保育士の給料が上がる国の施策として、2022年2月からの「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業(保育士の処遇改善Ⅲ)」で、2年にわたり月9000円の賃上げが行なわれました。また勤続年数などで加算される加算もあります。パート職員も対象なうえ、役職によっては4万円の手当加算も!今回は保育士さんの処遇改善の実施目的や仕組み、対象外のケースも詳しく紹介します。
保育士の給料は上がる?
2024年度の統計結果によると、保育士さんの給与は全国平均で月額27万円前後となっています(※正社員保育士の男女合計値)。
2023年度の統計結果では約26万円だったことを考えると、1年で1万円ほど保育士さんの給料が上がったことが分かります。保育士さんの給料が大きく上がることになった要因は、今回紹介する処遇改善によるものと言えるでしょう。
ここからは、なぜ処遇改善が進んだのか、その背景を見ていきながら、処遇改善の内容についてくわしく解説します。
給料が上がる、保育士の処遇改善が進んだ背景
maroke / stock.adobe.com
保育士さんの給料が上がる施策が行なわれていると言っても、現役保育士さんのなかには「そんなにもらってないよ!」と思う人も多いかもしれません。また、子どもの命を預かる仕事として、これではまだ少ないと思う人もいるでしょう。
2022年度の東京都保育士実態調査報告によれば、保育士さんの退職理由の第一位は給与の低さであることが挙げられています。
この調査からも、保育士不足の解消に向けて待遇の改善が求められていることがわかりますね。
そこで、政府は保育士確保に向けて「処遇改善等加算」を導入することで、保育士さんの収入を増やす施策を打ち立てました。
この処遇改善等加算の効果によって、保育士さんの離職率低下や職場復帰の促進が期待されています。
しかし、役職や園の状況によって加算される費用は異なるのが実情。さらなる給与アップを実現するには、働く保育園選びが重要になってくるといえるでしょう。
転職・復職を検討されている方も、処遇改善等加算の内容を知ることで保育士さんの給与事情を把握することができそうです。
簡単1分登録!転職相談
転職に関するご質問や情報収集だけでもかまいません。
まずはお気軽にご相談ください!
【保育士の給料が上がる】処遇改善等加算Ⅰについて
保育士さんの処遇改善等加算は、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの3種類ありますが、加算の仕組みなどに違いがあります。
まずは、処遇改善等加算Ⅰから見ていきましょう。
概要
処遇改善等加算Ⅰは、保育士確保や保育士さんの資質向上を目的として、2015年に導入されました。
平均勤続年数やキャリアアップなどによって加算率が上がる仕組みです。
内閣府の資料に掲載の表をもとにくわしく見てみましょう。
出典:施設型給付費等に係る処遇改善等加算について/こども家庭庁
kapinon / stock.adobe.com
この表から職員一人当たりの平均経験年数の区分に応じた基礎分
この表から、職員一人当たりの平均経験年数の区分に応じた基礎分と賃金改善要件分、キャリアパス要件分それぞれの割合を加えて得たものが算定されることが分かります。
加算の割合は、キャリアアップ要件の適合などによって変動します。
対象
処遇改善等加算Ⅰは、認可保育園などに勤務する正規職員のほか、1日6時間以上かつ月20日以上就労するパートやアルバイトなどの非正規職員も対象です。
加算の仕組み
先述の通り、加算率は職員1人当たりの平均経験年数に応じて上昇する仕組みで、基礎分の割合に賃金改善要件分の割合を加えて設定されます。
では、基礎分や賃金改善要件分とはどのような内容なのか、見ていきましょう。
基礎分
「基礎分」とは、勤務先の平均経験年数に応じて決まる加算率の割合です。
職員1人当たりの平均経験年数に応じて人件費の加算率が決まります。平均勤続年数が1年未満の場合は2%、1年で3%、2年では4%と、1年ごとに加算率が1%ずつ増えていきます。
平均勤続年数が10年以上になると、一律12%になる仕組みです。
賃金改善要件分
新銀改善用見聞とは、施設が実施する保育士さんへの賃金改善の取り組みに応じて行われる処遇改善です。
平均勤続年数により人件費の加算率が決まる仕組みで、11年未満の場合6%、11年以上では7%が加算されます。
キャリアパス要件分
キャリアパス要件分とは、保育士さんのキャリアアップに力を入れている保育・福祉施設が対象となる処遇改善です。
役職や職務内容等に応じた勤務条件のほか、研修の実施、職員への周知などが要件となっています。
なお、この要件を満たさなければ、賃金改善要件分より2%の減額となる仕組みです。
【保育士の給料が上がる】処遇改善等加算Ⅱについて
次に、処遇改善等加算Ⅱについて説明します。
概要
処遇改善等加算Ⅱとは、保育士さんなどの処遇改善に取り組む施設や事業所に対し、キャリアアップによる処遇改善に必要な費用を加算する施策です。
これまで、保育士の役職には園長や主任保育士などしかありませんでした。
そのため、何年働いても役職に就くことが難しく、結果的に給料が上がらない状況があったようです。
そこで2017年に処遇改善等加算Ⅱを導入し、若手保育士さんや中堅保育士さんにキャリアアップによる給与アップの機会を確保しました。
つまり、退職理由として懸念されている給料の低さを改善しつつ、保育士の質を向上させることを目的としているのですね。
対象
認可保育園などに勤務する園長と主任保育士を除く正規職員のほか、1日6時間以上かつ月20日以上就労するパートやアルバイトなどの非正規職員も対象です。
一度研修を終了すれば、転職・離職をしても研修修了の効力を失うことはありません。
約3年から7年以上の保育士経験があり、以下のキャリアアップ研修を規定数修了することが条件になります。
- 乳児保育
- 幼児教育
- 障害児保育
- 食育・アレルギー
- 保健衛生・安全対策
- 保護者支援・子育て支援
