児童発達支援管理責任者(児発管)は、放課後児童クラブや児童発達支援センターなどの放課後等デイサービスで、子どもの育成や支援の責任者として働く専門職です。児発管になるには、実務経験と研修の修了が必要です。今回は、児発管になるための研修の要件や、働きやすさの要素を解説します。
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児発管とは
児発管は「児童発達支援管理責任者」の略称です。
障がいのある子どもの保育や療育を行なう施設で、職員を指導したり支援計画を立てる際のリーダーとして勤務します。
児童発達支援施設において1名以上配置することが義務づけられているため、障がい児支援施設などではこの資格を所有している保育士さんが求められています。
業務は、障がい児に対する保育・療育のスキルを活かして行ないます。
特に、利用児童に対する個別支援計画の作成、また児童や保護者への相談援助は児発管の資格を有していないとできない業務とされています。
ほかにも現場の保育だけでなく、個別支援計画にもとづいた職員の管理、助言や指導などが主な業務内容のようです。
児発管になるための実務経験について
spacezerocom / stock.adobe.com児発管の資格を取得するためには、保育士など指定の資格保有とその業務の実務経験が必要です。
実務経験に関しては、勤務や業務内容ごとに必要とされる経験年数が異なります。
大きく以下の2パターンに分けられます。
相談支援業務・直接支援業務の従事経験がある
相談支援業務・直接支援業務では、資格の有無で実務経験の必要年数が異なります。
5年以上の従事が必要となる資格は以下です。
- 保育士
- 社会福祉主事任用資格
- 児童指導員任用資格者
- 精神障がい者社会復帰施設指導員任用資格者
- 相談支援業務の対象となる施設に1年以上従事した者
- 訪問介護(介護職員初任者研修)2級以上に相当する研修修了者
上記以外に、以下の場合もこの要件に該当します。
(A)指定の国家資格を有する者
医師・歯科医師・薬剤師・保健師・助産師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・介護福祉士・視能訓練士・義肢装具士・歯科衛生士・言語聴覚士・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師・栄養士(管理栄養士を含む)・精神保健福祉士
(B)以下の施設に1年以上従事した者
障がい者支援事業・身体(知的)障がい者相談支援事業・地域生活支援事業・児童相談所・児童家庭支援センター・身体(知的)障がい者更生相談所・発達障碍者支援センター・福祉事務所・保健所・市町村役場・障がい児入所施設・乳児院・児童養護施設・児童心理治療施設・児童自立支援施設・障がい者支援施設・老人福祉施設・精神保健福祉センター・救護施設および更生施設・介護老人保健施設・地域包括支援センター
上記要件を満たしていない場合でも、直接支援業務であれば8年以上従事することで要件に該当します。
国家資格を保有している
以下の国家資格保有者は、その資格での実務経験が通算5年以上、そのなかで相談支援または直接支援の実務経験が1年以上あれば要件に該当します。
医師・歯科医師・薬剤師・保健師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・介護福祉士・視能訓練士・義肢装具士・歯科衛生・言語聴覚士・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師・栄養士・管理栄養士・精神保健福祉士
実務経験の証明には、勤務先が発行する「実務経験証明書」が必要になります。
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児発管になるための研修について
taka / stock.adobe.com児童発達支援管理責任者になるには、「基礎研修」と「実践研修」の両方を受講する必要があります。
以下でそれぞれを見ていきましょう。
基礎研修
基礎研修には「相談支援従事者初任者研修」と「児童発達支援管理責任者基礎研修」があります。
講義内容には以下のようなものがあります。
相談支援従事者初任者研修(11時間)
相談支援従事者初任者研修は、以下のような講義が中心となっています。
- 障がい者の地域支援と相談支援従事者の役割
