職場内だけでなく園児や保護者などさまざまな人間関係でのトラブルなど、多くの問題に悩んでいる方がいます。
これらの問題が深刻化すると、退職や転職を考える保育士さんも少なくありません。
しかし、これらの問題は、ほとんどが園として解決するべき問題でしょう。
保育士さんが業務上の悩みが原因で退職するのであれば、それらの深刻な問題に職場が対応できていない可能性が高いと言えます。
そのため、一人が退職することで業務量などの改善すべき問題を残ったスタッフにそのまま負担させることになってしまいがちです。
それによりさらなる退職者を招いてしまう事態は、園としてはできる限り避けたいでしょう。
業務の属人化によるサービス低下の懸念
園によっては「この仕事はこの保育士さんにしかできない」といった業務があるのではないでしょうか。これを「業務の属人化」と言います。
たとえば、特定の保護者や問題を抱える子への対応をコミュニケーションが得意な保育士さんだけに担当させていたり、壁面装飾や園内の安全確認など特定の業務をよく気がつく保育士さんに任せっきりにしていたりといったことはないでしょうか。
そのようなケースでは、業務ノウハウを持った保育士さんが退職すると、ほかのスタッフでは同じクオリティが保てないといったケースに陥ることがあるでしょう。
必要な業務なのにマニュアルがなかったり、同じ資格を持っている保育士間にも属人的な業務が多かったりするのは、その保育士さんのせいではなく、園の業務管理上の問題と言えます。
このような場合は、スタッフの離職によって保育の質や運営に影響が生じることが、退職交渉の難航につながる引き止めの大きな理由になるでしょう。
内定取り消しも?退職交渉の難航によるトラブル
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退職交渉が難航することによって起こりうる問題と、トラブルを防ぐ対応について考えます。
転職先の内定取り消し
すでに転職先が決まっている場合は、入職日も決まっているはずでしょう。
退職交渉が難航することで退職予定日がずれれば、入職日までに退職できなくなり内定取り消しになるのでは、と考えてしまう方がいるかもしれません。
しかし、内定取り消しには法的事由が必要とされるため「入職の意思があるが都合のため間に合わない」を理由とした内定取り消しは、法的には認められないようです。
ただし、内定時に契約した日に退職が完了しなければ実質入職できないため、こちらから内定辞退する事態になってしまうことも。
そうならないためには、内定時もしくは選考時に「退職交渉が難航する可能性がある」ことを転職先に伝えておく対策が必要でしょう。
退職交渉が難航した場合に入職日を改めて相談できるかを事前に確認しておくことで、いざという際に柔軟な対応をとってくれる可能性が高まるかもしれません。
退職日までの関係悪化
退職交渉が難航しても、勤務者の退職の自由は民法で定められています。どれだけ職場が引き止めようと、法的には、退職の意思を伝えてから2週間後には退職することが可能なのです。
しっかりと退職の意思が固まっているのであれば、上長や経営側が退職を阻止することはできません。
しかし、交渉が難航したままでいると、退職の意思を伝えてから退職日までの間に気まずい思いをしたり、上長や周りの態度が一変して働きづらくなったりするケースも考えられます。
これは職場や上長のモラルの問題のため防ぐことは難しいと言えます。
しかし考え方として、退職交渉の難航や引き止めを断ったためにハラスメントを受けるようであれば、この職場の要求を聞き入れる必要はないと、職場の価値を判断することができます。
最終日まで自信を持って淡々と引き継ぎや退職の挨拶を進めましょう。
必要書類発行・有給休暇取得が認められない
上記で想定した退職交渉の難航を発端としたハラスメントの一環として、退職に向けての必要な手続きや有休休暇の取得を認めないとしてくる職場があるかもしれません。
退職後に必要となるものには、失業手当を受給するためにハローワークが発行する「離職票」や、転職先が認可保育園の場合は自治体からの助成金の関係で提出を求められる「在職証明書」などがあります。
「離職票」は、職場がハローワークの要請に応じて必要書類を提出する法的義務があるので問題ありませんが、「在職証明書」は退職時に自分で発行を依頼する必要があります。