キャリアアップの条件処遇改善により、職務分野別リーダー・専門リーダー・副主任保育士という役職が新設されることとなりました。
キャリアアップ条件の概要は下記の通りです。
それぞれの役職の要件について、詳しく見ていきましょう。
職務分野別リーダー
保育士経験が約3年以上あることが条件です。
先に挙げた6分野のうち、担当する職務分野の研修を修了し、職位の発令があれば職務分野別リーダーにキャリアアップできます。詳しく知りたい方はこちら
専門リーダー
保育士経験が約7年以上あり、職務分野別リーダーを経験していることが条件です。
先に挙げた6分野の研修のうち4分野以上修了し、職位の発令があれば、専門リーダーにキャリアアップできます。詳しく知りたい方はこちら
副主任保育士
保育士経験が約7年以上あり、職務分野別リーダーを経験していることが条件です。
先に挙げた6分野の研修のうち3分野以上の専門研修とマネジメント研修を修了し、職位の発令があれば、副主任保育士にキャリアアップできます。詳しく知りたい方はこちら
加算の仕組み
職務分野別リーダーになれば、給与に月額5000円が加算されます。
また、専門リーダーと副主任保育士になると、給与に月額最大4万円が加算される仕組みです。
この分の配分方法は施設の判断に任されており、保育園側が自由に決定できます。
例えば、月額4万円を支給する職員を1人以上確保した場合、1人当たりの配分額を月額5000円以上4万円未満に収めるという条件を満たせば、副主任保育士や専門リーダーの加算分をほかの職員に分けることも可能です。
詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてくださいね。
【保育士の給料が上がる】処遇改善Ⅲについて
Paylessimages / stock.adobe.com
この「処遇改善Ⅲ」が、2022年2月からスタートした「「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業」にあたるものです。くわしい目的や仕組みを見ていきましょう。
概要
この賃上げは、現場で働く方の給料の引上げに必要な費用を保育施設に対して補助する施策です。2022年2月から月額平均9000円(収入の3%)の引き上げが実施されました。
2023年も「処遇改善等加算Ⅲ」として公定価格に組み込まれ、保育士さんの給料が上がるよう毎月の給与額が引き上げられました。
このような施策が行なわれたことによって、今後も保育士さんなど保育の現場で働く方全体の給料がさらに上がる傾向にあると言えるでしょう。
目的
賃上げは、保育士さんのさらなる待遇改善を目指すことを目的として行なわれています。
実施の背景には、処遇改善等加算が導入されたものの、保育士さんの給与が全職種の平均と比べて未だに下回っている状況があるようです。
対象
保育士や幼稚園教諭のほか、調理員や栄養士、事務職員など、対象施設や事業所に勤務する全ての職員が対象です。
また、公立保育園で働く保育士さんも該当します。
公立保育園は公務員のため、私立保育園の職員よりも給料が高かったり、昇給があったりする傾向にありますが、さらに賃上げとなるのはありがたいですね。
契約職員やパート、アルバイトなどの非正規職員も対象となりますが、延長保育や預かり保育など通常の保育業務以外のみに従事している職員は対象外となります。
【保育士の給料が上がる】処遇改善の支給対象外のケース
ここまでで紹介した保育士の処遇改善には、支給対象外のケースもあります。この場合は、該当ケースに比べて給料が上がることにつながらない可能性があるので、チェックしておきましょう。
- 【対象外のケース】
認可保育園で働いていない
認可保育園でも処遇改善手当の申請をしていない
このように、認可保育園以外の施設で働いている場合は処遇改善の対象となりません。では、対象外の保育士さんが、さらに給料が上がるためにできることにどのような対策があるでしょうか。
認可外保育園で働く保育士さんが給料アップを目指すなら、対象となる認可保育園への転職を検討してみるのはいかがでしょうか。保育士に限らず、給料が上がるためにまずできることの一つに、転職という選択肢があるようです。
認可外保育園でしか働いたことがない保育士さんや、キャリアが短くて転職活動に踏み切る勇気がない保育士さんも、専任アドバイザーがサポートしてくれる保育士専門の転職エージェントに相談してみることで、給料が上がる理想の転職先が見つけられそうです。
ほかにも処遇改善手当の申請をしていない保育園に勤務している保育士さんや、現状に満足していない保育士さんも、さまざまな職場を比較しながら、納得いく給料の保育園に移ることを視野に入れてみましょう。
給料が上がるのはもちろん、保育士として働きやすい職場との出会いもあるかもしれませんね。
給料が上がる保育士の処遇改善策について理解しよう
今回は、2024年(令和6年)最新の処遇改善について紹介しました。
待遇を見直す動きが見られる一方で、処遇改善には経験年数や研修等の条件が必要なものもあります。
給料が上がるこの機会に、さらにステップアップを目指す保育士さんは、転職も視野に入れてみてはいかがでしょうか。施策を知ったうえで環境を変えると、待遇向上への近道になりそうです。
保育士バンク!では転職相談・サポートも行なっています。
「給料が25万円以上の好待遇な求人が知りたい!」「定期的な昇給がある園を知りたい」などぜひお気軽にご相談ください♪
出典:賃金構造基本統計調査/厚生労働省
出典:2022年度東京都保育士実態調査結果/東京都福祉保健局 p8/内閣府
出典:施設型給付費等に係る処遇改善等加算について/こども家庭庁
出典:処遇改善等加算IIの仕組み/こども家庭庁
出典:保育士の現状と主な取組/厚生労働省
出典:特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに特定子ども・子育て支援施設等の運営に関する基準/e-GOV法令検索
出典:子育て支援事業者の方向け情報/こども家庭庁