- 障がい者の日常生活・社会生活の総合支援に関する法律
- 児童福祉法
- 相談支援におけるケアマネジメント手法
児童発達支援管理責任者基礎研修(15時間)
児童発達支援管理責任者基礎研修は以下のような講義と、それにともなう演習があります。
- サービス管理責任者の基本姿勢とサービス提供のプロセス
- 個別支援計画の作成手順習得と演習
実践研修
実践研修を受講するためには、相談支援業務または直接支援業務の実務経験が必要です。
これまでは過去5年以内に2年以上の実務経験が必須でしたが、2023年から新たな要件が追加されました。
これは、例外的に実務経験が6カ月以上で該当する要件です。「すでに実務経験者で、障がい福祉サービスにかかる個別支援計画の作成の一連の業務に従事」していることが条件となります。
このように実務経験の必要期間が一部緩和されたことからも、児発管の資格はより取得しやすい方向に舵を切りつつあると見てよいかもしれません。
児童発達支援管理責任者研修(14.5時間)
相談支援従事者初任者研修には、以下のような講義と演習があります。
- 障がい福祉の動向 (講義)
- サービス提供 (講義・演習)
- 人材育成の手法 (講義・演習)
- 多職種および地域連携 (講義・演習)
細かい研修の内容や時間は都道府県や自治体ごとに異なります。
受講するにはその自治体で行なわれる予定を確認しましょう。おおむね年に数回ほど実施されているようです。
児発管の求人を紹介してもらう
児発管の働きやすさ
yamasan / stock.adobe.com保育士さんが資格を取得して児発管として働く上で、どのようなメリットや働きやすさがあるでしょうか。
以下で見ていきましょう。
保育園と比べて働きやすい
児発管として勤務できる支援センターや放課後等デイサービスなどは、勤務時間がしっかり定まっており、さらに残業が少ない施設も比較的多いようです。
また、保育園のように早番・遅番などのシフト制をとっていない施設もあります。
保育する児童は、学校や幼稚園・保育園が終わったあとの午後から夕方にかけての来所が多いようです。そのため、事務作業の時間なども保育園に比べてしっかりとることができそうです。
相談支援と事務などの業務を、勤務時間内でメリハリをつけて行なえるでしょう。
子ども一人ひとりに向き合える
一般的にさまざまな子どもが通う保育園に比べて、支援センターや放課後等デイサービスに通所する児童は特性や障がいを持った子に限られていることが多いでしょう。
児発管は、児童や保護者の様子やニーズをくみ取りながら障がい児に対する個別の支援計画を立てる必要があるため、少人数の子に対してしっかり面談や保育を行ないます。
そのため、児童一人ひとりとしっかり向き合いたい、子どもと深く関わりたいと感じている保育士さんには、非常に適職と言えるでしょう。
責任は大きいが給与も魅力
有資格者だけが従事できる児発管は、一般保育士に比べて給与面でも大きな魅力があるようです。
厚生労働省が2023年に公表した資料「障害福祉サービス等経営実態調査結果」を参照すると、児発管の平均月収は、全体で27万8480円となっています。
同年の一般保育士の月収平均は22万6280円となっているため、資格手当などを含めた児発管の給与は、やや高い傾向にあると言えます。
施設ごとで見ると、肢体や体幹などの不自由児が主な支援対象である医療型児童発達支援施設ではより給与額が高く、平均月収41万円以上となっています。
児発管は、児童の状況によっては生活全般をカバーする支援計画が必要になることもあるでしょう。責任は大きいですが、資格手当などもあり、給与面では優遇されると言ってよいでしょう。
児発管の求人を紹介してもらう
出典:サービス管理責任者等に関する告示の改正について/こども家庭庁支援局障害児支援課
出典:令和5年障害福祉サービス等経営実態調査結果/厚生労働省
児発管の研修要件をおさえよう
児発管の資格や研修受講に必要な要件についてと、実際に勤務する場合の働きやすさについて見てきました。
勤務時間や給与面などでも魅力が多い 児発管は、保育士さんがこれから目指したいキャリアアップに最適と言えるかもしれません。
保育士バンク!では、保育の専任アドバイザーが、障がい児保育などの施設への転職情報・紹介、また保育士さんのキャリアプランについてのご相談も幅広く承っています。
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