退職交渉が難航することで発行依頼がしづらい場合は、職場に対して内容証明郵便などで依頼書を送るなどの対応をする必要があるかもしれません。
また、最終出勤日までに有給休暇の消化を希望した場合に勤務先が拒否をするのは、労働基準法第39条の違反にあたります。
「うちの社内規定では禁止している」「後任が決まっていないので認められない」など雇用する側が取得を拒否するのは違法ですので、臆せず有休休暇を消化しましょう。
有休休暇を取得した分の給与が支払われない場合は、自治体の労働基準監督署に相談できます。
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退職交渉の難航を防ぐ4つのポイント
退職交渉を難航させないために事前にできることや、引き止められた際の心構えを見ていきましょう。
退職タイミングをはかる
保育士さんの仕事はクラス担任を受け持つことや、入園・卒園・進級、行事といった業務量が増えるタイミングが年間を通して生じるのが特徴です。
そのため、退職しづらいタイミングを考慮する必要があるのが現状と言えるでしょう。
しかし反対に考えれば、年間のスケジュールがある程度決まっていることは退職に適した時期を見極めやすいと言えます。
年度が変わる3月末での退職など、保育園の業務やスケジュールに影響が少ないタイミングをはかることで、退職交渉の難航を防ぐことにつながるかもしれません。
就業規定を事前に確認する
退職を決める際には、まず現在の職場に入職した際に配布された「就業規定」を確認しましょう。
入職初日や内定から入職日までの間に書面でもらうことが主ですが、メールなどで受け取る職場もあるかもしれません。
就業規定には退職に関する項目が記載されていますが、「退職の通知までの期間」が規定されている場合があります。
法的には通知から2週間で退職は完了できますが、就業規則に「退職の1カ月前までに通知すること」のように指定がある場合は、基本的には就業規定に準じることで退職交渉の難航を防ぎやすいでしょう。
しかし、あくまでも法的には「2週間前の通知」であるため、就業規則を理由に希望の退職日を職場側が拒否することはできません。
感情的にならない
退職の意思を伝えたにもかかわらず園側から強く引き止められ断りづらい場合は、冷静に対応することが重要です。感情的にならず、ビジネスライクに断ることを心がけましょう。
「感情的になる」とは、怒る・泣く・委縮するなどのほかに、相手が引き止めの方法として感情に訴えてきた時に、それに流されてしまうことも含まれます。
引き止めの材料として、こちらの落ち度を責めてくるパターンや、「ほかの職員や子どもたちに迷惑がかかる」「ここで諦めるならどこへ行っても通用しない」など否定的な言葉をかけてくる場合は、感情に引きずられがちですので、流されないよう自分の意思をしっかり持ちましょう。
ほかに引き止めの手段として、待遇・給与などこちらが不満だった要素の見直しを提示する、退職日について交渉してくるパターンもあるようです。
常識的な交渉内容については謙虚に聞いたうえで、問題ないと冷静に判断できれば受け入れてもよいかもしれません。
外部機関に相談する
退職の意思を真摯に伝えても勤務先が拒否することで退職を妨害される場合や、明らかなハラスメントがある場合は、労働局や労働基準監督署といった外部機関への相談を検討しましょう。
また近年は「退職代行」といったサービスを利用するパターンも多いようです。冷静に話しても常識が通じない場合や退職交渉が難航してこじれるような場合は、利用を検討してみてもよいでしょう。
退職交渉を難航させないためのポイントを押さえよう
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慢性的な人手不足に陥っている園が多い中、保育士さんの退職交渉はどうしても難航しやすいようです。仕方ないとあきらめず、内定取り消しといった事態はなるべく避けたいものですね。
事前の準備と少しの心がけでスムーズな退職交渉を進めることも困難ではありません。引き止めの理由や想定されるトラブルを把握しながら、新しい職場への転職につなげましょう。
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